SCRITTI POLITTI

Printed Noises 1980

 

スクリッティ・ポリッティ --- グリーン、ナイアル、トム、マチュー (それぞれギター、ベース、ドラムス、オーガナイザー)は、しばらく前リロイ・キーンとインタヴューを行った。以下に記すのはそのスクリプトである。

バンドを作ったのはいつですか。

Green : 一年くらい前かな。その前にレコーディング(スカンク・ブロック・ポローニャ)をやったんだけど、ナイアルはまだリーズに住んでてロンドンまで通って来てたんだ。11月に越したけどね。いろいろ買うものがあったみたいだけど、それからグループでやり始めた。

出会いは?

Tom : ぼくはブライトン出身なんだけどリーズに来てアートカレッジでグリーンと知り合ったんだ。3年の時にグループを作ったよ。

Green : ぼくはサウス・ウエールズでナイアルと学校が一緒で、その後アートカレッジに入ってトムと出会った。

Matthew : ロンドンで生体解剖学者として仕事をしていたんだけど、そこでバンドのみんなと出会ってね、話してるうちに離れられなくなっちゃったんだよ。

5人目のメンバーがいましたよね、テープ係りのサイモンはどうしたんですか。

Green : 始めの(28/8/78を収録した)頃、仮メンバーとして一緒にやってたんだけど、今はステッピング・トークっていう最近自分たちのレーベルからレコードを出したばかりのバンドにいるよ。この辺に住んでるから、みんなで議論する時なんかに時々会うけどね。ぼくらは一緒にあるプロジェクトに関わっているんだけど、彼はまだこのことは知らないよ。

スカンク・ブロック・ポローニャは何枚くら売れましたか。

Green : 8000枚かな。これから4回目の再プレスをする予定なんだけど。

初期の頃と較べて音楽的に変化はありましたか。

Green : うん、変わったね。前の4月にレッド・クレオールのツアーに参加した頃からかな。変わったなとぼくが思う点は二つある。でも具体的に説明するのは難しいよ。ある意味じゃ、いくらかコマーシャル(商業的)になったし、単純化したんじゃないかな。他にはステージやリハーサルで即興に曲を創るのがわりと容易だと思えるようになったしね。慣れては来たけど、まだリスキーなのは分かってるんだ。どうなるかは予測がつかないし。観客の前で期待した成果が上がらないってのもよくあることだしね。

Nial : 前のツアーでも即興演奏はやったんだけど、その頃はまだそんなにギグもやってなかったし、みんな健康状態も良くなかったから最小限に留めてね。でも今はほとんどの曲を即興でやってるよ。

どうやって曲を創るんですか。例えば“ユーモア オブ スピッタルフィールズ”みたいな手の込んだ曲なんか。

Green : あれは時間がかかったんじゃなかったっけ。

Tom : そうだったと思うよ。サイモンが参加してたやつじゃないかな。もとはテープを使ってたから。テープに取った音を使おうとしてたんだけど、結局なくても同じくらい良い出来なのがわかってね。普通、曲はグリーンがギターで創ってさ、それからみんなで周辺の音を固めて行くんだ。ギター部分はその後の仕上がり具合いによって変わることもあるね。

Green : いくつか何ヶ月も苦しんだ曲があるよ。やってもやっても何か気に入らなくて、ドラムビートを変えたりとかいろいろしてさ。まあそうやってるうちになんとかものになって行くんだ。面白いのは曲を創ることそのものはすぐに出来ちゃってね、だからステージで即興しちゃうんだけど、そういうのは自然に出来てくるんだ。

正式な音楽教育を受けたことはありますか。

Green : ないよ。学校ではフィドルを弾いてたことがあるけど、音楽の成績は最低。ナイアルなんかレコードを作る3週間前までベースなんか触ったこともなくてさ。トムはドラム歴半年だっけ。

そうすると曲の殆どはギターから来るインスピレーションで作ってしまうってことでしょうか。

Green : そうだな、どう言ったらいいのか....

