お金をかけずに英会話

<<中級からの学習法>> その1. ボキャブラリーの広げ方

2. 単語は調べる前に意味を考える

 

★中級からの単語・熟語学習法★

日常的なコミュニケーションを目的とする学習において中級から上級を目指すということは、まず前章でも書いたような「頻出単語」を使いこなせるようにするということでもあります。しかし「使いこなす」ということは、「単語に対応した日本語を覚える」ということとは違います。

何よりもまず認識しておいて頂きたいのは、「あなたは日本語を知っている」ということで、従って今更、単語に対応した日本語をわざわざ覚える必要はないってことですね。それは、日本語を教えられても知らないようなあまり出てこない単語とか専門用語に限って、上級になってからやれば良いことです。

一般に、「単語を調べて、文章を訳して、単語や熟語の意味やスペルを覚えて、しかる後にどんどん英語が使えるようになってゆく」という考えが、日本的な英語学習方法の基盤となっているわけですが、実は、これは全く根本的に道を誤っている大誤解なのです。こういう学習方法を続けているから、どーやってもこーやっても、英語を理解する時に、日本語を介在させなければならなくなってしまう。つまり、全く正反対どころか、全く誤った方法だと言えるでしょう。

知らない言葉が出てきた時は、「安易に辞書に頼ってはいけません」。これも通常の「まず、辞書」というような学習方法とは正反対なわけですが、「辞書を使う」ということは、「理解に日本語を入れる」ということで、ダイレクトなコミュニケーションを目指すための学習では最も忌むべきことです。

英語を勉強する時は、日本語を覚えようとしてはダメです。単語や熟語を覚える時も日本語を覚えようとしてはダメです。単語や熟語はイメージで感覚的に覚え、英語を見て日本語に訳す学習ではなく、日本語を見て、自動的に英語に直す学習を続けるべきなのです。しかもそれは、日本語で考えながら英文を組み立ててゆく英作文ではなく、フレーズそのものが一発で出てくるような連想方式でなくてはなりません。常日頃からそこに極力日本語を介在させてはならないのです。

だからこそ、初級学習においては、日常使われる慣用表現をフレーズ単位で記憶する方法をお奨めしました。当然、中級からの単語、熟語の習得にも、これと同様に例文全体を覚えこむ「フレーズ方式」を推奨します。

では、「単語や熟語をイメージで感覚的に覚える」とは、どういうことでしょうか?

例えば知らないヒトはまずないだろうとゆー「take」という単語を、ランダムハウスのような大きい辞書で見てみましょう。実際ね、「take = 取る」なら英語なんてカンタンなんですわ。日本語の熟語は広辞苑でも見れば一目瞭然の通り、ひとつのコトバにせいぜい意味がふたつ、みっつのもんです。しかし、英単語の場合、「take」ひとつで、辞書3ページ載ってますな。他動詞で実に80項目、自動詞で12項目、名詞で8項目...。

単語ひとつでコレだから、従来の「単語記憶法」で英語を日本語に直して即時に理解しようとすることは、非合理どころか物理的に不可能であると分かってもらえるんじゃないかと思います。だって、「take」だけでも、その100個意味覚えられます? これを例えば頻出単語5000語に対してやろうと思ったら、いったいどれだけ日本語覚えなきゃならないか。これはもー、ふつー、我々のアタマには「不可能」と言っても過言ではありますまい。頻出する「take」のような、皆さんおっしゃるところの「カンタンな単語」ほど意味も多いので、覚える日本語も膨大な量になってしまいます。まあ、頻出するからこそ、意味するところも多くなるんですけどね。

困難に見えるからこそ余計、「その不可能を努力して覚えることこそが...」みたいな、もっともらしい言い分があるのかもしれませんが、しかし、少なくともこのテの、やたら意味が多い単語に関しては例え覚えこんだとしても、それが日常会話で出てきた時に一瞬で検索して照合・認識できるほど、我々のアタマは性能良くありません。しかも、既にここで日本語を介在させてしまうことになる。従って、結局それは単にあさっての方向に努力するというものだと思います。突き詰めて言えば、それは「英語が分かってない」ヒトの言い分ですね。それでなくても、上級になれば、数多い小難しい単語も知らなきゃTIMEも読めないんだから、ムダなことやってる間に効率の良い方法を考えましょう。

前出のように「take」には、確かに100項目もの意味がありますが、それを本質的な感覚に置き換えてみると、実はそれほど多くはありません。「take」という言葉は全般的に「取る」という本質的感覚を持っているわけですが、何をどうやって「取る」かで、それに対応する日本語が変わってくるだけの場合が多いんです。そう考えると、

He took a cold.   風邪を取る → 風邪をひく

He took his own life. 自分の命を取る → 自殺する

The pretty ribbon took her eye. 彼女の目を取る → 目を引く

He took my name and address. 私の名前と住所を取る → 控える = 書き留める

 

このように、それぞれの用法に対応する日本語を予め覚えていなくても、「take」という単語を感覚的に理解していれば意味の想像がつくし、従ってそれに対応した日本語は自動的に自分で「作れる」ということです。「大意をつかむ」というのはまさにそういうことで、意味が分かれば日本語にするのはそれこそカンタンです。そもそも、コミュニケーションの場では、意味さえ分かれば日本語にする必要すらありません。つまり、大意を掴んだ時点でその内容についての追求は終わってるんですね。

私が、なによりまず、実用表現をフレーズ単位で覚えることが第一歩とオススメするのは、実用表現ほど頻出単語を多く含むこと、そして、このような「単語感覚」は、「文脈」と不可分な存在だからでもあります。上の例でも見るように、単語だけではなくて実用表現になると、そこには短いながらも「文脈」が発生するので、単語の感覚もつかみやすい。頻出する単語ほど、実用表現にもよく出てきますから、「こういう時にはこの単語が使われる」という英語感覚も自動的に養われてゆくわけです。従って、これが長文になると意味をつかむ手がかりも多くなるんですから、こういう学習法をすればするほど、長文読解が得意になるってリクツ、お分かりになります?

