Talking with a German Part 3

[not published] - July  1999

Interview by  Jochen Bonz

 

 

Green: うん、うまい具合に成功してるね。でも、だからと言って...、あー、ヒップホップは実際何も深い意味を持っているわけじゃないんだ。センシティヴなものでもないし、それってドラム・マシンとかループやサンプルなんだな。つまり、DJ Premier...、ぼくの大好きな3大ヒップ・ホップ・プロデューサーはDJ Premierとピート・ロックだろうね。

Jochen: ピート・ロックですか、なるほど!

Green: ぼくのやったリミックスって聞いたことある? ファースト・シングルには4つのリミックスがあるんだけど、それはピート・ロック、ア・トライブ・コールド・クエストのアリ・シャヒード・ムハマンド、ザ・ビートナッツとザ・エクスキューショナーズ。

Jochen: それはもうリリースされているんですか。

Green: うん。リリースされたのはえっと...。まあ、とにかく出てるんだよ。持ってたらプレゼントするんだけどね。ほんとにいい出来なんだ。なんと言っても、リミックスをやってくれてるんだから、彼らから電話が掛かってくる。ぼくはザ・ビートナッツやピート・ロックと電話で話してるってわけ。それってちょっと、すごいだろ! だって連中はぼくにとってヒーローなんだもの。で、リミックスをどうするか、なんて話をしてるんだな。

Jochen: すごいですね。

Green: ザ・ビートナッツみたいに...、と言うのは彼らが始めのリミックスをやってくれたんだけど、ロンドンまで2種類のヴァージョンを送ってくれたんだ。ちょっとした驚きだったな。「どうぞ、お選び下さい」って感じで、「えええーっ、ホントなの、選ばなきゃならないのかい」みたいな。

Jochen: (笑)

Green: それから、ぼくはこう言った。「ほんとにすばらしいんですけど、実はひとつ問題がありまして...。それと言うのも、ぼくのヴォーカルが入ると調子がハズレてくるように思えて」

Jochen: なんですって?

Green: おかげで曲が危なくなったんだけど、キィを違えてあるんだよ。

Jochen: ぴったり来ないとか、そういうことですか。

Green: その通り。でぼくはビートナッツに言ったわけ。連中は「よお、元気?」って感じで、するとぼくが「やあ、グリーンだけど」、「よぉ、何かあったの? どうかした?」、「うん、すごくいい出来だと思うし、アイデアはホント気にいってるんだけど、ひとつ問題があるんだ。実はキィが違ってるんだよ」、「何だって?」、「だからさ、キイが間違ってるんだってば」、「それ、どういう意味?」、「だから、つまり、曲の他の部分と合わないんだよ」、「おかしなこと言うねえ」、って具合。で、結局どうなったかと言うと、連中はやり直すとは言ったんだけど、...ピート・ロックもね。でも、そうはならなかったんだ。まあ、連中はメロディを扱うってことに馴れてないんじゃないかと思うけど...。おかげで4つのリミックスが全部違ったキィで仕上がって来ちゃって、そのへんのキィでぼくが歌いなおしたってわけ。

Jochen: ホントにそんなことになっちゃったんですか?

Green: ほんとほんと。だから聞いてみる価値は充分にあるよ。個人的には、めちゃウマく出来てると思ってる。でも、全くイースト・コースト・ヒップ・ホップだけどね。

Jochen: なるほど。

Green: ヒップ・ホップとギターかな。キーボード全くなし、の。

Jochen: ええ。全く以前の作品からは考えられないくらいで...。

Green: そうだろ。シンコペーションにもまるでこだわってないし。あるがまま、というか。つまり装飾過多みたいなのじゃなくね。ぼくはギターとベースとドラムスがあればいいや、って思ってたし、それがああいう大胆なアイデアといい具合に結びつくんじゃないかな、と。わかるかな。ポップらしいバラッドからヒップ・ホップ系の作品まで取り揃えてやるってやつ。それも限られた少人数でやればうまくいくんじゃないか、とね。まあ、それがアイデアだったわけ。

Jochen: なるほど...。で、私に取っては、なんですけど、そういう多種多様な形態をまとめているのは、実はあなたの声なんじゃないかな、と思ったりしてたんです。

Green: へえ、ぼくは気がついてなかったな。でもデヴィッドが言ってた。彼がロンドンに来た時にぼくが「実際、不安でたまんないよ。こんなのでうまくいくのかな。ヒップ・ホップ系のアルバムなのに、こんな全くのホワイトポップでレゲエまじりの甘ったるい曲までやりたいなんて」って言うとね。

