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stories 2005-2007

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2011 * 1〜3 / 4〜6 / 7〜9 / 10〜12

2012 * 1〜3 /

 

 

★The Ultimate Kingdom -至福の園 -  ★主要登場人物、用語等解説

Episode1 誘拐 Chapter 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  Epilogue

Intermission 1 宣戦布告

Episode2 告白 

  Book1(前編) Prologue  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20 

21  22  23  24  25  26  27  28  29  30 31  32  33  34  35  36  37  38  39  40 

41  42  43  44  45  46  47  48  49  50 51  52  53  54  55  56  57  58  59  60

61 62  63  64  65

  Book2(後篇)  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10 11  12  13  14  15  16  17  18  19  20

  21  22  23  24  25  26 27  28  29  30  31  32  33  34  

  Book2(後編)続きは、Ayapoo Diary にて連載中で〜す♪

★Dialogue 〜第1部〜

 Grand Prologue 1  2  3  4  5  6  7  8  9

 Book1 Prologue 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20

    21  22  23  24  Intermission

 Book1あとがき その1 背景と発端 / その2 Dialogueと音楽

その3 ロケーションモデル / Scene1  Scene2  Scene3

あとがきのオマケ

    

     

     

     

2012/3/12

★Colours of the wind★

coloursはスペルミスだと、アメリカ産作成ソフトFront Pageは言い張ってますが、日本国内にあっても局部的に文化的英国圏である我が家では、colors ではなくて、colours であることに拘ってるんです。Word でもスペルミスって赤のアンダーライン出るもんな。でも、いいの。無視。

ところで、colours of the wind というのは、ポーリン・ウィルソンのアルバムの中の1曲なんですが、私は自分の小説のタイトルに使ってます。以前から、これも公開しようしようと思ってるのに、とにかくディ周辺のお話が書いても書いても、書いても書いても終わってくれないので、なかなか手が回らない。

そうこうしてるうちに、カトリーヌとデュアンが夏の京都旅行に旅立ってしまい、お話が日本に来ちゃって、どーゆーわけか、ここにcolours of the wind の断片が紛れこんできてしまった。連載小説、今回のは書き始めた当初は二人の京都旅行なんてナレーションだけですっ飛ばして、さっさとランディんちの別荘に話を持ってくつもりだったんですが、おかげで京都に引き止められてしまいました。

そんなわけで今日はそっちの話をしようかなと思ってたのに、先に書いたらネタ割れちゃうじゃないか、というムードになってるので、とにかく話の方を先に読んで下さい。colours of the wind の解説については、次回持ち越しとゆーことでヨロシク♪

     

 

     

        

2010/12/23

★連載開始★

では、先日お約束しておりました後編を本日より3日連続でお届け致します。まだ4章あたりをウロウロ書いてるところなんで月2〜3回の不定期連載になりますが、ぼちぼちおつきあい下さいませ♪

    

2010/12/20

★後編再開★

さて、例の小説ですが、クリスマスに3日連続で冒頭1〜3章を掲載いたします。実はまだ4章しか書けてない状態なので、連載そのものはわりとのんびり不定期になるかもしれませんが(書けたら出す)、とりあえず年末年始のイベントとゆーことで、始めちゃうことにしました。12/24、25、26と連日出しますので、お楽しみ頂けると嬉しいです♪

      

2010/11/15

★マリオの結婚★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。メインストーリーの小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

マリオ・バークレイ博士の実子であるリデルが、ファーンに恋しちゃってえらい騒ぎになるということは以前書きました。そこで今回は、そのリデルがどういう経緯で生まれることになったのかについてお話したいと思います。

まず、バークレイ博士はマーティアの育ての親であり、後に彼はアリとまーを養子にしたということは何度も書いてますので、ご記憶下さっている方もあるでしょう。で、その段階ではマリオはずっとまーにかまけていたこともあって結婚していませんでした。しかし、その後。

結婚相手というのはセオドラというんですが、彼女はアリがマリオやまーに出会う前にいた田舎の研究所で、アリと一緒に仕事していた女性です。当時二十代後半に入ったくらいで、学者にしておくには惜しいほどの美人。また美女か? と、つっこまれそうですが、以前も書いたように私は「天才と富豪と美形しか書かない」というポリシーを持っておりますので、その点、ご容赦下さい。

とゆーことで、リデルのママはこのセオドラなんですけど、マリオが結婚するくらいですからとてもよく出来た女性で、アリが四面楚歌で仕事していた研究所で殆ど唯一、彼のことを理解して影ながら見守ってくれていたような人でした。まあ、その当時はアリはとことんヒネくれてましたから、彼女の厚意にも見向きもしないような状況だったんですけどね。

つまり、セオドラとマリオはアリのことが元で出会うことになったわけです。それからしばらくしてマリオはアリを引き取って一緒に街の家に帰ってしまうので、一時はセオドラともそれだけの縁かと思われました。しかし、彼女が大変有能なことに感銘を受けていたマリオは、純粋にその能力を認めたという理由で自分の研究室に引き抜きます。セオドラは世界的な物理学者であるマリオのことを実際に会う前からもちろん尊敬していたので、研究者としても名誉なお誘いに喜んで応じる。それで彼女も街に出てくることになる。ただ、彼女も元はそれなりの家のお嬢さんだから、両親の家は街にあって育ったのもそこだけど、仕事のために一時的に田舎にこもってたという背景事情があります。

ま、そんなわけで、本来は都会的な女性だし、同時にディの長年のファンでもあって、この二人はまーがマリオと一緒にアリのいる研究所にしばらくいた頃、その15歳のバースディを祝いにアレクやレイたち、まーのお取巻き連中と出かけて行った時に初めて会うことになった。それ以来、けっこうつきあいが出来て仲良くしてるものだから、マリオは迂闊にもカン違いして、ロベールさんに"ディはセオドラと仲がいいみたいですよ、彼女のような女性ならディの奥方になっても十分やってゆけるでしょう"みたいな、のーてんきなウワサ話をしてたりした。それ聞いてロベールさんは喜んだり、ちょっと期待したりしてたんですが...。

しかし、実はセオドラの本命は他ならないマリオで、ディとは"良いお友達"というのが真相だった。でも、彼女もそういう点では控えめな女性で、しかも相手は大バークレイ博士、トシだってハタチ近くも違っていれば、相手になんてしてもらえっこないと始めから諦めて、その研究の手伝いが出来るだけでもと思いつつ、密かにタメ息ついていた、と。

一方、この場合、厄介なのはマリオも同じで、そもそも引き抜くくらいですから彼女に好意は持っている。しかし、相手はハタチ近くも下の若いお嬢さんだし、元来マジメな人だから、自分の好意が彼女を女性として見たものではないと思い込んでるわけ。だから、ディと仲いいなと見て取ると、ロベールさんを嬉しがらせるような発言をしちゃったり、する。これはもう、どこをどーやっても、まず進展なんか望めない状態ですよね。

そんなこんなするうちに、アリやまーもオトナになってきて、そのうち二人ともIGDに関係するようになるから忙しくなるし、世界中駆け回るような状況でマリオの側にはいられなくなってゆく。この二人はセオドラともマリオとも近い位置にいるので、それぞれの気持ちはなーんとなく知っていて、自分たちが忙しいことにマリオがちょっと淋しそうだなーということにも気がついている。それで、どーせならセオドラとマリオをくっつけちゃおうか、という相談になってくわけです。それがどういう企みになってくかは未だ作者にもナゾですが、まあ、天才児二人が寄って不可能なコトもこの世にはそんなにないですわね。

で、すったもんだありながらも、最終的に結婚させるところまで持ってゆく。ロベールさんは長年の親友であるマリオがとうとう幸せな結婚をするということでそのこと自体はとても喜んでますけど、でも結婚式で、"恨むぞ、マリオ。セオドラがディとどうこうと言っていた張本人が、当の彼女をさらってゆくとはな"とグチるくらいは仕方ないかもしれない。もちろん、ロベールさんのことですから冗談には違いありませんけど、この時期はまだ彼の"のーてんき息子"は孫どころか例によって結婚の気配さえなかったから、期待してた分、落ち込みも当然あったでしょうしね。

こうして、ディの隠し子騒動がヨーロッパを席捲する頃には、バークレイ夫妻にはリデルという女の子が既に生まれている、ということなのでした。たぶんこのリデルは後編で顔を出すと思いますが、この子がファーンと初めて会うのは、彼がまーたちの島にデュアンやウィルともども招待されて出かけて行った時、リデルもそこにいて...、という感じです。

ところで、ファーンのファーストネームはエドワードと言うんですってさ。"ファーン"は幼名というか、そもそも"ファーン"って女の子の名前だしね。それでフルネームは、エドワード・ファーン・クロフォード・ド・シャンタンになるんですけど、初めてリデルと会った時、リデルがとても可愛いのでファーンは冗談半分で紳士らしくフルネームを名乗って正式な挨拶をする。これがリデルにはめっちゃ好印象だったらしく、以来"私の王子さま"状態になっちゃったらしい。

... この先、いったいどうなるんでしょう? 私にも、全く分かりませんが♪

       

2010/11/1-11/2

★自爆★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。メインストーリーの小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

そろそろプロットのネタも尽きてきたので、12月頃からは後編再開したいなあと思ってるんですが、実は最近になってやっと後編の冒頭を書き始めたような状態なんです。さすがに2年近くも小説書きまくってると文章書くことそのものに疲れてきてたというか、もともと飽きっぽい私にしては、なんとか前編を最後まで止めずに終えたってだけでも奇跡で、その後、"よし、書くぞ〜"とゆー気力を取り戻すのに時間がかかってたようです。こーゆーのは書いてる本人が楽しんでないと、読んで下さる方にも楽しんでもらえるようなものは出来ないと思うしね。

で、秋も深まって夏の疲れも取れてきたのでやっと書き出せたって感じなんですが、せめて10章は先行してないと先行き不安ですので、再開まではいましばらくお待ち下さいませ。

では今回は以前ちょっと書いてたアシュバくんの初代ボディが"なぜ壊れたのか"というお話をしてみたいと思います。そのシーンが最近、見えてきたもので...。

******************

― マーティア、アリシア。私はこれから自爆します。降りて下さい

アシュバが淡々とした声で言うのを聞いて、驚いて叫んだのはアリシアだった。

「バカなこと言わないでよ。ヘリはすぐそこまで来てるじゃないか」

― データは全て転送済みですから問題はありません。ただ、現状ではここで何としても敵の足を止めないと、ヘリそのものが離陸できない可能性があります。最悪、ヘリごと爆破される怖れさえあるんです。

「だからって自爆だなんて、おまえ何考えて...」

それまで横で黙って聞いていたマーティアが口を挟んだ。

「確かに、それしか方法はないな」

― ええ。何より、あなたたちの安全が全てに優先します。そして、私自体もIGDのトップシークレットである以上、ボディの一片たりともここに残しておくことは出来ません

「その通りだよ」

それでもマーティアはさすがに即断できない様子だったが、彼にもそれ以外に方法がないことは分かっている。アシュバの状況判断は、常にマーティアのそれと同じくらい正しいのだ。

「おれもそれしかないと思う。じゃ、適当なところで止めてくれ」

「マーティ!」

"自爆"と聞いて既にパニクっているアリシアに対して、こういう場合、最後の最後で冷静なのはマーティアの方だ。IGD首席経営顧問という立場に立って長いので、これまでもイヤというほどこのテの修羅場は経験している。それにマーティアにとって今、もっとも守らなければならないのは自分のことよりもなおアリシアの安全だった。マーティアの指示に従ってアシュバが停止しようとするのを見て、アリシアが大慌てで言っている。

「冗談ヤメてよ、二人とも。みんなで逃げればいいじゃない!」

「それが出来ないから言ってるんだろ。おいで!」

「イヤ!」

止まっても降りようとしないアリシアを引っ張り出しながら、マーティアはアシュバに向かって言った。

「アークで再会しような」

― もちろんです

短い別れの言葉のあと、ちょうど上空から降りて来ようとするヘリの方向へマーティアは完全にパニック状態でダダをこねるアリシアを引きずって走り始めたが、アシュバはそこからターンして、彼らを追って来ていた数台の装甲車両めがけて全速力で突っこんで行った。

**************

と、まあこんな感じでアシュバくんの初代ボディは、華々しく自爆したとゆーわけなんですね。細かい状況は私にもまだよく把握できてないんですけど、たぶん、まーとアリがアシュバごと誘拐されて逃げ出す時、救出ヘリが上空に来ているのに追っ手が迫っていて逃げ切れない、みたいな状況だったんじゃないかと思います。で、問題はこのあと。

まーの言うとおり、アシュバが"データ転送済み"と言ってる限り、自爆決断までのデータは全てアークとIGDのヘッドクォーターに入ってるわけで、つまりアシュバのパーソナリティとしての記憶はボディが自爆しても既に別の場所でコピーされて生きているわけね。これはリクツとしてはアリシアも分かってるはずなんですが、なにしろ十二歳の頃からずっと一緒にいたアシュバが自爆だなんて、それはアリにとっては親友を失うにも等しい状況なわけです。まあ、そのへんがアリのいいところというか、表向きキツいわりに情が深いのよね。もちろんそれは、まーも同じで、ましてや彼はアシュバの生みの親なんですから、いくらそうプログラムを組んだのが自分だとはいえ、長年一緒に暮らしてきた愛車とお別れなんて、アリがいなきゃ決断できたかどうか分からない。しかしこの場合、冷静に考えればボディを再生すれば復活するアシュバに比べて、アリも自分も生身の人間なわけですから、ましてや何があろうとアリだけはって常日頃からまーは思ってますから、断腸の思いで決断した、ということでしょう。

もちろん後にアシュバはそれまで以上に強力なボディになって蘇えるわけですが、新しいボディで再起動されたプログラムが目覚めた時のシーンってのも見えてきていて、その時、"何をもってその個体のアイデンティティとするか"ということとか、人間の愛情とか愛着とかについて、まーがけっこういいこと言ってるんです。それによると、まーはアシュバのプログラムについて、これまでもよほどのことがない限り手を加えずに来てるんですけど、それはアシュバの基本プログラムと彼が産まれてからずっと独自に蓄積されてきたデータは、人間で言えば彼の"自我"と"記憶"に相等するものであり、それに手を加えるということは"アシュバ"というパーソナリティに対する冒瀆だと思っている。現在の科学では人間に対してでも強制的に記憶を操作することは可能だが、それは原則的に決してしてはならないことであるし、人工知能とはいえアシュバほど高度なものになればその"自我"や"記憶"、そしてそれに基づく"判断"は尊重されなければならないとも思っている。それは自分の科学者としての基本理念であると同時に信念でもある。

このへんが、まーが単なる学者ではなく、哲学的資質とそれに基づく高い啓蒙度に恵まれてるゆえってことなんですけど、だから例えば、まーやアリがその気になったら人間の洗脳なんてワケはない。より優れた者が劣った者をコントロールして例えより良い社会なんてものが出来たとしても、それなら結局、人間なんてみんな彼らの家畜でしかない。しかし、まーたちが望んでいる"理想社会"や"楽園"は、だからこそ通常の人間がイメージするような"何もしないでラクして生きれるところ"ではなく、"人間が努力によって困難を克服し、自己改革を進めてゆける場所"でなくてはならない。だからこそ、その自己改革とその人をその人たらしめる基盤となる"自我"や"記憶"に意図的に改竄を加えるなどということは決してしてはならないし、彼らにとって長年の親友であるアシュバにも"しない"というのが原則なんだ、と言う。そしてそれは、客観的に見れば人工の機械であるきみを、"長年の親友"と感じる人間の愛着とか愛情というもののゆえなんだよと教えるわけです。しかし、その愛情というものはデータが復活すればそれでいいというものでもなく、おれたちにとってはきみのデータと前のボディはワン・セットで"アシュバ"という存在そのものだったし、だからこそ、そのボディが失われたということは、きみそのものを失ったにも等しい打撃になっていたんだ、とも言う。

自分が自爆したことについてアシュバ当人、というか当車(?)には、"人間の安全を最優先する"という基本プログラムに基づいた当然の結論であり、自分のボディはいくらでも再生のきくものだから"問題はない"と言ってたんですが、それをアリがものすごく悲しんで、復活した自分に抱きつかんばかりの喜びようというのがちょっと理解できない。それで、"アリシア、何を泣いているんですか"とか不思議そうに聞くわけ。それで、まーが笑って上で書いたように説明してやるんですけど、そのへんを理解できるようでないと、まーがアシュバに求めている"人間の友としての機械"というプログラムの完成にはおぼつかないということなんでしょう。まあ、リクツはそういうことなんですが、まーもロマンティストですからね。何より、長年の親友であるアシュバが復活したことそのものが、彼にとっても手放しで嬉しいことだったのは確かです。復活させるにあたって、ボディ再生にそこまでしなくてもとゆーくらい最先端技術を投入しまくり、天文学的なお金もかけまくってるんですが、まーにとってもこれは何がなんでもそのくらいしないとおさまらないとゆー気分のものだったってことです。

んで、言われたアシュバはちょっと無言でデータ整理をしているようだったんですが(ビジー状態)、しばらくして、

― "嬉しい"というのは、こういう感覚を言うのでしょうか"

人工知能天才児にも、さすがに人間についてはまだまだ学ばなければならないことがあるようです。

★マリオの結婚★

       

2010/10/19

★女のコの闘い★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。メインストーリーの小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

エヴァ : 「なによ! 年増! ブス! 大っキライ!!!」

双子: 「言ったわねっ、庶民のコのくせにナマイキよっ」(←ステレオ放送状態) 

前回の更新で、ダドリーさんちの美少女双子とエヴァが出会ったら? という話をしてましたが、まあたぶん、最初はこうなるでしょうね。なんでこんなことになるかとゆーと、それはデュアンが原因だと思う。

なにしろ、美形大好きの双子にとって、いくらアコガレの対象とは言ってもディはあまりに年上すぎる。そこへ持ってきて、お手ごろ同年代の、しかもディの子供の頃にそっくりとゆー評判も高い美少年が現れてごらんなさい。それはもうすぐさま"ゲットしなくちゃ!" となるのは目に見えています。しかし、ご存知のようにエヴァはデュアンに恋していて、しかも長年の幼なじみ。双子が強力なライバルと看做しても仕方はないでしょう。それに、エヴァちゃんも美少女ですから、自分たちが可愛いことに自信満々の双子にとっては"気に食わないわ"ともなるというもの。

そんなわけで、例えば休暇をモルガーナ家の古城で過ごすなんてイベントがあって、デュアンはエヴァやデイヴなどの友達を、ファーンは従兄弟たちを一緒に連れてくるなんてこともありそう。そんな時、こういう対決が密かに水面下で持ち上がっても、なんの不思議もないですね。

エヴァが"年増!"とか言ってるのは双子がひとつ年上だからで、双子はキツいことを言われたから"庶民のコ"とか言ってますけど、基本的にクロフォード家のお嬢さまたちだから、本気で身分差別意識があるわけではない。それが証拠に、デュアンが半分"庶民のコ"ということについてはまるっきり気にしてないし、同じように庶民のコであるデュアンの友達たちにはちゃんと普通に対応している。それなのに、どーゆーわけかエヴァに対してだけは風当たりがキツいもんだから、たまりかねたエヴァちゃんがバクハツして冒頭のような発言になったと、まあ、そんな風景を想像して下さい。

でも、デュアンの前では三人とも"可愛い女の子"でいたいのは同じなので、これは彼が回りにいない時の騒動だと思いますが...。しかし結局、三人とも失恋する運命なんですけどね。この三人が最終的に意気投合するとしたら、そのへんが要因かも。つまり、おんなじよーにフラれた者どうしの連帯感で仲良くなっちゃうというか、それまでツノつきあってただけに、返ってお互いのことも知るようになってるでしょうし。

さて、デュアンがダメならと、エヴァをファーンと取り合わせてみますと、この二人は恋愛になりそうでいて、そうはならずにわりと先行き"いい友達"で行くような気がする。エヴァは大人になってもずっとデュアンが好きなわけだしね。将来は、彼女がIGDに入ることもあって、ビジネスシーンでもよく顔を合わせることになるんじゃないかな。んで、その頃になると、デュアンは当然ディひとすじで行ってるとして、ファーンは"ディの後継者"とか言われるほどヨーロッパ中に鳴り響くプレイボーイになりそうな気配が...。息子がああなんだから、ディはそろそろヨーロッパ一のプレイボーイの座を息子に譲って引退か? とか言われたりして。

ファーンとデュアンが初対面の時、初めて二人きりで話すシーンがあったでしょう? あの時、ファーンが"女の子が身近にいるっていいよね"みたいなことを言ってて、自分が寄宿学校暮らしなのを嘆いてましたが、そのへん書いてて、もしかしてコイツ、女の子がすごく好きかも? という気はしてたんだ。すると、その後、ディやウィリアムじーちゃんの生き方にアコガレを感じてるみたいな発言もしてるし、ディの生き方に寛大だし、女の子に優しそうだし、美形だし、おそらく18歳くらいでロベールさんの後継いで若き伯爵さまってことになってるだろうから、女性の方で放っておかないだろうし。

そういう状態のファーンに、前にも書いたようにバークレイ博士の実子である天才少女リデルが恋しちゃうんですが、五つくらい離れてるので子供の頃に出会った当初から、ファーンにとっては妹みたいに思えていて、可愛がってはいるんですけど、なにしろひっきりなしに寄ってくる女の子と遊んでる都合上リデルまで目がゆかない。一方、このリデルというコは物凄く意地っ張りなので、"そのへんの女の子みたいに"軽々しく告白なんてできるもんですか、というわけね。でも、とにかくファーンのことが好きで、いつか必ずゲットしてやるわ、みたいな? このコも当然、基本、美少女ですけど、天才の常で性格は相当に厄介。まあ、デュアンのみならず、ファーンの周辺でも女のコたちの激烈な争奪戦が繰り広げられそうであるというお話です。

三人兄弟のうちで一番静かに過ごすのはやっぱりメリルでしょう。このコは今既に"画聖"みたいなところがあるから、なんだかんだでエヴァのことは可愛いなと思い続けてるんですけど、彼女が弟を好きなこともひょんなことから知るところとなっているので、積極的にどうこうするつもりもない。そうするうちに徐々に画壇で認められて、ディとは関係ないところで"メリル・スティーヴンス"として有名になってくと思います。彼がエヴァに対して何らかの行動を起こすとすると、おそらく三十も近くなってからじゃないかな。実はその頃に、ディが十七で取った賞をディに次ぐ最年少で受賞することになるから、それをキッカケにメリルは自分がディの息子であると公表し、人生のけじめをつけて、やはりこの女性ならと思える伴侶も迎えようと決心する、というところ。エヴァがどういう答えを返すかは、未だ作者にもナゾですけどね。

★自爆★

       

2010/10/6 + 10/9

★クロフォード家の事情★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。メインストーリーの小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

総勢17人という大家族のクロフォード家ですが、お話の中ではとても全員について説明しきれないので、ココでちょっと整理してご紹介しておくことにいたしましょう。

まず、ご存知のように筆頭はウィリアムじーちゃん95歳。しかし、彼は既に引退してご隠居さんなので、その息子であるクロフォード公爵が実質的な現当主。奥さんも健在で、ご夫妻ともに六十代ってとこでしょう。このお二人の子供が三人。長男リチャード(ウィルのお父さん)、次男ダドリーと、ファーンのお母さんである長女のアナベル。

リチャードさん夫妻には子供が5人いて、ウィル(15)を筆頭に、長女イーヴリン(14)、次男アンソニー(12)、三男アンドルー(10)、次女リュシー(8)、ダドリーさん夫妻には双子の娘ユージェニー、ロゼッタ(ともに11)、長男ショーン(5)がいて、いずれも()内はファーンが十歳当時のそれぞれの年齢です。

ファーンは、こういう家族に囲まれて育ったわけですが、まず彼の二人の叔父さん。リチャードの方はウィルのお父さんだけあって優しくて温厚な紳士で、そろそろ隠居したいとか言ってる父の代わりに経済人としてビジネス方面で活躍している。その弟であるダドリーは、今でこそ人気のある政治家として辣腕をふるってますが、子供の頃はデキのいい兄貴にけっこうコンプレックス持ってたらしい。兄さんのことは大好きなんだけど、その兄ってのがまた性格ウィルそのものというか、責任感強くて、真面目で、人望があってとゆー、弟としてはちょっと太刀打ちできないぞな存在だったわけね。逆にダドリーの方は、どっちかってゆーと細かいことを考えるよか身体動かしてる方が得意というタイプ。しかし、兄に憧れるあまり、子供の頃は優等生しようと頑張って、でもついついボロが出ちゃって自己嫌悪、みたいな? そんな子供時代〜青春時代を経るうちに、兄のようになろうとするのが間違ってるんだと気づき、そのへんからやっと我が道を見出して現在に至ってるようです。

二人ともウィリアムじーちゃんゆずりのなかなかいい男なんですが、しっかりした奥さんがついてることと、じーちゃんがプレイボーイで妻を生涯泣かせ続けたことをずっとネに持ってた父に育てられたせいか、女性に対しては誠実で、少なくとも表立ってスキャンダルを引き起こしたことはない。

一方、アンナは本編でも書いてたように伝説的な美少女で気立ても良かったので、兄二人からも両親や祖父母からも可愛がられて育ったお姫さまで、十六歳で結婚したけど数年で死に別れ、その後は長く未亡人やってた。でも、ファーンが生まれることになってから実家へ出戻り、自分の子供を育てるついでに、両親が忙しい甥や姪たちの母親代わりもしてやってたんだね。だから、ファーンの従兄弟たちはみな、アンナにとってもなついてます。

では、その子供たちの方ですが、ウィルはかなりのんびりした性格で、成績優秀ながら可能ならばビジネスより学問の方へ進みたいと思ってる学者肌の子だということはご存知かと思います。イヴと呼ばれている彼の一つ下の妹も女の子版ウィルというか、外見的には"たおやかな美少女"とか、"深窓のご令嬢"という風情だけど、性格的には強くてなかなかのしっかり者。良家のお嬢様だからと言って偉ぶったりしゃしゃり出るようなことは全くないが、ココ一番というところでは言うことは言うタイプなので、回りからは一目置かれている感じかな。もちろん、成績はきわめて優秀。

次男のアンソニー、彼はわりと無難に優等生というか、ウィルと較べても遥かに物静かで穏やかだから、積極的にリーダーシップを発揮するという子ではないが、誠実で信頼の置ける性質なので誰からも好かれている。アタマはとても良いので、実力のあるリーダーの下で参謀として活躍するタイプでしょう。ウィルがファーンと跡取り問題のことで話していた時に、"弟たちもいてくれるから、なんとかやっていけるかなあ"みたいなことを言っていたのは、主にこのアンソニーがいるからだと思う。本人も兄であるウィルのことは尊敬していて、両親や祖父母もウィルの下でアンソニーが力を貸してくれれば、将来もクロフォード家は安泰だと思ってるような関係です。

次は三男のアンドルー、実はこれがリチャード一家の問題児というか、リチャードさんの息子と言うよりは、ダドリーの息子と言った方がいいような暴れん坊で、コイツが子供の頃は主にファーンとぶつかってたというヤツね。ただ、このコの場合、"三男"という立場が問題行動の原因になっていたというところはある。こういう家に長男として生まれると"ああ、男の子だ! 跡継ぎだ!"と言われて親族全員からもてはやされるものだが、次男が出来て更に三男ともなると回りも"男の子"ということに慣れてきちゃって、"またか"というか、"まあ、良かったんじゃないの?"というか、"数のうち"みたいな扱いを受けてしまうことになるのは仕方がない話。リチャードさんの子供としては4人目だしね。そこへ持ってきて、同時期に生まれたファーンは、なにしろ一族のお姫さま的存在のアンナが初めて産んだ一人息子なんだから、祖父母のみならず、自分の両親までわーっっっとなって喜んでチヤホヤしてる。この差はなに? ってことで、やっぱり本人に取っては、ちょっとつっかかってやりたいよーな気にもなるよね。

しかし、基本的にはリチャードさんの息子だし、あのウィルの弟だし、決して悪い子ではないことを一番よく見抜いてくれてたのがウィリアムじーちゃんだったんだな。だから密かにそのへんの不満も聞いてやり、いろいろアドヴァイスもしてやってたらしい。そういう意味でウィリアムじーちゃんは、家族の感情的な交通整理役だったとも言えるかもしれません。それもあって、今ではアンドルーとも仲良くやれるようになったとファーンが言ってたわけですが、後にはその行動的で活発な性質がウィルの助けになるっていうか、この三人がちょうどいいバランスでクロフォード家を盛り立ててゆくことになるでしょう。

次女のリュシーについては私もまだはっきりとは見えて来てなくて、個性がはっきりしてくるにはまだ少し幼いのかなという感じがするし、まあ、末っ子だから、個性豊かな兄や姉に押されて今はおとなしくしてるしかないという状況なのかもしれません。もう少し経ったら、それなり動き出すかもしれませんけどね。

で、今度はダドリー一家の方ですが、双子の娘のユージェニーとロゼッタ、これが"けたたましい"タイプだというのは本編でも書きました。美形の家系ですからもちろん可愛いのは可愛いんですけど、十歳前後の活発な女の子の典型で、しかも双子だから家族の中ではダブルパワーで存在感を発揮してます。この子たちが、例えばエヴァと知り合ったりしたらどんなことになるんだ? というか、いや、実際そのうちホントにそうなるんですけど、けっこう見モノの対決になるか、意気投合して仲良しになるか。ただ意気投合するにしても、その過程は凄そうですけどね。それに実は、この世代にはゆくゆく登場してくるはずの女の子がもう一人いて、それは、まーの育ての親であるマリオ・バークレー博士の実子であるリデル。この子はエヴァたちよりいくつか年下なんですけど、超天才児で性格もめちゃくちゃ厄介。そんな女の子がこの双子やエヴァと絡むなんて、考えただけでも恐いことになりそうです。しかも、リデルは先行きファーンに恋しちゃうので、そのへんまとまるまでにはかなり紆余曲折があると思います。女の子もこれだけ個性豊かなのが集まってくると、壮絶な話が出来そうで作者としては楽しみなんですけどね。

そして最後は、末っ子も末っ子、一族全体の"みそっかす"的存在のショーン。この子も今は影が薄い。なにしろ、けたたましいのがウリの美少女姉妹の後に、それも6つも年下で生まれた末っ子って、なんかそれだけで悲哀を感じると思いませんか? とにかくダドリーの息子とは信じられないくらいおとなしくて、しかも泣き虫。まあ、すさまじい姉が二人もいて、その上6つも離れてるとなれば、本人の元々の性格がどうあれ今はまだ太刀打ちできなくて小さくなってるしかないんでしょう。でも、ファーンやウィル、それにイヴはとても可愛がっていて、姉たちに"グズねえ"とか"ホントに男の子なの?"とかイジメられると、逃げ込む先は彼らやアンナのところと相場が決まっている。でも、ここまで悲惨な生まれつきだと、返って大器晩成という可能性もアリ。

とゆーことで、最初は"ファーンが生まれ育った家"というだけの存在だったクロフォード家なんですが、これだけはっきり家の中が見えてくると、そちらを舞台にいくらでも話が広がりそうです。特に、この女の子たちの闘いと友情というか、私の話では女の子がメインになるってことがこれまで殆ど無かったので、書くと面白そうだな。

ところで、私はTVシリーズはかなり好きなのに、映画は全くと言っていいほど見ないヒトなんですよね。それで最近ふと思ったんですが、映画ってせいぜい2時間の短い時間の中で起承転結やっちゃうから、ストーリー語るだけで精一杯で人物が十分描けてないという場合が多くて、そこが好みに合わないんだろうな。ただ、短い時間の中で人物まで描ききってある映画って少ないだろうけど、逆にそれは大変優れたものってことになるでしょう。翻ってTVシリーズだと1回の放送は映画より短いけど、少なくとも十話以上の連作になるから、そのぶん人物の描きこみが可能になって話に奥行きが広がる。そのせいで私の好みにピッタリ合うってことなんではないかと。これはどっちがいいってものでもなく、人それぞれ好き好きだと思いますが、少なくとも私はそういう好みを持ってるので、自分で小説書いてても好きな人物を追っかけてるうちに結果として長くなっちゃうんでしょうね。

ともあれ、クロフォード家の人々は、これからも本編にちょくちょく顔を出すと思いますので、なにとぞよしなに♪

★女のコの闘い★

      

2010/9/23-9/24

★理想のじーちゃん像★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。メインストーリーの小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

前回は、あやぼー理想の女性像について書きましたが、今回は"理想のじーちゃん像"について考えてみたいと思います。人間誰でも必ずトシを取る。これはもー、いくらアンチエイジング技術が普及しても避けられない現実であって、そうすると問題はどのようにトシを取るかとゆーことではないかと思うんですね。

私は"原点0定義"という概念を持ってまして、それは"人間はどのような生まれつきをしようと、生まれた時点の社会的価値は0である"という定義づけなんですけど、本来、これが"平等"という概念の基本でなければならないと思ってます。"平等"という概念は、封建意識の撤廃に役立つものではあるんですが、そもそも封建制の何がいかんかったかとゆーと、本人には何も責任のないこと、つまり親がどうとか、身分がどうとかで、その個人の努力に基づく発展が阻害されるという点が大きい。私に言わせればこれは"自我の圧殺"であって、そんな制度の中にいて人間の幸福が促進されるわけはないじゃないですか。そこで、"個人に由来しない事柄で差別はしない"という社会的取り決め、つまり"平等"という概念が"人間の幸福を促進する"という目的に適うと考えられるわけです。

しかし! 問題は昨今、この"平等"という概念を不当に拡大解釈している連中がいることで、彼らのリクツは"原点0"ではなく、人間の価値は"どんな生き方をしようと、ず〜っと死ぬまで100"なんだな。これは本人が気づいていようといまいと"人間だったらどういう生き方しても、この世で一番価値があるんだ"みたいな傲慢かつ不当な意識を基盤にしていて、結果として短絡に"人間の価値をず〜っと死ぬまで100"とするから"人間ひとりの生命は地球より重い"などとバカげたことがホザける(ついでに言えば、そんな根性で生きてるから環境問題なんか引き起こすんだ!)。他には、こんなのもあるな。"この世に必要ではない人間などいない"、これも典型的情緒的バカの発言だと思うけど、私に言わせれば、"この世に、最初から必要とされる人間などいない"だ、 バカ者!! 社会で必要とされている人はみな、自己の努力によってその位置を獲得したんだとゆー、明々白々なことすら理解せず、雰囲気と自己陶酔だけで発言するから"情緒的バカ"というのだ!!

"生まれた時に原点0"ということは、その後、どのような生き方をするかによって、その人の社会的価値はプラスにもマイナスにもなるということで、だから、その生き方の結果として、この世に必要じゃない人間なんてヤマほどいるし、ゴミも山ほどいるとゆー、それが現実というものじゃないですか? そして、その"現実"の蓄積が"歴史"なわけです。確かに歴史にも感動的な逸話なんてものはあるが、それは全体の中のごく一部でしかないのも事実。現実無視して、何を改善しようというのかね? 全く、バカは手に負えない。

先ほど、封建制は"自我を圧殺する"という点において"人間の幸福を促進しえない"ものだと書きましたが、これは基本的には社会、共産主義も同じ(ただし、これらは施行方法により機能する可能性はある)。突き詰めて言えば、全体主義に属する思想は概ね"自我を圧殺する"という点において、"人間の幸福を促進する"という哲学の根本命題に適わないと私は考えています。だから、個人主義に基づき"個人がその努力によって発展できる社会"であれば、リーズナブルかつ公平だと思うんですけど、どっか間違ってますかね、この考え方。

ともあれ、これでやっと当初予定のテーマに入れるわけですが、"理想のじーちゃん像"。それはやはり同時に"価値ある老人像"であるわけで、例を挙げればこれはもう、あやぼー的にはウィリアムじーちゃんとかロベールさんのような人たちですね。なれるもんならああなりたいと思うヒトは決して少なくないと思うんですけど、どんなもんでしょう?

"老人の現状は、その生き方の結果である"、これも私の持論ですけど、あのじーちゃんたちがああなのは、やっぱりきっちりするべき努力をして生きてきたことの当然の結果だと思う。お話では二人とも、元々が大富豪で貴族でって恵まれた生まれつきってことになってるけど、もしそうじゃなかったとしても彼らのような人なら"一代で財を築いた立志伝中の人物"になってたでしょう。だから結局人間、"精進努力"。

それに、いくら大金持ちだの貴族だのって身分に生まれついても、その器じゃなかったり、金に飼われるような性質しか持ってなかったら尊敬どころか蔑まれる老人になっちゃうだろうな。大きな資産だの身分だの持って生まれると、それを御するだけの人間的器が必要になるわけで(金目当てのバカも山ほど群がってくるし、心眼開いてないとやっとれんぞ)、それ無かったら、どんなに恵まれた立場に生まれても良い形で現状維持はできないしね。その器もないのに金だけ盛り上げれば尊敬されるとカン違いしてるような低レベルの成金どもは、その金のためにハイエナ呼び寄せてロクなことになってないって現実にだっていくらもある話でしょ? お金もナマモノなんだから、あんまりタメこみすぎると腐るのよ。そもそもが、金に群がるようなサル集めてチヤホヤされて嬉しいか? 連中がチヤホヤしてるのは、あんたじゃなくてカネなのよって、誰か教えてやってよ。

そんなわけで、逆に言えばそういうゴミを集めやすい身分に生まれついて、それでもウィリアムじーちゃんやロベールさんが情の深い家族に恵まれてるのは、それに値する努力をコツコツやってきたからだと思うな。ま、現実にも、そういう羨ましいご老人は実在するでしょう。そういう人たちは高いレベルで学問を修める(実質カラの学歴だけじゃ代用にもならん)ことにより社会で役立つ人間になるとか、自分の生き方そのものでもって子供たちに範を垂れるとか、客観的見地に立ってやっていいことと悪いことの躾をきっちりするとか、身分や経済力と関りなくデキの良い伴侶を迎えるとか、それにまず自分が他人さまのご厄介にならないで済む知力、財力を蓄え、余剰ができれば楽しく人助け(余力でやる楽しみなんだから"自己犠牲の精神"なんてカンケイないよね。そもそも自分を犠牲にして幸せな人間なんているか? 不幸も伝染するんだ。余力がないなら、まず自分が他人さまにご厄介かけないで済むところから始めてくれ、頼むから。自分のことも出来ないのに、他人に気を回して自己とーすいしてる場合じゃないでしょって!)

