Workshop Comic Review

ANNEX VOL1.

 

Winter Special 2002特別企画PART1

あやぼーの私的・漫画家さんベスト10

 


WINTER SPECIAL特別企画ってコトで、あやぼーの好きな漫画家さんの作品を一同に会してご紹介しようというのがこのページのテーマです。いつものレヴューは結構こむずかしいことをあれこれ言ってるんですが、今回はそういうの一切ナシで、まあ読んで失敗なしのオール傑作選をお届けしようかなというのがこの企画。どこかの出版社がこんなことしようと思ったら、著作権者の許諾だの契約問題だのけっこうウルサイと思うんですが、そのへんは個人の趣味ってことで押し切るブライヴェート・サイトならではの企画かもしれません。各作品の著作権者の皆さまには、削除のご希望がございましたら、企画者のあやぼーまでメールにてご連絡下さいませ。即刻対応させて頂きます。

さてお約束のご挨拶が済んだところで早速始めることにいたしましょう。まずPart1ではご紹介したい長編が2作以上ある漫画家さん10人を選ばせて頂きました。もう、このあたりの日本を代表する漫画家さんに、例えベスト10と銘打っていようとも順位をつけるなんてことは不可能ですから、アットランダムな順番でご紹介してゆきたいと思いますが、あくまでコレは、あやぼーの私的見解ですので、ご贔屓の漫画家さんが入っていないからと言って、どうぞお怒りにならないで下さいませ。私だって世の全ての漫画作品を読んでるワケではありませんので、偏りについてはご容赦願います。ま、このあとPart2では、この他の漫画家さんや今ではオークションや古書店以外で手に入れることは出来ないんじゃないかというような、かなり古い名作なども集めてご紹介するつもりですから、その中にご贔屓の方の作品もあるかもしれません。ともあれこのページでご紹介している作品は、現在単行本、もしくは文庫本で比較的容易に手に入るものばかりですので、まだ読んだことがないのがあったら是非目を通してみて下さいね。

それにしてもこうやって集めてみて改めて驚くのは、やはり昨今の「どれを取っても個性がない」という人たちと違い、70〜80年代あたりから活躍しておられる方というのは、おひとりとして似たような絵を描く方がいらっしゃらないということです。ストーリーもさることながら、その絵の個性にしてもやはり特筆すべきものがあるということなんでしょうね。本当に凄いことだと思います。

 

 

 

T成田美名子先生

エイリアン・ストリート / サイファ / アレクサンドライト

さて大好きな漫画家さんの中でも、やっぱり贔屓の引き倒しをしてしまうのがこの方、成田美名子さんです。とにかくデヴュー当初から、ご覧の通りの華やかで明るい絵柄と楽しいストーリーで独特の世界を展開して来られました。やはり一番に挙げたい漫画家さんです。

★エイリアン・ストリート★

L.A.を舞台にカッコいいけどお茶目な主人公、シャールくんが大活躍する成田先生初期の大人気作品です。アラブの富豪の御曹司というふれこみで登場するシャールくんですが実はれっきとした王族の血筋。お母さんがイギリス人の女優だったために国では浮き上がった存在で、けっこう苦労してるとこもあるんだけど、そんな彼がL.A.にやって来て素晴らしい友人たちと出会い、前向きな自分を取り戻してゆくというストーリー。時々コメディ、時々シリアスという成田先生の作品の原点がここにあります。

★サイファ★

こちらは舞台をニューヨークに移して、幼い頃から子役俳優として仕事をして来たサイファとシヴァの双子を主人公に展開するストーリーです。現在では人気のある俳優であるにも関わらず実世界でも二人一役を演じ続けて周囲の目をくらましている二人には人知れぬ暗い過去が...。単行本全12巻という大長編で、カラー・イラストの美しさも秀逸です。

★アレクサンドライト★

「サイファ」で脇役として登場したアレックス・レヴァインが今度は主人公に。女性と間違えられかねないほど麗しいレヴァインは実はそれが悩みのたね。空手、柔道の黒帯というのも、そのコンプレックスの裏返しだったりします。コロンビア大学を舞台にレヴァイン、アンブローシア、シヴァを中心に描かれる楽しいけれど、ちょっと感動的な物語です。

 

 

 

U三原順先生

はみだしっ子シリーズ / ルーとソロモン

三原先生の代表作SONS」については、レヴュー本編で詳しくご紹介しておりますので、そちらをご参考頂くことにして、ここでは他の代表作2本をご紹介しましょう。本編の方では、三原先生の全作リストなどもお付けしています。