Jochen: 「ミスティック・ハンディ・ウーマン」ですね。

Green: それそれ。あれなんか、使い古されたポップのお手本みたいな曲だろ。で、ぼくが「どうやって、まとめりゃいいんだか」って言うと、デイヴが「きみの声。心配すんなよ。きみの声で全部まとまって聞こえるから」と受けあうんだ。それで結局「まあ、いいや。きみがそう言うんなら」ってことになった。

Jochen: ええ。

Green: ま、そんな感じで作ったんだけどね。ともかく作るのは楽しかったよ。ほんとに楽しかった。

Jochen: ところでモス・デフなんですが...。

Green: モス・デフ? ああ、彼はぼくがたまたま声を聞いて気に入ったって奴で、単純にこんな感じだったんだよ。ぼくがデイヴに「こいついいなあ、一緒にやってみたいよ。誰か彼を知ってそうな奴いない?」って尋ねてみると、「わかんないけど、でも友達に聞いてみれば...」

Jochen: 多分、知り合いがいたんですね。

Green: 正確に言えば誰か知ってそうな奴を知ってたんだと思うね。まるでセブン・ディグリーズ・セパレーションみたいで面白いだろ。そういうゲーム、知ってる? だから有名人と誰かの間のつながりは、何段がまえにもなってるってことだよ。

Jochen: ええ、ほんとですね。七段階か...。

Green: いや、七段かどうかは知らないよ。それが最大かもね。

Jochen: (笑)じゃあ、五段階くらいかな。

Green: うん、たぶん五段くらいだよ。実際もしきみが、んーっと、例えばバーブラ・ストライザンドを電話でつかまえたいとするだろ。きっと可能なことだと思うな。

Jochen: まさか。

Green: 大丈夫、大丈夫。知ってる人を知ってそうな誰かをたどってゆけば...

Jochen: そりゃ、あなたならね。ポップスターなんですから。

Green: でも、バーブラ・ストライザンドっていうのは、気の利かない例だったかな。まあともかく、そういうふうにやるんだよ。で、こんな風に言えばいいだけ。「ちょっとスタジオに寄ってもらえませんか、それともテープを送りましょうか」ってね。彼はスタジオに来てくれたから、曲を演奏しなきゃならなくなって...。ブルックリン・クルーの連中とやって来てね、その頃には曲は出来てたから聞かせてみたんだけど、ぼくの方はドキドキものだった。あとは肯定的な反応が返ってくるのを待つしかない。彼がうなずいてくれるのをね。

Jochen: ええ。(笑)

Green: うなずいてくれるっていうのが大事なところなんだ。それが見えたら、もう大丈夫。そういうわけでぼくは部屋のすみで座って、彼の頭がたてに振られるのを待ってたんだ。そしたら彼がうなずいてるじゃないか。一旦それが見えたら、あと大事なのは、攻撃的になったり、自分を偽って見せたりしないことだ。わかるかな、カッコをつけたり、自分ではない何者かのふりをするようなことをしなければ、ある程度の尊敬は得ることが出来るものなんだよ。

Jochen: その通りですね。

Green: Cause there are lots of people who are trying to be down. And I was not trying to be down.

(役者注:この down が何を意味しているのかはっきりしないので、お分りの方いらっしゃいましたら、ご一報下さい。)

Jochen: それで、ラッパーのパートの歌詞もご自分で書かれたんですか。

Green: いくらかはね。でも全部じゃないよ。ラッパーにお願いしたのもあるし。例えばモス・デフだけど...、ぼくの考えを話すとしばらく外に出て行って、マンハッタンを歩きまわって来た。ぼくらは西14ストリートのあたりにいたからね。それでグリニッジ・ヴィレッジに散歩に出かけたんだ。

Jochen: アイデアを出すためですね。

Green: で、2時間ほどして戻ってくると、「OK」って言うから、ぼくらは彼の前にマイクを置いた。そしたらスラスラ出てくるじゃないか。書き留めてさえいないのにね。書いたものになんか頼らないんだ。そりゃあ、見てて感動モノだったよ。わかる? まるで...

Jochen: ご自分で歌詞を書くのは大変なことなんですか?

Green: なかなかね。リーやミシェルやモス・デフを知るまではそうでもなかったんだけど、「これ、やってみてくれる」なんて頼むだろ。それはもうパニクって来ちゃうよ。

Jochen: みんながどう思うかってことですね。

Green: そう。つまり、渡して自分の言葉を他の人の口に乗せることがね。

Jochen: 確かに難しいでしょうね。特にあなたの歌詞だと。

Green: そうなんだ。でも、なんとかなったと思うよ、ともかくは。まあ、誰もビビらせなかったしね。

Jochen: ええ、うまくいってると思いますよ。さて、これでそろそろ最後の質問になるかと思うんですが、あなたが答えた古いインタヴューをたくさん読ませて頂きました。するとその中で、よくポップにおける政治性について本を書く計画がある、と話してらっしゃいましたよね。これは中止したんですか。 

Green: うん。その計画は実際もうおシャカになってるよ。立ち消えと言うか...。ずいぶん文は書いたんだけど。

Jochen: やってるうちになんとなくですか。

Green: 空間に埋もれちゃった、というか、原稿がどこかに行っちゃったんだよ。ずいぶん書いてはいたけど、そのうちにぼくが...