Nial : 曲想かな...

Green : ...曲想とかコード進行とかメロディとかね。

Tom : でも曲を書くときはよくドラム・ビートから始めたりもしたよ。逆の時もあるんだけどね。だから、これと言ったひとつの方法が決まってるってわけじゃないんだ。

"OPEC-immac"みたいな曲はどうなんですか。セリフ部分はどうやって作ったの?

Green : 2回目のピール・セッションのためのアイデアだったんだ。始めはベースのラインがあって、それにドラムを乗せてったのさ。それからメロディのアイデアが浮かんで来て、あとは即興。語りと歌と楽器が順に絡んでいくって感じで出来て来たんだよ。最後の部分の歌を除いてはね。

即興はどんなふうにやるものなんですか。

Tom : ノリだよ、ノリ。

始めに決めてる(即興曲の)方向性とかはあるんですか、それとも先にテンポを決めておくとか。

Green : いや、そういうのはないよ。やりたいようにやるだけ。

Nial : やってる間に曲の構造の部分からは外れないようにしながら、ギターやヴォーカルを乗せて、ベースもね。今自分がどう弾いたのか覚えてれば。

Green : パターンをいくつか見つけておいて、基本的にはそこからその場で即興していくってやり方だよ。

Tom : それから曲は短めにするように心がけてる。退屈になっちゃうといけないからね。

Green : そういうやり方を続けてるのは、曲の構造がつかみやすいことと歌になりやすいこともあるし、それにイデオロギーの点でもぼくらが持っている考え方と一致しているからなんだ。極論すれば、不透明な部分をなくしてしまうことだね。その場でぱっとやって、間違いもやればリスクも背負う。その辺で起こってることなんでも歌に取り入れてしまうんだ。面白いやり方だと思うよ。ぼくらが楽しんでやってる間にうまくいってしまうような気がするしね。

パンクがなくても音楽をやっていたと思いますか?

Green : パンク・グループとして始めたんだからパンク・ロックの申し子みたいなもんだよね。アナーキーとか初期のツアーを見なかったら縁があるとも思わなかっただろうし。始めの頃と言えば、トムはドラムスを買ったばっかりで、たまたまアコースティック・ギターがあって、要するにものすごくパンクっぽい感じだった。それって楽しかったけどね。

Tom : パンクそのものって歌詞もよく書いてたし。

Green : SMASH! BANG!、WHADADADADA!!って感じでさ、今思うと凄くおかしいけど。でもみんなそういうのにはすぐに飽きちゃったんだ。たいていのグループはそれで3年もやってるんだけど、今ごろはいい加減飽きて来てるだろうね。ぼくらといえば3,4か月やったら「もういいや」、って感じだったから。

他にどんなものから影響を受けましたか。

Green : ディスコは大きいね。フォークやポップからも影響を受けたし。

この先の音楽的な動向はどんなふうになると思いますか。

Nial : 何に興味を持つかによるね。今やってる仕事がどういう形に発展していくか、それに読むものとか出会う人々。

Tom : シンプルな曲作りを心がけたいよ。

Green : ポピュリストにはならずにね。

Tom : 音楽の知的側面に対する嫌悪ってかなりあるからね。その線はこれからも守って行きたいと思ってるよ。

Green : 面白いのはね、音楽の知的側面から遠ざかるにつれて、ミュージシャン的じゃなくなっていくということなんだ。ぼくらにとって最も馴染みがあるのはポップ・ミュージックだけど、それってシンプルで、くどくどしてなくて、誰もがぼくらがよく聴く音楽だと思ってるみたいだしね。どうやらそういう領域に踏み込みつつあるみたいだ。他の方向性としては、音楽から遠ざかって、スピーチやヴォーカル・ミュージックとか、そういったものに戻ってゆこうとしていることかな。