★はみだしっ子シリーズ★

不朽の名作、三原先生のもうひとつの代表作としてあまりにも有名な作品がこの「はみだしっ子」でしょう。親とうまくいかずに家出した4人の少年たち、アンジー、サーニン、マックス、グレアムの4人組があちこちで様々な事件に巻き込まれながらも、なんとかやっていくというお話。特に子供を描かせたら右に出る者のない三原先生の原点と言える作品です。

★ルーとソロモン★

オマケで買われて来た駄犬ソロモンが、ウォーカー家の長女ピアに苛められながらも、人間界をシニカルに眺めて図太く生きて行くというコメディ作品。どこかリリカルなペーソスあふれるコメディは三原先生ならではだと思います。

 

 

 

3.一条ゆかり先生

有閑倶楽部 / 天使のツラノカワ

少女漫画界の女王さま、一条先生のコメディを二つご紹介しましょう。「有閑倶楽部」以前には「デザイナー」や「砂の城」など、超シリアスな名作も多々ある一条先生ですが、昨今のコメディ作品もやはり秀逸ですね。

★有閑倶楽部★

悠理、可憐、野梨子、清四郎、魅録、美童の有閑倶楽部6人組が繰り広げる壮大なスケールのコメディ作品。成金だけど富豪令嬢の悠理を筆頭として良家の子女6人集まれば、巻き起こす騒動もハンパではありません。現在18巻を数え、一条先生の代表作のひとつと言えるでしょう。

★天使のツラノカワ★

こちらは一番新しい作品。教会の牧師さんを父に持ち、バリバリのクリスチャンである美花とお寺の娘でありながら背徳的美女の沙羅。のっけから恋人を沙羅に寝取られかけて散々なメにあう美花ですが、お堅いクリスチャンをヤメる決意をしてから彼女の運命は何故か絶好調に。笑えて、ちょっと感動も出来るステキなラヴ・コメディです。

 

W魔夜峰央先生

パタリロ! / ラシャーヌ!

今更紹介するまでもない、というような作品ですが、好きなんですよね〜、パタリロ! 落ち込んだ時の気分転換には、オススメの名作ギャグ漫画と言えば、やはりコレしかないんじゃないですか。

★パタリロ!★

僅か10歳にしてマリネラ国王を勤めるハチャメチヤな性格のパタリロを主人公にした、あまりにも有名なストーリー・ギャグ漫画の決定版。よくあるギャグ漫画と違って、たまに感動的なストーリーもあるというのが魔夜先生独特の世界でしょう。守銭奴でギャグ体質、部下のタマネギを奴隷と言い切るパタちゃんですが、意外にも名君的なところが覗くこともあって、なかなか奥の深いところも魅力です。

★ラシャーヌ!★

インドのお金持ちの息子であるラシャーヌは、美少年なのに何故か失恋してばかり。それは彼の破壊的な性格と、やはり関係があるのでしょうか...。知る人ぞ知る、魔夜先生のもうひとつの傑作ギャグ・コメディです。

 

 

Xあしべゆうほ先生

悪魔の花嫁 / クリスタル・ドラゴン

私があしべ先生の作品を初めて読んだのは、20年以上前のコドモの頃なんですが、それが「悪魔の花嫁」の中の親指姫のお話。あまりに印象的だったので、その後長い間経っても忘れられませんでした。

★悪魔の花嫁★

劫罰によって生きながら黄泉で腐ってゆこうとする妹ヴィーナスのために、生まれ変わりの少女の身体を求めて彷徨う悪魔デイモス。しかし白羽の矢を立てられた美奈子は彼の花嫁として黄泉に下るのを頑強に拒否し続けます。ヴィーナスを愛しながら美奈子にも魅かれるデイモスは果たして彼女を黄泉に連れ帰ることが出来るのでしょうか。

★クリスタル・ドラゴン★

ケルト時代のアイルランドを中心に、見習いドルイダス(ドルイド教の神官)のアリアンロッドが活躍するファンタジー・ロマンの決定版。自らの一族を滅ぼした邪眼のバラーを倒すべく旅を続けるアリアンロッドですが、行く先々で過酷な運命に巻き込まれて...。迫力あふれる珠玉のファンタジーです。

 