そういう生き方の積み重ねの上に、ウィリアムじーちゃんとかロベールさんみたいな人たちの"羨ましい老後"って成り立ってると思うわけね。ま、"幸福なヒトには、ワケがある"ってとこでしょうか。何事も、やっぱり結果にはそこに至る過程があるわけで、そう言えばこれまたバカのよくやることのひとつに"過程を無視する"というのがある。妬みの激しいヤツってたいていこのテのバカで、そういう連中は"恵まれた人がそこに至るまでどんなに努力してきたか"をまるっきり考えないから、いい状態にいる人を見ると、大したことはやってきてない自分のことはタナに上げて妬むのよ。羨ましい状況に対する人間として正常な反応は、"ああなりたいから自分も努力しよう"なんだ。うちのお客さんには、努力もせずに妬みばっかり振り回すバカなんていないと思うけど(そんなのは入れないないように結界張ってあるもん)、そういうのは先天性、後天性問わずビョーキだから、さっさと治療してもらわないと困るよね。迷惑だもんね?

で、まあコトのついでにちょっとキツい話になりますが、昨今、何が情けないと言って日本の老人世代。もちろん以下は一般論であって、きっちりやることやって生きてきた尊敬すべきご老人も例外的にいらっしゃることは踏まえた上で言わせてもらいますけど、一般に、日本史上で彼らほど甘えた世代もおそらく他にはないだろうと思うのね。まず、現代の60代前後って「戦争体験者ですらない」という事実を忘れないで欲しい。つまり彼らは、その前世代のように、どん底状態を殆ど経験してないってことで、これは人格形成上、人間的な幅や大きさに影響する。そう書くと、彼らの育てたコドモ世代が校内暴力、家庭内暴力、ついでに若年層の非行など、ロクな問題起こしてない原因もおぼろげに見えて来ませんか? つまり、彼らの多くには子供をマトモに育てられるだけの人間的な器が無かったのよ。実際、高度成長期に"今どきの若いもんは"と言われ始めたハシリのような世代でもあったわけだし。

では、以下にその罪状を記す。

・"高度成長期"という日本にとっての未曾有の歴史的好機を一代で食い潰した世代である

・ジジババはうっとおしいからと言って核家族化を進めた世代である

自分のミエのために子供を有名大学にやろうとして受験戦争を激化させ、結果として教育の空洞化と破綻を招いた世代である

まさにこれらの張本人世代だって忘れてもらっちゃ困る。これだけやっといて、次世代にボロボロの状況しか引き渡せなかった老人を、いったいどーやって尊敬しろとゆーんだ、どーやって!! "親の面倒を見なければならなくなるので長男と結婚するのは不利"だとか、コドモに向かっては"大学に入ったら遊んでもいいから"だとか、こういうセリフを一度でも吐いたことのあるヤツは全員極刑!! なぜならば、こういう根性が日本の現状を招いた大きな要因の一部になってるからよ。

まあ、だからね、年金が減額されようが、老人福祉が行き届かなかろうが、少なくともロクな生き方して来なかった老人には文句言う資格ないと思うんだけど、そもそも誰が今の日本をこんなふうにしたんだ、誰が!!! んで、結局てめーで育てたデキの悪いコドモがアテにならないからって、今度は国にタカろうってかい? いい加減甘えるのヤメなさいよねって思いませんか? 第一、"老人を尊敬しない社会"を作ったのは、あんたたちなんだよって誰か言ってやって!! そして、あんたたちの育てたバカなガキが、"大学入ったら勉強しな"かったために、どれだけ多くの一流企業が傾いたと思ってんの? いや、もうこれはね、風潮に流されず、それなりきっちり生きてきた、モノの分かったご老人ならば、おそらくご自身でこそおっしゃりたいことだと思う。

そういう、前世代に破綻させられた日本社会の負債を、ぜっんぶおっかぶされてなんとかしてかなきゃならないのは若い人たちなんだから、せめてごめーわくにならないように小さくなってて欲しいというのは、マトモな若モノの語られざる本音ってヤツじゃないですかね。しかし、はっきり言わない限り、こんな明々白々なことでさえ甘えた根性のヤツらほど自覚せんのだよ。全く、困ったもんだ。

賢明な我々としてはせめてこの前世代の轍を踏まず、いずれトシを取った時に自分が生きやすくなるように現在を積み重ねてゆくしかないでしょうね。遊ぶのもいいけど、老後考えたらやっぱりそれなりの経済力は必要だし(別にそんな大金持ちになる必要ないけどさ)、そもそもトシ取ってコドモに経済的におぶさるというのはコドモが可哀想だと思いませんか? 老人が無能だと負担は後へ後へ先送りされてしまう。しかし、老人が有能なら後の世代に負担をかけずに済むんです。若いうちから準備するほど先に行くにつれてラクになるもんだし、尊敬される老人とは、"若い人たちより経験を積み、多くのことを知り、様々な意味で力を蓄えて助言を与えられるような人"のことで、それも出来ないでトシだけ取って"お年寄り"に成り上がれるわけないでしょう? 

そこんとこ、もーちょっとよく考えなきゃいかんのじゃないかと思うんですけど、だから結局、私にとっての理想的な老人像ってさっき書いたように"経験を積み、多くのことを知り、力を蓄えてワカモノに助言を与えられる人"ってことなんだろうな。それってまさに、ウィリアムじーちゃん&ロベールさんみたいなヒトだと思うけどね。ああいう老人だったら、私は尊敬する。

★クロフォード家の事情★

       

2010/9/15-9/16

★マイラ★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。メインストーリーの小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

夏の間、昼間は暑くてアタマがヒマだったんで大昔に買った文庫本を漁ってボケボケ読んでたりしました。中でも某作家の作品を何冊か読み返してみたんですけど、基本的には本買うくらいだから好きな作家さんだったのに、当時から何か違和感を感じるところがあったんですね。で、今回読み返してみて、やっとそれが何か分かってきた気がする。それは、この方の書く"女性像"がことのほか気に入らない、と言うよりもっと積極的に私が大キライなタイプの女だったんだなってこと。

この作家さん自体はとてもシャープな感覚を持ってらして視野も広い方なんですけど、それが一旦女性を描くと、特に"とてもいい女"として描かれる女性像が、私にとっては"つまらん女"にしか見えないとゆー、だからこの人のアメリカを描写したようなストレートなエッセイは好きなんだけど、特に売れ出してからの小説は好きになれなかったんだろうと改めてよく分かった気がした。

で、それはどんな女かというと、一見"有能そう"に見えはするんだけど、その有能さはせいぜい行ってそれなりの有名企業の中間管理職止まりだろうとゆー、そして、こういう女がまかりまちがってそれ以上の地位についてしまうと、能力超えてしまうので余裕なくなって、眉間にタテじわ寄せて、ヒステリックになって、最後はロクな結果を招かんだろーとゆーよーな、その程度の女を"有能でいい女"として描くから私としては、ウンザリ、になっちゃったらしい。まあね、自分よか有能な女を好きな男も少ないと思うから、要するにこれがこの作家さんの許容限界ってことだったんでしょう。それでもこの時代には、それくらいの女性が分不相応なまでのプライドを持つとこまでバカじゃなかったからまだ許せた。しかし、これが現代にまで下ってくると、"その程度"ということに自分で気づかず、自意識肥大化して結果的に"レディコミの主人公"みたいな薄っぺらいものになってしまうだろう、と思われる種類の女ね。上には上がいるということをまるっきり理解しないどころか、意識することすら出来ないので自分が相当なもんだとカン違いしてるよーなバカ女。私は大キライなのよ、そーゆーの。

それでは、私が"有能な女性"を描くとすればどーなるかとゆーと、既にお見せしたようにそれはマイラとかカトリーヌみたいになるわけ。"Dialogue"の加納綾、あれは、まーやアリと同類の"人外"だから女の域に入れてはいけません。一般に"女性"という範疇で納得しうる限界を超えてますからね、綾は。しかし、マイラやカトリーヌ、それにアンナみたいな女性は、まだ人間の範疇にあると少なくとも私は信じているので、あれが私の"有能でいい女"像だと言えるでしょう。まず、他人にマネの出来ない個性とそれに基づく才能、人の上に立ってもやってゆける人間的余裕や確固たる信念、つまりは人間的な大きさよね。そーゆーものが前述の作家さんの描く女性像には一切、欠落していて、私としては結局"なんだ、こんな女"みたいになっちゃって、彼が一生懸命"いい女"として描写しているのがいっそ滑稽に思えちゃったんだろうな。ちなみに、キツいこと言ってますが、自分自身に関しては思いっきりタナに放り上げてますので悪しからず。ま、小説なんてものは、作者の希望とかユメとか、一方的で勝手な理想とかで成り立ってるもんですからね、ふつー。

さて、今回はその"あやぼー版いい女"の中でもマイラについて、お話したいと思います。以前も書いてたように息子のメリルに輪をかけて分かりにくいキャラだったんですが、上で書いたようなことを考えているうちに、そういう"低レベルのいい女像"ともいうべきものに徹底的に対抗してやりたくなってきてしまったのだ♪ で、これを描くにはマイラとディが出会って、どういう経緯でメリルが生まれることになったのかとゆー"発端"という話が良さそうだと思い、更に、ディの視点からじゃなくてマイラの方に視点を置いて書くと面白いかもしれないという気もしてきた。"発端"は、私にしてはわりとマトモなラヴ・ストーリーになりそうな要素だけは揃ってるしね(何を言うにも、とりあえず二人の性別がマトモだ! )。当初予定ではEpisode3になるはずだったんですが、今書いてる"告白"の後にどうしても"秘密"を入れたくなったので、今の感じではEpisode4になるんじゃないかな。

ではまず、マイラの亡くなったお父さんですが、彼がそもそもブックエージェントだったんです。この"ブックエージェント"という仕事、これは日本にないものなのでご存知ない方のために説明しておきましょう。辞書引くと"本を売り歩く人"とか書かれていることもあって、お〜い、大丈夫か〜ってくらいハズレてるんですけど、少なくとも現代のアメリカなどでは芸能人が所属するプロダクションの作家版というか、つまり作家の作品を出版社に売り込むプロダクション的なものと認識すると分かりやすいかと思います。

そういう仕事なので、マイラのお父さんは現代のクランドルで大作家と認められてる人を何人も発掘して世に出した人でもあったわけね。だから、もともと出版界に広い人脈を持っていて、マイラは日常的に著名な作家とか詩人とかと交流があるという環境で育ちました。アレクが言ってましたけど、現在では一般に"鉄の才媛"なんて呼ばれたりしてるくらいだから極め付きの才女。ずっと幼い頃から小説とかも書いてたし、それに父親の仕事にも興味があって、高校から大学に入るあたりで既に自費出版で雑誌とかも作ってた。そこへ集まってくる友達の作品を、父親のようにベストセラー作家を出すというわけにはいかないけど小さな出版社に売り込んだり、自分もあちこちで雑文を書かせてもらったりとかして、将来の足がかりを少しづつ築いてたんだね。お父さんの方は多少親バカもあったかもしれないけど娘の才能はけっこう認めていて、でもマイラが"売り込んでくれ"みたいなことは一切言わずに、自分は自分でというスタンスでやっているのを楽しく眺めているという感じだったらしい。

こう書くと少しは見えてくるかと思いますが、こういう種類の才女はやっぱりめったな男には惚れないよね。堅いと言うよりも、周りの男がバカにしか見えないタイプだから。それに、まだ十代半ばの頃に、かなり年の離れた、たぶん三十くらいは年上の作家と密かにつきあってたことがあったりするので、元々の性質に加えて、そのレベル以上の才人でないと男とは思えないとゆーとこもあったと思う。

で、そうこうするうちに大学時代にお父さんが亡くなって、彼が抱えていた仕事を放り出すわけにはゆかないこともあって、スライド式に彼女が父の地盤を受け継いだ形で活動することになります。ディと出会うのは二十代半ばに差し掛かる頃のことで、大学は卒業し、仕事もそれなりうまくいってるという状況でしょう。ディの存在はもちろん知ってたけど、実際に会うまで"才能はあるけど女に節操のない危ないやつ"とか思ってたので、それほど個人的に興味を持ってたわけではなかったようです。でも、実際に会ってみてちょっと話をすると、ディがそんな軽いやつではないということは簡単に分かるので興味持っちゃって、な〜んとなく、また会いたいな〜みたいな? ま、ディですからね、相手は。

これはいずれ本編で出てくると思いますけど(何年先か分からんが...)、マイラがディと出会うのはレイ・ロクスター侯爵夫人のサロンでのことです。新進の作家であり、そればかりではなく既にそれなりの若い人気作家を何人も世に出してるブック・エージェントでもあるマイラが、その人脈繋がりで芸術のパトロンを気取っているレイと顔見知りだったとしても少しも不思議じゃない。ディはディでまだ三十そこそこだったし、なんだかんだ言っても母の親友だった(しかも、一時は自分の愛人だった)レイには弱いので、たまには遊びに来なさいよとか言われるとヒマなら顔を出すくらいはしてやってたんだな。

その時は他にも何人も人がいたし、ただ、思ってたよりディが遥かに紳士で才人だということを知って認識を改めたマイラは、後になっても"あんな素敵な人だとは思ってなかったなあ"とぼーっと思い出したりとかして、それが自分でも珍しいことなので、あら? 私なんかヘン?、みたいな? 要するに、これは恋ですね、恋。で、一目惚れだったわけです。しかし、基本的に"男なんてつまらん"と日常思ってる彼女のことなんで、自分がディに恋してしまっているとはかなり後になるまで自覚がない。でも、そんなある日。

道路の石畳にマイラがクツのかかとを引っ掛けて折っちゃって困ってるとこへ、たまたまディのマセラーティが通りかかる。おや? あれは先日、レイのところで会ったお嬢さんじゃないかな? と気づいたディは、何やらお困りのご様子なのでクルマを路肩に寄せて、どうしました? と声をかけてみる。ディは基本的に女性に優しいので、顔見知りがお困りの様子なのに知らん顔できないというだけの理由だったんですけど、だからこれは純粋な厚意だったわけね。そもそも彼はちっとも女性に不自由していないから、いちいちひっかけて回る必要もないんだし。で、マイラは思いがけずディと再開できたことに内心すごく嬉しい気持ちになるんですけど、それでもまだ、それがディが好きだからだとは自覚してない。とりあえず"クツのかかとが折れちゃって"みたいなことで、それ聞いたディは、じゃ、近くに知ってるクツ屋があるからそこまでお送りしましょう、ということになる。

しかし、女性を店の前まで連れてってそこで放り出すというよーな、無責任なことを紳士な伯爵さまがするわけはないのであって(男性諸君は、後学のためによく覚えておきたまえよ)、店の中までエスコートしてくれて、クツ選びにもつきあってくれて、お店の人とも顔見知りだから、じゃ、壊れたかかとは修理して届けてあげてね、というところまで手配してくれて、更には通り道だからとマイラの部屋まで送ってくれて、んでもってマセラーティで颯爽と去ってゆく。ああ、なんて♪なんて素敵な王子さまなの〜、と、まだ若いお嬢さんのマイラが舞い上がっちゃっても仕方がない状況だな、これは。ディにしてみれば大したことじゃなかったんだが...。ちなみに、彼女は当時はまだ市内のアパートに住んでた。ただし、ここで言う"アパート"とは、日本式に言えば"高級マンション"のことなのでそれなりオシャレな住まいだけどね。

そういうわけで、その時はそれで済んだんですけど、マイラにしてみれば、もう一回会いたいな、でも、相手は伯爵家の当主で大画家で、今の自分がそう簡単に近寄れる人物でもないのよね、と、どうしよう、どうしよう状態。それでもまだ、それがディを好きになってるからとは自覚がない。ないもんだから返って、"お礼に行くくらいは"とかこつけて、ついついモルガーナ邸まで押しかけて行っちゃう。せめてもう一回だけ会いたというのが自分でも気づかざる本音なんですけど、この行動がそもそもマイラとしては"らしく"ないわけね。確かにお礼するべき状況ではあるんですけど、だからと言って相手が相手だけにいきなりおしかけてゆくというのは返って失礼、もしくは迷惑? くらいの気は本当なら回る女性ですから。しかし、こういうふつーの女の子がやるような、しかも他の場合なら自分は絶対しないと誓えるようなことをやってると後で気づいて、そのあたりから、もーしかしてこれは恋? とか自覚が芽生えてくるのであった。

一方、ディの方は彼女に訪ねて来られて、ああ、あの時のこと? そんなの気にしなくていいのに、とか言いながら、マイラの様子見てて、まあ、こっちは飽きるほど自分に恋しちゃった女性なんて見てますからね。決して自意識過剰ではなく見飽きるほど見てるから、あ、これは惚れられちゃったかな? と分かっちゃう。どっちかってゆーと、マイラ自身よかディの方が気づくの早かったかもしれない。ディとしては、なかなかアタマも良さそうな美人とくれば基本的に好意はあるわけで、相手も自分が好きそうだって、それ分かって断るようじゃプレイボーイやってないよね。レイからは、"男嫌いというんではないらしいけど堅いのよ"とは聞いてたし、それで面白そうだなと思うもんだから、この辺りから意図的に、しかし軽い気持ちで"いただいちゃおうかな"みたいな? 

それでアポイントもなくいきなり訪ねて来られたことも気にせず鷹揚に受け流し、じゃ、またね、と機嫌よく送り出して、その後かなり経ってから、つまり、不自然には思われないくらい時間が過ぎて、ディが自分を狙っているなどとはユメにも気づかれないくらい経ってから(その間は他の女の子と遊んでた)、実は友人がリサイタルを開くことになったんですけど、先日好きだと言ってらしたのでご一緒できないかと思って、とさりげなく声をかける。マイラの方は私のことなんてもう忘れられてるわよね、いいユメみたなと殆ど諦めてたのに思いがけなく彼からのお誘い、しかも、まさかのことにディのような人物が自分にキョーミ持ってるとは思わないから純粋な厚意と考え、でも内心はまた会えると喜んじゃって警戒もせずご一緒しちゃうと。

ま、このへんはよくあるパターンですけど、マイラが若いながらも自分の信念や哲学を持ってて、そのあたりによくいるタダの才女程度のものではないから、この先の二人の関係がディの思ってた以上に深いものになってくとゆーか、その結果が要するにメリルなわけだ。でも、ディがマイラにも思想的に関与するので、後に彼女が興す出版社Web Art Instituteも二人の関係が生み出した産物だとも言えるでしょう。ディは、まーやアリの成長にもずいぶん影響を与えましたが、マイラもそれと同様の影響をディから受けるというか。天才と才媛が出会うと歴史が動く、くらいまでスケールでかくないと私は面白くないんだもん。だから、最初に書いたように"その程度"の低レベル女とそれと絡んでる程度の男では、そもそも歴史なんか動かんのだから、私としては小市民的でつまらんと思っちゃうってことだろうな。

で、この話のラストシーンですがもう決まってて、それはディがマイラと別れ、でもメリルが生まれることになるとはまだ知らない時期のことなんですけど、これがまたけっこう"やっぱりディっていい男"と思っちゃうようなエピソードなんだな。何がどうなってそこまでゆきつくのか、それは何年先か分かりませんがいずれ本編書くので、その時までお楽しみにとゆーことでヨロシク♪

★理想のじーちゃん像★

       

2010/8/31

★デュアンくんの好きなもの★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。メインストーリーの小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

今回はデュアンくんの好きなもの/ことについてお話したいと思います。作中でも書いてるので既にご存知かと思いますが、デュアンはパソコンフリークでぬいぐるみ大好き少年です。

まずこのパソコンフリークって部分ですが、これは"ネットの書き込みでディの住所を教えてもらった"という話がまずあって、作者としては最初にそれ書いた時にはデュアンがパソ好きと分かってたわけではなかったんです。後にロベールさんがデュアンに何をプレゼントしたかを書くのにパームトップって喜びそうだなと思い、そのへんからデュアンはたぶんコンピュータ好きそうだぞという話になってったんですね。で、後から思うと確かにこのコの性質だと、パソコンなんていかにも嬉々として使いこなしそうじゃないですか。メリルやファーンももちろんそれなり使うでしょうけど、ファーンは"道具"として使うという感じでマニアにまではならないように思うし、メリルは少なくともデジタル作画には絶対興味ないタイプだな。翻ってデュアンはデッサン力あるから普通に絵も描くけど、デジタルもけっこう積極的に使うと思う。

私は基本的にデジタル作画そのものを否定するつもりはないし、筆や絵の具を使うのと同様にパソを使ってオリジナルなスタイルを生み出す画家というのももちろんアリだと思うんですが、ただ、昨今のコミックなんかを見てると、表現者にとって大切な"オリジナルなスタイル"という要素が決定的に欠落していることが殆どで、結局それってデジタルを使いこなせてないというか、誰が描いても同じという"低いレベル"で終わってるって感じするんだよね。もーちょっと独自性の追求ってヤツをやってもいーんじゃない? っていうか、そういうことを考えようともしないところにつまらなさを感じてしまうわけ。一方、デュアンがデジタルを使うとしても、このコなら他の誰にも出来ないような独自の作風を出してくるだろうし、そしてそのオリジナリティは肉筆で描いても、更には油彩を描いても、必ず出てくる、というか本人が意識してなくても出てきてしまうデュアンらしさであり、私はそーゆーものを"才能"と呼ぶんだと思ってるわけ。

これは後編で出てくると思いますけど、ディがデュアンに"何で描くかじゃなく、何を描くかが大事なんだ"って言うシーンがあって、それはイラストだろうが油彩だろうが、更にはデジタルだろうが、その媒体を使って"何を"表現しているかが大切なんだってことですが、この"何を"っていうのはもちろんテーマ的なものもありますけど、絵である限りは視覚性のオリジナリティも含まれてて当然でしょうね。

話を元に戻しますが、"デュアンの好きなもの/こと"というなら"絵を描く"というのもそうには違いない。ただ、そこそこの雑誌に依頼されて描いて原稿料もらってるってことを考えれば、既にして"趣味"じゃなく"仕事"と言った方がいいかもしれません。ちなみにまだしばらく先になりますが、IGDがオーストラリアに複合的レクリエーション施設を開設する時に、それには大規模な遊園地も含まれていて、そのPRにデュアンの絵が使われることになる。それで十代半ばくらいの頃には一躍世界的に有名なイラストレーターってことになっちゃうんじゃないかな。

デュアンの絵を使うってことについての発案は、意外かもしれませんけどアリシアです。ただ、彼のことですから素直に推薦するってわけにはゆかず、"コドモ向けのPRなら、コドモに描かせるのが一番ウケるんじゃない?"とか、また屈折した言い方で言う。するとマーティアもデュアンの才能は認めてるので、なるほどと思って賛成するから、PR担当も納得してデュアンに任せるってことになる。で、それこれするうちに、以前書いたようにメリルへの対抗意識から油彩も始めるんですが、デュアンが油彩やってるってことについてはディと親しい画商や評論家なんかは知ってますけど、デュアンが"兄さんに負けないものを描けるようになるまでは"と言って公開したがらないから、かなり後になるまで彼が油彩もやるというのは一般に知られないままでゆくでしょう。

さて、デュアンのもうひとつの好きなものである"ぬいぐるみ"。これはもう作者のシュミが出ていると言っても過言ではありませんな。でも、可愛い男の子に可愛いぬいぐるみ。すっごく似合うではないですか。デュアンくらい可愛かったら、お部屋がぬいぐるみで埋まってても微笑ましいなあって、結局これも私のシュミですけどね。そういえば、パタリロ! にタマネギっていますよね。そのうちの一人で44号っているんですけど、彼はすっごい美形でしかも強力な霊能者であるにも関らず、非番の時は部屋いっぱいのぬいぐるみと遊んでいるとゆー、私はこーゆー設定がすごく好きなんです。意外性だけじゃなく、二の線走ってても、三の線もしっくりくるというか、それって人間的な余裕ですよね。だから、デュアンもこの先、もっと年とってってもたぶん、ぬいぐるみは手放さないだろうなと思う。好きなものは好きなんだ! それが愛だ! これもきっとデュアンのポリシーだろうし。

で、そんなデュアンくんなので、うんと小さい頃にママに買ってもらった持ち古しのぬいぐるみを一番可愛がってたりするのよね。最近は、ロベールさんにもらった新品うさポシェも可愛がってるけど、やっぱり一番最初のは古びてきても一番可愛いらしい。たぶんそれもウサぬいだな、きっと。

ともあれこの"ぬいぐるみが好き"というデュアンの性質は、モルガーナ家に移る前に彼が住んでたお部屋の雰囲気、更には彼の画風にも影響してくる根源的なものでしょう。生命力豊かで強くて明るい。楽しいもの、可愛いもの、キレイなものが大好き。そういう人間でないと描けない絵だから、例えば大きな遊園地のPRにもってこいってことになるんだし、また、この性質のおかげで実の父親と恋人関係してても陰湿な方向にはゆかなくて、結局最後にはディを手に入れてしまうんでしょう。そこへ行くまで紆余曲折は当然あるに決まってますけどね。

★マイラ★

       

2010/8/14

★モルガーナ家の事情★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。メインストーリーの小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

モルガーナ家はアーネストを筆頭とする超絶プロ集団でハウスキーピングされているわけですが、今回はその中で主に料理人のジェームズさんと、庭師のチャールズさんと、運転手兼クルマ管理係であるスチュアートさんのお話をしましょう。

ジェームズは作中でもロベールさんが言っていた通り、若い頃、モルガーナ家の先代に気に入られてヨーロッパに修行に出してもらい、帰ってからは店を持つよりモルガーナ家で働きたいという本人の希望でずっと厨房に居ついています。しかし、モルガーナ家の傘下にはホテルやレストラン・グループなどもあって、それにはホテル・ソレイユのボン・シャンスのような一流レストランも含まれている。そうすると、それらを監督する一流のシェフが必要になるわけで、もちろん外から雇ってもいいんだけど、ジェームズのような天才シェフが身内にいるならやってもらえばいいじゃないかという先代の意向で、あれこれ外の仕事もやらされていたんですね。

そういうプレスティージャスな施設を監督しているともなるとマスコミにも騒がれるし、本を出すなんて話も舞い込んでくるし、本人はどちらかというとそういう騒がしいコトはキライらしいんですが(料理を作っていればシアワセなタイプ)、モルガーナの先代はもともとその才能を認めて肩入れしていたんだから、それが世間に騒がれるなんてことになれば純粋に喜んじゃって、どんどんやれ状態で次から次へと外の仕事をさせたり、本を出させたりしてたようです。そのうちにクランドル料理界の重鎮なんてことになっちゃったんだな。

ちょっと話が飛びますが、ここで作中にも出てきたホテル・ソレイユについて少し説明させて頂きます。これはモルガーナ家傘下にあるホテルのひとつなんですけど、元はゆうに創業100年を超える歴史を持つもので、ただ、一時期その古めかしさが嫌われて近代的なホテルに押され、経営難に陥っていた。それを先代が傘下に入れ、建物の古さや重厚さを生かしてクラシック・モダンをテーマに全館を改装、 戦前は貴族や富豪向けの超一流ホテルとして君臨していただけに殆どがスイートという広い客室と、クラシックでありながらコンテンポラリーを取り入れたモダンな内装、加えて全てのレストランからカフェに至るまで最高の味を提供するというパーフェクトなスポットに生まれ変わらせました。ま、先代はそれだけ商才のある人物だったってことですね。

そういうわけで現在ではソレイユは世界一豪華で趣味の良いホテルとして全世界の上流階級御用達であるばかりではなく、クランドルの土地っ子にも日常的に愛され、"パレ・ド・ソレイユ(太陽宮)"の異名を取るほどになっている。中でもボン・シャンス(= Good Luck)は中庭である大庭園に独立しており、30〜40席ほどのスペースといくつかの個室しかないこじんまりしたレストランながら、これまたクランドル最高峰として半年先まで予約でいっぱいという大盛況を誇ってます。ちなみにここでは広大な庭園を利用した園遊会も開くことができる。

ジェームズは他にもいくつもあるこういう施設の飲食関係をめんどう見てますけど、一方、庭師のチャールズ・コーエン氏。こちらは何代か前からモルガーナ家の庭師を務めるという家系で、本人もその敷地内で育ち、代々めんどうを見てきたこの庭をこよなく愛している。それで自分も親の跡ついで地味に庭師をやってたんですが、こちらはとにかく庭いじりしてればシアワセというタイプで、まあ、だからこそ先代が気に入ってたんでしょうけど、従って植物や庭園についての大変広い知識を持っています。それで、モルガーナ家傘下のどこかの施設で造園家が必要、なんて事態が起ると先代はチャールズに任せて、これまたその才能が発揮されるのを見て楽しんでたんだね。そのうち、そういう施設ばかりではなく、あちこちでそれなりの邸宅を持つ人たちからも造園の相談に乗ってくれないかという話が舞い込むようになり、そうこうするうちにソレイユの庭園設計なんかも手がけて、今ではクランドル有数の造園家ってことになっちゃってる。しかし、こちらもジェームズ同様、有名になってウレシイというタイプではないので、モルガーナ家を去って外で成功してやろうなんてことはまるっきり考えてもいないらしい。二人とも芯のある頑固者ってゆーか、ま、結局そのへん筋金入りの"アーチスト"ってことなんでしょう。だから、ディとも相性いいのよね。

さて、今度はスチュアートさんですが、彼は元はモーター・ジャーナリストだったんです。それがなんで運転手になっちゃったのか。

この時代になるとクルマはだいたい燃料電池車とかになってると思うんですけど、彼は本来そういうのよりも古いクルマの方が好きで、ジャーナリストやりながら趣味的に自分でレストアやったりして楽しんでたんだな。で、たまたまモルガーナ家が7〜8年くらい前に運転手を募集した時、その仕事にはコレクション管理も含まれていると聞いて、世に名だたるモルガーナ家のコレクションを間近に見せてもらえるチャンスかもと、ひやかし半分で応募してみた。自分でも本気で運転手になるとは思ってなかったみたいなんですが、しかし、アーネストが言ってた通り 50台を超えるクラシック・カーやヴィンテージ・カーのコレクションを実際に見せられてすっかり魅了されてしまい、こいつらのめんどうを見て毎日を過ごせるなんて桃源郷だとぼーっとなってる間に、気がついたら転職が決まってしまっていたらしい。結局、このヒトもシュミに走ったとゆーか、クルマ好きが嵩じてこんなことにっ、というクチですね。ただ、ジャーナリストやってた時より、今の方がずっとお給料はいいそうですが。(←転職して当然だったかもしれない...)

ディから人事を任されてるアーネストさんは、コレクションを見せるためにスチュアートをガレージに連れてって、入ったとたんにそのあまりの素晴らしさに理性が飛んじゃった状態の彼の表情を見て採用を決めたそうです。要するにモルガーナ家は主を筆頭に、単なる"もの好き"集団が類友で集まっているだけと考えることが出来るかもしれません。ちなみに、これらの旧車コレクションの一部はよくあちこちの展覧会などに貸し出されたりもするので、それの移動や、常にコンディションを整えておくのもスチュアートさんの仕事です。

ところで、最近ちょっと思ったんですけど、世の中、ハイブリッドから電気自動車、更にはソーラーカーへと動いているようです。でも、電気自動車やソーラーカーは排気音がしませんよね。そうするとそれでカーレースやるとしても所謂ところのエグゾースト・ノートもないわけで、それってレースやってるって雰囲気するのかな。ガソリン車のあの耳をふさぐようなウルサイ音、あれのないレースって、果たして参加してる人たちは燃えられるんだろーか? 20世紀半ばを中心として伝説的な逸話を残すほどレースに夢中になってたカッコいいヒトたちって、あのエグゾースト・ノートがあったからこそあれほど純粋に夢中になっちゃったんじゃないだろうかと思ったりする。まあ、ソーラーカーとかのレースもそれはそれでやれば面白いんだろうし、それ独特の楽しみというのもあるんでしょうけど、やっぱり音が人間心理に及ぼす影響は大きいと思うので、私なんかは音のないレースってなんか淋しいなあという気もするんですけどね。

それはさておき、話をモルガーナ家の事情に戻しましょう。作中にも出てきた通り、アーネスト、アドリアン、マーサが家の中全般の管理を指揮していて、その下には25人前後が働いています。殆どメイドさんだけど男の人も数人いて、実は私、そのへんでちょっと困ってることがあるんです。女性なら"メイド"という言葉が一般化してるからそのまま使えばいいんですが、日本では大きなお屋敷で男性の使用人というと昔は書生さんとか下男とか呼ばれてて、男女問わなければ召使という言葉もありますけど、どれも"メイド"という語感とのバランスが取れない。しかし英語の"サーヴァント"は一般に召使と訳されているものの、これは"メイド"ほど日本語化していないのでこれまたバランスが取れなくて文中の据わりが悪い。まあ、日本では今ではもう、そんなにたくさん使用人使ってるような大きなお屋敷が一般的にないから、それを指す日本語が一般化してないのも当然なんですけど、女性の"メイド"に対してバランスのいい言葉がないんだよ。一番近いイメージで語感もキレイなのは"侍従"かなとも思うけど、それもちょっとなあ...。

ともかく、家の中はそういう感じで総勢30人近くの大部隊が管理してます。厨房はジェームズ配下なので独立テリトリーとなってまして料理人が3〜5人くらい常駐している。この人たちは家の中のことだけしてるわけじゃなく、ボン・シャンスや他のレストランに出すメニューを考案したり、指示を出したりというジェームズの外の仕事も手伝ってる。これに対してチャールズが管理している外回りは庭師4〜5人、馬丁1〜2人というところでしょうか。もちろん、この人数の庭師では管理しきれないくらい広い庭なので、特に忙しい時期には外から人を入れることもあります。あと、運転手はスチュアートだけではなく彼の下に2人いて、3人で運転手兼コレクション管理を担当。なにしろガソリン車、それも古いクルマはデリケートですから、50台もいるとお世話係もこのくらい必要になるのよね。

とゆーことで、モルガーナ家では日常40人〜50人近い人が働いているということになります。ディとしては、こんなに沢山の人間に囲まれて暮らすのは殆どめんどくさい状態なんですが、先代までの伝統をそのまま受継ぐことに人生かけてるアーネストがいることもあって、昔ながらの貴族の暮らし方をそのまま続けてるんだな。アーネストに任せとけば煩わしいことは全部やってくれるから、無理に変える必要もないし、それにこの人たちの中から、ソレイユのような高級ホテルなどにマネージャーとして出る人とかもいて、これは傘下のホテルやレストランなどのサーヴィスの質を高いレベルで維持するのに一役買っているという事情もあるから、人材を育てるという目的も果たしているわけね。

ま、今どきは貴族のお屋敷と言えども、そんなに閉塞的ではないということかもしれません。しかし、これはお話の世界というか、あくまでクランドルでのことで、実際にはこういうモルガーナ家ほどの規模のお屋敷はもう殆ど存在すらしてないんじゃないかな。どっかの王家とか、アラブの富豪とかならあるかもしれないけど...。

★デュアンくんの好きなもの★

       

2010/7/13

★ケンちゃん・その3★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。メインストーリーの小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

デュアンのボディガード兼家庭教師をすることになったケンちゃんの話ですが、覚えてらっしゃるでしょうか。お忘れの方は★その1★★その2★をご参照下さればと思います。

彼はもともといいうちの出なのに、父親と折り合いが悪くて家を出て傭兵なんて仕事をしてたわけですが、その主な原因が家つき娘のケンちゃんのお母さんが早くに亡くなってしまったこと。彼女が優しくてわりと気弱なのをいいことに婿養子の親父が妾かこったりして心労をかけたとか、彼女の死後、妾とその間に出来た子供を家に入れたとか、挙句の果てに、今度は自分の婚約を勝手に決めようとしたとか、息子としては様々なたまりかねる事情が重なって最後にはブチ切れちゃったんてすね。

で、今回は、その二号さんとの間に出来たケンちゃんの腹違いの弟と彼の関係についてです。実は、どーゆーわけか、この弟というのが、両親に似ずデキがいいらしい。

と言うのは、母と一緒に父のところに来て、腹違いの兄であるケンと一緒に住むようになった頃はまだ小さかったし(ケンより八つ下くらい)、そういう事情だから兄からも無条件に嫌われてるという状況で、とても気軽に"兄さん"なんて呼ばせてさえもらえなかった。しかも、殆ど寄宿学校から帰って来なくなった兄とは顔を合わせることそのものがあまりなく、ずっと疎遠なままに育ってたんだな。一方で父は忙しくてあまりかまってくれないし、母は兄を差し置いて自分に家を継がせようと画策してたりして好感が持てないし、背景事情もよく知ってるから、性格のいい子ならこれはけっこう心労のつのる状況ではないかと。

で、そんなだったから、ケンの心境はよく理解できるし、気持ち的には両親より兄の方へ寄って行ってて、できれば兄さんともっと仲良くなりたいなあとは思ってたんだね。でも、そうとは知らないケンの方は、たまに家に帰って来てもロクに口もきいてくれないような状態でずーーーーっと来てた。そう考えると可哀想だよね、この子も。

ところがある日。ケンが大学を卒業して軍に入るということになり、それを反対していた父親とは今度こそ完全に縁切り状態になるから、これまでにも増して兄の顔を見ることができなくなるだろう。そう思った弟(実はイメージだけで、まだ名前が分からない)は、ケンが荷物の整理に帰って来ていて、さてこれでココともおさらばだ、縁切りだ、二度と帰ってくるもんか、と誓って出てゆこうとしたその時に、意を決して"ちょっとお話があります"と話かける。いつもならテキトーに生返事でやりすごすんだけど、この時ばかりは弟があまりに決死の覚悟という様子なので、ケンは仕方なく時間を取ってやることにする。で、話を聞いてみると...。

ずっとお話する機会もないままだったので言えなかったんですけど、兄さんがぼくを嫌うのは当り前だと思うし、母のことは本当に申し訳ないと思っています。この先、あまり会えないと思うので、せめて、それだけでも言っておきたかったんです、と、意外なことを言われて今度はケンの方が呆然。それまでは、とにかく最初から無条件に"弟だなんて認めない"という頑なな態度を貫いてたし、彼がクランドルでは一般にあまりしないスキップをしてまで十六歳で大学に入り、専攻を二つ取ってたから四年かかったとはいえ、普通より早い二十歳で大学を出たのも一刻も早く自立したかったからで、その間には弟の気持ちを思いやるような余裕なんて全然なかった。しかし、こう言われてみると、どうやらずっとそのことを気に病んでいたようだし、そうするとコイツも状況の犠牲者だよなとか、何もこの子が悪いことしたわけじゃないのに、今まで冷たい態度をして可哀想だったかなとか、思うのがケンの性格なのよね。

まあ、だからと言ってそうそういっぺんに長年のわだかまりを捨てるというわけにはゆかないですけど、これをきっかけにして弟が手紙をくれたり、最初のうちは返事なんて書けないでいるんですけど、そのうちやり取りもするようになって、ケンがIGDで働くようになる頃にはもうかなり仲良くなってたりする。だから、初対面の時にケンがデュアンになんとなく親しみを感じたとしたら、自分が家を出る時に決死の覚悟で"お話があります"と言って来た時の弟と、それほど違わない年頃だったからかもしれません。

今はもうその弟も大学に進むくらいに大きくなってますけど、そういう複雑な家庭でけっこう気持ち的に苦労して育ってるからそれなり人間も出来ててアタマもいい。ケンはケンで祖父から譲られてる莫大な資産もあるし、IGDとの関りもあるしで、もともと父親の後を継ぐことそのものには興味を持ってないから、今では弟がやってくれればそれに越したことはないんじゃないかな、くらいに思っている。そうするとケンは今後、ずっとモルガーナ家に居ついてデュアンの右腕になるとか、そーいう展開もあるかな〜という気がするな。まだまだずーっと、先の話ですけどね。

★モルガーナ家の事情★

     

2010/7/2

★ルーク★

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最初の設定を考えたのが古い話なんで自分でも故意だったのか偶然だったのか覚えてないんですけど、まーの"ルーク"という姓はチェスの"ルーク"と意味がかぶってきてるみたいです。スペルはrookで発音は[ruk]なので、本来は"ルク/ルック"のようなんですが、現在の日本では一般にチェスのコマはルークと発音してますよね? 