Jochen: 必要なくなったんですね。

Green: いや、そういうわけじゃないと思う。自分の興味が薄れて行ったってことじゃないかな。最近また書こうかなと思ったりしてたんだけど、なにしろ草稿がまるで見当たらなくて。

Jochen: ほんとに失くしちゃったんですか?

Green: うん。まるでわからない。そういうことなんだ。

Jochen: もったいない!

Green: そんなことないよ。つまりぼくが全く...

Jochen: 次のアルバムをやって、そうしたら....

Green: どうだろうね。

Jochen: それで充分かもしれない。

Green: ああ、うん、全くね。まあ、よくモノを書かないかとは言われるんだけど。ポップ・ミュージックについての本に協力してくれとか...

Jochen: ほんとに?

Green: うん。

Jochen: 知性的な部分を求められているんですね。

Green: ぼくは知性的なんかじゃないよ!

Jochen: ええ、でもファンは知性的なポップ・スターでいて欲しいんじゃないでしょうか。

Green: うん、まあ、そういう人もいるかもね。でも...。

Jochen: そりゃそうですよ。面白いですね。

Green: フットボールでね、こんな話があるんだけど、似てると思うんだ。フットボールではプレミア・リーグに1,2,3部とあって、その中には日曜に公園でボールを蹴飛ばして楽しんでるだけ、って連中もいるのさ。で、知性的ってことから言えば、ぼくはこの日曜蹴飛ばし組だと思うわけ。わかるかな。実際ぼくは、ただ...

Jochen: その話、友達が話してくれたんで、言われるかな、と思ってたんです。(笑) 

Green: 今日思いついたんだよ。

Jochen: なかなか、いいですよ。

Green: そういう例えがふと浮かんでね、まあ、そんな感じなんだ。まるで自分ではないもののフリをするなんて、イヤだから。いかなる意味においても、ぼくはそんなに知性的じゃない。ただそれで遊んでるだけなのさ。

Jochen: でも80年代に、何かそういうものを出版なさったんじゃなかったでしょうか。

Green: え、何?

Jochen: だから出版を...

Green: 書いたもの? まさか!

Jochen: それで私は... 

Green: 何かそういうものを本当に見つけたの? もしあったらお目にかかりたいよ。ぼくが住んでた家の屋根裏でなら見つかるかも知れないけど、まあ、たぶん箱にでもつめてあるんじゃない? でもそれでいいと思ってるよ。残念でもないし。

Jochen: これから先も予定なしですか?

Green: 予定? ほんとに、まったく、ないったら。

Jochen: ほんとに?

Green: やってることから何らかの形で見えてくるものだけで充分なんだよ。だって...

Jochen: やってることって? アルバムからですか、それとも...

Green: ぼくがやって来たいろいろなこと、から。

Jochen: なるほど。

Green: プロヴィジョンに関するプロモーション・ツアーが終わってから、ぼくがどうなったと思う? 挙句の果てに病院送りになって... 

Jochen: ええ、知ってますよ。

Green: え、ぼくが入院したってこと知ってるの?

Jochen: 前のプロモーション・ツアーのあとでしょう? あなたに関したものは山のように読みましたからね。

Green: ぼくが入院したことを知ってる人がいるなんて、思ってなかったよ。

Jochen: そうなんですか?

Green: それなら繰り返さないけど、つまり今のぼくは健康的で正常な精神状態を保っていたいんだよ。で、わかるかな。それって、ものすごく大変なことなんだ。

Jochen: お察っしします。さて、今度こそ最後の質問ですが、なぜ「L is for Lover」をご自身でレコーディングなさらないんですか。この曲は好きじゃないとか?

Green: うん。

Jochen: うん、って、それはつまり... 

Green: 簡単な答えだけど...

Jochen: つまり、歌詞が気に入らないとか?

Green: なんかしっくりこないんだよ。

Jochen: アル・ジャローにとっては、いい曲でしたよ。

Green: ああ、それは確かにね。ぼく自身はその曲についてあまり考えたことがないんだけど、でも言えることは、その曲が何について歌ってたのか思い出せないってことかな。ちょっとNAFFっていうか。...イギリス口語で言うとね。

Jochen: わかりました。

Green: もうリラックスしてもいいかな? 

Jochen: ええ、どうぞ!

Green: うん。

Jochen: ありがとうございました。

Green: こちらこそ、どうもありがとう。

 

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