Y佐藤史生(さとうしお)先生

夢見る惑星 / ワン・ゼロ

知る人ぞ知る名作2編をご紹介します。どちらも他に類のないエキセントリックな作品ではないでしょうか。

★夢見る惑星★

未だ竜が空を翔ける時代。繁栄を欲しいままにするアスカンタは、しかし未曾有の天変地異に見舞われようとしていた。その時代は果たして太古の昔なのか、それとも全人類が死滅したあとの永劫の未来か。全ての科学を唯一継承するがゆえに王と言えどもその権力の及ばない「谷」では、この危機からアスカンタを救うために幻視者であり神官でもあるエル・ライジアが謀略を巡らし、王族でありながら日陰で暮らすイリスを何千年も空席であった大神官の地位につけようと画策するが...。

★ワン・ゼロ★

コンピュータ・エイジの幕開けに描かれた詩的示唆に富むエキセントリックな作品。舞台は近未来、大複合企業体アイツーは社運をかけた一大プロジェクトに着手するが、それは全人類を昇天に導こうとする驚くべき計画だった。究極の善をビジネスとして成立させようとするアイツーは、ディーバ、つまり神の器として摩由璃を担ぎ出すが、その腹違いの兄、明王時都祈雄とその友人たちは数奇な運命に導かれて集まり、その試みを無に帰そうとする。善と悪、神と魔という概念存在をストーリーを通じて具現した点において従来のコミックの域を遥かに超える名作中の名作。

 

 

Z.新谷かおる先生

エリア88 / 砂の薔薇(デザート・ローズ)

新谷先生の作品は、もともと奥様の佐伯かよの先生のファンだったので、絵が好きで読み始めたというのがキッカケです。他にも「ふたり鷹」、「ファントム無頼」など面白い作品が数々ありますが、ここはやはり代表作中の代表作を、ふたつご紹介しておきましょう。

★エリア88★

孤児として生まれながら苦労してパイロットへの道を歩む風間真。しかし大和航空のパイロットとして前途が開き始めた矢先、親友・神崎の陰謀によって外人部隊に入隊させられ中東の火事場アスランに赴くことになる。彼が配属されたのは明日をも知れない激戦区エリア88だった。莫大な違約金を支払うか数年の契約期間を生き残る他に日本に帰る道はなく、生きて帰って神崎に復讐するという妄執のみで敵を倒し続ける真は、いつしか凄腕ぞろいの外人部隊の中でも一騎当千の戦闘機乗りとして司令官サキからも信頼される存在になっていく...。

★砂の薔薇(デザート・ローズ)★

空港での爆弾テロによって最愛の夫と子供を失ったマリコ・ローズバンク、通称バラのマリー。美人ながら何の変哲もない家庭の主婦だった彼女だが、テロリストに復讐を誓ってカウンター・テロリズムに傭兵を派遣するCATに入隊を志願する。女性ばかりの部隊を率いてテロリストに容赦なく対抗するマリーの激烈な活躍を描いたハード・ロマンの大傑作。国際情勢にも造詣が深い新谷先生ならではのストーリーだと言えるでしょう。

 

 

[CLAMP先生

東京バビロン / 聖伝

CLAMP先生と言うのもおかしな呼び方ですが、ご存知の通り大川七瀬さんと、もこなあぱぱさんを中心としたユニットがCLAMPです。数々のヒット作がありますが、やはり原点はこれ、「東京バビロン」と「聖伝」でしょう。最近の代表作「X」以前に書かれた私の最も好きなものでもあります。特にカラー・イラストの美しさは目を瞠るものがありますね。

★東京バビロン★

遥か昔から日本を霊的に守ってきたという皇(すめらぎ)家の13代当主皇 昴流(すめらぎ すばる)くんは、双子の姉の北都(ほくと)ちゃん同様カワイイ系キャラであるにも関わらず群を抜く霊力の持ち主でもある院陽師。北都ちゃんと優しい獣医の星史朗さんに助けられながら大都会東京を舞台に様々な霊障に立ち向かう彼を通して、東京の底辺に巣くう病巣が浮き彫りにされてゆきますが、実はこのお話、最後に驚くべき「裏切り」が待っています。それはかなり意外...。

★聖伝★

長きに渡る平穏を享受する天界に謀反の刃を翻して天帝の首級を挙げた帝釈天。以来、天界は恐怖の支配するところとなった。星見・九曜の預言を受けてこの「天を滅ぼす破」となるため六星を求めて旅立つ夜叉王だったが、そのカギである阿修羅を解き放った時、運命の輪が回り始めた...。果たして夜叉王は帝釈天を倒し、天界に平穏を取り戻すことが出来るのだろうか。九曜の預言の真の意味とは...? ストーリーの壮大さと絵の美しさは、正にCLAMPの原点と言える秀作です。