ともあれ、現代では一般にどう考えられてるかは知らないんですけど、個人的には私はあのチェスの塔のコマ、つまりルークは元を糺せば"賢者さま"の象徴だと思ってるんです。ビショップは"僧侶"とされてるのは知ってるので、塔はやっぱり"象牙の塔"だろうなと。象牙の塔=ivory towerというのは"俗事や実際的な事柄から遠く離れたところ、浮世離れ"という訳が辞書にも載ってて、研究室に閉じこもって俗世に興味のない学者のことを"象牙の塔にこもる"などとも表現したりしますね。で、時代を遡ってゆくと、ローマ時代以前、特にケルト民族の間では賢者制度みたいなものがあったようで、この時代の賢者さまって科学者と哲学者と呪術師を一緒にしたような存在だったらしいんです。つまり、一般の人間には"不思議"にしか思えないこと(飛んだり、消えたり、病気を治したりなどなど)を出来る知識を持ってて、それゆえ、魔術師とか、更にはペテン師とかも呼ばれていた。従って、rookにもイカサマ師、ペテン師という意味があります。

しかし、本質的なことを言えば、一般に比べて広い知識を習得し、利用できるだけの天才的な頭脳を持っている人たち、中でも哲学的に優れていて全人的な性質を兼ね備えていたのが一流の賢者さまだったんだろうなと私は思ってます。知識を誤用するようでは、それは賢者ではなく、まんまペテン師になっちゃってたでしょうけどね。加えて、賢者さまとか魔法使い、仙人なんて人たちは、ふつー隠棲を好むもので、人間の間にあんまり出てこないからivory towerの意味にもそれが反映されているのではないかと推察しているのですが...。

そーゆーわけで、象徴的にはまーやアリはIGDという概念上の大国の賢者さまだということで、もちろん王さまはアレクですけど、翻って、現代の国家には残念ながらこの"賢者"の役割を果たす人材が無きに等しい状態。だから世の中うまくいかないんだなあと、ミョーに納得したりしちゃうんです、私は。

さっきも言ったように、賢者さまとは科学者と哲学者と呪術師を一緒にしたようなものですが、科学や呪術は"知識"であって、それを使いこなす核としての"哲学的資質"がないとどーしよーもないというか、例えば科学の場合、それのない科学者ってタダの専門バカじゃないですか。呪術もそれだけ分離しちゃうとロクなことにならないとかあるし、要はそれらを大局的な見地に立って総合的に利用するためには"哲学的資質"が不可欠だってことなのよね。まあこれは、例えばプラトンなんかが"哲人政治論"とか言ってるアレとも関係すると思いますが、本モノの哲学者というのは近視眼的なものの見方をしないというか、世俗的な価値観にも左右されないし、大局的見地に立って論理的に先を見通す力のあるものだと思う。どこに根拠があるのか分からないインチキな"予言"じゃなく、この「論理的に」というのが大切なところなんですけどね。現代においては"哲学者"と名乗るヒトやその肩書きで商売してるヒトはいても、全世界を牽引できるほどの本モノの賢者さまってのはなぁ...。しかし、それがいないことで、あっちこっちで勝手な低レベルのリクツが乱立してしまっていて、それこそどーしよーもなくなってるじゃないですか。

つくづく思うのは、とにかく共産主義とか民主主義とか自己犠牲の精神とか、そういう行き当たりばったりのリクツとか情緒的バカの勝手な思い込みじゃなく、あらゆる観点から全世界とその歴史を論理的に解析し、問題の明確化と解決策の模索が必要であるということで、しかし、これはもう本モノの賢者さまでないとムリなことだと思う。逆に今やそれほどの天才だったら、こんなロクでもない"人間ども"なんて救おうと思わないよなぁという気もするな。処置なし、救済不可のレッテルを貼ってゴミ箱に放り込み、自分は快適に南の島で昼寝でもしてる方がよっぽどっ、ラクだもん。

まあしかし、若気の至りというか、まーたちはそれに手を出してしまったもんで、結果として苦労することになっているんだな。それはそれで面白い人生かもしれませんけど、私はやっぱり、"南の島で昼寝"の方が賢明だったと思うなあ♪

★ケンちゃん・その3★

       

2010/6/15-6/16

★アシュバくん★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。メインストーリーの小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

今回のタイトル"アシュバくん"ですが、コイツはまだ本編に登場すらしていません。しかし、後編には出てくる予定なのでここで先に紹介しておきたいと思います。

前編のラストで、まーがファーンとデュアンを"遊びにおいで"と誘ってましたけど、その時"うちにはきみの喜びそうなオモチャもある"とか言ってたのを覚えてらっしゃるでしょうか。そのオモチャ、実はそれが"アシュバくん"なのです。では、アシュバくんとは何者なのか?

端的に言ってそれは、まーの愛車512TRのことです。でも、それは外見だけのことで中身は全くのオリジナル。前にもちょっと書いてた通りこのアシュバくんは喋るので、無理矢理にモデルは? と詰め寄られたらやはりK.I.T.T.くんですと白状せざるをえないところではあるでしょう。しかしまあ、そこは私が無類のクルマ好き(なにしろ、この世で一番好きなイキモノはクルマで、一番キライなのは人間だと誰憚らず公言してますから)だということがまずあって、クルマ好きならばK.I.T.T.の存在以前に、クルマが話せたらいいだろうなあとコドモ心に思ったことのある方は多いはず。そもそもK.I.T.T.だってそういうユメから生まれたんでしょうからね。

ですからこれはパクりではなく、ある種のオマージュと受け取ってもらえればと思うんですが、しかし私は密かに疑ってることがありまして、それはそもそもあのナイト・ライダーそのものが一部、スーパージェッターとマッハGOGOGOのパクりじゃないかということなのだな。だって、マイケルがコムリンクでキットを呼ぶとこなんて「流星号、流星号、応答せよ」の世界じゃないですか。ターボブースターでぶっ飛ぶのはマッハGOGOGOにそっくし(あれはブースターで飛ぶんじゃなかったけど)。日本のアニメがアメリカで人気とは言っても、日本人の私ですら何回目だか分からないほどの再々々々々放送を、微かに見た覚えがあるよーな気もするというほど古いものを80年代当時、アメリカのヒトが見てたかどうかはナゾですけどね。でも、あれ見てるとどーしても、これらの古いアニメを連想してしまうんだな、私は。

それはさておき、そういうスーパースペシャルなクルマへのアコガレをずっと抱いていた私なので、やっぱり自分の作品にもユメのクルマを登場させたいぞ、ということでアシュバくんが出てくることになったんでしょう。意識して登場させたと言うよりは、自分の頭の中でなんかいつの間にか出現してたって感じです。

ただ、このアシュバという名前が横文字圏では発音しにくいので、みんなからはアッシュという愛称で呼ばれていて、"喋るクルマ"というとこだけじゃなく、これまたどっちの名前も"パクり"と思われかねないのが問題。そうなる前にさっさと大モトを自己申告して"オマージュである"と宣言しておくに越したことはないでしょう。アッシュの方はお分かりと思いますが"BANANA FISH"から、アシュバはもともとそういう名前の神さまが登場する神話とかあるんでしょうけど、直接的には"ワン・ゼロ"に出てくる馬頭人身の神から来てます。これらの名前はどちらも元は私が自分でフェラリを手に入れることが出来たら付けようと思ってた名前なんで、小説のためにいきなりパクったわけではないということも強調しておきたいと思います。

そういうわけで、名前とか、コンピュータ搭載で喋ったり自走したり出来るという設定とかは他であるものだけど、それらの作品へ敬意を表した上で、あやぼーオリジナルのスーパースペシャリティカーを書いてくつもりです。

さて、このアシュバくん。元はまーが十代半ばの頃にそろそろ免許が取れるってことで自分のクルマを手に入れようということになり、しかし、買ってくるんではつまらないから作ろうという気を起こした。それでそれに、当時自分が研究していたヒューマノイド型ロボットのためのプログラムを応用したらどうだろうと思ったらしいんですね。そもそもロボット用のプログラムだから"喋る"のは不思議でもなんでもない。(←ほれほれ、このあたりからが既にオリジナルの設定なんだぞ♪)

で、当時、アレクんちのコレクションの中にあって、まーが一番気に入ってたのが512TRだったから、ボディはそのレプリカということにして、それにコンピュータを組み込んでアシュバくんが生まれることになりました。この最初のボディは、まーたちがIGDの活動を始めてから誘拐されるとか、殺されかかるとか、なんかそういう大危機に見舞われた時に一度大破していて、ただ、データは通信回線を通してアークとIGDのヘッドクオーター双方でリアルタイムにセーブされているので、ボディを作りなおせば復活させられた。それがEpisode2に出てくるヤツだってことになってます。最初のボディもそれなり防弾とかなってましたけど、作り直されたやつは特殊合金+特殊コーティングでミサイルでも直撃しない限りは無敵ってのはK.I.T.T.と同じです。IGDを始めてからは、とにかく降りかかってくる危険のレベルがめちゃくちゃ高くなっちゃって、このくらい装備+武装しないとまーもアリも命に関るとこまで行ってますからね。だから、アシュバは二人が行くところにはどこでもちょこちょこくっついてくることになってて、言わば彼らのボディガードとしていつも近くにいるわけ。もちろん一緒にアーク号に乗って海を渡るなんてしょっちゅうです。

後編ではアシュバがファーンとデュアンに自分のことをいろいろ解説してやるところが出てくると思いますけど、それによると彼は、まーの考案した独自の連語・連文節変換理論とかゆーものをベースに、主要30カ国語を音声でリアルタイムに理解し、話すことが出来るんだそうで、理解できる言語は更に増やすことも可能。センサー類を搭載していて自走もできますが、彼に使われている様々な技術には安易に公開できないものも含まれているため、アシュバそのものがIGDのトップシークレットでもある。だから一般に人前ではふつーのクルマという体を装っていて、話をすることも差し止められてるので、ふだん話せるのはまーやアリ、アレクの他、彼らの側近に限られてます。でも、本人(本車?)はそれが不満らしい。独立思考+自己学習型人工知能の天才児は、"人間"にずいぶん興味があるようですからね。

この話の時代は今から数十年未来ってことになってるんですけど、その頃になるとロボットが今の車くらい日常生活に入り込んで来てても不思議はないでしょう。それで、まーはヒューマノイド型ロボットに、適切なレベルで人間的な要素を組み込む研究もしていて、それがアシュバに組み込まれたプログラムのベースになってる。だから彼は、クルマとはいえ実に人間的なところがあって、喜んだり、怒ったり、スネたりもするわけね。でも、ヒューマノイドでは人を乗せたり、時速300キロで走ったりはさせられないから、形態としてはクルマの方がいいのかも...?

...なんてことを考えていて最近私は、もし物凄くお金持ちになれることがあったら、ヨットやジェット機なんかよりK.I.T.T.みたいなクルマが欲しいなあと思ったりしている。日本からも50億円レベルのヨットの発注が昔より増えてるとか聞きますけど(株でバカ儲けしてるヤツとかいるからだな...)、50億もあったらヨットなんかよか私はK.I.T.T.のようなクルマを開発するのに使うなあ。以前も書いたような気がするけど船酔いするからヨットなんてあっても仕方ないし、旅行もキライだからジェット機もいらないし、そうするとやっぱりクルマよね。現代のテクノロジーなら本当にああいうクルマを作れるはずだ。私なんかそんなに大危機に見舞われる可能性もないし、正義の味方になるつもりもないから、話すのと自走機能だけでいいしな。それを、うちのしゃーるくんに組み込んだら、きっと楽しいぞ。

ま、そんなわけで作者のシュミで、このお話には今後"喋るクルマ"が出てくることになっています♪

★ルーク★

      

2010/6/6-6/7

★ランドルフくん★

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・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。メインストーリーの小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

本編再開まで、しばらくまたプロット連載におつきあい頂きたいと思いますが、今回はウィルのお友だち"ランドルフくん"のお話です。

だいたい、なんでこんなヤツがあの話に紛れ込んで来るんだ? と市販されるタイプの小説だったら非難の対象になるようなキャラの一人がランドルフくんではないでしょーか。はっきり言って、本筋とはあまりに関係のない(ようにしか見えない)キャラですからね。それなのに、それなのに...。

今となってはもう、いったいこのEpisode2の主人公っているのか? って感じにすらなって来てますが、タイトルの"告白"から言うとやはりディとデュアンなんでしょう。ただ、私としては"お話の世界"の幅とか奥行きとかいうものは細かい背景/環境設定とか、脇役でちょこっと出てくる人物でもイメージをきっちりつかめるようになってるか、そういうことに大きく影響されると思うんですね。脇役とのエピソードが中心的な人物の性質を物語る要素にもなったりするし。

そういうわけで、こいつなんて元が脇役のウィルの、更にその友達なんだから、そんなに回数出てこなくてもいーじゃないかってキャラだけど、先行きファーンの将来とも関ってくる人物でもあり、なにより"作者がけっこう気に入っている"という理由で今後もちょくちょく顔を出すことになるだろうと思います。それに、実はですね。なんかこいつのグレた原因とか、その後どーゆーことをやってたかとか見てて、既に独立ストーリーが出来つつあって、タイトル(Life goes on)まで決まってたりするんだな。"母ちゃんに出てゆかれてスネた挙句にグレた少年が、世の中の現実を目の当たりにしつつそれを乗り越えて更正し成長するまで"みたいな話になる、んじゃないかな〜??? と今のとこは思ってたりするんですが、実際にどうなるかは書いてみなければ分からない。

ともあれ、作中でも書いてた通り、そのうちクロフォード家を訪れてウィリアムじーちゃんと会ったり、ファーンとの関係もどーなっていくかとかね、私としては先行きいろいろ楽しみでもあるわけです。

外見的にはそんなにびっくりするほどの美形というわけじゃないけど繊細な感じの顔立ちで、黙ってるとわりとクールに見える。でも、笑うとけっこう愛嬌があって人好きのするタイプかな。本篇書いてた時は入れ忘れて後から付け足したんですが、ちょっとハスキーな声を持ってて、性格は本来一本気でまっすぐなヤツ。ウィルがあれほど気に入ってるのも、相手が家柄がいいとか金持ちだとかの理由で媚びるってことがなく、さっぱりしてて気持ちのいい性質だからでしょうね。もちろん、基本的にアタマもいいし。

家族構成は出てったお母さんの他にお父さん、叔父さんがいて、祖父母は母方のだけ健在。このお父さんというのは科学者で、まだ私もはっきり設定してるわけではないんですけど、この時代だとものすごく儲かる大発明というとやはり代替エネルギー関係じゃないかと思うので、太陽エネルギーを利用した小型の発電システムとかね。それを乗り物に応用する技術とか開発して財を築いたというようなことじゃないかと。ただ、このお父さんってのは純粋に研究者で商売とか全然できるタイプじゃないので、ビジネスは叔父さんがやってる。弟を社長ってことにして会社作って、自分は副社長として経営してるんだな。

この叔父さんというのは頭のいい弟のことを小さい頃から可愛がってて、両親早くに亡くしていたから自分が働いて弟を大学にまでやった。その弟が大発明をしたってことですごく喜んで一緒に会社作ろうってことになったわけで、だから兄弟仲はすごくいい。自分に子供がいないから将来はランドルフに会社を継がせて〜みたいなユメも持ってて、商売うまいけど基本的に誠実で"いいヒト"のようですね。

一方、昔の恋人とヨリを戻して出てっちゃったお母さんの方ですが、こちらは経済的に少し苦しい状態にあった伯爵家のお嬢さんで、だからと言ってお金目当てでランディのお父さんと結婚したわけじゃない。彼の純粋でまじめ、ちょっと子供みたいな無邪気なところが気に入って、まあお金持ちだしってのも少しはあったかもしれないけど、その頃は恋人とも一旦別れていたからそれなり納得して結婚してる。ランディのお父さんの方がすっごく夢中になってくれたってのもあったし、丸くおさまって双方悪くない婚姻ではあったんだ。しかし、育った環境がそれだけ違うし、社交にまるっきり向かず、研究室に閉じこもってるのが一番幸せという夫と、華やかな社交を好むお嬢さんタイプの妻の間にありがちなスレ違いというか、それが蓄積してって結局...、ということだったんでしょう。

お母さんの方はこういうことになってランディを一番傷つけてしまったと思ってるから会わせる顔がない状態だし、お父さんの方はモト妻を責めるよりは自分にも至らないところがあったと思うような性質で、しかも実際的なことにはどう対処していいか分からないってゆー浮世離れしたところがあるから、どちらも息子がグレたのを更正させるどころの騒ぎではない。それで唯一、ランディにうるさく説教してるのは叔父さんだけなんだけど、本人アレで聞く耳持たないわけね。

ランディにはオジさんの希望ばかりではなく、お母さんは一人娘で他に跡継ぎがいないから母方の爵位もかかってきてて、小さい頃から家族の期待の的だった。それで子供の頃は、その期待に真面目に応えようとして優等生してたんだろうな。しかし、お母さんが出てった当初はまだコドモだったから、彼女が自分を置いて出てったこと ― 母にしてみると自分のワガママで出て行くのに、夫も可愛がってる息子を連れて出るに忍びなかった ― がショックで、グレてやる〜だったんだけど、本編でも書いたようにそのうちそれが面白くなってしまってそのまま現在に至ル。ただ、"グレる"とは言っても元々がお坊ちゃんだし、犯罪に加担するような方向にゆくほどバカではないから、まあせいぜい素行不良程度ですけどね。それでもお上品な上流階級の子供たちからは、立派に"すごい問題児"に見えるんだろうな。

このあと後編で出てくると思いますけどウィリアムじーちゃんに会ったことがキッカケで考えるところもあったらしく、徐々に成績元に戻してって最終的には叔父さんの期待通りビジネスの方にゆくことになるでしょう。性格的にも向いてるようだし、そうなると逆にコドモの頃の様々な経験が人を使う立場に立った時の人間的な余裕にも繋がるだろう。またじーちゃんの方もウィルからいろいろ聞いてて面白そうなヤツだと思ってたこともあって気に入ったりもするみたいで、同じようにビジネスの方に進むウィルやファーンとの関りも続いてゆくことになりますね。ま、そんな感じでこのランドルフくん、これからも本編にたびたび登場する予定です。

★アシュバくん★

      

2010/5/24

★前編終了★

Episode2前編、やっとのことで最終回に漕ぎ着けたわけですが、とにかくつくづく長かったですね。連載を開始したのは2008年9月ですから連載期間だけでも約1年9ヵ月、執筆期間は実に2年2ヵ月に及んで65章まで行ってしまいました。65章もかけてデュアンくんがやっとモルガーナ家入りしたとこまでしか進んでないというのもなんなんですが、とりあえずは長い間ご愛読頂きましたことに感謝したいと思います。有難うございました。(合掌)

連載の方はしばらくお休みさせて頂きますが、いつになったら本編に出てくるか分からないエピソードもたまってることですし、その間はまたプロット連載のよーなものをやるつもりです。後編開始の目処はできれば秋ごろ、せめて10〜15章くらいは先行して書いてから始めたいと思ってますので気長におつきあい宜しくお願いします♪

さて、めでたく前編脱稿したことでもあり、今回は本編の代わりに"私のエンタテイメント感"みたいなものをちょっと書いてみたので載せたいと思います。これは以前、KNIGHT RIDERのDVDを紹介した時に、"考えがまとまったら書く"とか言ってたやつで、その後わりとすぐに原形を書いてたんですけど、けっこー長くなったので本編連載中は出すの控えてたんです。まだ"考えまとまってる"とはとても言えない気もしますが、とりあえず連載一段落記念とゆーことで、おヒマでしたらお読み下さいまし。

     

★エンタテイメントにおける文法★

思うに、エンタテイメントの主語とは"カッコいいヒーロー"であり、助動詞とは"キレイなおねーちゃん"であり、その修飾は可能な限りゴージャスでスケールでかくてキラらびやかであるべし。あくまで私見ではありますが、とにかく、この文法を押さえていない作品はまず楽しくないぞと思うわけです。ちなみに、動詞とは"制作者のテーマ"かな。もちろん、それぞれのストーリーによって、主人公の性別が変わったり、助動詞もいろいろ変形するわけですけどね。

例えば、日本のアニメ界、不滅の名作といえばやはり泣く子も喜ぶ"ルパン三世"。ね? あれだって"カッコいいヒーロー(=ルパン)"、"キレイなおねーちゃん(=不二子ちゃん)".....、わはははは、いや、今ね、"ふじこちゃん"を漢字変換しようと思って、一般にある名前じゃないから一発変換無理だろうなと思ってスペース押したら、二番目で出てくるんだもの。いかに、この名前が日本人の間に定着してるかだな。ま、ことほど左様に、名作の美女は印象に残るものってことなんでしょう。それに、特に第二部ですけど、全編に渡ってお話のスケールは大きくて華やかですよね。だから、あの作品が不滅なのはエンタテイメントとしてあるべきこの"絶対黄金律"を少なくとも基本の部分できっちりと押さえているからだってことじゃないでしょうか。

これは"Knight Rider"においても初期版ではもちろん押さえていて、"カッコいいヒーロー(=マイケル&キット)"、"キレイなおねーちゃん(=ボニーやエイプリル)"、そしてナイト財団という強大な背景が、あたう限りの贅沢な展開を可能にしていたと言える。この作品の場合、背景に"One man can make a difference."という当時のアメリカらしいテーマが動詞として働いていることも大きいですね。ちなみにチャーリーズエンジェルとか、バイオニックジェミーとかは女性が主人公だから主語が"カッコよくてキレイなおねーちゃん(たち)"になるけど、あと、日本テレビドラマ界で不滅の名作と言えば"水戸黄門"。あれだって主語が"カッコいいじーさん"なだけで、ちゃんとこの黄金率押さえてるよね。"宇宙戦艦ヤマト"だって、"ガンダム"だって基本のところで当然ハズしてない。突き詰めて言えば、この"エンタテイメントにおける文法"とは、本質的な"非日常性"という言葉に集約できるんではないかと思うな。

で、私の場合、絢爛豪華で時として荒唐無稽という少女漫画の影響もあるし、もともと"非日常的な世界でなきゃ面白くない"という好みの問題もあるわけで、特に先に書いたルパンとか、シドニー・シェルダンや初期のダニエル・スティールとか読んでて"エンタテイメントってコレだよなぁ"とつくづく納得した時ってあったな(シェルダンやスティールはどちらも原版。作家と単なる翻訳家では芸術性に資質的な落差があるから、優れた作家(もしくはその資質を持つ者)が翻訳を手がけた場合を除いて翻訳版は原作より文学的に数段落ちることが多い)。ついでに言えば、以前書いたようにそのエンタテイメントの器に高度な思想性を盛り込むのが私としては理想だったわけで、そっちの部分はオスカー・ワイルドとかリチャード・バックとかで納得したところが大きいですけどね。

ちなみに、日本では一般的には純文学とエンタテイメント小説では純文の方が芸術性があると思われてますけど、それはとんでもない誤解で、以前から何度も書いてると思いますが、"芸術性"というものは表現形態が何であるかで決まるものではないというのが私の持論です。つまり、例えば"油絵は芸術だが漫画はゴラクだ"、"クラシックは芸術だがポップスはゴラクだ"、こーゆー線引きをしてるヒトは世の中掃いて捨てるほどいると思うのね。純文とエンタテイメント小説も然り。しかし、私に言わせれば"芸術性"とは表現者の精神性と直結してるもので、芸術性のない油絵なんていくらでもあるし、クラシックをピアノで弾けば芸術か?っていうと必ずしもそうはならない。当然、分かってるヒトにはイヤというほど分かってると思うけど、純文だから芸術かってゆーと全く違うわけ。

特に純文の場合に始末が悪いのは、客観的に見て芸術性絶無の単なる小市民向けゴラクでしかないものが、たまたまその書かれた時代に芸術の何たるかなんてまるっきり知ったこっちゃない、文化レベルの低い国民にウケたというだけの理由で"文学史"なんてものを形成しちゃってて、それが未だに文化的低レベルの国民に"上等なもんだ"と信じこまれてるという事実だな。純文の中にも極めてまれに芸術性のあるものはあるけど、たいていは"悲しいカンちがい"だと思うぞ。

とにかく、結局は表現者の精神性に芸術性があるかどうかが決め手になるわけで、だから漫画でもポップスでも、その他各種エンタテイメントでも芸術的精神を持った者が創れば芸術になるし、それのないヤツがいくらぶりっコしたって単なるゴラクにしかならんってことなのだな。そう言えば、これはロックもそうだなあ。英国の何が偉大と言って、やっぱりロックをかなり高いレベルで"芸術"にしちゃったとこだと思う。で、日本の何が情けないと言って、明治時代に文学が入って来た時同様、あれだけ芸術性の高い音楽を山盛り聴きながら、大半はその核たる芸術性だけすっぽり抜け落ちたサル真似にしかなってないとこだ。百年経っても一般的な日本人の文化レベルってこれか? と痛感する事実ではあるね。そうすると、その肝心の"芸術性"とはどういうものであるかが問題になるわけですが、それについては横道にそれすぎるのでいずれまた機会があればお話することにいたしましょう。

とゆーことで話を元に戻しますが、"エンタテイメントの文法"とは、あやぼー的にはそのよーなものだと思うわけです。翻って! 私が"なんじゃ、こりゃ?"と呆れた挙句に未だに腹が立って仕方ないのがKnight RiderのDVDに、オマケ的に付いてた2004年バージョン。まず、ヒーローはともかく、決定的なのが"キレイなおねーちゃん"が一人も出て来ない!! 男性諸君! いーんかい、これで???

いや、男の人がコレ言ったら、またアホな女権擁護論者みたいなバーさん連中に袋叩きにされるのが恐いと思うんで女の子の私が言ってあげねばと思うんだけど、グラマラスな美女は女性が見ていても楽しいが、ギスギスしたブス見て楽しいのは、自分に自信のない、従って"女優でもあの程度"と思って安心したい性格ブスだけだよ! ってことなんだな。しかし、恐ろしいことにこの傾向が、私の知る限りアメリカで発症して、いまや既に日本のギョーカイにも蔓延しているとゆー、皆さま、このキョーフの現実に気がついていますか? *脚注参照

遠く日活黄金期に遡れば(言っとくが当然、同年代ではない)、吉永さゆり、浅丘ルリ子、時代が下れば、十朱幸代、秋吉久美子、桃井かおり、名前だけで顔が思い浮かぶ個性的で偉大な美女は掃いて捨てるほどいたものだ。歌手でも、歌謡曲ギライの私でさえ即座に浮かぶモモエちゃんとか、唯一好きな明菜とか、そもそも芸能人ってそーゆーヒトたちだったものなんだ。それが今はなんだ? お金払ってまで見たいよーな、才能豊かな美女なんてごくごくごくごくごくごくごく、が千個つくくらい希少価値になってしまっているじゃないか! それは俳優だって大差ないが、とにかくそんなもん見てみんな本当に楽しいのか?!?!

巨大な疑問を叫んでしまいましたが、とにかくあの2004年バージョン見てると作ったヤツに、あんたカンヌで受けたいのか、一般大衆にウケたいのか、どっちなんよ? とマジで聞いてみたくなるぞ。まあ言えば、中途半端なカン違い社会派と言うか。そう言えば、某監督が最近作った映画をハッピーエンドにしちゃったことで、あれ悲劇にしてたらカンヌで受けたかもとか痛烈なこと言ってましたけど、ことほど左様に今やカンヌだってどれほどのもんだかだけどね。(JALが傾く世の中だからなあ...。今や過去の常識は通用しないのだ)。

と言うのは、"模倣の終わるところに芸術は始まる"と、かつてワイルドは言ったが、私はこれに付け足して"模倣の始まるところに芸術は終わる"とも言えると思うんだな。映画の世界だって昔の巨匠は"誰もやってないことをやってやる!"という気概のある芸術家だったかもしれないけど、いつのまにか"カンヌでウケるには"みたいな型が出来上がってんのよね。姑息にウケそうな型狙うのは自己の内面に創造性がない証拠だよ。でも、芸術って「型」じゃないよな、ココロだよなって、簡単なリクツなんだけどね。"これを言いたいのだっ!!"とゆー、気持ちのこもった社会派なら感動も出来るし、納得もできる。しかし、それがないから"なんだ、こりゃ?"になるんじゃないか? アタマで芸術をやろうと思うな! 芸術はバクハツだ! (きゃはははは)

もちろんエンタテイメントにおける文法"というのも、制作者の気持ちがこもってなければ「ウケそうな型」に成り下がるわけだけど、制作者が「こーゆーのをやりたかったんだ!」みたいなパワーを持って楽しんで作っててくれれば、見る方にもそれが伝わるから面白いんだと思う。それに、そういう気概は次々と新しいアイデアを生むもんだしね。そこに、動詞であるところの"制作者のテーマ"の重要性があるわけだ。

で、80年代に比べて2004年版で気に食わない点は他にもいろいろあって、まずヒーローであるべきマイケルがやたら弱気なとこ。 80年代だったら、在り得ないよ、あんな展開。おまけにマイケルとキットの、あんなに強かった友情が全然描かれてないし(作った方はこれまたカン違いで、そういうのがクールとか思ってたかも知れないが)、おまけに、ああも無意味にデボン殺すか? あれには全く本当に、取り返しのつかないことやってるよと呆れ果てたもんなあ。あれじゃ、後のストーリー続けようがなくて当然じゃん。それに、なんでキットが真っ赤になるよ? 80年代のキットは、自分の"黒いトランザム"というアイデンティティに自らこだわっていたぞ。色塗られたり、パーツ付けられたりするのをめちゃイヤがってたし、それがまた、理知的な"彼の人格"を表現していて楽しかったものなのに。

ま、優れた作品の登場人物(キットはクルマだけど)というものは、そういうふうに初期の段階できっちり印象を残すだけの設定がされているもので、マイケルにしてもキットにしても、"80年代の彼ら"という基本を無視して勝手に変えられちゃ、客は納得せんぞってことよね。例えばルパン(三世)が! 弱気で情ない女性的な性格に成り下がったら、ファンは納得するか? 私は、ぜったい、金輪際しない! 

それに、もうひとつ言いたいのは"笑い"がないのよね。"カッコいいヒーロー"とは言っても、これにはお約束で"三枚目なとこもある"という可愛げが付いてないといけない。80年代のマイケルにはちゃんとそれがあったし、そこが笑えるとこでもあり、また二の線にこだわってないカッコよさでもあったんだ。ルパンだってそうだよね。不二子ちゃんには騙されても騙されても弱いんだから。そこに"微笑ましい人間味"とゆーものがあって安心できるわけよ。

2004年の作品って、カメラワークとか映像はいいだけにストーリーがなあ、というのがよけい残念。これは後のバージョンでも"ストーリーめちゃくちゃで呆れた"とかいう批評も出てたし、まあ要するに現代のアメリカは、"お話作りが壊滅的にヘタ!"なのか?とかも思ったりするんだが、作家が変わってるとしたらそのせいかもしれないなあ...。作家が同じだとしたら、よっぽと絶望的になる何らかの理由があったか、でなければ会社の上のヤツの無理解な要求に泣いてるに違いないと思うね。(←よくある話)

それにつけても誰か作ってくれないかな、現状を打破してエンタテイメントの文法をきっちり押さえためちゃくちゃ楽しい作品を。そして、その根底に納得できる哲学性があったら、現代においてはそれの出来るヤツが本当の"芸術家"かもしれませんね。う〜む...。

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※注 : 女優が一般にブスになり下がった理由、これは断じて"美の基準が変わった"というような種類のものではない。その証拠に、今だってアメリカでもヨーロッパでもきらびやかなロリータ・ファッションが受け入れられて流行りつつあるじゃないですか。華やかで非日常的なアニメも漫画も流行ってるじゃないですか。つまり本来、古来から正常な人間の多くは、きらびやかで美しく、華やかなのが好きなものなんだ。しかし、それが90年代以降、決定的に崩れていたのは、"劣等感のカタマリで自分に自信のない性格ブス(男女を問わない)"が、社会の同情をいいことに理不尽なリクツを押し通して来たからだと思う。そういう連中は"キレイなものや華やかなものを見るとムカつく"んでしょうよ。私に言わせれば、それこそ"ビョーキ"だ!!

私が"恐怖の現実"と書いたのは冗談でも何でもなく、みにくいものの方にスリ寄ってゆく"性格ブス"の数が激増したために、より大勢の関心を引いて商売しているエンタテイメントの世界もそれにつれて変わらなければならなかったという、つまりこの"劣等感のカタマリである性格ブスの激増"そのものなわけ。これは、そういうエンタテイメントへの影響ばかりでなく、当然、"優等生や目立つ子を苛める"という行為の蔓延、さらに度を越えた場合は"幼児/児童虐待"(学生の時は回りの適当な生徒を選んで苛めてれば良かったが、社会に出てからは自分の方が下っ端だから苛める対象が得にくい。従って、自分から見て一番弱い立場にある子供を苛めることによって自尊心を支えようとする本能的行動。学生時代に苛める側に回ったことがなくても、逆に苛められる側だったり、自尊心を支える拠りどころを失ったりすると同様の行動に出ることもある)にまで発展している。これらは連中の"理不尽なリクツ"が形を取った一例だと思うが、これはもう"自尊心崩壊恐怖症"とでも名づけて心理学的治療の対象とするべきであるというのが最近の私の持論です。しかし、そんな「病気」が何故蔓延してしまったのか。 これも複雑な背景があるからなぁ。それについてもまた別のところで書くことにしましょう。

original Text : 2010.2.6. / revise 2010.3.12+5.25+5.29

       

      

 

     

2009/9/30

★終わらん...★

なんでこんなことになってるのか...、って、例の連載小説の話ですが、そもそもの始めには40章くらいでEpisode2そのものが終わるつもりだったんですよね。それが、40章を超えてもまだ前編すら終わってないって、いったいこれは何のタタリか、って感じですけど、既に連載開始以来1年が過ぎようとしてるのにこの有様とは。

これはもう、まる2年かかってもEp2全編終了しないだろうなとゆー、絶望的な見通しがほぼ100%確実なものになりつつあります。なにしろ、前編終了のお披露目シーンまでですら、まだ軽く10章分くらいのシーンが見えてて、もとは夏休みのシーンはナレーションだけで流すつもりだったのに、あれこれエピソード入って来ちゃって、さすがに1年間も、いや、Episode1から数えたら1年半も小説書き続けた上に"まだこれ全部書くのか"と思うとかなり気持ちがぐったり〜♪ いくら好きなことでも、そもそも、そんなに長いこと続けて小説書いたのだって初めてだし、書いても書いてもゴールが遠のくぞ状態なんだもん。

で、そうやってなんとか前編終了しても、いよいよ後編はデュアンとディがどーやってそーゆー関係になってくかというお話なんで、これも前編に匹敵する長さにならざるをえないだろう。そっちももういろいろシーンとか見えてきてるから、実際に取り掛かると絶対、今考えてる以上に長くなるのに決まってる。これはもう、前後編足すと軽く100章いくな。個人の道楽だからいいようなものの、それにしてもむちゃな連載だ。

ま、そんなわけなんで、この後も話が終わってくれるまでぼちぼちやってくしかありません。気長におつきあいのほど、ヨロシクお願いします♪ ちなみに、次回の更新では、ウワサだけしか出ていなかったウィルの友人、ランドルフくんが登場する予定です。

    

2009/6/2

★ちょっと解説★

連載小説、今回で第34章なんですが、この章もっと短いと思ってたのに書いてみたら12000字にもなってしまい、これまた1回の掲載量にしてはあんまりなんで3回に分けて載せることにしました。別に出し惜しみしてるわけじゃなくて、"ちょっと読んでこか"くらいの気持ちで来てらっしゃるお客さんに、12000字一気に読めって言ってもなあ...。それって殆ど迷惑? とか思うんで。

なにしろ12000字ったら、原稿用紙にすれば30枚ほどになるわけで、これってどーかすると短編小説1本くらいの量がある。"長編を読むぞ"という気構えが既に出来ている態勢で一気読みするなら別に問題ないかもしれないけど、12000字ってふつー"連載1回分"に対して読者が期待する量ではないぞ。それって、お茶のみに来たお客さんに、むりやりメシ食ってけってゆーよーなもので、やっぱりこれは迷惑でしょう?