そこで、知らない単語や熟語が出てきたら慌てず騒がず、そのコトバの回りを見回してみましょう。つまり、文脈の中から、言葉の意味を知る手がかりを求めるわけです。見当がついてから辞書を見て確かめるというのは良いですが、何でも「まず、辞書」というのはヤメましょう。辞書より使うのは「まず、アタマ」です。日常会話をやってるよーな時に、たいていの場合は持ってたって辞書引いてるヒマなんかないんですからね。常に実践体制でゆきましょう。

実は、このようなやり方は前章でも紹介した「新TOEIC TEST 1200語シリーズ」でも推奨されている方法で、この本では、

まず例文を見て日本語を介在させずに大意が掴めるかを試す

→分かれば、例文に含まれるメインの単語の意味を正しく把握しているかどうかを下に書かれた単語の意味を見て確認する

→分からなければ、例文全体からもう一度分からない単語の意味が推測できないかどうかやってみる

→それでもダメなら訳文を読んでみる

このような学習方法を奨めています。

 

これに加えてCDを繰り返して聞いていると、いずれ遠からずそのその単語は「知ってる単語」になってしまうでしょう。これだけでも読解力はどんどん伸びてゆくと思いますが、せっかくある例文です。本の値段分、徹底的に利用しちゃいましょう。

私が実際にやった方法は、和訳を見て自動的に英文を言うというものです。CDがありますから、例文を聞きながらイントネーションと発音を耳から入れることも大切です。つまり、英会話110番でやったのと同じように、例文をフレーズ単位で単語や熟語、イントネーションや発音も一緒にワンセットで記憶してしまうやり方ですね。これは口語の慣用表現とは違い、レベルが上がるほど書き言葉が多くなってゆきますが、そうなると日常の慣用表現より更に複雑な用法を含みますから、これをフレーズ単位で覚えることによって、より高度な文法知識の素地が出来てゆくというメリットもあります。これは語彙力を伸ばすばかりでなく、後にTIMEなどを読みこなす素地ともなります。

「新TOEIC TEST 1200語シリーズ」では、1200語を24のユニットに区切り、各ページで6語前後が取り上げられているので、毎日決まった分量の学習目標が立てやすいです。これを利用して先ほどの学習方法を、毎日5〜10分でも良いので続けてゆくと、多くの「難しいコトバ」が「見たことあるコトバ」に変わってゆくでしょう。しかも参考書自体がちゃんと頻出単語から順に並べてくれているわけですから、日常会話やTOEICテストでもそれらがよく出てくることになって、言われた時に「ああ、あれあれ、知ってるぞ」とパッとひらめくようになると思います。こういうのは通勤電車に乗ってる退屈な時間なんかに、ぱぱぱとやってしまえば良いですね。

ま、実際、日本語で新聞や小説を読んでいて、「読めない漢字」なんて実はいくらでも出てくるんです。そして、意味を知らない四字熟語や故事成語なんてものも、難しがりの偉そうな文章ほどやたらに出て来る。しかし、それでも記事や小説の内容を理解できないということはまずないでしょう? つまり、我々は母国語ではコトバのイミを推測するなんてことは、日常的にやってるわけです。そして、ひとつの言葉に対してそれが重なると、そのコトバはすっかり「知ってるコトバ」として記憶されてしまいます。英語でも同じで、単語がひとつやふたつ理解できなくても、中級程度の語学力があれば内容の想像がつくものが多いです。中級から上級を目指す学習というのは、まず頻出単語を使いこなせるようにするということでもあると書きましたが、こうした「英語感覚」を基にした理解が可能になれば、ペーパーバックを読んだり、英語放送を聴いたりする、いわゆる多読多聴によって更に「知ってる単語」を感覚的に増やしてゆくことができるので、ここまでになると相乗効果で語学力は飛躍的に向上してゆくと思います。

考えてみると、我々が日常、日本語で辞書を引くのも、書き言葉や専門用語のようなあまり見ない言葉が出てきた場合に限られていますよね。そして、そういう「難しいコトバ」を知らなくても我々の日常生活に支障はありません。つまりこういった教養レベルの「難しいコトバ」は、覚えるにしても後回しでOKということです。こういうコトバは知らなくても恥にはならないものが多いので、出てきた時に「What does that mean?」って言えば、外国人のことでもあるし、たいてい教えてもらえるでしょう。そんなの覚えてるヒマに、先によく使われる、知ってないとヘン!! に思われる言葉から押さえてゆくべきではないでしょうか。

2007.6.3.+6.18.-6.19.

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