 

 

\大和和紀先生

ハイヒールCOP / あさきゆめみし/KILLA

あまりにも面白い作品がありすぎて、ひとつやふたつ選ぶと言っても苦労するのが大和和紀先生ですね。古くは「はいからさんが通る」という大人気作品もありましたし、コメディ、シリアス取り混ぜて最も多作な漫画家さんのお一人ではないかと思います。

★ハイヒールCOP★

桜田門の警部補・巡市子さんはブランド大好きの超お派手な刑事さんですが、ヤクザさんたちからも恐れられる凄腕。でもゆきがかりで田舎から引き取った甥っ子とおいぼれた元麻薬犬(麻薬の捜索のために特別に訓練された犬)を養っているという人情家な側面も...。そのパワフルな市子サンが数々の難事件を解決してゆくという、和紀先生ならではの傑作コメディです。

★あさきゆめみし★

今でも単行本、豪華装丁本などが出ている超ロングラン・ヒット作。源氏物語をベースに描いた古式ゆかしい名作です。やはり「はいからさん」と並んで代表作と言えるんじゃないでしょうか。もう、これは源氏物語そのものなので、今更ストーリーを紹介するまでもありますまい。シリアスな中にも、時々和紀先生独特のユーモアが効いて楽しめる作品となっています。古典は苦手、という方でも抵抗無く読めると思いますよ。

★KILLA★

コメディの多い和紀先生には珍しい、超どシリアス・ブラックロマン。私生児として生まれ、幼い頃から孤児として一人で生きて来たキラ。かつてスキャンダルのために演劇界を追われた名優にその才能を見出され俳優への道を歩みますが、美貌ながら彼の昏い精神性は俳優としての成功に飽きたらず、上流階級から経済界へと陰謀を巡らせて行きます。謀略、殺人、手段を選ばず成り上がってゆく彼を最後に待っているものは悲劇か栄光か。...個人的には、キラは和紀先生の全ての作品の中で最も魅力的なキャラクターだと思っています。やっぱりキレイな男は根性も悪くないとね!!

 

 

]吉田秋生先生

BANANA FISH / 吉祥天女 

お待たせ致しました。やはりトリはこの方、吉田秋生先生です。私はかの「カリフォルニア物語」第1巻の単行本が出た時、ゆわえるジャケ買い(表紙だけ見て良さそうと思って買った)をして以来のファンです。吉田秋生先生と言えば、この「カリフォルニア物語」に始まって「吉祥天女」、「BANANA FISH」、「YASHA」と長編の代表作が続くわけですが、どれも極めて完成度の高い名作ぞろいですよね。

★BANANA FISH★

単行本完結の19巻は初版が1994年。8年経った今も衰え知らずというか、今だに凄い人気です。まあこの作品の主人公であるアッシュはやっぱり少女漫画史上、最も魅力的なキャラの一人だと思うので当然かもしれません。ストリート・キッズのボスであるアッシュ・リンクスと彼の天才を見抜いて後継者として育てようとするマフィアのボス、ディノ・ゴルツィネとの確執。そこにベトナム戦争以来の謎である「BANANA FISH」が絡んで、アッシュは思わぬ国家的陰謀に巻き込まれてゆくという、ストーリー的にもめちゃクールな作品です。「少女漫画」なんて域で、語りきれるお話ですらありませんね。

★吉祥天女★

山林資産数億を所有する叶家の一人娘小夜子はわけあって田舎で育てられたが、政略結婚のため本家に呼び戻される。しかし彼女には素直にそれに甘んじるつもりは始めからなかった。小夜子と息子との結婚を通じて叶家の資産を手中にしようとする遠野建設社長と、それに荷担する叔母の策略から自らと家を守るため、彼女は密かに陰謀を巡らすが、その回りでは次々と凄惨な死が続いて...。というお話ですが、小夜子の日本的な美貌と激烈なキャラクター、これも他にちょっと見当たらないかもしれません。

いろいろ紹介しましたが、もうどれも甲乙つけがたい名作ばかりですから、何かお探しの方は是非書店で手に取ってみて頂きたいと思います。と、いうところで、ひとまずこれまで。

 

2002.11.15.+2003.4.13.

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