なんでこんなことになったのか自分でもよく分からないんですが、おそらくこれはとうとう出てきてしまったファーンのイトコのせいだと思います。今回登場するのは一番年上のウィリアム(ウィル)くんなんですけど、なにしろコイツを筆頭に8人もいるもんですから、ファーンと話し始めたら次々と彼らを取巻くヒトたちの話題に発展して止まらなくなっちゃったんですね。イトコの他にも、そのウィルのかつての親友(ランドルフくんとゆー)、実はこのコが後にけっこうファーンの十代後半〜二十代にかけて影響を与えることになる重要人物らしいから、ココで出さんというわけにもいかなくなって...。

イトコたちに加えて、その親とか祖父母とか入れたら総勢17人にもなるクロフォード家(誰が作ったんだ、こんなムチャな設定!) の内情とゆーか、人間関係とゆーか、そのあたりはいずれ整理して解説したいとは思ってますが、本文をお読みになる前にヘンにあれこれ説明するのも正道を外れるかという気がするので、それは後日ということにして、では、34章の1回目をどうぞ。

      

2009/3/11

★つい...★

今、ファーンのひいじいちゃんが出てくる場面を書いてたんですけど、"95才"と聞いて思い浮かぶようなステロタイプなじーさんでは面白くないので、やっぱりあやぼー流の"95才のじーちゃん"になりましたね。これまで60代はいたし、ロベールさんだって70代だけど、90代ってキャラは初めてだったんじゃないかな。

で、このじーちゃん、もうちょっとお話が先に進むと登場すると思いますが、ウィリアムという名前で(わはは)、この名前に決めたあたりからキャラが見えて来て、なるほど、こーゆーヒトならファーンがなついてるのも頷けるなという感じです。ディとも気が合いそうだし、作者的にも好きなタイプかも。しかし問題は...。

以前も書いてた通り、私は"気に入ったキャラに出会うと、本編から激しく逸脱していようとも、そっちを追求してあさっての方向に飛んでいってしまう"という悪いクセを持ってまして、早い話、ディだってそもそもは全くの脇役だったのに今や主役と化してるわけで、おかげで話は広がるわ、キャラは増えるわ。結局、収拾がつかなくなり、今に至るまで最後まで完結させた話なんてひとつもありません。せいぜい第1部がやっとな状態で、そのため全部が同時進行中、それで、あっちのキャラがこっちの話にまぎれこむとゆー混戦状態もしばしば。ま、だから、プロになろうなんてゆめゆめ考えたこともないんですけどね。

そんなわけで、今回もこのウィリアムじーちゃんの居間がどんなふーか、というのを書いてて、するとそこにはディの師匠であるダニエル・バーンスタインの初期作が飾られているなんてことになって、どうやら彼はダニエルさんと親しかったらしいとか、そうすると、彼らの若い頃ってどんなんだったんだろう、と想像が進み、ウィリアムじーちゃんが今の話のディくらいだった時って、ダニエルさんもロベールさんも、え? もしかして二十代だったりする?

えーっ、じゃあ、もしその頃の話を書くとすれば、当然、ウワサでしか聞いたことのない絶世の美女、ディのママのベアトリス嬢も十代だったりして、すると、ロベールさんがヨメにもらいたいとゆーので走り回ってる時か。こりゃ、面白そうだぞ...、とそこまで考えて私はハタと我にかえり、既に遠のいている意識に、お〜い、帰ってこ〜い♪

ついつい、そうやって話を広げて収拾つかなくなることにかけては私は天才的なんで、ああ、危なかったって感じなんですけど、とにかくこれに関しては一応それ以上の想像の進行は一時停止しました。しかし、それでも問題は既に発生していて、それが"ファーンの8人のイトコたち"。8人ですよ、8人。ディの息子が3人出て来ただけで本編主役のはずのまーやアリがどっか行っちゃってんのに(お忘れにならないように念を押しておきますが、連載中のお話は"外伝"です)、イトコが8人も出てきたヒにはなあ...。

そもそも、あの8人っていうのは、"クロフォード家が大家族である"という印象を強めようとして、なんの気なしに書いてしまったものなんですけど、"書いてしまった"だけで済めばいいのに済まないのが私なんだよな。既に、この一番上のイトコ、つまりアンナの上の兄さんの長男、このコがもうちょっとすると話に出てくると思いますけど、ひいじいちゃんの名前をもらってウィリアムっていうんだそうです。ファーンはウィルとかウィリーって呼んでますけどね。で、このコが登場したのをキッカケに、ヤメときゃいーのに8人きっちり設定してしまうのが私の困ったちゃんなアタマ。あああ...。

名前とかイメージとかが定まってしまうと、そいつらは勝手に行動を開始し、自分たちのドラマを好きなよーに展開していってしまう。あっちでばたばた、こっちでぱたぱた。眺めて楽しんでるだけだったらいいんだけど、書こうとすると、ああ、どこから手をつけていーんだか状態。

しかし今は、とにかくなんとか連載中の話だけは順番に進めて、せめてエピソードごとには完結させてゆきたいものだと思っているんですが、でもこれ↓↓、いつ終わるんだろうな(私にもわからん...)。

プロット連載の続きを読む場合は★ランドルフくん★

     

2009/2/20

★難航★

今やってる連載小説ですけど、なんかとんでもない長さになりつつありますね。なにしろ、連載回数が既に今回で20回めというのに、まだ半分にも漕ぎ着けてない有様で、前編の終わり(デュアンとファーンのお披露目の大パーティーシーン)までゆくのに、あと10章は軽く必要になりそうな雰囲気。このぶんだとEpisode2が終わるのに今年いっぱいはかかるんじゃないかとゆー、まだ2月なんですけど、どう計算してもそのくらいの長さにはなりそうなんです。

しかも、昨日ちょうど、ディがデュアンを跡継ぎにしたいという話をカトリーヌに持ってくとこ書きあげたんですけど、これがもう難航しちゃって、いや、話そのものも、"母から最愛の息子を取り上げる"っていう展開ですから難航して当然なんですけど、モメにモメまくるもんで書く方も延々延々終わらなくて、結局この章、13000字を超えてしまいました。1章で13000字ってのもあんまりなんで2章に割ろうかとも思ったんですけど、場面転換なしでモメまくるシーン(ってゆーか、ディは立場も分かってるんで落ち着いて説得しようとしてるんですけど、カトリーヌがイヤイヤイヤ〜状態)なんで切るに切れず、仕方がないので掲載する時は2回に分けるけど、章としては1章に数えるってとこで落ち着けるしかないかなと。

そういうわけで、実は昨年の9月以来、書く方がぴたっと止まってしまい、未だそのへんでウロウロしてるような状態なんですが、なんとか連載そのものは止めずにせめて前編終了までは突っ走りたいです。それにしても、こんなに長くなるとはなあ...。ほんと、私の"予定"ってアテなりませんね。いったい、いつ終わるんだろう???

★つい...★

      

     

     

     

2008/11/23

★パリの恋人たち★

本編連載中に続編のプロット書いちゃうのもな〜と思うんですけど、なんかいろいろシーンが見えてきちゃって、書き留めておきたいので書いとくことにしよう。密かにメモっとけばいいようなものなんだけど、書きたいんだからしよーがない。話をそらされずに、連載の続きが読みたい方は、こちらをクリックしてこの項目をトバして下さいまし。

で、実は、今連載している「告白」の次のEpisode3「発端」、これは前にもディとマイラの話だと書いてましたけど、従ってこれは、うちではめずらくしごくふつーの恋愛小説(になるはずだ)。でも、それが分かってるだけで、そんな「ふつーの恋愛小説」なんて書いたことないから、いったいどんな話になるのかは自分でもナゾだったんだな。さっさと予告しておいて無責任な話ですが、しかし、これまでもそれでここまでやってきてるからなあ。私は自分の人生そのものが行き当たりばったりなヒトですが、小説もやはりそうなりますね。でもいいんだ、結局はそれでまとまるから。

この「発端」っていうのは、ディの3人の息子たちが生まれるそもそもの最初のキッカケは何だったか、という話なんですけど、だからマイラとの出会いから書くことになるのよね。しかし、ディはともかく問題はこのマイラで、息子のメリルも分かりにくいキャラだったが、母のマイラはそれに輪をかけて分かりにくい女。見てるとなんか、ふつーの才女っぽいんだけど、そんなふつーの女とディがつきあうか? という問題もあって、彼女のキャラは大問題だったんだな。今もまだ、そのへんははっきりしてないんだけど、とにかくとっかかりくらいは掴んだかなって気はする。ま、書いてくうちにまた分かってくるんじゃないかな。

さて、タイトルにした"パリの恋人たち"っていうシーンなんですけど、マイラが仕事でパリに出かけるのと同じ時期に、ディがちょうどスケッチ旅行を計画していて、じゃ、パリで会おうかという話になった。優雅にパリでデートてわけですね。それでディが、昼間は公園でスケッチしてると思うから、仕事が済んだら来なさいよってマイラに言って、そこで落ち合うことになるわけです。

最初に見えて来たのは、この時のディのスタイルで、何の変哲もないセーターにジーンズとブーツ、それにシンプルなジャケットを着てるだけで、クランドルにいる時のお出かけみたいにオシャレに決めまくってないのが返ってすっごくいいんだ。まるで、そのへんによくいる画学生みたいな感じで、スケッチブック抱えて歩いてくるとこが、秋から冬に移り行こうとするパリの公園の背景にぱっちりマッチしてる〜。きゃ〜、すてき〜。(結局、私はミーハーなのよね)

で、ベンチに座って絵を描き始めるんですけど、大画家で伯爵さまなんて雰囲気全くなくて、シュミで絵を描いてるおにーさんって感じがまたいいんだな。この頃はディもまだ、三十代入ったばかりくらいだから、全然若いし(しかし、外見は三人の子持ちになってもあまり変わっていない...)。

とにかく、ディも「絵を描いてればシアワセ」という点においては、メリルをさえしのぐくらいですから、描き始めるとすっかり夢中になっちゃって、回りのことには気がつかない。そこへ、さくさくさく、と落ち葉を踏みながらマイラが公園に入ってきて、えっと、ディはどこ? と見回し、ふと、ベンチで絵を書いてる彼に目を留める。あれはディに間違いないと、それはもうどこにいようと、どんな格好をしていようと彼が目立たないなんてことはありえないので、彼女もすぐ気づくんですけど、いつもと雰囲気が全然違うので、「あれは本当にディだろうか?」とか思って立ち止まっちゃう。で、見てると幸せそうに一生懸命絵を描いてるんだね。あまりに夢中でシアワセそうなんで、マイラはなんとなく声をかけられずにそのまま見とれてるうちに「ああ、ディって本当はこういう人なんだ」って分かってくる。

確かに、大画家で伯爵さまというキャラをやれるだけの内面性はディには当然あるんですが、実際には彼ってその容姿とか才能とかからくるイメージに反して、基本的に全くシンプルな性質してて、本人は煩わしいことを全部ほっぽらかして、一日絵だけ描いてられたらどんなにいいだろう、と常日頃から思ってるようなやつ。だから、自分の国にいるときのように、四六時中、社交だの、傘下の企業の大株主としてしての仕事だの義務だの責任だの、ディにとっては迷惑なだけの財産管理に追い回される日常から離れて、のんびり絵を描いてる時ほど幸せな時はない。

マイラはそれまでディのその表の顔、つまりすっごく偉いヒトという顔しか知らなかったので、つきあってるとはいえ気後れする部分はすごくあったんだね。でも、目の前の彼を見ていると、本当に絵が好きなんだなあ、という微笑ましい感じだけがあって、できればこのままこういうディだけ見ていたいな、とか思って、彼女は少し離れたところに立ったまま、寒い中をずーっと彼が気づくまで見てる。すると、しばらくしてディの方が気づいて、おや? いつからいたんだろう、と思いながら笑いかける。彼が気づいたと知って、ちょっと残念、とか思いながら彼女も笑って近づいてゆく。そして、もうすぐ冬だね、寒いねとか言いながら、二人で寄り添ってパリの公園を散歩する、と。

う〜ん、なんとなくロマンチックな恋愛小説になりそうなムードだけはっ!! いけるかな、いけるかなって感じなんですけど、やっぱりどこかで脱線するかな。どうせなら、このムードのまま最初から最後まで突っ走りたい気はする。一生に一度くらい、そういう思い切り「感動の恋愛小説」みたいなものを書いてみたいとは思っているのだ。性格的に無理かもしれないが...。

で、まあ、散歩しながらディが焼き栗買ってきてくれたり、それでマイラが「パリの恋人たちみたいね」とか言ったり、それへディが「パリの恋人たちだよ」って答えたり、すごくふつーに「恋人どうし」だよね、これって。やはりこういうのも、たまにはいいな。

二人のそもそもの出会いについては、レイのサロンでってことが既に分かってて、更に親しくなるキッカケも分かってるんですけど、そのへんはいずれまたそのうち。ともあれ、このパリのシーンが見えてきてからノリつつあるので、Epixode3も腰据えてじっくり書きたいぞって感じになってきましたね。マイラのキャラがどう発展してくかが、作者としては楽しみなところです。

★難航★

       

2008/9/20

★連載開始★

とゆーことで、今週からEpisode2連載開始の運びとなりました。第1回は大サービスで一挙9600字公開させて頂きますが、まだ前編が完成してないような状態なんで時間的な余裕もみて、来週以降は週に3000〜4000字前後くらいでぼちぼち進めてゆきたいと思ってます。たぶんEpisode1の倍の長さにはなると思いますので、皆さまもぼちぼちおつきあいくださいまし。では、どうぞ♪

      

2008/9/13

★Episode2・前編★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

とゆーことで、長らくお待たせしておりましたが、Episode2の連載を9/20から始めようと思ってます。しかし、実は現在17章をやっと書き上げたところで、なんか1章分がやたら長くなるんで、なかなか区切りのいいとこまで行ってくれないのよね。ふつー、3000字〜5000字で1章な感じでこれまで来てたのに、なぜかこのごろ7000字〜8000字行っちゃう。そもそもEpisode1と同じくらいの長さだろうなと思って書き始めたはずが、17章まで来てもまだ半分になってないのが自分でも恐い。

今の雰囲気では、デュアンとファーンのお披露目の大パーティを前編の区切りにして、その後、引き取られてからのデュアンとディのお話が後編になってくみたいなんですが、そのパーティまでが、なっかなか辿りつけないんだ。今17章で、でもまだいくつか書かなきゃならないシーンがあるから、たぶん前編23章〜25章ってとこじゃないかな。だから、どうかするとこの話、最後まで連載するのに半年〜10ヵ月くらいはかかるかもしれない...。なんでこんなに長くなるのか、自分でもまるっきり分からないが、そもそも前編、後編なんて区切りが入るほどの長さになるなんて予想だにしてなかったもんなあ...。

しかしまあ、そんなに次から次へとシーンが見えてくるというのは、それだけお話書くことに乗ってるということで、今回はEpisode1みたいにアクティヴな話ではないけど、前半はモルガーナ家のファミリー・ドラマっていうか、なかなか楽しい話に仕上がりつつあります。後半はけっこうきわどいシーンとかも出て来そうだけど、ま、そんなわけで来週からやっと、また本文をお目にかけることが出来そうです。どうぞ、お楽しみに♪

プロット連載の続きほ読む場合は★パリの恋人たち★

         

2008/9/5

★タイムテーブル★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

これまでプロットとかEpisode1を書いてる段階では、そんなに本格的な連載にするとは思ってなかったんで、わりと誰が何才とか、季節はいつとか、漠然と気分やイメージだけで書いてたんですけど、この先、ずっと連載を続けてゆくとするとそのままではやっぱりどこかで不都合が生じるだろう。しかし、いくらシュミの小説とはいえ、まがりなりにも決定稿として世に出す限りは後から「間違ってました」はないだろうと、やっぱり思うわけですよ、作者としては。それで、主要人物の年令を相関的に示すタイムテーブルを作ってみたんです。ところが、これがなかなか大変で、つじつま合わせに半日ほどかかってしまった。毎度、いきあたりばったりで書いてるからなあ...。

例えばお話の中で起こる事が1〜2年の間に散らばってるとすると、キャラはその間に1〜2才トシを取るわけで、イメージ的には11才でも12才でもあまり変わらないのに、正確な年令ということになると、ある事件の時に「11才である」と書くのと「12才である」と書くのでは、まるっきり違ってくる。だって、12才の時のはずの事件を11才の時と書いちゃったら、完全に間違いだもんね。だから、これまでそのへんがいい加減なままであることも少しは考慮して、はっきりした年令はできるだけ言明を避けるように書いてはいたんだが...。

デュアンがディに初めて会ってから、例の誘拐事件が起こるまでの間がどうしても思ってたより長い期間必要になってしまって、漠然としたイメージでは1〜2年のはずが、二人が初めて会ってから、ロベールさんにバレるまで出来れば約半年、子供たちが集められてからデュアンが家継ぐことになるまで最低半年、できれば9ヵ月、デュアンがモルガーナ家に入ってからディに恋煩いしちゃって、更に二人の関係が成立するまでに最低9ヵ月、その後、それがまーやアリにバレるまで最低3ヵ月〜半年、しかもここで、例の「宣戦布告」から「誘拐」までは季節的に見て約1年開いてるわけで、それはもう既に出しちゃってるから変更不可。そうすると、お話を自然な流れにするためには結局、漠然と1〜2年と思ってた期間が、3年以上必要ということになっちゃったから、さあ大変。

それで子供たち3人が初めてモルガーナ家に集結する時の年令を多少ずらさなきゃならなくなっちゃったんだ。まだEpisode2を出す前だから良かったんだけど、やはり、こういうことはきっちりやっとかないと墓穴を掘る、という見本ですな。

しかも、問題はみんなの生まれ月で、これは星座に関係してくることなんでキャラのイメージとも直結するから、夏生まれか冬生まれかはすごく大きな問題になってくるんです。それで年令のつじつまは一応合ったのに、生まれ月がイメージと完全に逆になっちゃって、それを修正するのにまたひと苦労。デュアンはなんてったって絶対夏生まれで獅子座だと思うし、メリルの性格はまずまちがいなく水瓶座よりの山羊座だし(なぜか私と一緒)、ファーンは射手座(か天秤座)、ディもどう考えても1月生まれでメリルと同じ時期だろうし、アレクはあれも獅子座でしょうね。まーは絶対、山羊座だな。すると三歳半下のアリは夏生まれでたぶん獅子座ってことになる。私のイメージとしてはこれでないとおさまらないのよね。

そう考えると、一見相性悪いはずのディとメリル、アリとデュアンがなぜか星座的に同じだったりするのが不思議。逆に、性質似てるから反発するのかな? とも思ったりする。

そんなこんなでなんとかそれほど大きくは変えずにおさまるところまで修正はしましたが、以前、期間限定で公開した部分で1箇所だけ、これはまーがアリの強姦騒ぎでディに怒鳴りこんだ時のことなんですが、その時のまーのトシがどーしても「16才になってしばらく経った頃」でなきゃならなくなった。その時は「17才」としてたんだけど、イメージ的にはシーンそのものにそれほど影響しないのに、正確にタイムテーブルを作ってくと9ヵ月ほどズレちゃうんだな。

これはまあ、かなり前に短期間しか出してなかった部分だから覚えてるヒトも殆どいないだろうし、しかも決定稿と言うよりプロットに近いお話のハギレだったからお許し頂くとして、ここさえ修正すれば後は全てOKってとこまでは漕ぎつけた。これで、この先の連載はすっきりきっぱり、「何才」と書けるぞ。

さて、ちょっと話は変わりますが、最近、古い蔵書の整理をしていて、これは私のじゃなくて親父のなんですが、その中のめちゃ古いミステリーのタイトルに「キングの身代金」っていうのがあったんだ。それで、なんかこれっていいタイトルだなというインパクトが見た時あって、うちのこの話でキングと言えばやっぱりアレクだから、そうするとアレクが誘拐とかされちゃったら、その身代金ってどうなるだろう? ...みたいな? デュアンで1億ドルだったからな。こりゃ大変なことになりそうだ、と思ったら、なんかそこで話みたいなものが出来つつある感じになってきた。

これは、どう考えても本編も本編、メインもメインの部分のお話に入るだろうから、世に出るのは十年先か二十年先かってなもんですけど、なかなか面白いことになりそうなんで私としてはどう展開するか楽しみにしてるんです。なにしろ、まーとアリ、この大天才二人を手に入れたら世界を取れる!! と図らずもアレクが証明しちゃった格好になってしまった。もちろん、IGDはこの二人の頭脳だけで成立してるわけではなく、アレクという求心力があって初めて、かなりの短期間で世界経済を掌握するほど巨大になるんですが、「金と権力」それしかアタマにない連中にはそれが分からない。そのおかげでのべつまくなしこの二人は狙われるハメに陥っちゃうんだけど、このアレクの誘拐騒ぎもそのへんが絡んでくるでしょうね。ディに言わせれば「お人好しの脳天気お坊ちゃま」とはいえ、あのアレクがそうそう誘拐されるなんてヘマなことするわけないから、彼が何故捕っちゃったか、これにもかなり大きな原因がありそうだな。

とゆーよーに、またなんか、途轍もなくあさっての方向にアタマが飛んでたりしますが、とりあえずはまずEpisode2ですね。頑張って、完成させたいと思います。ともあれ今日の教訓、「地道な一歩が明日に繋がるのだ」。(合掌)

★Episode2・前編★

      

2008/8/28

★恐るべきこどもたち★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

ではまずEpisode2の予告から。いちおう、9/20を目処に連載を開始しようかなと決めましたので、あと3週間くらいかな。その頃には前編20章くらいまでは出来上がってると思うし、まあ、なんとかなるでしょう。自分でもそれなり日限を切っておかないと、また延々、延々、先に伸びそうですからね。

さて、子供たちがモルガーナ家に集まって初めてのディナーという、このシーンはけっこう楽しんで書いてたんですが、よくよく考えてみると「フレンチのフルコースを最高級ワイン付きで楽しむことができる十歳前後の子供たち」なんて、なんか存在そのものが恐ろしくありませんか?

まあ、うちではよくあることなんですが、おじいさまに「今日の料理はどうだ?気に入ったかな?」とか聞かれて、デュアンなんか「ええ、とっても。まるでレストランに来ているみたいなのでちょっと驚いています。レストランでだってこんなに美味しいの、めったに食べられない。なのにこれ、みんな自家製なんですよね?」とか当たり前のことのよーに答えてるし、とゆーことはコイツ、ごくふつーに日頃からこういうディナーを食べつけているということなのか? 自分でも書いた後から気が付いたけどなんてナマイキなガキなんだ。

ファーンなんかもっとすごくて、「これはさすがにうちの料理長でもかないません」だってさ。そりゃ、大家族で大邸宅に暮らしてりゃ、家に料理長がいたって不思議はないかもしれないけど、ってことは、コイツなんかは家でいつも、そんなおいしいそーなもんばっかり食ってるということなのか?

ディんちにはジェイムズ・オブライエン氏というなんかすごい料理長がいるそうで、先代が彼の才能を認めてヨーロッパに修行に出し、帰ってきてから店を持たせるつもりでいたものを、本人がモルガーナ家のために働きたいと言ったためにそれ以来ずっと居ついているらしい。今ではモルガーナ家傘下のホテルにあるメインレストランの監督とかもしてて、そこの料理長はジェイムズさんの弟子だったりするんですってさ。このレストランはクランドルでも最高峰と認められているだけあって、それでファーンが「うちの料理長でもかなわない」なんて言ってたんだな。

作者の定番ディナーは野菜たっぷりの焼きソバとか、野菜たっぶりのとんこつラーメンとか、こういう食事ばかりするようになってから実に健康になったとはいえ(「野菜たっぷり」というところがポイント)、フレンチのフルコースなんて最後に食べたのはいったいいつ? という日常であるのに変わりはない。それなのにこのディナー、決してお子サマ仕様のメニューなんかではなく、ロベールさんやディと全く同じ料理&各コースにそれぞれ別のワインまで付いてるらしい。それ全部食って、飲んで、デュアン曰く、「ああ、幸せ」。全く、恐るべき子供たちじゃありませんか。私にも食わせろーーーーっ!!!

それにしても最近、そういう豪勢なディナーになんて私自身はまるっきり縁がないなぁ...。なにしろ、まず本格フレンチ・フルコースなんて、今じゃ胃がとても受付けなくなってて、せいぜい食べれてオードブル+魚料理くらいだろうなと思うし、それに本当に美味しいフレンチ出してる店なんて、元々全然少ないとこへ持ってきて、かつて関西にあった三ツ星はひとつは閉店、もうひとつはまだあるかもしれないけどオーナー亡き後すぐに星が落ちて、今じゃ単なるホテルレストランと化している。それ考えると今から本当に美味しいものを出す店を苦労しながら発掘するなんて根性とてもないし、それを見つけ出すまでにいったいいくつ、高いだけのつまんない店に行かなきゃならないのかと思うだけでめげてしまう。

よく、「フランス料理は高いばかりで美味しくない」と言う方があるんですが、実際、そう思われても仕方ないほど、日本のフレンチ業界は何かカン違いしてるんじゃないか?としか思えないとこがある。高級感ばっかり強調はするが、味の方は全くファミレスとどこが違う? 程度のものしか出せない。でも、本当にちゃんと作られたフランス料理は、本当に美味しいことを私は知っているのだ。だから、「フレンチよりイタリアンの方が美味しいよ」とか言ってるグルメぶりっ子を見ると、こいつはエセグルメだなと一発で分かる。それって実際、「単に本当に美味しいフランス料理を食ったことがない」というだけのことだもんね。でも、「本当に美味しいフランス料理」が、めったに食べられないのも現実なんだよなあ...。

ま、そんなこんなで、最近は縁のない世界ではありますが、このシーン書いててちょっと発作的に食べたくなったな。うー、オマール海老、グルヌイユ、子うさぎ、フレッシュのフォアグラ、溶けかかってるブルーチーズ、カルヴァドスにつけたカマンベール、シャンパンのソルベ、ワゴンにいっぱいのっ、豪華なデザート!! きゃーーーー♪

★タイムテーブル★

        

2008/8/22-8/23

★逃避行★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

Episode2は現在14章まで書けてて、字数的には64000字くらいになってるから既にEpisode1に近い長さになってるんですが、いかんせん、お話そのものは全然「まだ始まったばかり」な状態で、三兄弟を迎えてディナーというシーンまでやっと漕ぎつけたとこでしかない。このぶんでゆくとたぶん40章くらいまではいくんじゃないかという気がするんですが、なんか思ってたより長くなったなあ、これも。

まあ、既に六万字以上も書いてるから、これだけ先行していればもう連載始めても大丈夫だと思うけど、せめて20章までは書いてから出したいので、う〜ん、9月半ばから10月くらいからなら始められるかな。ともかく、そのへんを目処に頑張りますので、いましばらくお待ち下さいまし。

さて、先週はファーンの話をしたので、今日はメリルくんの話にしましょう。今回のタイトル、「逃避行」っていうのは、メリルが画家への一歩を踏み出す大きな賞を取った時の作品のタイトルなんです。お話の中では、Episode2の始めでまだ12〜13才くらいですから、まだまだそんな大きい賞を取るなんてのは先の話ですけどね。

ともあれ、三兄弟の中でこのコだけがディに反感を持ってるとか、サラサラのブラウンの髪を肩くらいまでに切ってて、目の色もブラウン、綺麗なコだけど母親似なので外見的には全くディとは似てないが、性格的には子供の頃のディに一番近くて繊細で頑固なんて話は既に書いたと思います。

まあ、あの親父に対して、そのワガママ勝手な生き方を大芸術家だからと手放しで認めるのがふつーか、反感を持つ方がふつーか、これはう〜ん、どうなんだろう。私としてはメリルの反応が一番ふつーかなと思ってるんですけど、どっちと思うかは読む人の性質にもよるんだろうな。でも、お話の中では現実問題としてディを非難してるのはメリルくらいで(世間一般は別として)、デュアンはあの通り一も二もなく反感持つどころか会ったその日から懐きまくってるし、ファーンも実は、彼のひいじーちゃんが若い頃は相当プレイボーイでならしたヒトらしく、「ずいぶん奥さんを泣かせた」なんて話をじーちゃんからよく聞かされていたという背景事情がある。

母親が父親の女性関係で苦労してるのを見て育ったじーちゃんは、その反動で女性に関しては極めてマジメなヒトなんだけど、この話は今となってはひいじいちゃんを苛めるネタにしてて、過去の笑い話として時々持ち出したりしてたんだな。それを聞いたファーンはまだずっと幼い頃、どうしてそんな風に大おばあさまを泣かせてまで、女の人と遊びまわっていたの? とか、素朴な疑問として曽祖父に尋ねたことがあった。その時から、いろいろ昔の話を本人から聞かされていて、そのせいでそういう「女性と遊びまわるタイプの男の心理」っていうのにそれなり理解があったりするらしい。それにこのコは何と言っても貴族社会で育ってるので、「そういうことはよくある」みたいなこともなんとなく耳に入ってくることがあって、それで自分の実の父親があんなふうだということもわりとすんなり受け入れられる素地が元々あったみたいです。この子のそもそもの性格も、そういうことを面白がるタイプなのかもしれないけど、そんなこんなあって、ディに反感よか親しみとか好意の方を持ってるって感じですね。

弟二人がそんなで、しかも自分の母ですらディの生き方は認めているようなことを言うし、メリルとしては絶対にそれはヘン!! と思うんだけど、周りのみんなは自分の方をヘン!! と思ってるように感じられる。それで、そうなんだろうか? と思いながらも、だからってすんなり納得するような子でもない。基本的には素直で優しい子なんだけど、一旦こだわったらしんそこ納得できない限りは自分を曲げないところが、このコもさすがにディの息子だってことでしょう。父親が偉大な芸術家だということは分かってる、分かってるけどだからってこれでいいのか?! この疑問に答えが出るのに、この先延々、延々、時間がかかるんでしょうね、この子の場合は。まあ、「ロバのように頑固」なんて言葉がありますけど、メリル見てるとそういう感じします。それがまた、作者的には微笑ましいんですけど、やっぱ一人くらいこういうコがいないと、お話面白くならないもんね。

で、性質的には絵を描いてれば機嫌がいいってコだから必然的にこもりがちで、人とわいわい騒ぐってことはないタイプ。だから本人は学校でも自分は無口でとっつきにくいと思われてると思ってて、でも親しく口をきく友だちがそう多くはないことも大して気にはしてませんね。あるイミ、根っからの芸術家気質だってことなんでしょうけど、でもなにしろ美形なのは確かだから、実はメリルに憧れてる女の子ってのはけっこういる。ただ、本人が騒がしいのはキライ!!なのが露骨に分かるので、積極的にアタックなんかしたらそれだけで嫌われちゃいそう。そう思うもんで、女の子たちも遠巻きにして溜め息ついてるのが精一杯なんだね。しかし、メリルの方はそういうとこ全然鈍感だから、まるで意識してないというか、女の子なんて目に入ってないというか。このへん、「氷の王子さま」なんだな。

ただ、おとなりにひとつ年上の幼なじみの男の子がいて、学校も同じところに通ってるからその子とは小さい頃から仲良し。こっちの子は活発でスポーツマンタイプなので学校でも女の子にきゃーきゃー騒がれたりする方です。でも、もの静かで優しいメリルのことは気に入ってて、弟みたいに何かとかまってくれてる。それにこの子は親しくしてる女の子の友だちも沢山いるから、メリルに憧れてる子がいっぱいいるのもよく知ってる。でも、それをメリルに言っても、ぜーんぜん本気にしないのよね。「いいんだ、ぼくは絵が恋人だから」とかって。救われないのは、告白もできずに影から密かに見てるだけの女の子たちですかねえ...。ああ、やっぱりそのへんもディの息子ってことか...。

そんなわけでメリルは13歳の現時点でもう「将来は画家」と決めてるから、この先はやっぱりアートスクールから美大でしょう。美大まで行く前に賞取っちゃったりするかもしれないけど、母のマイラがディに言ったところによると、「画家になれようがなれるまいが、あの子は一生絵を描いてるわよ」ですってさ。それほど、絵描いてれば幸せらしいけど、跡取りのことでメリルに言われてディに断りの電話をかけた時、マイラは「私のちっぽけな会社ですら、あの子に継がせるなんてこととっくに諦めているし、ましてやモルガーナ家の当主が務まるような器じゃないのよ。それは本人が一番よく知ってるわ」って言ってた。でも、画家としての才能は、やはり父譲りなのか相当なものがあるのはマイラも認めてるようで、「あなた(ディ)のように画家としてあれだけの仕事をしながら、伯爵さまとしてもやってゆけるような器用な子じゃないのよ。だから、あの子にはかまわずに、絵を描かせておいてやって頂戴」とも言ってます。

ただ、この息子の無欲なところを微笑ましくも可笑しな子よねとは思ってるらしく、メリルに冗談で「本当に欲のない子ね。モルガーナ伯爵になったら、あの大邸宅やリムジンや沢山の会社やお金や財産が全部あなたのものになるのよ? 本当に断っちゃっていいの?」とか、答え分かっててちょっと意地悪言ったりする。そうするとメリルは、「ぼくがなりたいのは伯爵さまじゃなくて、画家だもの。その方がずっと欲張りな望みだと思うけど?」とか、実に単純明快なお答え。それ聞いて、マイラはディが「貴族になんか生まれたくなかった伯爵さま」ってことをつきあってた時からよく知ってるし、自分も自分で会社を興して成功させようという気持ちはあっても、金輪際、伯爵夫人になってリッチな生活をゲットしようなんて卑しいことは全く思わない女性なもんで、親子ってヘンなとこが似るものなのねと内心笑ってたりしますけどね。

でも、ディの方はこのメリルからの正式の断りを聞いて、やっぱりかーと笑いながらもマイラに「きみもちょっとは協力して、メリルを説得してくれればいいのに」とか半分冗談で恨み言言ってました。で、ロベールさんに、「あんなに欲のない女性ばかり選ぶんじゃなかった」とか珍しく愚痴ってて、するとロベールさんの方は「おまえにしては上出来だよ」とか笑ってる。彼の方はもう、三兄弟と初めて会って以来マゴのことに夢中ですから、メリルの断りにも気を悪くしたりするどころか、いやいやなかなか芯のある子じゃないかと反対に感心すらする始末で、その上、やはり真に貴族の血を引く者はそれくらいでなくては、とか思ってたりするからなあ。しかもロベールさんに言わせると、メリルのこの「ロバのように頑固」なところはどうやらビーチェに似ているらしく、結婚してくれと泣いて頼んでる自分に対してビーチェが「私は一人娘なので家を継がなければなりません。父を失望させるわけにはゆきませんし、だから、あなたとは結婚できないんです」と頑固にもつっぱね続けた彼女を思い起こさせるもんだから、余計気に入ってたりするのよね。

でも一方で、ファーンやデュアンは家を継ぐことこそ承諾してくれるけど、ファーンが爵位なんかにこだわってないことは一目瞭然だし、デュアンはデュアンで自分まで断ったらおじいさまもお父さんも困るだろうなとゆー、あるイミ「騎士道精神」みたいなもんで引き受けてくれてる。そうすると、これがモルガーナ家とシャンタン家の血筋ってやつなんだろうなとも思うな。

作者として言わせてもらえば、私はそういうのが好きなんだ。だから、そういう人間以外は書きたくないんだ。結果として、必然的に「天才と富豪と美形」しか書かないとゆー信条が成り立つわけよね。美も富も天分にこそついて回るものというか、精神なくして美も富もなしというか。だって精神的に卑しい人間は当然美しくないし、そういうのはたとえ財産あっても結局はそれ食いつぶす方に行くか、身に過ぎる富を扱いかねて不幸しょいこむか、どっちかにしか行かないじゃん。ヨーロッパの王侯貴族社会ですら衰退に向ったのも、結局は革命を引き起こしたのも、言わば世界を大局的に見ることも出来ず、目先の富のみに卑しく群がることしか考えなかった非啓蒙種の当然の末路。あれだけの権力でさえそうやって衰退するわけだから、これまた、この世の摂理というもので、その摂理の前にはそのへんの小金もちなんぞモノの数ですらないな。ま、もともと私は象徴的な意味で「人間(非啓蒙種)」の日常や生活になんか何の興味もないし、「神々(啓蒙種)」の世界しか書きたくないわけだから、これまた必然の当然でこうなるのは仕方がないのさっ♪

さて話を元に戻して、では今回のタイトルでもある「逃避行」というメリルの作品なんですけど、これは鳥の絵なんです。なんてことない小鳥が枝にとまってるだけの絵で、これはメリルんちの庭に珍しい鳥が飛んできて木にとまってるのを見て、彼が「見かけない鳥だね、どこから来たんだろう」と言ったところへ、側にいたマイラが「このへんに普通にいる鳥じゃないから、たぶんどこかで飼われてたのよ。カゴから逃げ出して来たんじゃない?」と答えたところから生まれた絵で、もうその時、直感的にメリルにはこの構図が見えてる。鳥の絵なんだけど、その鳥の豊かな表情や小さな身体から漲ってくる生命力が「鳥」の姿をしていながら「人間」のみならず、あらゆる「生命あるもの」を象徴してることが目のある者には一目瞭然に分かるような作品で、ただ、メリルとしてはその構図を思い描いた時に、そんなリクツはまるっきり意識していない。後から見ればそれはそういうことだなと分かるんですけど、とにかくもうリクツより先に直感的に鳥と人間、それに他のあらゆる生き物の生命そのものを重ねていて、その直感が見る者にそのまま伝わる感じでしょうか。これが後に「計り知れない宇宙の深遠を感じさせるような何かを内包していて、それが無条件に見る者を感動させる」とか「人間は日々、日常の瑣末なことに囚われて泣いたり笑ったりしているけれども、本当は我々はより大きな宇宙に包含されている存在であることが彼(メリル)の絵を通して感じられ、そのことの喜びと悲哀を一瞬にして悟らされる」とか絶賛されることになるわけです。確かにこういう作品見てると画家としてはこの子はディにも匹敵するくらいの天才かもしれないなと思いますね。

ディは基本的に哲学的資質に大変恵まれているので論理と直感の両方で作品を詰めてゆく画家ですけど、メリルの場合はもっと本能的というか、言葉や論理より直感が先ってとこが独特かな。表現したいことが、言葉より先に画面になってる。口下手というより、もしかするとこの子は絵で言いたいことが何でも言えてしまうので、逆に言葉を必要としてないだけかもしれないなという気もします。

お話が進んでどういうコか分かってくるにつれて書くのが面白くなってきたメリルくんなんですが、私としてはこういうキャラは珍しいですね。まーとかディとか、アレクやアリにしてもそうですけど、うちはわりと最初から個性や天分がはっきりしてて、作者としてこれは主人公クラスに育つなって予感があるキャラが多いのに、メリルはここへ来るまでちょっとどーなるか分からんってキャラでしたから。うーん、なるほどな。やはり作者にとってもコイツは「とっつきにくい子」だったか。

ちなみに「氷の王子さま」っていうのは、これは以前書いたかもしれませんけど、ディの師匠であるバーンスタインが描いた18枚あるディの絵の中の一枚のタイトルで、その絵が世に出た当時からディを形容する言葉として一般によく使われてるものです。で、ロベールさんが、初めてメリルと会った時に、なるほどこの子は他の二人と違うなと思いながらも、ディの子供の頃にこの子が一番近いんじゃないだろうかと思うシーンを書いてた時、「氷の王子さま」という言葉がメリルのイメージとかぶってきて、作者としてはそのへんでやっとこの子のイメージをきっちりつかめたって感じだったんです。そういうのも含めて、いずれ詳しくはEpisode2に出てきますので、そちらでお読み頂ければと思います。ああ、今日はめちゃくちゃ長くなってしまった...。ごめんなさい。