作品の持つエッセンスは意図的なものでしょうか。

Tom : ???...、音の出しかたについてはぼくら自身の決まったやり方があるから、そういう意味では意図的と言えるかもしれない。

Green : 始めの頃にいくらか意識的に変わったことをやろうという気があったし、型にはまったやり方よりかはその方が面白いと思ってたからね。それにみんな何か新しいことを取り入れようとしている人たちの音楽に魅きつけられる傾向にあるし。

バンドの政治的背景というのはどういったものなんでしょうか、それからどうして例えばギャング・オブ・フォアみたいなバンドにアプローチして行かないんですか。

Green : 始めた頃は若い怒れる左翼主義者だったからね、何かやってみる前から書いてた歌詞ってのは全く革命的なものだった。思うに変化したのはぼくらの政治的コンセプトなんだな。僕は僕らの政治的意図だのこの国の政治だの、それに対する僕らの関わり方がギャング・オブ・フォアみたいにシンプルだとは思っていないんだよ。ぼくらはあやふやな形で革命に飛び込むにはあまりにも問題が多すぎると考えてる。だからギャング・オブ・フォアの取っている政治的スタンスのように独善的なものとは程遠いんだ。だから政治的にも歩み寄るところが全くない。まあ、何を政治的と呼ぶかにもよるんだけどね。

今でも自分たちを社会主義者だと思いますか。

Nial : 社会主義者をどう定義するかによると思うよ。

Tom : ぼくは、そうだね。

Matthew : わからないな。

Green : ある意味ではね。

あなた達の音楽は政治的なものの器なんでしょうか、それとも全く純粋に音楽的なのか。

Nial : いろいろな考えを盛り込むようにやってるんだけど、その考えは違ったレヴェルで機能するものなんだ。つまりどんな風にステージをやるかとか、どんな風に音楽を作ってゆくか、というようなね。それに物事を政治的にどう見るかとか、どういうものに興味を持っているかとか、ぼくらが経てきた問題とかにも関係がある。そういうものがいろいろなパーツや考え方のモデルになったり、それを結びつけたりするんだよ。

Green : 全く単純でシンプルなことなんだけど重要なのは、音を立てたり、音楽を作ったり、歌ったり叫んだりするのは自分たちにとってとてもいいことだって事だね。表現性というものは問題を解決していく過程で必要だということかな。

仕事を持っていないわけだけど、毎日どんなふうに過ごしてるんですか。

Tom : 普通は午後になってから起きて、....寝るのが遅いからみんなそうだね。起きて寝るまでの間に朝食を食べる。それからレコードやカバーについてディスカッションしたりするんだ。本当にやることが多いんだよ。他のグループで一日働いてるような連中は、そういうのをどうしてるのかと思うよ。

Green :それに 話し合ったり考えたりもよくするね。本を読むとかもいろいろ。そうしていると違ったタイプの作品やギグを考えついたりする。何か題材を思いつくと文を書いたりね。どれも骨が折れる仕事だよ。

Tom : 仕事を持っていないことの利点は何かやりたい事を思いついた時に集中出来るってことと、そのための時間があるってことだね。自分の自由を確保しておけば何日でも望むことに使える。仕事を持っていると、知ってるグループの連中なんてね、一日の仕事が終わると疲れきってるから、あとは飲んで休みたいだけって感じだもの。

Green : 読書は僕らにとって大事なことなんだ。自分たちの考えが自己満足的になったり都合のいいものになったりしないことは重要だからね。他の人たちがどういった論争をやっているのかチェックするのは独善的な自惚れに陥らないためにも良いことだと思うし。

自分たちの音楽の他に、どういったものを聞きますか。

Tom : レインコーツ、スリッツ、デルタ5なんかが面白くて好きだな。

Green : ギャング・オブ・フォアやMekons を聞くのが好きだよ。彼らがどんなことをやってるのかチェックするのは面白いからね。