★恐るべきこどもたち★

      

2008/8/15

★ファーン★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

今、Episode2を書いてるわけですが、デュアンはもうこれまでも出まくってるんで、作者としてもコイツのことはもういーかげん良く分かってるぞ、って感じだったんですけど、その影に隠れてたファーン&メリルがどういう子たちなのか、徐々にはっきりして来た感じがします。実際、私は事前の人物設定なんてまるっきりしたことがないヒトなんで、お話書いてるとそれが進むにつれて、そーか、こーゆーヤツなのかと分かってくる。だから、ストーリーそのものに登場して来てくれないと親しくなれないみたいなんですね。

で、まずファーンですけど、この子の母親はモルガーナ家と並ぶ名家の出で、ディと付き合ってた頃は既に未亡人だったというのは前に書きました。そのへんの詳しい経緯はEpisode2で出てきますが、そんなわけでファーンは母方のクロフォード公爵家で育ってるんです。

このクロフォード家ってのは大家族で、既に引退しているファーンの曽祖父が現在95才、その下に息子である現公爵がいて、ファーンの母親はこの公爵の三人の子供のうちの一人だったわけです。上には兄が二人いますが、この兄、つまりファーンの叔父さんたちもどちらも一緒に住んでて、そのためファーンは8人の従兄弟たちと同居してる状態にあるのよね。まあ、広大な邸宅ですから、これだけの大家族でも窮屈ってことは当然ありません。

しかしまあ、この環境で、ただひとり私生児っていうのは肩身がせまかろうって感じしますが、ファーンの母親が現公爵の子供のうちたった一人の女の子だったこともあって、幼い頃から一家のアイドル状態だった。だから、その子供ということでファーンも大事にされてて、今では曽祖父のお気に入りにまでなってるようなので、実際にはそれほど窮屈な思いをして育ったわけではないみたい。

ただ、やはりそういう環境ですから、その子が「曽祖父の一番のお気に入り」で、それでいて従兄弟たちからも妬まれたり、意地悪されたりせずに仲良くやってるっていう事実から、かえってファーンが努力家なんだなというか、社交術にも生来長けてるんだろうなということが伺えますね。

実際、このコはなかなかソツがなくて、例のモルガーナ家で兄弟三人が初めて顔を合わせた時でも、すぐにロベールさんとも打ち解けて、座を盛り上げる話題をさっと提供したり、デュアンがディナーの前に彼の部屋に話に来た時は、笑える話題を出して弟をリラックスさせてやったり、なかなか気を使うヤツなのかなという感じもします。

デュアンより1つだけ上の11才なんですけど、既に背も高くて13才くらいに見える。デュアンが見るからに可愛い可愛いしてるのと比べれば、だいぶ落ち着いた雰囲気のあるオトナっぽい少年って感じかな。髪は少しウエーブのかかったダークブロンドで、瞳はディにそっくりの蒼。学校はディが出たのと同じ寄宿学校に行ってるそうです。成績優秀、はきはきして面倒見も良いので周りからも人気のあるコで、もちろん目立って美形だから、「毎度上級生をかわすのにけっこう苦労してる」とかデュアンに言ってましたね。でもなんかこのコ、上級生を手玉に取るのもうまそう。ディほど根性悪く謀略をめぐらすってタイプではないけど、なんだかんだかわしつつも味方につけるというか、結局仲良くなって、相手にコイツだから仕方ないか、みたいに思わせるとこがあるような気がする。それ考えると、アレクとディを足して2で割るとこうなるかなってタイプかな。ま、これはやはり実業家向きってことなのかもしれませんね。ヒトをいいように転がすのがウマい♪

でも、このへんはまだまだ表面的な顔のような気もして、ファーン自身が今はまだ幼いから、自分でも自分をどこまで把握してるかは疑問。成長するにつれて、裏に隠れてる複雑なとこが出て来そうではありますな。それに比べるとメリルは今既に分かりやすいというか、見えてるまま100%な感じかな。ま、Episode2では、このデュアンのにーちゃんたちのキャラクターも、かなりはっきり出てくると思います。

★逃避行★

       

2008/8/9

★モルガーナの由来★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

ディの名前を決めた時の経緯はこちらで詳しく書いてますが、その時、名字の「モルガーナ」については単に「モーガナ」か「モルガーナ」になるだろうというだけで、どういう由来なのかは何もコメントしてなかったと思います。それも当然で、その時、私はこの名字についてはなんとなく「モーガナ」という女の子の名前がアタマにチラついてただけで、それに特に意味があるとは思ってなかったんです。

ところが結局、語呂がいいので「モルガーナ」と決めてからずっと後になって、昔読んだ本を読み返してたら、これがケルトの戦いの女神の名前だったということが判明しました。昔読んだ本に載ってたんですから、「音」としてはアタマのどこかに記憶されていたんでしょうけど、その意味までは覚えてなかったらしい。

彼のデュアンというファーストネームはスペルが変則的でDiane(このスペルのせいでディと呼ばれてる)、これは月の女神のことですけど、同時に狩猟の女神でもある。で、モルガーナの方は戦いの女神。なんか、やっぱりなーと妙に納得がゆく気もしますが、そういうわけで、ディにはダブルで女神さまの名前がついちゃってたということになりますね。たまにこういう、自分では意識せずに付けてて、後になってイミが判明すると、お話のテーマとかキャラのイメージにぴったりだったなんてことがあるものです。

「モルガーナ」という女神が美形なのかどうかはよく分からないので、この後また調べてみたいと思いますが、ともかくもケルトの女神さまですからね。それがまた作品のテーマとも根底で合ってくるってとこが僭越ながら神がかりかな♪、と思ったりもする。しかし、ダブルで女神さまの名前が付くってとこがなあ...。やっぱりディだわ。私も気づいて、あら、そうだったの?、とびっくりした。

★ファーン★

      

2008/8/2

★Eposode4の先★

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現在、Episode2 を書き進めているとこなんですが、以前書いてたように、「告白」、「発端」、「休暇」と続くってとこまでは決まってたんです。それが最近更に、Episode5から「約束」「迷路」「帰還」というように続くタイトルが出てきて、そのへん考え合わせると、この外伝シリーズはディとデュアンがどーなってくかっていうストーリーが縦糸になりつつも、メリルやファーンとか、ロベールさんやエヴァちゃんなど、それを取り巻く人たちのストーリーが横糸になってて、それが絡まってそれぞれのお話になってくっていう感じで進むようです。

で、まあ思うに、デュアンも今は11才くらいだから、とにかくディが好きで側にさえいられればいい! みたいな? アリシアとディの間に割り込んだのは自分なんだし、いつかきっと、とは思っててもまだ子供だから「ディの恋人のひとり」ってとこでそれなり満足はしてる。でも、これが13〜14才くらいになると、いつまで経ってもアリと別れてくれないディにけっこうきーーーーーーーっってなって来るんじゃないかと思うのよね。ディはディで、デュアンを側に置くようになってから、昔ほどは外泊もしなくなってて、女性の恋人を増やすってことも少なくなってくんですけど、それでもアリとはどうしても別れようとしない。一緒にいるに従ってデュアンがますます可愛くなってくのはなってくんですが、ディってのも屈折してますから、デュアンだけってことにはなかなかしてくれないのよね。

デュアンは今でさえ可愛いのに、13〜14才ともなれば、その頃のディを彷彿とさせる絶世の美少年に成長してるでしょうし、そうなると、密かにディとそういう関係だなんて、まーたちのようなごくごく親しい人間以外は知りませんから、デュアンをどうこうしようというヤツも出てくるだろう。そうすると、かなりこじれてくことも予想される。まあその辺りが「迷路」ってことになるんでしょうけど。

そんなふうに先を読んでゆくと、どんなに頑張って連載しても1年で2話出せたらいい方だし、Episode7までゆくには2〜3年はかかりそうですね。ま、更新ネタが無くならなくていいってばいいんですが、気長にお付き合い下さればと思います。

ところで、Episode2の開始なんですが、Dialogueがやはり今年いっぱい連載かかりそうで、あんまりあれこれ出しても読む方は混乱しちゃうかもしれないし、Episode2自体も思ったより長くなりそうなんで、9〜10月くらいから始めようかなということに変更しました。より完成度の高いものを出すためにも、それくらい時間があった方がいいかなとも思うし。ま、その間、Dialogueの方をお楽しみ頂ければと思いますが、実はDialogue の連載が済んだら、来年は「Colours of the wind」とゆー、これは綾の仲のいい友人で作家の峰岸裕也ってのが主人公なんですけど、それつながりでこっちもシリーズみたいになってるから続けて出すことになってるし、だから、Dialogueもきっちり読んでおいてもらいたいなーとも思うしね。

そして、更にその先なんですけど、そもそも外伝から連載してるってのがヘンなんですが、まーたち4人が主人公の本編は本編で別にちゃんとあるわけで、いずれはそれも出さなくちゃなりません。これはもうGrand Prologueだけでも相当長くなるだろうし、まーがディに苛められてコカイン中毒までなっちゃったりとかするから、それ考えるとけっこう外伝よりずっと壮絶な展開になるだろう。ま、そんなこんなで少なくとも向こう5年は更新できるだけの小説ネタがあるな♪

これまではHP教室とか、英語教室とか、Sweetsコーナーとか、わりと「他でもある内容のものはうちにもある」状態にしておきたかったので、そういうサイトのベース作りがメインになってましたけど、今年中には文法教室も完成させるつもりだし、そのへんが出来たらベースの内容を増やしつつも、今度は「うちにしかないオリジナル」を乗せていくのがメインになるでしょうね。小説とかイラストとか、雑文ももっと増やしたいし、旅行キライだけど、HPネタにするためならどっか出掛けてもいいかなという気もするし。

Magazine Workshop 10周年まであと3年なわけですが、これからの3年でまたどんなふうに成長してくか、作ってる本人も楽しみにしてるんです。なにしろ、更新ごとにトップページは記録して残してあるので、その最初の方を見るとホント、僅か5ページとか10ページとか、カワイイ数で始めてるんですよねえ。それが7年でココまでなったかってのは、なかなか感慨があることです。しかし、それでも目標の1000ページは遠いですけどね。まだまだだなー。

★モルガーナの由来★

        

2008/7/25

アーネストさん・その2

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では、先週の続きです。本来ならお婿さんを迎えて家を継がなきゃならないビーチェがロベールさんのとこにヨメに行っちゃうと、モルガーナ家は誰が継ぐの? ということになるわけですが、それがそもそもこの二人の結婚の最大の障害でもあったわけです。それでロベールさんは先代のモルガーナ伯、つまりビーチェのお父さんに、二人の間に生まれる子供のうちのひとりに継がせるということではどうかと提案したんですね。

ビーチェがまだ十代ってことからも分かるように、この先代は当時まだ四十代入ったとこくらいで、従って孫が家継げる年になるまで十分時間があった。ビーチェは父親に無理は言えないと思って、あまり強くは結婚したいというようなことは言わなかったんですけど、でも、見てるとロベールさんのとこに行きたいと思ってるのは親の目から見ても明らか。それに、こんなに熱心に思い込んでくれる人のとこにやる方が、娘も幸せになれるんじゃないかということで先代もロベールさんの提案を承諾する気になったんでしょう。そんな事情があったので、ディは生まれる前から好むと好まざるに関わらず、運命的に伯爵家を継ぐということになっちゃったのでした。

そして、ディがまだ生まれたばかりの頃。モルガーナ伯爵としては、この孫が自分の後を継ぐことになるんだけれども、一代飛ばすことになるから相当早い時期に伯爵家の当主としてやってかなきゃならなくなるだろうと思わざるをえなかった。しかし、彼が信頼していて、ずっと助けになってくれてる彼の執事はこの子が大きくなる頃にはそろそろ引退する年になってるだろう。モルガーナ家ほどの大家ともなると、執事と言っても単なる使用人ではない。そこで働く人間を選んだり雇ったり、躾けたり、教えたり、それに主の社交や仕事を助けたり、家や財産を管理したりなどなどなど、つまり大家の家政を預かれるだけの知性も教養も持ち合わせている人物でなければ、なかなか家の中を快適に整えておくことはできない。しかも、主との間で信頼関係を築くには時間がかかる。

そんなこんな考えて、先代は当時の彼の執事、つまりアーネストのお父さんに誰か信頼の置ける、適当な人物はいないだろうかと相談したわけです。できれば早いうちからディにつけてやりたいし、ってことだったんですね。

で、このお父さんも最初はどうしたものかと考えてたんですが、ふと、自分の息子だったら、子供の頃から自分の手伝いもしてくれているのでモルガーナ家の中のこともよく心得ているし、性質も誠実でアタマの回転も速い。これ以上の適任はないのではないかと考えた。しかし、そうは言っても、成績優秀で既に大学院にまで進んでいる息子に、しかもアーネストが作家になりたいと思って勉強や研究にいそしんでるのもよく知ってるのに、そこへ、自分の後を継いで気苦労の多い執事なんて職につけとはなかなか頼みにくい。でも、まあダメもとで言ってみるだけ、みたいな感じでこれこれこうと息子に事情を話したわけです。

当時、アーネストは大学院を出たら、今度はそこで教鞭を取りながら好きな研究を続けて、小説や評論をコツコツ書いてゆければいいなって思ってて、だから作家を目指しているとは言っても、安易に流行作家になりたいというわけじゃなかったのね。それで、父から話を聞いて、伯爵の気持ちも分かるし、考えてみると執事になったからと言って小説や評論を書くのを諦めなきゃならないというわけでもない。自分の研究を続けるためには大学に残って教授になるのが一番いいだろうとこれまでは思っていたが、モルガーナ家の執事ともなれば、自分の父を見ていても分かるが単なる使用人ではないし、それに、なんと言ってもモルガーナ家は現代のメディチ家と言っても良いほど芸術世界と深い繋がりがある。これまでも見てきて、そこに出入りする人たちに著名な知識人や芸術家が多いこともよく知っているし、蔵書や美術品のコレクションもクランドル十指に入るとまで言われるほどである。だからその点においてはモルガーナ家の場合、美術館のキュレーター(館長、管理官)くらいの造詣がなければ執事なんて務まらないという事情もある。そのへん考え合わせると、もしかしたら大学で教えてるより、こっちの方がはるかに面白いんじゃないかという気もして、じゃ、とりあえず院を出るまで、休暇にお父さんの手伝いをしながら考えてみますよ、ということになった。

さて、翻って、ビーチェとロベールさん夫妻ですが、ロベールさんは無理な事情を押してビーチェとの結婚を許してくれた義父には大変感謝していて、それに自分の両親は既に亡くなっていることでもあるし、ビーチェを自分の国に連れ帰ってしまうよりも、このままクランドルに置いておく方が良いのではないかと考えた。自分は仕事で世界中あっちこっち飛び回っているのに、ビーチェをあまり知り合いもいない上に環境も違う異国に連れてって淋しい思いをさせるのもなあ、というのと、恩ある義父に跡取りのことで不安感を抱かせるのも避けたいし、家を継ぐ子供もクランドルで育つ方が文化的に馴染めるのではないかとか、そんなこんな考えて、ビーチェと子供はモルガーナ家に住まわせ、自分がこっちに帰ってくればいいじゃないかという結論に達したのでした。だから、ヨメにやったとは言っても、実際はロベールさんの方がモルガーナ家に婿入りしたような格好で暮らすことになったのね。

そういうわけで、ディは生まれた時からモルガーナ家で育つことになり、アーネストが大切に思っているビーチェも結婚したとはいえそこにいる。執事になるという話をどうしようかなあと思いながらお父さんの手伝いをしてる若きアーネストにとっては、小さい頃から家族のように思っている人たちがいる環境にずっと住めることは非常に居心地がいいってことがやってるうちにどんどん判明してきてしまった。それに先代はアーネストにもずっと目をかけてくれていて自分の息子のようにも思ってくれていたし、アーネストの方も彼を尊敬していた。そんなこんなで、どう考えても大学で教えるよりこっちの方がいいよなー、みたいな方へ傾いてったとしても不思議はなかったかもしれない。

しかも、問題はこの、最終的には自分が仕えることになるだろう伯爵の孫、つまりディですね。これが自分にも懐いてくれて、ひじょーーーーにっ、可愛い。ビーチェと顔立ちもそっくりってのもポイント高いし、幼いながらも賢そうという兆候は既に見えるし、気に入っちゃったなってことで、アーネストは大学院を卒業する時になって、じゃ、お父さんの跡を継ぎますと決めちゃった、とこういう経緯なのでした。

まあ結局、アーネストさんて彼自身が既に芸術家気質なのよね。作家になって売れまくってチヤホヤされて金持ちになりたい、みたいな、そーんな俗なコトは、はなっから全然考えないタイプ。逆に、偉大なる芸術世界の中枢に関わっていたいという気持ちの方が強くて、だから余計、ディみたいに芸術至上主義のやつとウマが合うんだろうな。そんなアーネストから見て、育つにつれて画家としての天分が明らかになってくるディは、単にお坊ちゃまだから仕えるというんではなく、彼自身がディのその画家、芸術家として資質に惚れ込んで、その仕事をよりやりやすくしてやりたいと思わせるような存在でもあったということなんでしょう。

で、デュアンが現れる頃になるとアーネストも六十代。でも、ディのすすめとはいえもう評論も出版してるし、その作品が素晴らしいのでその道の専門家の間では既に有名にもなってる。ディとしては、この後うまいこと唆して、小説の方も出版させてやろうという陰謀も持ってたりするんで、執事を引退する頃には作家になっちゃってるかもしれませんね、アーネストさん。

芸術に関わるというのはそういうふうに「一生の仕事」なわけで、たかだか世間で売れるか売れないか、成功するかしないかなんてのは小さい小さい、と私は思うんですが、ともあれ、こういうふうにセルフストーリーが見えてくると、今度はアーネストから見たモルガーナ家の人々なんてテーマのお話も面白いかもしれないぞと考えている今日この頃なのです。

★Episode4の先★

       

2008/7/18

アーネストさん・その1

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今回は、ディんちの執事のアーネストさんのお話をします。なんか、Episode1からこっち、これは本編からすれば立派な外伝だから別に構わないんですけど、なぜかモルガーナ家が舞台の中心になっちゃって、それでアーネストさんも頻繁に登場することになってますね。

ディが生まれたとき、彼は二十歳少し過ぎるくらいでしたから、デュアンが話に登場する頃には既に六十代になってらっしゃるわけで、そうすると、あやぼー的にはいろいろ彼のセルフストーリーも見えて来たりするわけです。

Episode1の最初でちょっと彼のことも書いてたと思いますが(特に意図して書いたわけじゃなく、なんとなく出て来た)、そのへんからわりと詳しく見えてきたかな〜って感じなんです。で、そこでも書いてた通り、現在ではディのすすめで美術評論をペンネームで出版したりもしてて、だから、元々なかなかの才人であることは確なようですね。そもそも、芸術至上主義のディが出版をすすめるということ自体が凄いことで、彼としてはハンパな「自称・評論家」が横行する中で、アーネストのような才能のある人が本を出さないなんて間違ってる! とずっと思ってて、それをその通り力説して説得したらしい。そしたら、アーネストさんは、そんなにおっしゃって下さるなら、ペンネームということでしたら、と折れて、ディの熱意に負けた形で出版を承諾した、と、こういう経緯だったようです。

ではなぜ、ディは彼が小説や評論をコツコツ書きためているということを知っていたのでしょうか。だいたい、あの控えめでぢみな「執事」という職に徹しているアーネストさんが、そうそう自分の書いたものをご主人さまに見せびらかすわけがない。でも、まだディがずーーーーっと子供の頃は、アーネストも今みたいに主従関係に徹してなかったから、ディにとって彼は年の離れた兄さんか、仕事で留守がちなロベールさんの代わりみたいな存在だった。つまり、とっても仲が良かったのよね。それで、アーネストもまだ若かったし、ディも懐いてるしで、せがまれるままにいろんな話をしてやってて、そのうち彼が小説とか書いてると知った幼いディが、読ませて読ませてなんて言うもんだから、ちょっと見せてくれたりもしてた、と、そんな感じでしょう。なにはともあれ、バカでは大家(たいけ)の執事なんてものは務まらないわけで、実は、アーネストさんは大学院まで出てるんですってさ。

では、若い頃は作家を目指して大学から院にまで進んだ彼がなぜ、モルガーナ家の執事になるに至ったか、それを大元のところからお話してゆきましょう。

そもそもはアーネストのお父さんが、モルガーナ家の先々代(ディのひいじいちゃん)の晩年から、先代(ディのじいちゃん)にかけて、執事をやってたというのが発端なんです。それで、なにしろ広い敷地に建ってる大邸宅ですから、別棟なんてものもあって、そちらに執事さん一家が暮らしてた。従って、もうその頃からモルガーナ家にとってアーネストは家族の一員みたいなものだったんですね。で、幼い頃からお父さんの手伝いとかしていたので屋敷にも出入りしてたし、利発で躾の行き届いた礼儀正しい子供だったこともあって先代からも可愛がられてた。そうこうするうちにモルガーナ家に長女誕生。結局これが一人娘になるんですけど、それがベアトリス、つまりディのお母さんなわけです。

彼女が生まれたのはアーネストがまだ6才くらいの頃だったようなんですが、とっても愛らしい赤ちゃんだったので、彼も妹みたいに可愛がってよく遊んでやったりとかしてて、それでビーチェもすっかり懐き、少し大きくなってからは本当の兄さんみたいに慕って後をついて回るくらいだったらしい。

そして〜♪月日が流れ〜♪、アーネストさんは成績優秀で前途有望な少年に成長し、将来は作家になりたいという夢を持ちつつ大学に進む年になりました。一方、このころビーチェは12才くらい。可愛い盛りの美少女に成長してます。まあ、何事にも控えめで分をわきまえるというのが生来の性質みたいなアーネストさんですから、ビーチェが年を追うごとに美しくなってゆくのを目の当たりにし、多少は憎からず思うところがあっても、だからってなにしろ主筋のお嬢様ですから手を出すとか、そんなことは考えもしない。まあ、半分は妹みたいな気持ちで見守ってて、幸せになって欲しいなあとか思ってたわけね。その頃はまだ、お父さんの後を継いでモルガーナ家の執事になるというような話は全然出てなかったようです。

ところが、まさかまだ結婚なんて早い!! という十六歳でビーチェがロベールさんと結婚することになっちゃう。このへんの経緯はEpisode2で詳しく出てくることになってますけど、要するにこれはロベールさんがひと目惚れで、絶対ビーチェをヨメにすると頑張った結果なんです。元々、モルガーナ家の先代はとても優しい人で娘のことも可愛がっていたから、政略結婚みたいなことをさせるようなヒトでは全然ないし、まあ一人娘だからいずれは良い婿を取ってとは考えてたみたいですが、それだってビーチェに無理強いするつもりは無かったようですからね。だから、アーネストにしてもまさか十六歳で結婚しちゃう! なんて思ってもみてなかったし、それでこの話はけっこうショックではあったようです。

でも、詳しい話を聞いてみると、ロベールさんてのはビーチェより十五も年上とはいえ、もう彼女に夢中で、しかも家柄ばかりじゃなく彼の人柄がとっても良いらしい。陽気でおおらかで気さくで、細かいことは気にしないってタイプなんですね、彼は。まあ、わりとそのへん、ハタチ過ぎてからのディの性格に反映されてるような気もして、やっぱり親子か? とも思えるんですが、ともあれ、ビーチェもなんだかんだで結婚するなんてことになる頃にはすっかりロベールさんになついちゃってるし、何よりもこの人ならビーチェを幸せにしてあげてくれそうと思わざるをえなかったので、アーネストも素直に祝福することが出来たみたい。

しかし、この結婚には、過去のプロット連載を読んで下さってる方はご存知かも知れませんが、ひとつ重大な問題があった。それが、モルガーナ家の一人娘であるビーチェが、既に親から自分の家を継いでるロベールさんのとこに嫁入りしちゃったら、いったい誰がモルガーナ家を継ぐの? とゆー問題だったわけです。

と、いうことで、なんか、今日もやたら長くなってるので、この後は続くということにしましょう。「その2」は来週書く予定です♪

★アーネストさん・その2★

        

2008/7/8

Episode2

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

今週は、プロット連載はお休みして、Episode2の進行具合などをちょっと書いてみたいと思います。と、言うのは、あんまりこれから連載するお話の大筋をプロットで書いちゃうと、本文が出た時の楽しみが半減しちゃうじゃないですか。以前みたいに連載する前だったら、まあいつそんな話が世に出てくるかも分かんないんだし、あらすじだけ書いて読んだつもりになってもらうとか、それで全然良かったんですけどね。せっかく本文連載することにしたんだから、やっぱり完成作の方で読んでもらう方が絶対いいに決まってる。それで、プロットは、本文にはなかなか出て来そうにないエピソードとか設定とか、そういう大筋からはちょっとはずれてるけど、知ってると何倍も楽しく読めるような部分に限っといた方がいいかな、と思うわけです。

それでもメリルくんが画家への第一歩を踏み出すことになる受賞作の話とか、アーネストさんがいかにしてモルガーナ家の執事になったかとか、いろいろ書いときたいことはあるんですが、それはまたそのうちということにしておきましょう。

さて、Episode2の話ですが、タイトルが「告白」なのは前にも書きました。このタイトルでゆくと、どうしてもハイライトはディとデュアンがいかにして親子にあるまじき関係になっちゃったか、というところになると思うんですけど、でも、それを書こうとするとやっぱりそもそもデュアンがディに会う前からどんなに画家としてのディのことを好きで尊敬していたか、そのへんから書いてゆかないと、結果としてあんな関係になっちゃうことそのものに説得力がなくなっちゃう。だから、この話はデュアンがディと初めて会うとこから始まって、そうなるとどういう経緯でモルガーナ家を継ぐことになったかも書かなきゃならなくなり、そこには当然、メリルやファーンや子供たちの母親とかロベールさんなんかも絡んでくることになる。

今のとこ全体の3分の1くらいのとこまで書けてるんじゃないかと思うんですけど、それで36000字くらいだから、今の予測ではその3倍で11万字くらいで終わるんじゃないかという気はする。しかし、Episode1も予測に反して最初思ってたより2倍近くの長さになったし、書いてる間に次々と新しいシーンが見えてきちゃうんだから仕方ない。結果として、もしかするとEpiaode2ももっと伸びるかもしれない。

まあ、元々は「告白」なんてタイトルですから、ディとデュアンの関係にスポットを当てて、Episode1と同じくらいかなとか漠然と考えてたんですけど、いざ書き始めると、あのシーンもこのシーンも必要だなあということになって、そうなるとメリルやファーンもお座なりに書いとくわけにもゆかず...。

ともあれ、今は第十章まで書き上げたとこで、それでやっと子供たち三人がモルガーナ家に集められるシーンまで辿りついた感じなんです。そうするとこれから、メリルが家継ぐの継がないのでゴテて、結局デュアンにその役が回って来て、Episode1でちょこっと話だけ出てたファーンとデュアンのお披露目の大パーティーとか豪勢なシーンもあって、その前には当然カトリーヌさんが「やだやだ」とゴテるあのシーンとか、ディがデュアンに「家継いで欲しい」とお願いする例のシーンとか、あんなんも全部入ってくることになりますね。で、それを超えてから、やーーーっと、タイトルが示す本筋に辿りつく、と。ああ、大変だ。

なんか、「誘拐」の時もそうだったんですけど、たいていの場合、書き始める前はメインの大筋くらいしか分かってなくて、それって例えばEpisode1だと、「デュアンとエヴァが誘拐される」とか、Episode2だと「デュアンがディの恋人になる」とか、単にそれだけしか分かってないような状態で書き始める。しかし、書いてるとその大筋を実現するためには、実に沢山のシーンを必要とするんだなあと、後になって気がついて、ああ、8月から連載始めるなんて書かなきゃ良かったと、結局そこへ辿りつくのであった(計画性絶無で発言してるからな、私は...)。

でもまあ、とにかく十章までは書けてるので、多分、8月の終わり頃までにはかなり出来上がりに近くなるだろうから、連載始めることは始められるんではないかと思います。ただ、まだDialogueを出し始めたとこなんで、あれがその時どのくらいまで出てるかで、こっちが少し連載開始を遅らせなきゃならなくなるという事態は起こるかもしれません。そのへんは今ちょっと考えてるとこです。

しかし、Episode1の連載を始めた当初、今年はEpisode4まで出せるだろうという、まるっきり何の根拠もない展望を漠然と信じてたんですが、結局、毎週毎週、一生懸命連載しても、今年はEpisode2が全部出たらいい方じゃないかって感じになってきちゃいましたな。書く方はもう少し先まで進むと思うので、それ考えると、今年はこれまでの半生で一番沢山小説を書いた年ということになるかもしれませんけど。まあ、これは私にとってとても良いことなんではないかと思います。こんなきっかけでもなきゃ、いつまでも出来上がらないままですからね。

で、これから十一章を書くんですけど、おじいさまに初めてお目通りするというその日、最初にデュアンがモルガーナ家に着いて、次がファーンで、そしていよいよ怒りまくってるメリルくんの登場となるわけです。果たして、メリルくん VS ディの対決、どうなるのかな〜、と思いつつ、それはこれから書きます。ああ、楽しい♪

★アーネストさん・その1★

      

2008/6/26-6/27

★Dialogue★

やっとなんとかページデザインも決まって、アップできる運びとなりました。ついでにEpisode1の独立バージョンも同じデザインの色違いで作っちゃったので先に出しましたが、なんか豪華装丁本の中味って感じになって、けっこうキレイに出来上がりました。連載時と違って、今度は一気に通しで読めますので、おヒマな時、読み返したい時、そちらの独立バージョンもご利用下さいまし♪(トップページのこちらよりリンクしてます。)

Dialogue の方のページは赤黒使ってるので、Episode1のよりぐっとハデなカラーリングになってますけど、もともとそっちの方が別のページで使おうと思って随分前に作ってたデザインだったんです。それはそれでなかなか凝ったFlash画像になってて気に入ってるんですが、まだ公開する機会には恵まれてなかった。それで、今回、どんなページにしようかなーと考えてた時にたまたまそれを見つけて、流用したというわけです。

さて、そのDialogueってお話ですが、公開するっていうので昔のノートを見てみたら、これも起源が古い。なにしろ最初の着想が1986年の10月ですってさ。まーたちの話よりは新しいけど、それでもおい、22年前だよ。自分でもひぇ〜って感じですが、いったいその間、私は何をしてたんだ??? ちなみに当時、私がいくつだったかについては、深く考えないよーに。

ともあれ、この話が生まれた経緯についてはまた「こぼれ話」みたいなページを作るつもりなので、お話の背景やシーンに使われてる道具立てなんかと一緒にそちらで書こうかなと思ってるんですけど、とにかく86年に着想があって、バラバラに書いてたエピソードをこれから公開する第1部にまとめ上げたのが96年の話。で、公開が2008年、つまり、10年かかって書いて、更にまた10年かかって公開にこぎつけたってことですね。う〜ん、なんだかなあ...。(どうせ私はそういう性格よ♪)

公開しようと思えば、Magazine Workshopも既に7年もやってんだからいつでも出来たはずなんですが、そのうちね〜、とか言いながらそのままになってたのが私よね。まあでも、何事も起こるべき時に起こるというか、根本的に「果報は寝て待て」ってのが私の生活信条なんで、公開することになったということは、公開されるべき時に来たってことなんでしょう。そういう時はすんなりデザインとかも出来上がったりするもんなんだよね。

今、最終チェックやってますので、7月1日にPrologue約25000字を一挙公開することができると思います。その後、隔週連載くらいでお届けしてゆきますので、ま、おヒマなら読んでみて下さい。

ところで、この作品の今回公開予定になってる分は全体で約80000字くらいなんですが、それってこの前出したEpisode1より少し多いくらいの分量なんですよね。Episode1は1ヵ月半ほどで最初から最後までほぼ順番に書き上げたので、Dialogue の方がずっと量が多いと思ってたんですけど、実際に文字数を数えてみたらそれほど変わらなかった。なにしろ、Dialogue はバラバラなエピソードを10年かけてぼちぼち書いて、やっとこさ、まとめあげたような作品なので、自分的にはそれはもう大長編!! なつもりだったんです。たしかにそれはそれなり長いけど、同じくらいの長さなのにEpisode1はたったの1ヵ月半で書いてるじゃないですか。だからこっちは「わりと短い」という印象が自分としてはあるんです。それがほぼ同じくらいの分量だったってことは、それだけ小説書くウデが上がってるってことなのかなあと考えるとなかなかうれしいものがありますが、ここ10年近く、サイト作るのにいっぱい文章を書いてたから、その分いくらか向上したとしても不思議ではないな。

実は、Dialogueをまとめあげた年に、もう2本、第1部をまとめあげた話がありまして、その3本を書き上げた時、もうこれ以上文章が上手くなることはないだろうと思ったもんだった。それは、それより以前に書いたものって、けっこう今読むと「なに、これ?」と自分でも思うくらいヘタだったりするんですけど、まあ、そういうものは、よくある話で今読み返すなんてことは恥ずかしくって出来ない! たどたどしいとゆーか、堅いとゆーか、「あ〜〜〜、なんて〜〜〜、ヘタなんだ〜〜」と、3行読んでつっぷしてしまうくらいヘタ! なんだけど、そのDialogueも含めた3本というのは、今でも「おお、なかなか」と思いながらきっちり最後まで読み通せるくらいに上手くなってるのよね。だから当時、「もうこれ以上は上手くなる余地はない、最高のとこまで来た」みたいに思ったのも、ま、自己満足だったかもしれませんけど、それなり根拠のあることではあったよね。

でも、ずーーーっと、サイトでいっぱい文章書いて来て、その後、まーたちの話を2年くらい前から再開したら、おや、以前より更に良くなってるじゃないか、みたいな? そういう実感があって、そうするとMagazine Workshopとかでいろいろ記事を作ってたのも、いい勉強になっていたんだなあと改めて思ったりしました。まあ、サイト作ってること自体が、私にはいろいろ幅を広げるきっかけになったりしてるので、そこから学ぶところも多いのは確かです。

とゆーことで、もうすぐ公開いたしますので、そちらもどうぞヨロシク♪

       

2008/6/23

★ケンちゃん・その2★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

今週は、本日のワン・シーンということでお届けしようと思うんですが、Episode1でちょこっと名前だけ出て来たルドルフさん。ディが自分ちの事業の運営を任せているブレイン・チームの筆頭で、元はロベールさんの部下だったというヒトですが、覚えてらっしゃるでしょうか。

今回は、ディにケンちゃんの身上調査を頼まれたルドルフさんが、報告書を持ってやってくるところなんか書いてみたいと思います。先週のプロットを元にどんなふうなシーンになるのか? では、どうぞ。

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「これは、アシュレーさま、ようこそいらっしゃいました。だんなさまがお待ちかねでございますよ」

「やあ、アーネスト、久しぶりだね。ディはアトリエかい?」

「はい、そちらの方にお通しするようにと承っております」

アーネストに迎えられて入って来たのはルドルフ・アシュレー、ディがモルガーナ家麾下の企業群の運営を実質的に任せているブレイン・チームの筆頭だ。元はシャンタン伯の部下だが、ディが18歳で祖父から爵位を継いだ時、ロベールがその補佐役として付けた人物である。

当時はルドルフ自身がまだ二十代後半と極めて若かったものだが、それから既に30年近くが経った今では、いつの頃からかたくわえた口髭のせいもあって、すっかりダンディな紳士になっている。

「デュアンは?」

「今日はまだ学校からお帰りになっておられません。そろそろお戻りかとは思うのですが」

「じゃ、彼と一緒?」

「ウィンスローさまですか? はい、坊ちゃまの送り迎えをして頂いておりますので」

「デュアンも贅沢なヤツだね。あの子は自分のボディガードがどういう人物か、まだ知らないんだろう?」

「ええ。だんなさまが言う必要はないとおっしゃいましたので、まだご存知ないと思いますよ」

「で、ボディ・ガードだけじゃ飽き足らず、今度は家庭教師に抜擢したんだって?」

「左様でございます。坊ちゃまは大変、ウィンスローさまのことがお気に入りのようで」

アーネストが笑って答えるのへ、ルドルフも微笑を返した。

「ただ、私の方といたしましても、坊ちゃまの先生になっていて下さる方がなにかと」

それへルドルフは頷きながら答えている。

「まあ、そうだろうね。彼の大モトの出自を知らないならまだしも、知ってしまうとちょっと使用人としては扱いづらいだろう」

「おっしゃる通りです」

話している間に二人はアトリエの扉の前に着き、アーネストがアシュレーさまがお見えです、とディに声をかけると、中から入っていいよという彼の声が聞こえて来た。

「やあ、ディ。久しぶり」

「ようこそ、ルディ。どうぞ、こっちに来て座って」

後ろでアーネストが丁寧に扉を閉める音を聞きながらルドルフはディのいるソファの方へ歩いて行き、その向いに腰掛けた。

「昨日ちょっと電話で話した通り、まあ、いろいろワケありのようなんだけれどね。報告書はこれ」

「有難う」

「うちは直接関係している部分がなかったので私もよくは知らなかったんだが、しばらく前から彼はちょっとした台風の目みたいな存在だったようだよ。特に、経済界でもウィンスロー家と関わりのある部分では」

「事業の方は彼の父親が継いでいるんだろう?」

「それは確かにそうなんだ。しかし、経営からはすっかり身を引いていたとはいえ、トーマス・ウィンスロー氏は未だ麾下の企業の大株主だったからね。それがそっくりそのまま、孫のケネスくんに受け継がれたともなれば。ましてや、その親子が犬猿の仲ときているから」

「そんなにこじれてたわけ?」

「らしいよ。まあ、そうでもなければウィンスロー家の御曹司が傭兵なんてアウトローなことをやっているわけもないと思うし」

ルドルフの言うのへ、ディは笑っている。

「確かにね。ぼくもそのへんが不思議で貴方に調査を頼んだわけだから」

「詳しいことはそこに書いてあると思うけど、やはり最大の原因は夫人...、ケネスくんのお母さんだが、彼女が早くに亡くなったことなんだろう」

ディは頷きながら聞いている。

「それに、彼は大学では経済と政治をダブル・メジャーで専攻してる。そっち方面に素人というならまだしも、いつ経済界に入ってもおかしくない素地があるわけさ。ましてや、トーマス・ウィンスロー氏の直系の孫ときてはね。血統書付きな上に、それに相応しいIQ、しかも若い。これはどうかするとクーデターなんてこともあるかもしれないと、もっぱらのウワサだ」

「なるほど」

「しかし、その彼がデュアンのボディ・ガードとはねえ。私も聞いた時は驚いた。ロウエル卿は当然、そのへんの事情は承知の上で彼をモルガーナ家によこしたんだろう?」

「それはそうだと思うよ。ただ、アレクのことだから、あんまり気にしてはいなかったと思うけど」

ちょっと考えてみてルドルフは納得したように頷いた。

「だろうな」

「ぼくとしてはなかなか面白い人物を寄越してくれたと思ってるけどね」

「それにしても、これはまたいろいろ憶測が乱れ飛んでも不思議はない事態だなあ。元々がそういう立場にあるケネスくんが、既にロウエル卿のお気に入りということは天下のIGDと浅からない関わりがあるわけだし、その上、モルガーナ家の後継者の家庭教師におさまったとあっては」

「人脈ってこと?」

「最強だろう?」

「それは確かに」

「それに、聞いてるとデュアンのみならず、きみもどうやら彼のことは気に入ってるようだし」

ディはそれには答えないで微笑を返しただけだ。

「しかし、ケネスくんとしては回りがどう取り沙汰していようと今日明日に行動を起こすつもりでもないようだね」

「それはそうだと思うよ。とりあえずは、通常の社会復帰を期してデュアンのボディガードに志願してくれたそうだから」

「今日は、私も会って行っていいのかな」

「もちろん、お好きなように。ただ、彼のことをこちらが知っているとはまだ話していないし、貴方に調査を頼んだことも内緒だから、そのつもりでいてさえくれれば」

「いいよ。心得ておこう」

言っているところへアーネストがコーヒーを運んで来た。それと一緒に飛び込んで来たのはデュアンだ。

「いらっしゃい、アシュレーさん」

「やあ、デュアン。今帰ったのかい?」

「ええ。いらしてると聞いたものだから、ご挨拶しておこうと思って」

「おかえり、デュアン」

「ただいま、お父さん」

「ケンは?」

「クルマをガレージに入れてから来ると思うよ。ね、アシュレーさん。今日も一緒に食事していってくれるんでしょう?」

「ご招待いただけるなら」

「あれ? 来るといつもそうするじゃない。いいよね、お父さん」

「うん、ぼくがまだ誘ってなかったからだよ」

「そう。じゃ、ぼく着替えてくる」

「ああ、そうだ、デュアン。ケンにちょっとアトリエに寄ってくれるように言っておいてくれないか」

「いいよ。じゃ、後で」

アトリエから駆け出してゆくデュアンを見送りながら、ルドルフが笑って言っている。

「元気だね、相変わらず」

それへ、コーヒーをテーブルに置きながらアーネストも笑って言った。

「坊ちゃまがみえてからというもの家の中が大変若々しくなりまして、私どもも毎日が楽しゅうございますよ」

「あの子を見てると、我々も年を取ったとつくづく思うよ。そうじゃないか、ディ?」

「ぼくはまだ若いですから」

「こらこら。3人の子持ちが何を言う」

三人が笑って話しているところへノックの音が聞こえて、伯爵、お呼びですかとケンの声がした。話題の人物の登場に、ディとルドルフは意味ありげに目を見交わし、それからディは入っていいよ、と答えた。

★Episode2★

       

2008/6/23

★ケンちゃん★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

なりゆきでデュアンのボディーガード兼家庭教師にされてしまったケンちゃんですが、まーが「けっこういいうちの出」とか言ってたので私も気になってはいたんです。うちではたまにいますね、こういうキャラ。全く脇役で出てきたのになんか作者に気に入られてしまい、その後、詳細な生い立ちとか背景が出てきてしまうとゆー。早い話、ディなんかもそうですけど、そんなだもんでうちでは際限なくキャラが増える傾向にあります。

そもそもふつーの小説ではメインな登場人物以外をそんなに事細かに設定する必要もないし、やっても編集者とか選考委員とかに「必要ない」とか言われたりしちゃうんじゃないかと思うけど(だから、あいつらのやることには芸がないんだ)、私はそういう意見には「うるさい」とヒトコトだけ返して、自分の世界にどっぶりハマりこんでいたいヒトなんだな。それが気に入らんやつは読まんでいい、というか、最大多数の最大幸福なんて私にはどーでもいいんで、面白そうと思うヤツが出てきたら、本筋からはずれようとどーしよーと追っかけていっちゃう。これも、私の話がいつどこへ飛んでくか分からない原因のひとつだな。でも、いいんだ。ウリものにするつもりないから。

さて、そーゆーことで、今日は新顔のケンちゃんの背景をあれこれ書いてみたいと思います。

まずは、ディんちの執事のアーネストさんが、ケンを使用人として扱ったものか、ロウエル卿からお借りしている客分として扱ったものか、どっちにしたらいいんでしょうねとディに相談したことから始まります。家の中の秩序を守る立場のアーネストからしたら当然の疑問だったんですが、それに加えて彼は友人からケンが「トーマス・ウィンスロー氏のお孫さんだそう」という話を聞き込んでいて、それもあってちょっと判断に困ってたらしい。

このトーマス・ウィンスローって人は既に亡くなってるんですけど、生前は経済界の重鎮でもあった人で、ウィンスロー家ってのは貴族ではないけど歴史は古い家柄なんだそうです。で、ディはアレクやまーが既に信頼している人物だということで、ケンのことは特に調べる必要もないと思ってたんですが、その話をアーネストから聞いて興味を持ち、改めて身上調査みたいなことをする。もちろん、ケンには内緒です。

それによると、ケンはそのトーマス・ウィンスロー翁のたった一人の、それも大変お気に入りの孫だったようで、そのおじいさまから相当な遺産を残されてるというウワサがある。ふつー、それはまずケンの親に行くはずのものなんですけど、なんでおじいさまは個人資産の大半をケンに遺したというウワサがあるのか。

ケンのお父さんというのは入り婿で、つまりウィンスロー氏の一人娘と結婚して事業を継いではいるんですけど、この夫妻、つまりケンの両親ですね。これががうまくいってなかった。ウィンスロー氏としては、その経営手腕を見込んで娘と結婚させたんだけど、こいつが仕事はできるがロクでもない男で、ケンのお母さんをあまり幸せにはしてくれなかったらしい。ケンは幼い頃からこの父親が妾作ったりして、優しくて気の弱い母親を泣かせてるのがすごくイヤで、それもあって父親とは仲悪かったようなんですが、それに加えて自分が成り上がりなもんだから、その反動でやたら家柄家柄とうるさくて、ケンにも名門の学校を出て、いいとこの令嬢と早くに婚約して、みたいなことを押し付けて、本人の意志をまるっきり無視したようなレールを敷こうとするのも衝突する元だったわけね。

そうこうするうちに、まだケンが十代半ばくらいの頃に、あまり丈夫じゃなかった母親が心労もあって亡くなってしまう。そうしたらこの父親はどうしたか。妾だった女を後妻に迎えて、しかもそっちで出来たケンの腹違いの弟まで一緒に家に入れた。これが、後に大学に入った時にケンが家を出る最大の原因になったようですけど、この後妻におさまった女ってのがめちゃくちゃデキが悪くて、ケンを差し置いて自分の子供に家を継がせようとしてるのがありありと分かる。ケンはその父親と違ってウィンスロー家のまごうことなき直系ですから、おじいさまの血筋とか躾とかもあって誇り高いし、だから財産目当てとかお家騒動とか、そういう醜い争いに巻き込まれるなんて身の穢れとか感じるようなヤツなのよね。で、財産なんか欲しければくれてやる、くらいに思ってたらしいですけど、おじいさまは自分の死後、全財産をあのデキの悪い婿に譲ってしまって、それが万一にもケンではなく腹違いの弟の方に受け継がれるようなことになったら、事実上、ウィンスロー家の血筋は絶えてしまうじゃないかと心配する。

そもそもうまくいかないと分かった時点でさっさと離婚させておけばよかったものを、世間体を気にしてそうしなかったことを悔やんでたこのおじいさまは、ケンをそういう家庭で育ててしまったことにも負い目を持ってて、そんなこんなで事業の方は仕方がないが、彼の莫大な個人資産の方はケンに譲ると遺言して亡くなるわけです。おじいさまが亡くなるのは、ケンが既に傭兵なんて仕事を始めてからのことですけどね。

それに先んじて、後妻の継母と反りが合わず、大学に入ると同時に独立したケンなんですが、今度は大学卒業と同時に婚約なんてことを無理矢理決められるに至って、とうとう大爆発。いーかげんにしろ、縁切ってやると怒りまくって父親と絶縁。まあ、だからって別に自暴自棄になって傭兵なんて仕事を始めたわけじゃないですが、これはおじいさまとも話し合った結果、やってみたいならやってみろと言われて最初はクランドルの正規軍に入ったんです。

なぜかとゆーに、このおじいさまがアレクのファンというか、とにかくアレクのことが気に入ってて、「アルフレッド・ロウエル侯爵の末のご子息は〜」みたいな感じでよくケンに子供の頃からその話をしたりしてたのよね。それでなくてもアレクはクランドルでは軍人だった頃から有名だったこともあってケンはよく知ってて、憧れの人というかヒーローというか、本人アレですけど、クランドルにはアレクを自分の英雄みたいに思ってる男のコはけっこう多いんです。それで、ケンは成り上がりで考え甘い父親のようには絶対なりたくないと思ってたこともあって、自分も若いうちに世界情勢の生の現実を目の当たりにできる環境に立って現実的な知識を蓄え、どんな逆境にも負けない精神力や体力を養いたい。それには、いっぺん軍人になってみるのもいいかなと思ってた。ちょうどその頃、アレクが除隊して経済界に入ったみたいなこともあって、軍で経験を積んでから経済の世界に戻るということもできなくはないなとまあ、アレクの後追いみたいなもんですけど、憧れの人のマネっこをしてみたいって、わりとよくある話じゃないですか。大学がアレクと一緒というのも、そのせいもあるでしょうしね。

で、最初は正規軍に入ったものの、とても優秀なので数年するうちにフリーでこういう仕事があるけどやってみないかとか誘われて、そっちの方が面白そうと思ったケンは結局、あっちこっちの火事場の火消し(紛争の調停)やカウンター・テロとかに関わる仕事をするようになって、そうこうするうちにIGDの仕事にも関わるようになってった。付け加えると、IGDの傘下には傭兵派遣を仕事にしてる会社もあります。これはもう、まーがまだ内輪での話とはいえ「世界連邦構想」などとゆーぶっとんだことをブチあげてるわけですから、私設軍隊なんてIGDの構想が始まった時点から計画の中にある。これはあえて言えば国連軍みたいなもんかな。IGDは国連ほど役立たずではないが...。(ヒューマニズムだけで歴史は動かんのだ。)

さて、そんなこんなあって8年が過ぎて現在とゆーことになるわけですけど、数年前には仲の良かったおじいさまも亡くなり、ウィンスロー家はあのバカ婿ではなく、直系のおまえが守っていってくれと病床から託されては、「財産なんかいらん」と思ってても仕方がない。あのバカ親には何もやりたくないとゆーおじいさまの気持ちも分かるし、軍に入ってから何年も経って当初の目的は果たせたようでもあり、憧れのロウエル卿のところでも働けたし、今後はアレクに倣って経済界に入るってのもいいかなー、どーしよーかなー、とか考えていたところに、デュアンのボディガードの話が持ち上がった、と、まあこんな感じかな。ケンが「大学を卒業した後、考えるところがあってこういう仕事についた」とか「この8年で今までの仕事をしてきた目的は大体果たせたと思うので、今後のことも考えている」とかディに言ってたのはこういう事情を背景としてのことだったようです。う〜ん、あれもその場限りのセリフじゃないんだよなあ、ちゃんとこうして後からリクツの裏づけがつくとこが私の小説だな。

ともあれ、デュアンが「家庭教師になって!」とか言い出したことでケンはいちおう「先生」ってことになったから、アーネストとしてもその大モトの出自に対して妥当な扱いが出来るとひと安心ってとこですかね。しかし、そーゆーケンみたいのにあえて「ボディガードをしてやってもいいな」と思わせたデュアンくん。作者が今思っている以上のオオモノになるかもしれません。楽しみ、楽しみ♪

★ケンちゃん・その2★

       

2008/6/20

★エヴァちゃんのお願い★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

アレクがエヴァとデュアンに「何でもおねだりを聞いてやる」と通達していたのは先日公開したEpisode1を読んで頂いた方はご存知かと思います。デュアンはまだ何をおねだりしたのか教えてくれないんですけど、エヴァちゃんは「IGDに就職させてください!」とゆー、壮大なお願いをしたのだとか。とはいえ、エヴァちゃんのことですから、縁故就職で「楽していいとこにお勤め」とかは全然考えてなくて「一生懸命勉強して、役に立つくらい賢くなりますから使って!」とお願いしたんですってさ。

彼女の両親もそれなりお金持ちらしいから、ヨソに就職しなくても親の仕事を継ぐとか、いいお婿さんをもらって継いでもらい、自分はリッチな奥サマ稼業とか、いくらでも楽な道がありそうなんですが、何を好き好んで「ヒト使いが荒い(給料は破格らしいが)」と評判のIGDに就職したいのか。どうやらそれは、「デュアンと少しでも同じ世界にいたい」という、健気な乙女心からのようなんですね。可愛いじゃありませんか。

ま、なにしろデュアンが画家志望なのは周りのみんなが知ってるんで、中学から先はアートスクールとか美大とか、とにかくそういう方面に進むことは間違いない。でもエヴァちゃんは自分には芸術的素養はないようなので、一緒にアートスクールに行くなんてことは考えられない。そうするともう道はすぐそこで分かれてしまう上、デュアンは将来の伯爵さま。このままではどんどんどんどん違う世界の住人になっていってしまうじゃないのー。

そう思ったエヴァちゃんは、唯一これからも上流階級と接点を持てるとしたら、IGDのようなスーパースペシャルな企業に入って、それなりの地位につくことしかないのでは? みたいな結論に達したらしい。自分はピアノを習っても、バレエを習っても、とてもそれでプロになれると思うほどの芸術的才能はないが、幸い勉強は好きで成績もいい。それを生かして伸ばせば、IGDに入ってそれなりな仕事が出来るんじゃないか、と考えたようです。それに、他の企業と違ってIGDは特にモルガーナ家との繋がりが強い。だからそこにいれば、少なくともデュアンとまるっきり縁がなくなってしまうってことはないだろう。例え相手にしてもらえなくても、せめて近くにいたいのよとゆー、分かるなあ、その気もち。

で、まーからそれを聞いたアレクは「あんな可愛いコがうちに来てくれるんだったら、おれの秘書にしよう」とか言ってけっこう喜んでるらしいですけど、この先、なんかメリル兄ちゃんがこのエヴァとデュアンの間に割り込むというか、まあ、デュアンの方が全然恋愛感情持ってないんですから割り込むってのとも違うと思いますけど、絡んでは来そうな気配がしなくもないんだな、私は。しかし、あの内気なメリルくんのことですから、これはまとまるとしても相当難航するというか、そんな話はこのコたちみんながハタチを大幅に過ぎてからになるでしょうしね。それもまた、そのうち、な世界ではありますな。

★ケンちゃん★

       

2008/6/13

★マセラーティの謎★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

以前から話に時々出てくるディの愛車。彼の瞳の色とそっくり同じに特注した深いブルーメタリックのスポーツタイプなんですが、ひとつ不思議だったことがある。ディはものすごく美形だけど、決してナルシストではありません。それどころか、どちらかというと、あの容姿のためにいろいろひどいめにも合ってるんで、特に十代の頃までは自分の容姿なんか見るのもイヤ!! みたいな感じだったようです。そうするとそのディが、自分の瞳の色と同じ色のクルマをわざわざ特注したりするだろうか?

どうもディの性格とはそぐわないような気がして、なんで?とか思いつつ書いてたんですけど、どうやらあのマセラーティは、彼が祖父から爵位を継いだ18歳のバースディに、その記念として両親が作らせたものだったみたいで、なるほど、それならディが特に大切にしてるのも納得がいくなあと最近になってから分かりました。まあ、色を決めたのはおそらくロマンティストのロベールさんでしょうね。最愛の妻と息子が同じ瞳の色してんですから、何を贈ろうかとか、当時まだ存命だった妻と相談した時に、ビーチェが18歳だしそろそろクルマなんてどうかしら、とか言って、ロベールさんが、じゃあ、きみとディの瞳と同じ色がいいなあ、とか言い出して、ってありそうだもんな。なにしろ、熱愛夫婦だったからなあ、ディの両親は。

そういう経緯があれば、ディがその後30年近く経ってもこのマセラーティを手放さず、他にもクルマいっぱいあるのに、プライヴェートではいつもコレに乗って出かけるのもよく分かる。うんうん、これで納得がいったぞ。

クルマのナゾはこれで解けましたが、先週、ディがダイアモンドの指輪はめて出かけたとか書いてたでしょう? あれ、あのダイヤも「母の形見」とかだったりするかもしれない。サイズは当然変えてるだろうけど、それ考えると、元々、先祖代々受け継がれている宝石とかも山ほどありそうだし、ロベールさんがビーチェに贈った宝石類もおびただしい数ありそうで、でもディは結婚してないから、今のとこモルガーナ家でそれを使う女性はいないんだなあ。ディの代では現れそうにもないし。でも、そのうちその宝飾品のコレクションとかも話に登場させてもいいな。お? 実は今、デュアンくんに少年探偵団みたいなことをやらせてみたいなとか思ったりしてるんだよね。古式ゆかしいお城もあることだし、今思いついたんですけど、そのへんにこの宝石コレクションって使えないかな。エヴァちゃんとか、そのライバルの女の子とかもイメージ見えて来てるし、なんかまた、意外な方向で話が出来て来たりするかもしれない。ほんと、突然どこへ行くか分からないのが私の話だからなあ...。今や、まーなんて完全に脇役と化してるし、本編はいったいどこ行っちゃったんだろう???

★エヴァちゃんのお願い★

      

2008/6/3

★セーブルとダイアモンド★

・この話について初めて読まれる方、登場人物等についておさらいしたい方は主要登場人物、用語等解説をご覧下さい。

・また、この話については2005年8月からAyapooで断片的にプロットをご紹介しています。小説本文はまだ公開していませんが、興味がおありの方は専用のSTORY INDEXをご参照下さい。Ayapooの過去ログ内の記事を順を追って読むことが出来ます。

Ayapoo初の試みである短期集中連載第1話もつつがなく終了いたしまして、常連の皆さまがたには、よく呆れず、見捨てず(呆れてはいたかもしれないが)、長らくお付き合いいただきましたことに心より感謝しております(合掌)。

いやー、自己満足でもなんでも、一生懸命書いたものを読んで頂けるというのは、それだけで本当に嬉しいものです。それに味をしめて、現在第2話を執筆中なわけですが、先日書いた通り、今度はデュアンくんとディの出会いから始まり、いろいろあって親子にあるまじき関係まで発展してく過程を描いてます。メリルとデュアンが大げんかするシーン(っつーか、デュアンが一方的にメリルに怒りまくってるって感じですが)とか、子供たちのことがロベールさんにバレて、ディがめちゃくちゃ怒られるシーンとか(この親子は書いててけっこう面白い)、ディとデュアンのことだけじゃなく、モルガーナ家のファミリードラマ的なシーンもちらほら見られるんじゃないかと思います。ハイライトはやっぱり、デュアンがディに告白しちゃうシーンでしょうけどね。「ぼく、お父さんが好きなんです!」とかって。きゃはははは。たいへ〜ん♪

ま、それなりお楽しみ頂ける出来になるといいんですけど、それはともかく、やっぱり私の小説って根本的に明るいなあと改めて思ったりする今日このごろ。なんてったって、デュアンくんなんて設定だけ見たらめちゃ暗いキャラじゃありませんか、本来。

私生児で、10才くらいになるまで父親の顔を見たこともなく日陰(?)で育って、しかも母親の違うにーちゃんが二人もいて、父親はあんなんで、40も過ぎたってのに未だに子供ほっぽらかして結婚もしないで遊び歩いてる。おまけにその15年来の本命の恋人ときたひには男の子だし、それもアリシアが13才くらいのころからずーっと続いてるってのが「有名」だったりするしなあ。ふつーの神経だったら、どっぷり暗いコになってても仕方ない境遇なんだが、デュアンの場合、それに積極的に参加してるもんな。

まあ、こういう父親を持った場合のふつーの反応を一番示してるとしてたらメリルくんの方でしょうね。しかし、このメリルでさえ、「お母さんはちゃんとした人なのに、結婚してあげなかった」とか、「家族揃って一緒に暮らしたかったのに」とかいうカドで親父に怒りまくってはいるけど、元来「絵を描くことの他はわりとどーでもいい」ってとこがあるから、「本当ならぼくは伯爵家の長男なのに」などとゆー、世の中よくあるタイプの怒りってのは全然持ってない。なにしろ、「家継げ」と言われて、「やだ」と言い切ったヤツだし、要するに地位や財産なんかまるっきり目に入ってないのよね。

やっぱりこのへんの明るさは、作者の性格なんだろうなと思う。そりゃ、私だってお金は好きですよ。お金儲けだってキライじゃないです。でもなあ、思うに「金、金言ってるヤツのとこにほど金は回ってこない」、これはひとつの法則としてあるんじゃないかという気もする。まるっきりそんなの欲しがってないとこに回ってくるもんってゆーか、この話の場合、デュアンのママのカトリーヌさんは、ディのことは好きだけど「伯爵夫人の地位」なんてものにはまるで興味がないし、それ目当てみたいなことになるのを何よりイヤがってる。だから、そういう母親のもとで育ったデュアンもディのことを画家として尊敬こそすれ、その財産とか地位には元々全く興味を示してなかったのに、どっちも転がり込んで来たりしちゃう。でも、それをラッキ〜とか思うようではダメで、そこで「重い責任」を自覚するくらいでないとそんな地位についてもらっちゃ困るんだが、ともあれ、そういう人間ばっかり寄ってる話だから、陰湿とか暗くはならないんだろうな。

ある意味これは「人間的」とは正反対のものなんでしょうけど、私はそういう種類の「人間的」ってヤツが大キライでね。結局それって、すごく卑しくて低い人間性を反映してるだけじゃんって思う。そんなもん深刻ぶって克明に描いても何が文学かと思うし、そーゆー現実になんぼでも転がってるようなもの、なんでお話の中にまでわざわざ持ちこまなきゃならんのか分からんし、私にとってはつまらんだけだな。で、そんな「現実」もしくは「現実の人間」にう〜んざりしてるから、私の話ってのは「徹底的に現実離れ」しなきゃおさまらないんでしょう。

「現状に甘んじていたのでは発展も向上もない。理想に向って邁進する努力こそ肝要なのだ。」

 

**************

 

さて、本日のワン・シーン、今回のタイトルは「セーブルとダイヤモンド」。ある日、ディがオシャレしてお出かけするところに出くわしたデュアンくん。するとディはセーブルのロングコートとおそろいの帽子(ロシア風ので、メーテルがかぶってたみたいな形のやつ)、指には大粒のダイアモンドって格好だったりするわけです。ふと、私は現実世界でこんな格好をして決まる男なんているだろうかと考えて、即座にフェリーさんが思い浮かんでしまいました。ああ...。あの先生だったらねえ、まあ決まるでしょうな。イメージ浮かぶもん。

で、そんな格好をしているディを見てデュアンくんはぼーっとなっちゃうわけですが、見とれて上の空で「いってらっしゃい、早く帰ってきてね」と言って見送るデュアンにディはにっこりして頷いて見せるだけで出かけちゃう。ディの部屋の扉の前で、その後姿を見送ってぼーっとしたままのデュアンに、ディとすれ違うようなタイミングでこちらに歩いてきたケン(ご存知のように、ケンはデュアンのボディガードをすることになったのでモルガーナ家にいます)が声をかける。

「デュアンくん? どうかしたんですか?」

「え?」

「どうしたんです? こんなとこでぼーっとして」

「あ、ディとすれ違わなかった?」

「ああ、ええ、先ほど。どちらかにお出かけのようでしたね」

「うん...、たぶんデート」

「はあ...」

「じゃ、見たよね?」

「何をです?」

「ディ」

「ええ、ですから先ほど」

それへデュアンは深いため息まじりに言った。

「なんで、あんなに素敵なんだろう」

「は?」

「あんな男なのにぃ。見た目あれじゃ、いくらでも女の子がひっかかって当たり前だよね」

すっかり感嘆している様子で言うデュアンを内心微笑ましく思いながらケンは答えた。

「それは確かに伯爵は素敵な方だと私も思いますよ」

「ねえ、ケン」

「はい」

「みんな、ぼくってディの子供の頃に生き写しだとか言うんだけど」

「ええ、そうらしいですね。今見てもデュアンくんは確かに伯爵と顔立ちがよく似ておられると思います」

「だとしたらぼくが年を取ったら今のディみたいになるってことだよね?」

「まあ...、そうでしょうね」

「でもさあ、ぼく、あの年になってもセーブルやダイヤの似合う大人になんか絶対なってないと思う。なんか腹立つなあ、そう考えると。ほんと、あんな男なのになんでああなんだろう」

何と答えたものかと黙ったままのケンには構わず、デュアンは続けた。

「ディって、なんか容姿だけじゃない気がする」

「そうですねえ...」

「思ってたんだけどさ」

「はい」

「ケンってちょっと、ディと同じタイプって気がするの」

「私がですか?」

思いがけないことを言われて驚いているケンにデュアンは首を傾げて考え考え言った。

「なんかさあ、優しそうなくせに根性の据わり方がナミじゃないっていうか、ぼく、あなたがどんなに強いかよく知ってるしね。でもふと、ディにも同じものを感じたりとかするわけ」

ケンはデュアンの言いたいことを何がなし納得できたような気がして答えた。

「ああ、それは確かにそうかもしれませんね」

「ケンもそう思う?」

「ええ。この前のデュアンくんの誘拐騒ぎの後で、うちの隊長が言ってたんですが、あの時、予定ではアリシア博士とルーク博士が我々と踏み込むことになってたんですけれど、結局、ロウエル卿と伯爵も一緒に乗り込まれたそうなんです」

「ほんと?」

デュアンはちょっと驚いて言った。それは誰からも、もちろんディからも聞いていなかったからだ。

「はい。ロウエル卿は元々軍人ですし、クランドルでは陸海空軍、最終的にどこに配属になるにしても、士官クラスは全軍を把握する目的で海軍の場合は陸、空軍に出向して訓練に参加しますからね。彼が軍人としても大変優秀なのは我々誰もが認めるところです。まあ、そうでなくては、私たちのような人間を使いこなすのはちょっと無理でしょうけど。でも、隊長が言うには、そのロウエル卿、それにああいう事態には比較的慣れてらっしゃるアリシア博士やルーク博士と一緒に、伯爵は先陣を切って乗り込んで行かれたそうですよ」

「それ、本当にほんと?」

「はい」

それを聞いてデュアンは深く考え込んでいる。それは確かに自分のことを心配してくれていたからなのだろうが、しかし実弾がマトモに飛んでくるような場所に、伊達や酔狂や冗談では乗り込んで行かれまい。常識で考えて回りだって止めるだろうし、本当に危険と感じたらアレクやマーティアが一緒に行かせるわけはない。

「隊長が射撃も相当な腕前だと感心してましたし、私も話を聞いてちょっと驚きました。でも、確かにそういう意味では、デュアンくんが伯爵に私たちと近いものを感じても不思議はないでしょうね」

「くっそ〜」

思いっきり怒ったようにデュアンが叫んだので、ケンはびっくりして尋ねた。

「どうしたんです? デュアンくん」

「なるほど、そういうことだったのか。迂闊だった」

「デュアンくん?」

「ねえ、ケン!」

「はい?」

「ぼく、強くなりたい!」

「え...」

「それは前から思ってたんだけど、乗り込んでったってことはマーティアもアリシア博士も強いんでしょう?」

「はあ、それは確かにそうですが」

「で、ディもなんだよね?」

「はい」

「誰もそんなこと教えてくれないもんだから、ずーーーっと不思議だったんだ。アレクさんはそうなんだろうなと思ってたけど、いい男ってやっぱり強くないとなれないんだ」

「まあ、ある意味そうかもしれませんが、そればかりとも...」

「ううん! 少なくともディだけじゃなくて、ぼくが憧れてる人はみんなそうなんだ。ということは、あんな風になるにはぼくも強くならなきゃならないってことなんだよね。勉強だけしててもダメなんだ」

ケンは未来の伯爵さまがそんなふうに強くなるのもそれはそれで...、と考えて、答えに窮している。

「どうやったら、ケンやアレクさんみたいに強くなれるの?」

「それはまあ、いろいろ訓練とか」

「じゃ、教えてくれるよね?」

「私が?」

「うん」

「いや、しかし...。それなり危険が伴いますし。伯爵が何と言われるか」

「ディなんて自分だって強いんじゃない。文句なんか言わせないよ」

「でも」

「イヤ?」

「いえ、そういうわけでは...」

「そうだ。この際だからさ、ケン、ぼくの家庭教師になってよ」

「家庭教師?!」

「そう。どう考えても、アレクさんやディならともかく、ぼくがあなたを使う立場にいるって無理があると思ってたんだ。そうか、家庭教師になってもらえば良かったんだな」

自分の名案に深く納得した様子で頷きながら言うデュアンに、ケンの方があわてている。

「ちょっと待って下さい、デュアンくん。私はボディガードや運転手はやれても教師なんて」

「ディから聞いたよ。アレクさんと同じ大学を二十歳で出てるって」

「それは確かにそうですが」

「だったら問題ないじゃない。教えてもらうことっていっぱいありそうだし、先生、よろしくね」

「先生って、デュアンくん、そんな勝手に...」

「じゃあ、ディがいいって言ったらいい?」

「えーっと...」

「四六時中一緒にいるんだし好都合じゃない、ディだって絶対いいって言うよ」

思いもかけないことで詰め寄られてケンは困った様子で考えこんでいたが、彼のアタマからして家庭教師というのもやってできないことはない。それに、デュアンが熱心な生徒になりそうなのは見ていて分かるし、それはそれで楽しいかもなと考え直して、ケンはデュアンを見ると言った。

「じゃあ、伯爵が良いと仰ったら、お教えしてもいいですよ」

「本当?」

「はい」

その答えにデュアンはにっこりして、じゃ、ディが帰ってきたら話すからね、と言った。瓢箪からコマのような話ではあったが、どうやら自分は強引に家庭教師にされてしまうことになりそうだと思いながらケンは笑っている。

「でもディ、今日帰ってくるかなあ...」

言いながら、ちょっと淋しそうなデュアンに、ケンが言った。

「デュアンくんは、本当にお父さまのことが好きなんですね」

「え?」

この前のこともあったので、たぶんケンは自分とディの関係について気づいているんだろうなと思いながら、デュアンはまあね、と答えた。

「でもさ、セーブルとダイアモンドの似合うプレイボーイの父親を持つってのもね、これでなかなか大変なんだよ」

デュアンがまだ幼い少年に似合わず、悟りきった様子で言うのがケンには可笑しかったが、まあ、確かにそれはそうだろうなとも思う。ともあれ、デュアンの可愛らしさも手伝って、この仕事は彼にとっても楽しいものになりそうな気がしていた。

***********

と、ゆーことで、前にもどこかで書いたと思いますけど、いい男ってやっぱり根性据わってないとダメなのねってお話でした。それ言えば、フェリーさんもそれに当てはまるよねえ。なにしろハイジャックされて墜落寸前! って大騒ぎやってる中で、ぜーんぜん落ち着いてたってヒトですから。「まるでサロンでマティーニを楽しんでいるようだった」という、他の乗客の証言もあるしな。ま、そういうヒトだからこそ好きなんだけど、うちの美少年、美青年ってのも、みんな強いからな。「女々しい」ってのは私、蛇蝎の如くキライなキャラなんで、どうしてもそうなる。うちの場合は男の子だけじゃなく、女の子も強いけどね、レイとかエヴァちゃんとか。まあ、これは性格的にってことですけど、6月半ばに連載始めると言ってるDialogueの主人公の加納綾、これがうちで一番強い女の子だが、まあ、どんなヤツかは近々分かるよ。

★マセラーティの謎★

       

2008/5/16

★次の連載★

さて、例の連載小説も今回を含めてあと3回くらいでおしまいってとこまでこぎつけました。当初2ヶ月くらいで終了と言ってたのが、結局全12回+Intermissionで約3ヶ月まで伸びてしまいましたね。そのせいでここ3ヶ月プロットを全然書けなかったんですけど、書きたいこともたまってるし、いろいろ忙しくてEpisode2の進行がちょっと遅れてるしするんで、その前に例のDialogueを連載開始しようかなーとか思ってます。本当はイラストつけて〜とか思ってたんですが、それ待ってたらもう永遠に出せそうにないんで、とりあえず文章のみで始めちゃおうかと。これはトップから直接リンクするページを作ってくつもりなんで、ココではしばらくたまってるプロットをちょこちょこ書いてって、それからEpisode2が出せるようになったら連載開始ってことにしよっかなー。

Episode2のタイトルはもう決まってて「告白」ですから、デュアンがディと初めて会うところあたりから始まってます。だから時間的にEpisode1より1年半くらい遡ることになりますね。けっこう長くなるんじゃないかな。で、この後、Episode3「発端」(メリルのママのマイラとディのお話。めずらしくまともな恋愛小説に...、ならないだろうな、やっぱり)、Episode4「休暇」(ディとデュアンの休暇旅行のお話)と続く予定です。ちなみに、Dialogueは半年くらいかけて掲載してゆくつもりなんで、そのうち小説2本立てなんてことになっちゃうかもしれない。読んでね〜♪

★セーブルとダイアモンド★

      

2008/4/11

★完成したぞ★

連載している例の小説の Episode1 ですが、本日やっと最後まで書き終わりました。合計75000字くらいになってましたから、原稿用紙にすると187枚くらいですね。思ってたより長くなったなあ。おかげで、あと2ヵ月は連載を続けられるぞ。

最初は、予告編にしたプロットの続きを本文で出そうと思って、第4章(アレクがモルガーナ家に到着するあたり)から書き始めたんですけど、どうせ出すなら最初から本文にしたいなと思って、第7章を書き始めたところで一旦戻って1〜3章を継ぎ足し、その後、どんどんどんどん続きを書いてったんです。ほぼ1ヵ月半で187枚分書いたことになりますが、これまでワン・シーンごと別々に書いて、後で編集して組み立てるという映画みたいな作り方が普通だったので、これだけまとまった内容を最初から最後までほぼ順番通り一気に書いたってのは初めてじゃないかな。とはいえ、これもお話全体からするとワン・シーンみたいなものなんで、他のエピソードと繋いで最終的には1本の小説になる一部分と考えると、これまでの書き方が大掛かりになっただけってことかもしれないんですけどね。

なにはともあれ、完成するということは気分のいいものです。野放図に書き散らしてるだけだとなかなかこういうふうにまとまってゆかないものなんですけど、連載するぞと言った限りはそれなり頑張ってコンスタントに書くもののようで、ナマケモノの私にとってこれはそれなり良いことなんでしょう。

さて、このEpisode1、あやぼー的にはなかなかうまくまとまってて気に入ってるので、今日からの後編もお楽しみ頂けると嬉しいです。

      

2008/3/6

★連載開始★

とゆーことで、調子に乗って連載小説開始とゆー運びになってしまいました。以前ちょっと期間限定でほんのワン・シーンくらいの量をアップしてたことがありましたが、今回はあれよりかなりまとまったエピソードになってますね。原稿用紙にすると最終的に100枚くらいにはなるんじゃないかと思うので、短編1本くらいの長さにはなるのかな? 毎週連載して約2ヵ月で終了を目指してます。

この話のタイトルについては「洋楽ファンのひとりごと」でちょっと書いてたので既にご存知の方もあるかもしれませんが"The ultimate kingdom"ってことに落ち着いてまして、そもそもはディのセルフ・ストーリーのタイトルを"The ultimate paradise"と付けたことに端を発し、この二つは本質的なところで対になってる話なのでそれ風のタイトルにしたかったんだな。どういう点で対になってるかは、どちらも本編がいつかそのうち公開されると思うので(本当にそんな日が来るのかどーか知りませんが)、それはその時になったら分かる(はずだ)ってことにしておきましょう。

ただ、公開するにあたって問題は、本編の主人公はあくまでまー、アリ、ディ、アレクで、それもまーとアリが十代、ディとアレクが二十代のあたりから始まってるのよね。で、今から連載する話は、それからいろいろ紆余曲折を経たずーーーーーっと後のエピソードで(なにしろデュアンが出てくるんだから)、そんなとこからいきなり始める格好になる。いずれはこのエピソードも本編に組み込まれることになるんでしょうけど、本編は本編でやっぱりそもそもの発端からちゃんと出したいじゃないですか。でも、そこから始めてたらデュアンが出てくるようなエピソードなんて、十年経っても公開できるかどうか分かんない。おまけにたぶんこのエピソード連載ってゆーのは、ひとつだけじゃなくていくつか続きそうな気配もしてるんで、乱暴ですけどこれはひとまず「外伝」ってことにして(本編の前に外伝が出るっていうのもなんなんですが)、連載することにしました。自分でも笑ってしまいますが、ま、そーゆーことで、このテの話がお好きな方にお楽しみ頂ければと思います。では、第1回は大サービスで、約9000字一挙公開です。

        

2008/2/28

★ディの子供たち・その9 - 誘拐 -★

この話題について始めから読みたい方は、専用のSTORY INDEXをご参照下さい。

いま、Ayapoo初の試みである短期集中連載小説の企画を進めてまして、ってゆーか、最初は例によってざっとプロットを掲載するだけのつもりで書いてたんですけど、シーンを追ってくに従ってなんか乗ってきちゃって、あーなって、こーなって、どーなって、そーなって、と、なかなかカッコいいエピソードになりそうなんで、これは本文連載方式でゆこうかなってことになったんです(なりゆきで好き勝手できるのは、個人サイトオーナーの特権)。今、2回半分くらい書けてて、それでエピソードの半分くらいまで進んでるので、3月〜4月にかけて4〜6回くらいの連載にできるんじゃないかな。どういう話かっていうと、以下は最初に書いてたプロットなんで、予告編ってことで掲載しちゃいましょう。これが果たしてどのような本文になるのか? それはいましばらく、お待ち下さい。

**********

<予告編♪>

さて、エヴァちゃんって、この後何か話に絡んで来そうとか書いてましたけど、なかなか大変なことになりそうですね。って言っても、ディとデュアンの間に割り込むとか、そーゆー可愛い話じゃなくて、テロがらみの誘拐に巻き込まれちゃうっていう相当ヴァイオレントな展開です。もちろん本命はデュアンくんなんですけど、エヴァちゃんも一緒にいたので連れてかれちゃうんだな。

ある日、デュアンがなかなか学校から帰って来ないのでディたちが心配していると、いつも送り迎えをしているメルセデスが屋敷に向う途中で大破して乗り捨てられていると警察から連絡が。しかもいたずらに怖がらせるといけないと思ってデュアンには言ってなかったけど、運転手として付けてたのはプロのボディガードだったのに、ライフルで狙撃されたらしく、瀕死の重傷を負って車内に放置されていた!

いやー、なかなかこれはいきなりハードボイルドしちゃってますが、私の小説というのはロマンチックとヴァイオレンスが表裏一体化してるんで、たまにこーゆー展開に雪崩れ込むことがあります。ついでに、エンタテイメントと哲学も同居してるので、そのへんが売り物にも何にもならない原因だな。

ともあれ、最初は営利目的の誘拐だろうとディも思ってるんですが、1日、2日と経とうとするのに連絡がないことと、いきなり運転手を狙撃するというやり口が普通の誘拐としてはダーティすぎるのとで、これは相当厄介かも、と思い始めたところへ、まーからホットラインで連絡が入る(まーはこの頃になると殆どクランドルにいないので、ディんちとは衛星経由の特別回線を繋いでいる。だから通常回線でするとヤバい話なんかは、それ経由で連絡してくる)。ここんとこ8回連続でディと子供たちの話ばっかり書いてるんで、まーなんて殆ど懐かしい響きの存在と化してますが、本来はこっちの方が主人公なんです、この話。

で、まーとアリは「豪華クルーザーで世界旅行を楽しんでる」と前にちょっと書いてましたが、別にムダにあちこちふらふらしてるわけではなく、目的も事情もあってやってることで、それがアレクのIGDとも絡んでくることなんですけど、まーとアリ、それにマリオ・バークレイ博士のテーマというのは、そもそもの始めから「歴史の軌道を修正する」という大掛かりなゲームなわけで、このへんは説明すると長くなるからそのうち本編で読んでもらうとして、ともかくそーゆーことをやってるんで、裏に回るといろいろ仁義無き戦いみたいなものの渦中にいたりする。こういうテーマを持って動く場合、一番やっかいなのは宗教関係と成金の新興国のくせにやたらプライドの高い超大国ですが(どこの国かは想像にお任せする)、今回の場合は宗教がらみみたいで、もともと哲学と宗教は実質的に天敵関係だし、本質的に大賢者であり大哲学者であるところのマーティア・メイなんかは、この頃になると何がなんでも抹消したいと思われてる存在になってる。そもそもその「歴史の軌道修正」なんてことをやろうとするやつがいると、一番イヤがるのは現在の世界で権力張ってる連中で、だからこそ仁義無き戦いになっちゃうんですけどね。

まあ今のところは、まーたちのやってる戦争が、ディのとこにまで飛び火しちゃったんだとだけ分かってて頂ければ話が進められると思います。ディにしても、全くそれと無関係ってわけではないんですが、いきなり子供を誘拐されるほど表立って関わってるわけではないので、彼としては普通の営利誘拐にはボディガードを付けたりして注意していても、こういう種類の騒動に巻き込まれることまでは予測してなかった。

で、まーが言うには、ディのところではなく自分たちの所に犯人から連絡が入り、いろいろ厄介な注文をつけてきている。これには絶対応じられないが、現在、IGDの調査網の総力を挙げて犯人とその所在を特定する作業を進めているので、半日もあれば結果が出るだろう。相手に対しては交渉を続行する形で待たせ、その間に自分とアリシアもこれからそちらに向うから、数時間後には実質的な対策に入れると思う。何があろうと、絶対にデュアンは救い出す。その方法は選ばない。

まーたちはふだん、「世界一優雅で美しい」と賞賛される純白のクルーズ船で世界中をウロウロしてるわけですが、実はこのアークという船は実質バトルシップで、ファイター(戦闘機)まで艦載している。だから、まーたちはどこにいようとも全世界のどこにでも、数時間でぶっ飛んで行ける機動力を持ってるってことになりますね。International Grand Distributionのオーナーはもちろんアレクなんですが、それを動かしてるメインの頭脳はまーとアリなわけで、アークという船は実は世界最小で最強の国家と言ってもいい存在だというのがコンセプトです。スケール大きいでしょー♪

もともとこれはそういう話なんですが、やたら振り幅が広いんで、ココではメイン・ストリームからははずれた話ばっかりしてるってことになるかな。でも、そっち方面にこんなとこで踏み込むと、きっとわけ分かんなくなっちゃうと思うしな。ここでしてる話は、一応「小説」と言って許される範囲のストーリー部分に限ってます。でもその背景では、こういうばかでかいスケールで「歴史」が動いているわけで、その全貌は、本編を最初から連載できるようになったら読んで頂けるようになるでしょう。

ま、それはそれとして話を元に戻しますが、ディはまーにデュアンと一緒にエヴァが連れて行かれてしまっていること、事件発生から既に36時間以上経っていること、デュアンは本命の人質ですから当面は大丈夫としても、エヴァがどうなるかが心配で、彼女の両親であるベンソン夫妻にもここに来てもらっていることなど、現在の状況を手短に説明します。ディとしても、単なる営利誘拐ならまーたちの手を借りるまでもないんですが、コトがコトだけに自分の力だけではどうにもならないことくらい、話を聞いた時点で悟ってますからね。で...、

***********

「報道管制は敷かせているけど、うちのクルマが大破して発見されたりしたもので、既に警察が動き出してるんだよ。」

「分かってる。それはこっちで引き上げさせる。どうあれこれは警察程度のレベルでカタのつく問題じゃない。SWATなんか踏み込んだが最後、皆殺しだよ。だからアレクが今、使える連中に召集をかけてくれてるばすだ。彼もすぐにそちらに行くと言ってたから、もうそろそろ着くんじゃないかな。」

「アレクが?」

「彼が偶然今クランドルにいてくれたんで、話が早くて助かった。とにかくおれたちもすぐにそっちに飛ぶから。心配するなと言っても無理だろうけど、24時間以内に良い結果を出す。だから、ベンソン夫妻にもそのままそこにいてもらって欲しい。」

***********

この頃になるとまーももう30過ぎてますからね。ディにいいように遊ばれてた子供の頃とは一味違います。なんてったって、この大掛かりな「ゲーム」を立案し、実行して来た張本人なんですから、これまでも自分自身が危ないめにもいっぱい会ってきてるし、この程度のことではビビりません。

で、まあ久しぶりに4人が一同に会することになるわけですが、IGDの調査網というのは先にも書いた通り一国のそれに匹敵するので、誘拐事件の足跡を追っかけるなんてのは朝飯前の仕事。

さて、翻って不覚にも誘拐されちゃったデュアンくんたちの方ですが、エヴァちゃんが可愛いんで、ちょっかい出そうなんて悪いオトナも犯人たちの中にはいるもので、ちょっと乱暴されかかるんですね。上からは大事な人質なんだから、コトが終わるまでは手出しするなと命令はされてるんですけど、ちょっとしたスキにそういうことになっちゃう。でも、デュアンはどう考えてもこれは自分の問題にエヴァを巻き込んでしまったとしか思えないし、何が何でも彼女だけは無事に帰さなくちゃと思ってるもんだからエヴァをかばって割って入る。こういうとこ、男の子ですよねえ、デュアンくんも。暴力ふるわれたらかなわないのは分かってるけど、黙ってるわけにはいかないってとこです。でも相手はデュアンが子供だって思ってるもんだからその態度を面白がって、じゃあそのコの代わりにおまえが自分たちの相手をするかとかからかう。それ聞いて、子供だと思ってこいつらはっ、と怒ったデュアンくんは、「言っておくけど、エヴァやぼくに手を出そうなんてしたら、今ここでぼくは舌を噛み切ってやるからね。」

本気ですからね、これ。それだけに一瞬相手の方が呑まれるくらいド迫力で、そうするうちに何かもめてると気づいた他の連中がヤメろと言ってからんできてた二人を部屋から引きずり出す。

「ごめんね、エヴァ。こんなことに巻き込んで怖い思いさせて」

「ううん。デュアンが一緒だから大丈夫、怖くない」

「何があっても絶対、きみは無事に帰らせてあげるから。ぼくに出来ることなら何でもするから。でも、もう少しの我慢だよ。必ず、お父さんたちが助けに来てくれる。」

その言葉通り、まさにその瞬間にも救出計画は進行しているわけで、まーたちを乗せた飛行機は数時間でクランドル空軍基地に着陸、そこからヘリでディの屋敷まではひとっ飛びですから、連絡が取れてから本当に八時間かからずにまーとアリはディのとこに到着する。その頃にはアレクも着いていて、犯人の所在も特定できたという知らせも入ってくる。ディは今更ながらにまーたちの現在の機動力のすごさを見た気がするわけですが、危ないから二人を連れ帰るまで待ってろというまーに、ディはどういうことになっても後悔はしたくないから一緒に行くと言い張る。

まーとしても、そんなことでモメてるヒマはないんで、じゃあ現場までなら同行してもいいが、そこでは絶対にこっちの指示に従ってくれと約束させて連れてゆくのを承諾する。

...ここまで読んで、どうなるんだ?!とか思ってもらえてたらOKなんですが如何なものでしょうか。とゆーことでっ、短期集中連載やります。みんな、来週もまた見てね!(きゃははは♪なんかデュアンとかエヴァちゃんとか、コドモ書いてたら最後がTVアニメ番組調になってしまったぞ。)

original text : 2008.2.12.-2.14.+2.25.

revise : 2008.2.28.

★セーブルとダイアモンド★

     

2008/2/20

★ディの子供たち・その8 - リリカルな性格 -★

この話題について始めから読みたい方は、専用のSTORY INDEXをご参照下さい。

これだけ毎週書いてると、なんか「プロット連載」と言っていいような状態になってますね。とにかく話だけはアタマの中でどんどん進むのでちゃんと本文を書くのが間に合わず、ともかく話の流れだけでも書き止めとかなきゃという感じです。

さて、元気いっぱいに走り回っているデュアンくんのおかげで、すっかり影の薄いメリル&ファーンですが、このお兄ちゃんたちのセルフストーリーもぼちぼち見えてはきているんです。ファーンは今のとこ「おじいさまの後を継ぐ」という線でまるで問題は抱えてないけど、十代の半ば頃からいろいろあって、けっこうカッコいいとこも見せてくれそう。性格的には父親のディよかわりとアレクと合うみたいで、「経済か政治に進みたい」という希望も持っているだけあって、このころになると大実業家に転身を遂げているロウエル卿(アレク)のことはとても尊敬している。親友の息子ってことでアレクとも交流ができるから、彼の方も将来的にけっこうファーンに目をかけるようになってゆきますね。

それに、ファーンの母方のひいおじいさまというのがかつて経済界に君臨した人で、ロベールさんも若い頃とても世話になったんだとか。そのへんの系図を辿ってゆくと、ファーンはディの方だけじゃなく、母方の方でもロウエル家と縁続きだったりする(ディとアレクはもともと親戚です)。系図もこの辺りになってくると、ディにも誰がどこでどう縁続きなのか把握できてなかったりして、後からロベールさんに言われて、へえ、そうだったんだ、みたいな? さすがに入り組んでます、上流階級。でも、デュアンは本気で「伯爵さま修行」にいそしんでいるので、ディよかこういう系図に詳しくなってて、「モルガーナ家の系図のことなら任せてください」とか言っておじいさまを喜ばせてたりします。アーネストも「だんなさまがお小さかった頃より、はるかに熱心に聞いて下さるので、何をお教えするのも楽しゅうございますよ」と言うほど。

そのデュアンは、この前ちょっと出て来たエヴァちゃんと大事件に巻き込まれて、まーやアリまで出てきて大騒動になってたりするんですが、ま、そっちの話はまたそのうちということにして、今日はデュアンに「ワガママ」だの「何も考えてない」だの、散々言われっぱなしのメリルにスポットをあててみましょう。

今回の副題「リリカルな性格」というのは、実はデュアンがメリルを評して言った言葉で、彼はディにある日、「メリル兄さんってリリカルだよね。シュールっていうか」とかワケの分からないことを言う。それ聞いてディは「それって、どーゆーイミ?」とか笑って尋ねるんですけど、デュアンの説明するところによると、彼がメリルのところに文句言いに行ってからしばらくしてメリルがデュアンに会いにモルガーナ家にやってきた。その時はディは家にいなかったんですけど、デュアンは「兄さんはこの前のことできっと怒ってるんだ」と思ってて、逆ねじこみに来たんでは? と内心ちょっとひるんでるのよね。自分も言いたい放題言ったから、後でちょっと言い過ぎたかなとも思ってたもんだから。

ところがこの「リリカルでシュールな」お兄さまは、デュアンの言ったことを真正面からマトモに受け止めていて、だからこそおじいさまにもいろいろ相談したりしてたのよね。本来、長男にあたる自分が継ぐべき家をデュアンに押し付けたような格好になったことと、自分の都合でお披露目しないでおいてもらうことになったのは、確かにデュアンの言う通りおじいさまやディが「気を使って」くれたという気もしたし、自分が何より絵を描くのが好きで、その才能があるらしいのもディから継いだ血というものなのかとか、そういうことを深く考えてみなかったけど、その「深く考えてみたこともなかった」ということそのものをデュアンが非難してたんだと分かるから、どうしたらいいんだろうとマジメに悩んじゃったわけです。でも、おじいさまは、確かにメリルはディの子供の頃を思い出させるほど熱心に絵に打ち込んでいるし才能もあると思うけれども、才能というのは原点であって、それを伸ばすのは本人の努力なんだよ、とか、メリルは十分その努力をしていると思うし、父親の血だけでいい絵が描けるわけではないんだから気にすることはないよ、とか、自分やディがメリルの将来のことを考えるのは父親や祖父として当たり前のことなんだからとか、確かにデュアンの言うことも一理はあるなと思いながらも、メリルが弟の言ったことをそんなに真面目に受け止めていることを微笑ましく思いながら宥めてくれるわけ。

で、そもそもメリルのディに対する反感は、自分が息子としてちゃんとした扱いを受けていなかったからと言うより、彼の母親であるマイラのことで怒ってるって方が強かったらしい。彼女はディとの経緯についてはちゃんとメリルに説明しているし、自分は彼に相応しいとは思えなかったとも言ってるんですけど、でもメリルから見たら「お母さんはどんな人の妻になっても恥ずかしくないくらい立派な人なのに」、そのマイラをディが軽んじて結婚しなかったという印象がぬぐいきれない。それで父親になじめない気分がつきまとってるわけね。これを母に言うと、「そうね、今ならそのくらいの自信は持てたかもしれないわね。でも、あの頃は私も若かったのよ。」

それこれありまして、しばらくよくよく考えた結論を、メリルはその日デュアンに言いに来たのでありました。デュアンにしてみると、「ぼくの言ったことに文句言う気だな」と構えてますから、案に相違してメリルが怒ってる様子もなく、なんとか自分の気持ちを伝えようと一生懸命話すのにちょっとびっくりしている。メリルは口下手というか、絵や色彩を使ってなら感じたことをどんなにでも雄弁に表現できるんですけど、思ったことを言葉で表現するのがとても苦手なんですね。このへん、その気になれば口がうまいことにかけては人後に落ちないディと正反対で面白い。ママのマイラは自身がペンネームも持ってる詩人、作家でもあるので、このメリルの「言葉がうまく使えない」のは誰に似たんだろう? と思ってる。でも、モルガーナ家には実はいろいろ華麗な伝説があって、そのいくつかはクランドルでもよく知られてて語り継がれてたりもするんですけど、そのへん遡ってくと確かにメリルに似たようなご先祖さまもいたりするのよね。で、ディやロベールさんには先祖返り? とかいう気もしてる。

ともあれ、そういう子なので、言いたいことがなかなか明確に言えず、それでたどたどしい口調になってしまうんですけど、それが彼の一生懸命な様子を強めていて、デュアンには兄さんて無菌室で育ったみたいに、なんかすごく度を越えて誠実だったりする? みたいに感じられるわけです。常識はずれに誠実というか、浮世離れしているというか、それを評してデュアンは「リリカルでシュール」と表現したわけです。これ見ると、コト言葉に関しては、デュアンに限って「表現できないこと」なんてありそうもないですね。その説明を聞いてディもなるほどと思ったくらいで、実に的確に「メリル」という人物を言い当ててるんです。そしてそれは、メリルの描く絵を言葉にしたらこんな感じかなというものでもある。だからと言って彼の絵がシュールレアリスムってわけでは全然ありませんけどね。どちらかと言えば、ディの絵の方がその傾向は強いです。ま、その話はのちほど。

では、メリルはデュアンに何を説明しようと一生懸命になっていたのでしょうか。それは、

・自分がなぜお父さんを許せないのか

・お父さんのことは、画家としては凄い人だとも思うし、芸術家としてはそういう生き方もあるかなとも思える。全くの他人だったら尊敬もできるだろうが、しかし実の父だけに返って彼の生き方には受け入れ難いものが出てきてしまう

・自分の唯一つの取り柄と言っては絵を描くことしかないので、モルガーナ家のような名門貴族を継ぐような器ではない

・弟に責任を押し付けたような格好になって、きみには悪いと思うけれども、ぼくよりもきみの方がきっとモルガーナ家の当主には相応しいと思う

・自分にはお父さんの生き方や、きみと彼の関係は常識はずれにしか見えなくて、どうしても理解することができないが、それについてはこれからもっと理解しようと努力してみることにする

これだけ言うのに一時間もかかるほど、メリルってのは口下手なんです。これ見てデュアンは、もしかして兄さんてオオモノ? とかも思うんですけど、年下の弟からあれだけぽんぽん言われて、怒るどころかそれ真面目に受け止めて、その上1ヵ月以上も経ってから、悩んだ挙句に説明に来てくれるという、そのへんがデュアンにはすごく驚きだったようです。そうなってくると、ディに「メリルにはメリルの考えがあるんだから」と言われながら、それを聞かずに文句言いに言った自分は? とちょっと反省。ぼくだってメリル兄さんを理解しようとしたことはなかったなと思い直して、メリルが「努力してみるね」と言うのに対して、「偉そうなこと言って、ごめんなさい」と素直に謝るのもデュアンの真っすぐなとこでしょうね。

そんなこんなで、この兄弟も後々それなりにうまくまとまってゆくことになるんですが、それでは、メリルの絵ってのはどんなものなんでしょうか。

ディの絵っていうのは、これまでも書いてる通り、単に視覚的な美のみを追ったものではなく、哲学的思考を絵画で表現するという実にトリッキーなものが主流で、それゆえ画壇のみならず、多方面の芸術家にも影響するものがあります。そのへん深読みがきく者にとっては、とにかく「凄い画家」の一言につきる。表現されている哲学世界が究極まで行ってますからね、彼の場合。でも、メリルのは「リクツじゃない」って感じで、日常のほんのちょっとしたこと、例えば暮れ染める空の色彩の微妙な変化だとか、散りかける大輪の赤い花の最期の一瞬とか、テーブルの上のカップに注がれたホットミルクの暖かそうな湯気だとか、そういう何の変哲もない情景を描いてはいるんですけど、それが「タダの絵」ではなく、それを通して、後に大きな賞を受賞した時の選考委員の言葉を借りれば、「計り知れない宇宙の深遠を感じさせるような何か」を内包していて、「それが無条件に見る者を感動させる」ようなものなんです。「人間は日々、日常の瑣末なことに囚われて泣いたり笑ったりしているけれども、本当は我々はより大きな宇宙に包含されている存在であることが彼(メリル)の絵を通して感じられ、そのことの喜びと悲哀を一瞬にして悟らされる」と評され、そしてこれは奇しくも「ダニエル・バーンスタインの遺作、デュアン・モルガーナの「二人の天使(まーとアリを描いたシリーズ)」にも匹敵する」と絶賛されました。これがメリルの画家としての本格的デヴューになるんですけどね。ディやダニエルさんは先に書いたように本来トリッキーな作風で知られる画家なんですが、ここに挙げられた二人の作品は彼ら自身のそれまでの作品をも超えるものと評価されていて、彼らの代表作中の代表作でもあります。

また、メリルの絵はその色彩が見事なまでに美しいのと(このへんの感覚は、メリル自身は意識してませんけど明らかにディゆずり)、透徹していながら暖かいものが感じられるのとで、そこまで深く芸術を理解する素地のない人たちにも、「純粋だった子供の頃を思い起こさせる」とか言われて高い人気を得るようになってゆきます。メリル自身があの通り、あまりにも無菌状態なんで、その人柄から出た絵に触れる人にまでそれが影響していくような感じかな。

ってことで、影の薄かったメリルお兄さまですが、けっこうオオモノということが判明いたしました。

★ディの子供たち・その9★

2008/2/11

★ディの子供たち・その7 - デュアンくんの学校生活 -★

この話題について始めから読みたい方は、専用のSTORY INDEXをご参照下さい。

ディに引き取られた当初、デュアンくんは10才〜11才くらいなんですけど、そうすると小学校の高学年くらいってことになりますね。容姿はディやアリと似てるとはいえ、このコが二人と決定的に違う点があるとすれば、「ストレートで明るい」ってとこでしょう。ディやアリも暗いってタイプではないけど、けっこう内面的に複雑なとこがあって、ストレート直球なタイプじゃないのは確か。でも、デュアンくんって、メリルに対しても「兄さんって勝手!!」とか思うと言うべきは言う! で言っちゃうし、ディを好きになっちゃったと気づいたら、ごちゃごちゃ悩むより先に好きになっちゃいましたと告白してしまう。こういうとこ見ると性格出てんなというか、これは確かにママのカトリーヌさんの血でしょうね。それと、もしかするとおじいさまのラテン系の血筋が隔世遺伝で威力を発揮してるのかもしれません。カトリーヌさんも名前見れば分かりますけど、両親のどちらかがフランス系みたいですから。

で、まあそういう明るくて賢くて可愛いと三拍子揃ったらやっぱり学校でも人気者で、自然とリーダーシップも発揮できるコだし友達も多い。中でも特に仲良しグループみたいのが何人かいるんですけど、その中には女の子もいて、彼がディの息子だと知れ渡ってしまってから、「未来の伯爵さまだもの、そうなったらもう口もきいてくれなくなるわよね」とか言うのよね。でも、デュアンは「どこにいたってぼくはぼくだよ。それにみんな今までぼくにお父さんがいないってことをちっとも気にしないでつきあってくれたじゃない。立場が変わったからって掌を返したようになる奴らなんて信用できないよ。だから、これからもずっとみんなはぼくの友達でいてくれないとね。」

この話は設定が今から何十年か先ってことになってるし、それもあってクランドルの学校制度っていうのは今のものとは全然違ってます。元々、クランドルは啓蒙度の高い国ですから、子供の教育は基本的に親の責任。だから、小学校、中学校レベルの勉強も基本的に親が教えます。それに加えて通信を利用した講義とかも受けられるわけですが、これは「大教室(Grand Class)」と呼ばれていて、いつでも誰でも参加できるように工夫されている。親が忙しくて子供の勉強を見てやれないというような事情があっても、大丈夫なようになってるんですね。ただ、通信を利用した教育では直接的なコミュニケーションの場が持てないことに配慮して、旧来の「学校」は主にサークル活動の中心となっている。学年も年齢で決まるわけではなく、カリキュラム習得についてだいたいの目安はあるが、能力の個人性を重視する観点から、資格制のステップアップ式で進んでゆきます。だから「落第」とかの概念はないのよね。

ただ、そういう開放的な制度だとある程度のガイドラインに沿ってゆかないと教育の均一性が保てないので、学校はそこに通っている子供たちのデータを見ながら、勉強やサークル活動のコンサルティングをしてくれます。これでスタンダードの目安からプラスマイナス1〜2年で中学レベルまで上がるというのが一般的な家庭の子供の進み方。その先は進路に応じて専門学校や、高校や、更に大学ってことになります。

そうするとディやアレクが行ってた寄宿制の学校はなんなんだってことになってくるわけですが、あれは特に中産階級から上、つまり王族、貴族は当然として、経済界や政界のオオモノの令息、令嬢の教育のためにあるもので、まあ、はっきり言ってサイバー教育よかはるかにお金のかかる学校制度なわけ。それをあえてやってるのは、社交界に出る前の段階で子供たちの親睦を深めさせておこうという目的あってのことなのね。そもそも「社交界」っつーと一般的には華やかなイメージだけしかない感じがしますけど、あれは平たく言えば、金や地位のある者同士が集まって親睦を深め、あわよくば姻戚関係なども結んで更に儲けようという、華やかな裏に回ると、本来わりと実利的な目的も持ってる世界です。だから、クランドルの寄宿制学校というのはその延長線上にあるものと考えて良いでしょう。

市街からは離れたところに広大な敷地を持ち、最高の教授を集め、クランドル中からお金持ちの子供が集まってくる、とまあそんなところです。お金持ちと言っても当然、みんなが都市域に住んでるわけではないので、地方に住んでる家庭の子供たちにとっても、社交の域を広げるという目的にかなっている。ディやアレクの場合は行ってた学校が実家からそれほど遠かったってわけでもないので、そういう子供は週末ごとに家に帰りますけど、遠くから来てる子たちなんかは、長期休暇以外は寄宿舎で過ごしたり、友人に招かれて週末を過ごしたりってことをしてる。いまどきの世の中で、なんで男女共学にしないかっつーと、寄宿制で一緒にしちゃったら、いろいろめんどーみきれんってことなんでしょう。ヘンに間違いがあったりしたら面倒な家のコばかりなわけだし。だから、女の子ばかり集めている学校ももちろんあって、年に何回か近くの学校どうしで交流会やパーティなどが催されたりもしているのでした。

さて、デュアンくんの場合は、ママが有名なイラストレーターとはいえ、カトリーヌさんはムダに上昇志向の強い女性ではないので、普通にデュアンを学校に通わせてたのよね。そうすると、立場が変わってじゃあこの後はどうしましょうってことになるんですけど、寄宿学校にやってしまうのはカトリーヌが絶対イヤがるだろうし、デュアン自身も仲のいい友達と別れたくないなという希望があり(一番の理由は「ディの側にいたい」でしょうけどね、このコの場合)、ディも手元に置いて教えておきたいこともあったりで、とりあえず中学レベルを卒業するまではこのままで進もうかってことになります。そうすると、本来デュアンが将来的にもつきあわなくちゃならない階層の子供たちとはすれ違っちゃうからどーするかってことになるんですが、これはもうレイがデュアンのことは気に入ってるので、まかせなさい状態。彼女にしてみると、これでデュアンをお茶会やパーティに引っ張り出せるいい口実になるってなもんです。逆に、そういうコトができるなら、どっちか一方に固まるんじゃなく多方面に交流を増やせるってことにもなって結局ブラスかな。デュアンくん自身も社交家ですからね、大丈夫でしょう。しかし、これがメリルだったら騒動だなあ...。まあ、だからメリル自身が思ってるとおり、こういう家を継ぐってのには彼は向かないし、弟とはいえデュアンの方がやっぱり伯爵さま向きなんでしょうね。

それにしても、こういう登場人物の性格とか、私は全然考えて作ってるわけじゃないんですよねえ。カトリーヌさんのキャラにしても、息子がこうだから、とか考えてやってるわけじゃなく、見えてるまま書くとああなってて、書いてしまってから自分でもなるほどなあ、って思う。ロベールさんもそうだったな。それにさっき書いてた学校制度のこととかも、なんか自然と辻褄あってきたし。元はあの「寄宿学校」なんてのは、リクツで出て来たもんじゃなく、そういうイメージがあって、それは作者の個人的な好みと直結したイメージだったんでしょうけど、じゃ、なんで何十年も未来の世界でサイバー教育じゃなく、寄宿制なんてレトロなことやってんだ? って問題が出てくるが、その理由がコレでついたと。ああ、なんて行き当たりばったりな世界だ♪

話を元に戻してデュアンくんの通学のことですが、ママのところから通ってた時は学校に近かったのに、ディの屋敷は市街からちょっと離れてるので、遠くなってしまった。それで普段は近くまであまり目立たないセダンで送ってもらってるのよね。あんまり学校の近くまでリモとかで送り迎えなんてことになると、仰々しくて回りから浮き上がっちゃうだろうということで、ディんちで一番目立たないクルマ(それでもメルセデスとかですが)で送ってもらってる。それも学校から歩いて5分くらいの場所で降ろしてもらって通ってるわけです。まあ、さっきも説明した通り、毎日朝から始まる学校というのとは違って、週に3〜4日しか行かないから遠くなってもそれほど大変ってことはないんですけど。

今ちょっと見えてるシーンっていうのは、デュアンが友達とさっきみたいな話をしながらわいわい学校から出て来たところで、この時のデュアンくんは白いデニムのジャケットとおそろいのショートパンツでブーツ風のストラップシューズはいてて、かばん型の革のリュック背負ってたりします。いまどきのコドモな感じで、すっごく可愛い。髪は短めに切ってるかな。背はもう随分高いし、足も長いし♪あと数年すれば、どんな美形に成長することかって感じですね。ま、父親がアレですからね、アレ。

いつもはちょっと先のとこで運転手付きのメルセデスが待っててくれたりするんですけど、その日はディが仕事だかつきあいだかで街まで出るので、時間も合うし、帰り拾ってってあげるよってことになってた。たまには二人でちょっとお茶して、ショッピングでもして帰ろうか、みたいな、表向き微笑ましい親子の図ですが、実はデートですね、これ。で、そういうことになってたので、いつもの場所までくると丁度ディが例のマセラーティを駐めたところで、「あ、お父さんだ。じゃあ、みんなまたね!」って、嬉しそうにディのとこに走ってくのよね、デュアンくん。それを見送って、さっき「もう口もきいてくれなくなるんじゃない?」とか心配してた女の子が「良かったね、デュアン。本当は素敵なお父さんがいて」って、このコはエヴァちゃん(エヴァーレット・ベンソン)っていうんですけど、ちょっとデュアンのことが好きだったりする。だからそれまでも、お母さんは素敵な人だけど、お父さんがいないのって淋しくないのかな、とかけっこう同情してたようなとこがあって、ちゃんと両親そろったってことで良かったと思ってる反面、今までみたいに親しくしてもらえなくなったら悲しいなとかも思ってるわけ。う〜ん、このエヴァちゃん、可愛いコで、優等生でリーダー肌の女の子なんですけど、この後何か話にからんでくるかもしれないなあ。わりとはっきりイメージ見えてるし、すんなり名前も出てきたりしてるから。

こっちの世界で遊んでると、日々、こういうシーンが見え続けて楽しいもんで、なかなか現実世界に戻れなくなっちゃうんだな。でもやっぱり、断然こっちの方が面白いから仕方ないか。

★ディの子供たち・その8★

        

2008/2/7

★ディの子供たち・その6 - コトの真相 -★

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さてまず、ちょっと気が付いたので訂正っていうか、アリが物理学博士号を取ったのはいつだったか、という話なんですが、Ayapooを遡ってくと「10才で」って書いてるんですよね。あのあたり書いてた時は漠然と10才になるならずの頃って思ってたからあまり正確じゃなかったんですけど、10才の頃に一人で生活できるようになってたとこみると取ったのは8才くらいってのがホントのとこでしょう。で、その後いろいろあって後見人の監視から離れたのが10才くらいの時。そのへん、作者のカン違いってことで、お詫びして訂正させて頂きます。こういうことって、あんまりないんですけどね。(言い訳?)

ところで話は変わりますが、ディは「いーかげんでちゃらんぽらんだから、子供が3人もいるのにほったらかしてた」とロベールさんのみならず作者もずっと信じてたんですが、子供たちの処遇が決まってそれぞれ落ち着き、ファーンもデュアンもいい跡取りになってくれそうだねー、くらいに時間が経ってからも、それでもなおロベールさんが、「もっと早くに子供がいるって言っておいてくれれば、私だってあんなに跡取りのことで悩まなかったものを」とか、まあこの頃になると笑い話ではありますけど、ことあるごとに繰り返してグチるのよね。

子供たちのことがバレた当初はそれに対してどこからどう非難されようと知らん顔で何も言わずに済ましてたディなんですけど、いいかげん時間が経ってから、つまり言い訳がましく聞こえないような時期になってから、内輪の話でディがロベールさんに言うには、「だって、お父さんに言ったら会わせろの、家を継がせるのって話になってゆくでしょう? 事実、そうなったわけだし。でも、子供たちの母親がみんな、それを望まなかったんですよ。」

これ聞いて、ああ、なるほどと思いましたね、私は。やっぱりディっていい男だなあって、こういう時につくづく思うんですけど、彼としては生まれたってことを知らされた時に、自分の力が必要ならいつでも言っておいでって母親たちには言ってあるわけで、隠すつもりなんかそもそも全然ないわけ、最初から。でも、母親たちが機嫌よく子育てを楽しんでるのに、ロベールさんが知ったらこういうことになる。デュアンのママが息子を手放すのをあれほどイヤがったことでも分かると思いますが、ディにはそれがよく分かってたから、そのままにしておいてあげたってのが真相なんでしょうね。それで彼女たちが何も言ってこないので、自分でもなんとなく子供がいるってことを忘れてた、みたいな。子供たちもいずれは大きくなって母親の手から離れる時が来るだろうし、家を継ぐのどうのなんて話はその時でいいんじゃないかな、と思ってたから、あえて言ってなかったってことらしいです。

これをコトが発覚した当初に口にしてたら、すっごく言い訳めいて聞こえたかもしれないんですが、それをずーっと後になって、もう時効、みたいな時期になってから何気なく言うとこがディなのよね。で、それを横で聞いてたデュアンがまた、そうだったのか、と改めて納得する。こういうことがあるからデュアンはよけい「メリル兄さんは何も分かってない」って気になるんでしょうけど。

「迷惑はかけないから、子供が欲しいわ」って言い出したのはメリルのママのマイラが最初なんですけど、ディとしては跡取りのことでそんなに悩んでたってわけじゃないけど、考えるともなく考えないでもなかったようで、まあ、一人くらいいればいたでそのうち役に立つかもしれないし、みたいな? そもそも自分の生き方に信念持ってる芸術家さまが、外に子供の一人や二人いたところで、よしんば、その母親が全部違っていたところで、誰はばかることなんてないわけだから隠す必要もないわけよね。オオモノってのは、そういうもんだと思うなあ。うーん、やっぱり、好きだなあ、ディ。

★ディの子供たち・その7★

       

2008/2/2-2/4

★ディの子供たち・その5 - 恋する少年 -★

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前回の更新では小説原文調でお届けしましたが、ま、あんな感じでシーンごとに書いてってるわけです。私のアタマの中では、ああいう場面とか会話とかが断片的に見えていて、それを書いて繋ぐと自動的に小説になっていく。

で、あれからもいろいろなシーンが見え続けているんですけど、中でも「ディってやっぱり天性のプレイボーイだな」と感心したシーンがありまして、今日はそれをお話しましょう。

ディと親子にあるまじき関係になってしまってから、しばらくの間はシアワセしていたデュアンなんですが、ある日、夜になってもディが帰って来ない。アーネストに「お父さんはどこに行ってるの?」って聞くと「だんなさまは、今日はアリシア・バークレイ博士とお食事をご一緒されているはずですよ」というお答え。

それ聞いてデュアンは、すっかり忘れてたけどディにはアリシアという十五年も続いてる恋人がいるんだと再認識。当初からディが平気でアリシアをあちこち連れまわすので、この二人の関係は社交界にちょっと詳しければ誰でも知ってるってほどのもので、なにしろあの堅物のメリルでさえ知ってたんですからデュアンだって当然よく知ってる。それなのにここしばらくずっとディが側にいて優しくしてくれるのですっかり舞い上がって忘れてた。それを再認識させられて、デュアンくんとしてはかなりショック。考えてみるまでもなく、自分のことを恋人にしてくれたからと言って、それでディがアリシアと別れるなんてありえないし、自分がアリシア以上になれるなんてとても思えない。

なにしろデュアンにとって相手は「8才で物理学博士号を取った大天才」で、しかも「ディに劣らないくらいキレイな人」なわけで、まあこのコは知りませんからね、アリの実態を。確かに「天才でキレイ」だけど、「性格が厄介」なのはこの頃になるとディ以上になってるんですけど。

ともあれ、その日から数日ディが帰って来ないのでデュアンくんは「結局ディにとってぼくってなに?」みたいなことを悩んじゃって何も手につかない。帰って来たら文句言ってやろう、とか、でもそんなことしたら嫌われちゃうかな、とか、恋する少年の悩みなんてそんなものでしょう。で、ママの気持ちが分かるなあ、とか。確かにコレじゃ、妻になったらいたたまれないよね、とか。

さて、そんなところへ数日してディがご帰宅になるわけですが、このいぢわるなパパはデュアンがどんな反応を示すかってのを内心けっこう楽しみにしてたりするんです。そもそもデュアンに直接何も言わず、当然、言い訳する必要も全く感じないままに出かけてって数日帰って来ない。こんなのはディにとって日常のことで、それはデュアンがいようといまいと変わらない。でもデュアンとしては気分の良いわけはない。では、どう出るか? それ考えるとわくわくなんですよね、ディは。

で、ディが帰って来たと知ってすぐにデュアンは彼の部屋に行くんですけど、「言いたいことは言う」タイプのこのコをして、怒る元気もないくらい落ち込んでる。文句を言える立場じゃないのくらいよく分かってるし、「ディってそういう人」なのも分かってるのに、でも少しくらい自分を宥めるようなことを言ってくれるかなとか思いつつ...。

***************

デュアンがディのプライヴェート・リヴィングのドアをノックすると、中から誰? という彼の声が聞こえて来た。

「ぼくだよ。入ってもいい?」

「いいよ」

ディはつい今しがた帰ってきたばかりだったので、珍しくダークスーツのままでタイをゆるめながら机の上に届けられていた分厚い書類に目を通していたようだった。モルガーナ家の傘下にあるいくつもの企業の、月ごとの業績報告書だろう。傍目からは絵を描いていなければ遊んでいるようにしか見えないが、ディが忙しいのは本業の絵のせいばかりではなく、むしろ伯爵業とでも言うべきモルガーナ家の当主としての社交や資産管理のせいだということを、既にデュアンもよく知るようになっていた。ディが経済学や経営にも明るいということは一緒に暮らすようになってから初めて知ったことだったが、彼が「そういうこともできる」という事実はデュアンを随分驚かせたし、それまで以上に尊敬させる要因のひとつにもなった。しかし、そうであればあるほど「ディの後を継ぐ」というのは、なかなか大変なことだと思えてくるし、そればかりではなく、メリル兄さんはそんなこと全然知らないくせにディのことを誤解してるという気にもさせられるのである。

「おかえりなさい」

「ただいま」

ディは机の端に斜めにかけて、書類を机に放るとデュアンに微笑みかけた。全く意識してやっているわけではないのに、ただそれだけの仕草や表情がまるで映画のワン・シーンのように魅力的だ。四十代の半ばだなんて、言われなければ誰も考えもしないに違いないし、デュアンといても親子と言うより、少し年の離れた兄弟と言ってすら通りかねないところが未だにディにはある。やっぱりなんて素敵な人だろうと思うと、今は自分に向けられているその微笑が、ついさっきまでは彼の最愛の恋人に向けられていたのだろうという事実が、いっそう幼い少年の気持ちを曇らせた。

デュアンはディに近づいてゆくと、しばらく何か言いたそうな目で彼を見ていたが、ディが両手を広げて見せると、すんなりその腕におさまってキスを交わした。こんなふうにディは約束通りぼくを恋人扱いしてくれるけど、ぼくばかりじゃなくてぼくのママも、兄さんたちのママも、アリシア博士以外は全部ディにとって特別な意味はないんだ、そう思うととても悲しくなってくる。泣き出してしまいそうなのを一生懸命我慢しながら、デュアンはしばらく彼の腕に抱かれていた。

ディは、いつものデュアンから考えると、さて、文句のひとつも言い出すかなと思っていたのだが、しばらく待っても何も言おうとしない。案に相違して、これはけっこうマジで落ち込んでいるのかなと思うと可愛くて、ついついもっと苛めてやりたいような気分になって来た。自分が何か宥めるようなことを言い出すのをデュアンの方が待っているんだろうということは分かっているが、そうそう甘やかしてはやらないよと意地悪く思って、もうしばらく待ってからディはデュアンに声をかけた。

「ぼくの息子に戻るかい?」

ディの声は優しくて、いつもと全く変わりなかったけれども、その一言だけでデュアンをどきっとさせるには十分だった。自分が不平がましく黙ったままでいることの意味は十分ディに伝わっている。そしてこれがその答えなのだ。

デュアンは首を横に振ってディから離れると、普段の彼に戻って、着替えるんでしょ? と言った。

「うん」

「アーネストにお茶を頼んでくるよ。ぼくも一緒していい?」

「どうぞ」

ディの答えに頷くと、デュアンは扉の方へ歩いて行った。それを閉めるまでは彼の様子はいつもとまるで変わらないように見えたが、扉を閉めたとたんに涙があふれてくる。こんなに、こんなに好きなのに、ディにとってぼくはその程度でしかないんだ。そう思うとそのままそこにうずくまって一歩も歩けなくなりそうだったが、デュアンは気丈に大きくひとつ息をつくと手で涙をぬぐってアーネストを探しに歩いて行った。

*************

 

この「ぼくの息子に戻る?」ってゆーひとこと。これですね、これ。言外に「ぼくが好き勝手するのを誰も止められないし、イヤならつきあうのヤメる?」って言ってるわけで、これはデュアンだけじゃ当然なくて、ディとつきあってきた女性がみんな思い知らされたディの「相手に対する執着心の無さ」を物語ってる一言なわけです。まあ、こんなのはね、それはもうそれだけの内容のあるやつだけが言って通るセリフなわけで、そもそもメリルのママ、マイラっていうんですけど、最初に彼女がディの子供を欲しがったのだって、自分の手に入る男ではないとよくよく分かってたから、せめて子供くらい欲しいわ、と、そういうことだったんでしょう。

ディの方は、自分を過大評価してるんでも傲慢なんでもなくて、後にデュアンにも「どうでもいい相手を恋人にしたことはないよ」と言ってる通り、子供たちの母親や他のつきあってた女性が、それぞれ素晴らしいところのある人たちだということはよく分かっている。ただ、問題はディ自身が「執着心を持てない」というこの一点にかかっているわけで、「自分に忠実に」というのは彼の信念でもあるからそれを曲げるようなことは絶対しないというだけのことなんですが、逆にだからかえって彼女たちにしても「無理は言えない」って気にさせられちゃうんでしょうね。そもそも、無根拠に自分を過大評価してるような傲慢なやつだったら、聡明な女性たちの方で寄りつかないでしょうから。

ま、「いくら遊んでてもそれで通る」ってそのへんが、あやぼー的には理想的なプレイボーイ像なんですけどねえ。つまらん女とただ遊び歩くだけで、挙句すったもんだするようじゃね、それはタダの「女好き」というものであって、ロマンもへったくれもないじゃないですか。

さて、アリシアにまーがいるということをまだ知らないデュアンくんは、すっかりアリシアのことで落ち込んじゃったようなんですが、後にまーたちの船の船上パーティにディとデュアンが招かれて行った時に、まーが勘付いて「あの二人、単に親子だと思う?」とかアリに言うのよね。アリは自分の知らないところに三人も子供を隠してたという事実で「ぼくというものがありながら」と既に相当ディに対してご機嫌ななめなのに(自分にまーがいることはすっかりタナに放りあげている)、え? まさか、とか思いつつもまーのカンってバカにできないのでよくよく見てるとどうも気になる。そこでデュアンが一人の時に「ディから聞いたよ」とかかまかけてデュアンに本当のことを言わせ、挙句に「ぼくからディを取れると思ってるの?」とかいぢめる。

複雑なんですけどね、これは単にデュアンに嫉妬して言ってるというのでもなくて、アリとしてはなんとなくデュアンのことは気に入ってるのよね。だから「ちょっかい出してみよう」っていうパターン。このへん、ディと長年つきあってて影響されてるのかもしれないけど、それ聞いたデュアンは「アリシア博士ってキレイだけど意地悪っ!!」とか、いじけつつも相当かっつーんと来ちゃうんだね。しかもその後ディからアリにはまーがいるという話を聞き、「ぼくなんて100%ディだけが好きなのにっ」と憤慨。「よおし、それならいつかきっと、アリシア博士からディを取ってやる」という方向に進んでゆく。デュアンは「取ってやる」ってわりとストレートに結論してますが、実はそれまでディとつきあってた誰一人としてアリシアからディを「取れる」なんて思った女性はいなかったわけで、この「100%ディだけ」とか「取ってやる〜」とかいうのがけっこうディにはアピールするんです。まーをアレクに譲って以来、そんなふうに言ってくれる人はいなかったなあとか、まあそれは自分も悪いんですけどね、彼の場合。

ってことで、数年すれば絶世の美少年に成長することが確実なデュアンくんですが、果たして彼はアリからディを取れるのでしょうか? つづく(そのうちね)。

★ディの子供たち・その6★

     

2008/1/26

★ディの子供たち・その4 - 母と子の会話 -★

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デュアンがディのところに引き取られてから既に3ヵ月が経とうとしている。母のカトリーヌが淋しがっているのをよく知っているデュアンは、その間、月に2〜3回の割合で彼女のところに泊まりに来ていた。しかしそれでも、可愛がっていた息子を手放したことは、彼女にとってかなりこたえているようだ。

クランドルでも大人気のイラストレーター、カトリーヌ・ドラジェのアート・スタジオは、市内に点在する壮麗な高層アパートのうちのひとつのペントハウスにある。市の中心の緑豊かな大公園を眼下に臨み、遠く港の光景まで見渡せるこのスタジオと同じフロアに彼女のスイートもあって、デュアンはここで生まれ育って来たのだ。現在の家であるディの屋敷は、ここから車で小一時間ほど離れたところにある。

「ねえ、デュアン」

「なに、ママ」

「貴族のお屋敷って、やっぱりしきたりとか厳しいこと言われるんでしょ? 窮屈じゃない?」

「そんなことないよ。他はどうか知らないけど、モルガーナ家にはそれほど格式ばったところはないもの。お父さんがああいう人だし。」

「でも、執事さんとか家政婦さんとか、家族以外の人だっていっぱいいるじゃない。うるさいこと言われて、苛められたりしてない?」

言われてデュアンはくすくす笑い出した。

「それはないよ。執事のアーネストはぼくのこと本当の孫みたいに可愛がってくれているし、家政婦長のビバリー夫人だって同じだよ。何聞いてもちゃんと教えてくれるし、ぼくもう、みんなと仲良しだから大丈夫。」

「ふうん・・・。」

それを聞いて母としては喜ぶかと思えば、どうも期待はずれだったらしい様子にデュアンはピンと来た。この母とも、いいかげん長いつき合いなのだ。

「あ、分かった。ぼくが苛められて泣いて帰って来ればいいのにって思ってたな」

「ちぇっ。バレたか。」

「そんなに淋しがるんだったら、お父さんが一緒に来れば? って言った時になんでそうしなかったのさ。そしたらぼくともずっと一緒にいられるのに。」

「やーよ」

「なんで? ああ言うからにはお父さんだってママと結婚してもいい、くらいにはママのこと好きなんだと思うのに。ママにとってもその方が・・・」

「甘いわよ、デュアン。ディがそんな殊勝な心がけのある男だったら、とっくに誰かと結婚してるわ。」

「だって」

「彼が平気であっさりああいう発言を出来るのはね、何も、全く、考えてないからなのよ。結婚しようとしまいと、私がいようといまいと、素行を改めるつもりなんかないし、それどころかその必要すら感じないような人なんだから。」

言われてデュアンは、なるほどという顔になった。

「だから言ったでしょ? 夫には全然向かないって」

「う〜ん、そういうことか。さすがママ。」

「それに、あなたはいいわよ? ディの実の息子なんだから、半分とはいえ正真正銘生まれつき貴族のお血筋よ。だけど私はこの通りだし、行儀だのしきたりだの言われたって今更馴染めるわけがないもの。私は私のこの自由な人生とライフスタイルを愛しているの。それにモルガーナ伯爵ともなれば、社交界でも狙ってる女なんてごまんといるわよ。そんな中に私なんかが伯爵夫人ですって出てってごらんなさい。裏で何言われるか知れたもんじゃないわ。女の戦いって怖いのよ。」

「それは確かにあるかも。」

「それに私がついて行ったりしたら、私たちには全然そんなつもりなくても、あなたまで財産や地位が欲しくてって言われるかもしれないじゃないの。そんなのは絶対イヤなんだもの。」

「財産と地位かあ・・・」

その言葉を聞いて、デュアンは意味ありげに深いため息をついた。

「なに? 地位と財産がどうかしたの?」

「ぼくさあ、やっぱり家を継ぐってどういうことかよく分かってなかったみたいなんだよね。お父さんに言われた時は、それこそ軽い気持ちでっていうか、メリル兄さんに家継ぐのイヤって言われて、お父さんもおじいさまも困ってるみたいだったし。だからそのくらいまあいいかって思っただけだっだんだけど、なんていうか・・・」

言ってデュアンはもう一度、ため息をついた。

「あのお屋敷って美術館みたいなんだよ? あれ以上って言ったらもうルーブルしかないんじゃないかってくらいものすごいの。保管庫にもいっぱいだし、部屋にも廊下にも、こともなげにルーベンスやレンブラントが飾ってあったりするんだものなぁ。それにお父さんの絵でしょ? それだけだって凄いのに、お屋敷そのものが美術品って感じでさ。その上、イレーネ湖に元々の本拠があるじゃない? 今度連れて行ってくれるってお父さん言ってたけど、写真で見てもすごくキレイなお城なの。あんなのがぜーんぶ、いずれぼくのものになるんだって思ったら・・・」

「いいじゃない、金持ちになれるわよ」

「やめてよ。ぼくはそれ考えるだけでかなり重いものをずーんと感じてるのに。お父さんは「ぼくで勤まってるくらいだから大丈夫」とか言ってたんだけど、そんなの真に受けたぼくはもしかするとていよくかつがれたんじゃないかと思ったりする。ぼくの代で傾いたりしたら、それこそもうもの笑いのタネだろうし、だけどどーやってあんなもの、維持してくんだか皆目検討もつかないんだもん。」

「大丈夫よ。モルガーナ家はクランドルでも十本の指に数えられるくらいの資産家だもの。」

「だけど元は資産家の貴族の家が傾くってよくある話じゃない。当主が無能だったら傾くんだよ。お父さんくらいすごい画家だったらなんとかなるかもしれないけど、ぼくはあんなにまでなれるとは思えないし」

「ディは絵で生活してるわけじゃないわよ。殆ど売らないんだから」

「それは知ってるけど・・・」

「全く不公平だと思うわよ、神さまなんて。彼の絵はね、商売じゃなくて道楽よ。あの人の場合は描けば描くほど財産が増えるだけ。今、彼の絵が売りに出たらどんな値がつくと思う? 何年も前に描いた絵が天文学的な値段になるのよ。同じ絵描きなのに、イラストレーターなんてやってるの殆どバカバカしくなるくらいよ。私なんて、締め切りに追われて描いても描いても、描いても描いても、貧乏ヒマなしよぉ」

「ママが貧乏なのは贅沢が好きだからじゃない」

「悪かったわね」

「じゃ、ぼくの食いぶちがいらなくなったぶん、楽になったでしょ?」

デュアンの冗談を聞いて、彼女はしっかと息子を抱きしめて言った。

「あなたのための貧乏だったら私は全然構わないのよっ。だから帰って来てっ」

「ママってばもぉ」

「本当なんだから。あなたがいなくてどんなに淋しい思いをしてるか。分かってよっ」

「そりゃ、ママの気持ちは分かるけど、今更ヤメますとも言えないでしょう? メリル兄さんが前言撤回してくれでもしない限り、もうモルガーナ家の跡取りはぼくって線で話が走ってるんだもの。頑張るしかないじゃない」

言ってデュアンはまたため息をついた。ディはそんなに重く考えることはないと言ってくれるが、引き受けた以上は責任というものもある。まだ幼くて無邪気なようにすら見えるデュアンだが、息子以上に無邪気で純粋な母親の側で育ったせいか、なかなかどうしてしっかり者で強い責任感も持っている子だ。ディはそのへんを既に見抜いているし、そういうところが伯爵さま向きかもしれないのだが、本人にしてみると不安の方が先に立つ。お金だってちょっとはないと困るけど、地位や財産なんてあんなになくてもいいよねぇ、と思うあたりが、やはりディの血筋ということなのだろう。

★ディの子供たち・その5★

      

2008/1/18-1/19

★ディの子供たち・その3★

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子供が一気に三人も出来ると楽しいのなんの。特にデュアンくんがアタマの中駆け回ってて、いやー、やっぱりそうなってくかー、みたいなストーリー展開に発展しています。本編はいったいどこへ行っちゃったんでしょうね。三人の子供たちが出てくる頃になるとアリは28才くらいになってるし、ってことはまーは31才で、こいつらはこいつらで仲良く豪華クルーザーで世界旅行を楽しんでたりするんですが、そっちの話はちょっとこっちにおいといて状態ですな、今、私の頭の中は。ちなみにアレクは船降りて「International Grand Distribution」っていう巨大コングロマリットのオーナーにまでなってて、まー、アリ、アレクの関係はそのまま変わってません。

で、この前レイが「自分の子供にだけは手出すんじゃないわよ」とか冗談言ってたと書いたと思いますけど、それ書きながら私は「ん?」とか思ってたんです。どーもこの二人、ディとデュアンくんってタダで済みそうにないかも? とか。しかしそれはあまりに、という気もして、でも作者のそういうためらいとは関係なく、どうやらそういう方向に話が進んでいってしまうみたいです。

と言うのは、結局モルガーナ家はデュアンが継ぐってことになるので、このコは母親から引き取られる格好になるんですけど、まずはそのへんのところから書きましょう。この時点でデュアンくんは10才くらいかな。ディと出会った頃のまーと同じくらいのトシです。

このデュアンのママってのはけっこう「あまえた」なところがあって、この親子というのは「姉と弟」みたいな仲良し関係なんですね。で、ママは「あなた(デュアン)がいなくなったら、私はどうすればいいのよーぉ」とか泣いて放したがらない。そもそも仕事が忙しい彼女の家では、家政婦さんには来てもらってるけど家の中のことは自分で全然分からない状態で、「ママはぼくがいなかったら、どこに何があるかも分からないんだから」って感じだったらしいです。そういうママだからデュアンがけっこうしっかり者に育ったのかもしれませんが、ともあれ「出て行かないでー」と言って泣くママに対してデュアンの方は、「ママは大事だけど、今まで一緒に暮らして来たんだし、今度はお父さんと暮らしてみたいよ。それに家を継ぐってことになったら勉強しなきゃならないことがいっぱいあるもの」とわりとマジで出て行く姿勢を見せる。それでもママが「やだやだ」状態なんで、ディが見かねて、

「じゃ、きみも一緒に来れば?」

「冗談言わないでよ。それじゃ私が伯爵夫人の地位目当てにデュアンを産んだみたいじゃないのっ。そんなふうに思われるのは絶対イヤなのよ。イヤだからデュアンのことでも、あなたに頼ったことはなかったでしょう?!」

「はいはい、そうでしたね。」

「それに今更こんな夫なんて、それこそ冗談じゃないわ。あなたは大好きだけど、夫にするには全然向かないのもの。」

「じゃあ、いったいどうすれば満足なわけ?」

「だから、今まで通りデュアンが私のところにいればいいのよ。」

「ママ、それじゃ堂々めぐりじゃない。」

「ひどいわよ、デュアン。じゃ絶対、ママを捨ててくって言うのね?」

「捨てるなんて言ってないでしょ? ママはママなんだから。」

「別に会わないでくれって言ってるわけじゃないだろ? どこにいるかはデュアンの自由なんだから、好きな時にきみのところに泊まりに来たっていいんだし。ただ、しばらくはこの子にうちへ来てもらった方が都合がいいってだけの話なんだから。」

*************

そんなこんなですったもんだがありまして、結局デュアンくんはディに引き取られることになるわけです。で、始めは「お父さん」ってことですっかり満足してたデュアンなんですけど、もともとがファンで「あこがれの人」な上に、このコの感覚ではディとアリの関係なんかは「素敵だなあ」の方に行くわけで、しかも父親とは言っても側で育ててもらったってわけじゃない。それで建前は「親子」としてふるまってても、ふつうの親子みたいな気持ちの繋がりは希薄。そんな状態で一緒に暮らしているうちに、デュアンの方が父親に恋してしまうというか、もともと好きだったのが本格的に好きになっちゃうというか、まあ、ディですからねえ、相手が。それに自分で気がついたデュアンくんは、どうしても黙っていられなくて告白しちゃう。

ふつうの父親だったらそもそもこういう展開にはならないだろうし、だからこういう展開になること自体が「やっぱりディ」なんですけど、それを聞いた後も「ディらしい対応」になってくでしょうねえ、当然。

聞いた当初は一過性のものだろうと聞き流してたディなんですが、執事のアーネストが「デュアン坊ちゃまはどうなさったのでしょう。最近、あまりお元気がないようで...」とか心配するほど思い詰めてきちゃって、もう完全に「恋わずらい」状態。何も手につかないって様子にまでなってくるので、ディも「これはどうしたものか」と思案せざるをえない状況に。

そうこうするうちに、二人で話しててもデュアンはぼーっとしてディに見とれてたり、思いつめるあまりに衝動的にいきなりキスしちゃったり、それで自己嫌悪に陥って「ぼくってバカですよね。」とか、見てて可哀想なくらいになってきちゃう。

ディとしては最初から「可愛い子」という印象はあったし、側に置いて息子として育ててもいいなと思うくらいには気に入ってるし、しかしさすがに親子だからなあ、というのがひっかかってそのままになってた。でも、ますますって感じでデュアンの元気がなくなってくるのと、ディの悪いクセというか「これは面白い」みたいな方向に考えが進むのとで、じゃあまあなるようになるってことでって展開になってく。

そうなってくるとディとデュアンってのは「親子」で「師弟」で「恋人」っていう妙な関係になってくわけで、それは本人たちそれぞれにどれもある感覚なわけだから、気持ち的には全部入り混じってるって感じになるでしょう。それ考えると確かに面白い。そもそも私は「大きい愛」「小さい愛」っていう定義、つまり「人類愛」と「恋愛」を別個のものとする考え方は間違ってると思ってるわけで、「愛」という言葉に対する定義は唯1つだと考えてます。そうするとこの二人の関係ってそのへん反映してくるかなって気がするし。ま、こういう関係になってくからと言っても、私の話は絶対に陰湿な方向には行かないのが保証付きなので。

ともあれ、この後いろいろあるわけですが、そのうちこれがこともあろうにメリルにバレたりしちゃうんですねえ。

いつのまにか弟と父親がこんな関係になっちゃってると知ったメリルは当然「非常識」って印象を持つわけで、口には出さないまでもそれ知った時そういう態度が出ちゃう。それ見て「悪いこと」とは思ってないデュアンはメリルのその態度に腹立てる。で、「兄さんはディのことをちっとも分かろうとしない。自分だってディからあんなに才能もらってるくせに、そういうことちっとも考えないんだ!」とか、「側で育ててもらえなかったとかってスネてるくせに、それでいて家を継ぐのはイヤとか、メリル兄さんってワガママじゃない? ディの側で育ってたら長男なんだから継ぐのが当たり前じゃないか。それって矛盾してるよ。それにディの息子だってバレると面倒だからって、おじいさまにもディにも気を使わせてさ。なんでそんなに何にも考えないで好き勝手言っていられるの、無神経だよ、兄さんてっ!!」とか怒って、それ面と向ってメリルにぽんぽんぽんと言うわけね。ディからは「メリルにはメリルの考えがあるんだから」とか言われてるんですけど、それでもあれこれ腹立ってるもんだから我慢できなくてメリルんちにそれ言いに行く。言われたメリルの方は「何でこんなにぽんぽん言われなきゃならないんだ」とこちらも腹は立つけど、確かに一理はありそうな発言だし、そこで「自分は考えなしだったんだろうか」とマジメに受け止めるのもメリルの性格よね。で、おじいさまに、「デュアンからこんなことを言われました。ぼくって、無神経だったんでしょうか」とかマジで相談しちゃったりする。ディとデュアンの現在の関係については、おじいさまが知ったらどんなに悲しまれるかと思うもんだから言わないけど。

で、ロベールさんからそんなことがあったらしいよと聞いたディはデュアンに、「ぼくも良い子だったとはお世辞にも言いかねるけど、全くきみって子は爆弾っコだなあ。ぼくにはそういうところはなかったはずだよ。」とか言う。困るというより笑ってますけどね、ディのことだから。それへデュアンは「だったらこれは、母の血です!」

まあデュアンはメリルのことをキライってわけではないんだけど、わりと本質的に神経細かいって言うか、家継ぐの継がないのって話にしても、このコにしてみたら「立場上の責任」みたいな意識があるから自分まで「イヤ」と言ったら、お父さんもおじいさまも困るだろうなあと思って受けたようなところがあるし、母親との関係にしても彼女の方が何でもかんでもデュアン、デュアンって頼るほど支えてあげてたりしたわけで、そういうコから見るとメリルの態度は「何も考えてない」ように見えるのよね。メリルはメリルで自分にできることとできないことがハッキリしていて、できないことはできないと言ってるだけなんですけど。

こういう一幕があって、それからがこのコ(デュアン)のユニークなとこなんですが、ようしそれならって「ぼくも油彩をやる」とか言い出すんです。「兄さんはディからだけだけど、ぼくはママとディとどちらも画家なんだから、ぼくの方がダブルで才能もらってるはず!」とかワケのわからない理屈でそっち方面も始めちゃう。「ディを理解しようともしない兄さんになんか負けるもんか」ってわけです。

イラストの方はディに引き取られる前から母親の担当編集者が気に入ったりしてて、ちょこちょこ雑誌なんかにも使われてたので、この頃になるとちょっとしたアルバイト程度の「仕事」にはなって来てるんですけど、それはもちろん続けながらだから、メリルの正統派クラシックな画風に対して、このコのはグラフィック系のモダンな画風に発展してゆきそうですね。「油彩を始める」と言い出したら、当然ディに「教えてっ」ってことになるから、技術的にも最高の師匠が側にいるし、デッサン力とかはそもそも凄いし。ただ、イラストは主にインクとペンで描いてますけど、油彩では絵の具の使い方が全然違うので、最初のうちは3日とあけず「ぼくには才能がないんだーーーーっ」とかわめいてディを笑わせてたりします。父親のスタイルを真似ようなんて考えもしないところは、メリルもデュアンもさすがにディの息子ってとこでしょうか。

★ディの子供たち・その4★

  

2008/1/9

★ディの子供たち・その2★

この話題について始めから読みたい方は、専用のSTORY INDEXをご参照下さい。

さて、ディの子供の頃の話をこの前ちょっとしましたが、それからずーーーっとトシ取ってってそのうち彼には息子が3人ほど出来ちゃうというのも以前書いてました。で、その時はどんな子たちかなーみたいなことを言ってたと思うんですけど、その後、けっこう鮮明なイメージになって現れて来たんですね。

まず3人の名前ですが、上からメリル、ファーン、デュアンで、三番目はディと同じ名前ですけどスペルはDiane ではなくてDuaneの方なんだそうです。この子のお母さんが毎日そう呼んで育てたいと思ったのでこの名前にしたとか。前にも書いてた通り、母親はみんな違います。

一番めのメリルのお母さんはディとつきあってた頃はブックエージェントをしてたんですけど、その後、自分で出版社を作って、それは今ではクランドルでも定評のある中くらいの大きさの会社にまでなってる。いわゆる「才媛」ってやつですね。文学に関わるくらいですから真面目で真っ直ぐな性質。キレイな人だけど派手派手しいというのはキライな方で、息子もよく躾けて地に足のついた真面目な子に育ててる。

二番目のファーンのお母さんは貴族の未亡人。彼女はディより少し年上かもしれませんね。楚々たる美女という雰囲気で、思いやり深い優しい女性ではあるけど、生まれた時から貴族のお姫様として育ってるからそういう意味での誇りも高い。だから息子もきわめて貴族的に育ててます。

三番目のデュアンのママはクランドルでも人気のイラストレーターで、キュートな人懐こい感じの美人。華やかな世界で活動しているだけにそういう方面の交流が多く、芸能界、社交界とも近いという環境で育ったデュアンも明るくて社交的な可愛い子って感じかな。

で、息子たちの方ですが、メリルは性質、才能ともに一番ディを継いでる。ただ、この「性質」っていうのは大人になってからのディじゃなくて、子供の頃の「純粋かつ繊細でまっすぐ」だった方のディ。社交的とはお世辞にも言いかねる性格で、母親の話ではものごころついた頃から絵さえ描かせておけばご機嫌だったとか。容姿の方は母親似で髪も目もブラウン。まっすぐな髪は肩くらいまでで切ってますけど、これがもっと長かったらマーティアタイプかも。

ファーンは「美術は見るのは好きですけど、才能はないみたいですね」と自分で言ってるくらいで、その意味ではディというよりロベールさんの方に似てるかも。隔世遺伝ですかね。十二歳くらいなのにけっこう落ち着いた性質で「将来は大学に進んで、政治か経済をやりたい」とか言ってることもあってロベールさんがことのほか気に入るのよね。貴族社会で育ってるからそのへんもすんなり馴染むし、ディから見れば次男ってことになるから、モルガーナ家をメリルに継がせるならファーンにはシャンタン家を継がせたいって話になってく。容姿の方はわりと母親似かな。

さて問題の三番目。問題のって、これはけっこう面白いやつみたいで、今のとこ真面目なメリルと人懐こくて明るいデュアンってのが対照的で、私としてはこの二人に特に注目してるんですけど、子供の頃のディにそっくり、ってことは必然的にアリシアにも似てる。ただ、ディは性質がああなんで子供の頃もぱっと見「キレイだけど近寄りがたい」って感じなのに対して、デュアンは「すごく可愛い」って印象がありますね。これは性質的なものの反映でしょう。ただ、可愛いし人懐こいので誰からも可愛がられるけど、けっこう芯のところでしたたかというか、つっこみが鋭いというか、「言うことは言う」みたいなとこがありますね、この子。ディとこの子の会話ってけっこう可笑しい。なかなかいいコンビというか。

例えばですね、ちょっと話が飛びますが...。

三人も孫がいることを知って怒ったロベールさん(怒ったのはディが黙ってたからで、彼に子供がいたこと自体はめちゃくちゃ喜んでる)が、三人を集めさせて初めて顔を合わせたあと、メリルが母親に、「ぼくはもうお父さんとは会わないよ」とか言い出しちゃったんですね。ファーンはもともと貴族の母親にそういう世界で育てられてるから何の問題もないし、デュアンもわりと社交的な性格な上に大人からちやほやされるのにも慣れてる。だけどメリルだけはきわめて「ふつう」に育てられてるし、絵を描いてれば幸せってこもりがちな子だから「社交的な雰囲気」ってのになじまないのよね。しかも、この子の鋭いとこは、「お父さんはぼくのことなんか何とも思ってない」、なぜならば、「この前会った時の彼ってイメージが全然違うんだもの。少なくとも絵を描いてる時の彼はあんなじゃないはずだよ。本当ならあんなふうに機嫌よくぼくたちを"おもてなし"してくれるような人だとは思えないし、本当にぼくたちに関わってくれるつもりなら、もっとちゃんと接してくれるんじゃないかと思う」って、結局ディのその時の本音をきっちり見抜いちゃってるのよね。それにその時、モルガーナ家を継ぐってことも考えておいて欲しいと言われて「あんな大きな屋敷や豪華なリムジンがあるような家を継ぐなんて、ぼくには絶対できない」。ま、それほどまじめで、絵を描くことにしか興味のない子と言ってもいいかも。

そんなわけで最初はモルガーナ家は長男のメリルに継いでもらえればって話になりかかってたのを、メリルが「やだ」とゆーので仕方がないからじゃあデュアンにってことになって、でもこっちの子も財産とか地位とかには極めて興味のない子なので、最初にそんな話が出た時も三番目だからぼくには関係ないって顔してたくらいなんですね。だけど持ち上がり式でそういうことになっちゃったんで、ディがデュアンを呼んで「これはぼくからのお願いなんだけど」ってことで、モルガーナ家を継いでもらえないかなともちかけたわけです。

************

「なんでぼくなんですか。メリル兄さんがいるのに」

「ぼくはメリルに嫌われちゃったみたいでね。ま、こんな父親ってのが許せなかったんじゃない?」

ディが言うとデュアンはしばらく考え深げに首をかしげていたが、納得したような顔で頷きながら答えた。

「...そうかもしれませんね。まじめな方みたいでしたから。」

「.....」

「どうかしました?」

「いや、もう少しなんとかフォローしてもらえるかと思ってたもので」

「あ、ごめんなさい」

「いいけど。で、どう? 聞いてもらえるかな、ぼくのお願い。」

「そうですね...。ファーン兄さんはおじいさまが後を継いで欲しいと思ってらっしゃるようですし、そうするとぼくしか...」

またしばらく考えこんでから、ふいにデュアンはディを見て言った。

「他に、いないんですか?」

さすがにこういう一見無邪気なつっこみには備えていなかったディは一瞬彼らしくもなく固まり、それから、ぼくの知る限りでは、と答えた。

「なるほど、それは困りましたね。でも、ぼくに出来るでしょうか。大変なんでしょう? やっぱり伯爵さまって。」

「いや、大丈夫。ぼくで勤まってるくらいだから。」

「あ、そうでしたね。それなら...」

これがかなり失礼な発言であることが分かっているのかいないのか、さっきのも含めてわざとなのか失言なのか、どうもこの少年は無邪気なのか、作為的にそう見せているだけなのか判断のつかないようなところがある。なるほどこれはぼくの息子だと思うとディは可笑しくなってきてしまうのだが、可愛らしくて、もの言いも丁寧なくせに、ちょっと何を考えているんだか、というようなところがあるのもディはけっこう気に入っていた。ともあれ、メリルと違ってこの子なら、なかなかめんどうな「伯爵家の主人役」をうまくこなせそうなしたたかなところがありそうだ。

*******************

これとか、お披露目が済んだあとレイが連れてきなさいよって言うので、ディはレイんちにデュアンを連れてお茶しに行くんですけど、こんな大きくなってる子を隠してたなんてとか、他にもいるんじゃないでしょうねとか、自分の子供にだけは手出すんじゃないわよとか、散々楽しくディをからかったあとでレイがデュアンに「こんなお父さんでイヤじゃない?」とか聞くんですよね。で、もともとディのファンだし、いろいろあってこの頃には既にディに心酔してるデュアンはこの質問に相当かっつんと来たらしく、きっぱり「いえ、ぼくの師だと思ってますから」とか言い切る。一見可愛らしい少年があまりにきっぱり言い切るものだから、レイの方が面食らったくらいで、こういうとこ見るとやっぱりこの子は可愛いだけじゃなさそうだなと私も思います。ともあれこれに対してレイもさすがで、「あーらあら、もうすっかりてなづけちゃって。素早いわよね。」って切り返す。その横でディは何くわない顔して笑ってる。

ちなみにデュアンが「ぼくの師だと思ってます」とまで言うのは、この子は将来は母親と同じようにイラストレーターになりたいと思って勉強していて、でも父親が美術の王道をゆく油彩の大家なわけだから、イラストなんて言ったらバカにされそうとか思いながら自分の作品をディに見せるのよね。で、見る前はあまりディは期待もしてなかったんですけど、なかなかどうしておや? と思わせるものがある作品で、なかなかいいねって言う。それへデュアンが、

「本当ですか? お父さんから見たらイラストなんてつまらないって言われるかもって思ってたんですけど」

「どうして?」

「だってやっぱり、油彩とイラストでは格違いっていう感じがするし」

「あのね、デュアン。ぼくはきみが将来何になろうとしてもそれはきみの自由だと思うけれど、絵を描きたいと思うならこれだけは覚えておきなさい。「何で」描くかじゃなくて、「何を」描くかが問題なんだってことをね。」

メリルが「本当にぼくたちに関わってくれるつもりなら、もっとちゃんと接してくれるんじゃないかと思う」と言ってましたけど、それまでのディは自分の息子だからそれなりの対応はしても、確かにまじめに接してたとはいいかねる状態だったわけで、でもこのデュアンに対する一言ってのは完全に「画家としての発言」で、これが初めて自分の息子を「それなり」じゃない扱いした場面ってところでしょう。で、この一言で「なるほど」と思ったデュアンは「ぼくのお父さんは本当にデュアン・モルガーナなんだ」って、こっちの方も初めて実感、納得した感じで、以来そうとは口に出さないまでも「ぼくの師匠」って心に決めてたりするんですね。それをレイが茶化すもんだから怒って反論したんだな。

他のエピソードというと、三人の子供たちを招いてディの屋敷でディナーっていうのが最初の集まりだったんですけど、その日は遅くなるので三人とも泊まってくってことになってた。で、ちょっとお茶してからそれぞれゲストルームに通されて落ち着くと、少ししてデュアンがメリルの部屋にやってくるんです。「ちょっとお話していいですか?」とかって。

デュアンは「ぼくは母とふたりきりなので大家族ってすごく憧れてたんです。だからお父さんだけじゃなく、おじいさまと兄さんが二人もいっぺんに出来るなんてすごく嬉しくて。メリル兄さんって呼んでいいですか?」って屈託なく「仲良くしてね」みたいなことを言いに来たわけね。メリルの方はいきなり父親だの祖父だの弟だの言われても、どう接していいか分からないって感じで戸惑ってたから、こういうところも「自分とは違うなあ」と思って引け目とか感じちゃうわけ。で、アリシアのこととか、実の息子なのに側で育ててもらえなかったことなんかについてメリルはかなり拘ってたもんだから、いろいろ話してるうちに、この子(デュアン)はどう思ってるのかなと気になって聞いてみるのよね。

***********

「本当のお父さんなのに、今までぼくたちを放っておいたこととか、きみとぼくのお母さんが違うこととか、そういうのって普通じゃないじゃないか。家族そろって一緒に暮らしたかったなとか、そういうこと、きみは思わなかったの?」

「え? だって、彼はデュアン・モルガーナなんですよ! 全然似合いませんよ、そんなの。」

「似合わないって、でも...」

「ごめんなさい。だけどぼく、もうずっと前からお父さんのファンだから。あんなに凄い絵を描くひとが、そんな普通の生活してるなんて、ぼくはちょっと想像もつかないし。ぼくは彼が本当のお父さんなんだってだけで、すごく嬉しいくらいですけど。」

「じゃあその...。お父さんとアリシア・バークレイ博士がとても親しいという話とかは?」

「ステキですよねっ。」

「.....」

「ぼく、母さんの関係でいろいろなパーティとかにも連れて行ってもらえることがあるんですけど、それでアリシア博士って一度だけお見かけしたことがあるんです。ものすごくキレイな方ですよ。お父さんと一緒にいたら、それはもう本当に絵みたいに素敵だろうなって思うくらい。」

************

このへんの感覚の違いってのがけっこうメリルの「引け目」とか「気後れ」には影響してますね。弟のこういう感覚には「ついていけない」ってのがメリルの本音でしょう。でも、ファーンの方もそういう疑問とかは少なくとも表立っては感じてないようにしか見えなくて、口に出したら自分ひとりがつまらないことに拘ってるように思われて分かってもらえないような気がしてくる。デュアンが明るいのとロベールさんがソツなく取りしきってるのと、ディが機嫌よく応対してるのとで既に「和気あいあい」な雰囲気になりつつあるディナーの席でも、メリルひとりが浮き上がってるような気分になっちゃうのよね。

後にはロベールさんがメリルのことを気にしてよく話し合った結果、メリルの常識的感覚はロベールさんには十分理解できるものだったので、おじいさまとはそれなりに交流もできて仲良くなってくんですけどね。ただ、画家を目指しているメリルにとっては、実の父親がディだと公表されると、逆にその才能が正当評価される邪魔になりかねないということをメリルの母親もディもロベールさんも心配して、それで正式にお披露目するのはファーンとデュアンだけってことになり、メリルはかなりトシ取るまでディとは疎遠なままになります。

ま、そんなこんなでいろいろ場面は見えて来てたりするんですが、今のところはこの三番目のデュアンくんがけっこう楽しませてくれてますね。メリルのものごとマジメに受け止めて悩む性格も捨てがたいですけど、うーん、面白くなってきたぞ...って、この段階では、読んでる皆さんの方にはあんまり伝わってないかもですね。私だけが楽しんでるって感じで申し訳ないですが、こういうエピソードが蓄積していくうちに、「作者」と「登場人物」は親しくなってくってことなのですな。

★ディの子供たち・その3★

       

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