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Didn't you used to be Bryan Ferry?

- The sultan of sophistication has returned with a new album of 1930s standard.  Dave Wilson discovers why -

 

Record Collector Nov.1999

by Dave Wilson

 

Translated by Ayako Tachibana

 

 

ブライアン・フェリーの前作"Mamouna"から5年、新しい世紀を前にしてフェリー本部の突然の動きが話題を読んでいる。ロキシー・ミュージックとブライアン・フェリーのこれまでの作品が最近になって全てリマスターされ、豪華なCD版として再リリースされたのだ。

これは偶然、うまいぐあいにブライアンのネットエイド出演と、彼のニューアルバム'As Time Goes By"のリリースに時期を同じくしている。そしてこの作品はそのタイトルの示す通り、現在にではなく30年代に焦点を当てた作品なのである。この時代の最もスタイリッシュな曲のいくつかをカヴァーしたアルバムであるが、それは同時にオリジナル作品のクラシックなムードを容易に伝えてくれる仕上がりとなっている。 "As Time Goes By" に続いて、ファン待望の新しいオリジナル・アルバムも来年始めにはお目見えする予定だ。(*訳者注 : 実際には次のオリジナルアルバムリリースは、2002年となった。)

これと前後して、ブライアンは12月に短いツアーに出ることになっており、14日にはロンドンのロイヤル・アルバート・ホールへも出演する。どうやらフェリーは新世紀を無視していたわけではなく、その到来を待っていただけのようだ。

 

★ 新しいアルバムはずいぶん新鮮ですね。どういったことにインスパスアされて1930年代のカバーをやろうという気になったんですか。

長いこと電子機器を用いた音楽とトラックを重ねたスタジオ・アルバムを作って来たから、アコースティックな作品を作るのは確かに新鮮だったよ。なにしろこれまでドラムはプログラムすることになるし、次々とその上に音を重ねていくような作り方だったからね。いつもあまりにもレコーディングに拘り過ぎて、誰もぼくの声を聞いているヒマもないって感じで、それと比べると今度の曲はどれも、少なくともまるで違う方法で作ったということになる。そもそもどの曲も始めから曲としてあるわけだし、― ぼくがスタジオで書いた曲じゃなく、何十年も前に既に書かれている曲なんだからね ― だから始めからヴォーカルも歌詞もあるわけで、それを核にして曲を作り上げることが出来るし、基本的に通しでやって演奏することも出来る。それを録音して、まあうまくいけば、1回か2回のテイクでOKってことにもなるんだよ。

 

★ この作品は、当時の雰囲気を見事に捉えていますね。

全くそうだと思うよ。ぼくは運良くコリン・グッドや他に何人も、当時の作風やスタイルを確信を持って再現できるプレイヤーを見出すことが出来たんだ。コリンときたら本当にテディ・ウィルソンみたいな音を出すんだからね。ぼくは彼がやったビリー・ホリディのアレンジは最高だと思う。そしてそういうのが今回ぼくがバンドにあって欲しかったテイストなんだよ。いくつかの曲はストリングスを使ってやっててそれもとてもいいんだけど、だからぼくのボーカルにとってそれは、これまで馴染んできたものとは全くちがった空間を提供してくれることになったんだ。

 

★ 前のスタジオ・アルバムから、かなり年月がたってしまいましたね。

ぼくは最近、いつも時間がかかりすぎるみたいだね。

 

★ そういえば、"Taxi"も、完成の早かったもうひとつのカバーアルバムでした。

タイプ的には似たような作品だけど、もちろんサウンドは全く違ってるよ。あんまり長いこと業界に顔を見せないでいると、みんな「なんでレコードが出ないんだ」って言うもんだから、それが何か作らなきゃというプレッシャーに繋がってしまう。そういう場合、この種のレコードならぼくは早く仕上げられると分かってるから。

 

★ "These Foolish Things" や"Smoke Gets In Your Eves"のような、30年代の曲を前にもレコーディングしてたことがあったのではないでしょうか。

ずっとこういうレコードを作りたかったんだよ。長いこと心のどこかにそういう気持ちがあって、それは1973年に "These Foolish Thingsをやって以来かな。あれはその時代の曲を初めてカバーした、いや、その時代のみならずカバーをやった初めてのアルバムだったんだ。あの時、30年代からは一曲しかやらなくて、それはタイトル・トラックなんだけど、その他は全部50年代や60年代の曲だった。それでいずれ全てその時期の曲を集めたアルバムを作れたらいいだろうなと思ってたのさ。ぴったりのプレイヤーたちも見つけることが出来たんだし、そろそろいい時期かなと思ってね。

 

★ どうやって、ああいう正統な音を作り上げたんでしょうか。― "Avalon" や"Boys and Girls"のようなトリッキーなスタジオ・ワークでは為し得ないことだと思うんですが。

シンセやエレクトリック・ギターを使う誘惑に勝てなかった曲がひとつあって、それは"I'm In The Mood For Love"なんだけど、あの曲を選んだ時は、どういう音にするべきか、つまりどのキーか、どういうテンポか、誰にソロを取らせるか、といったようなことをざっと考えてみたな。何人か本当に素晴らしいソリストも見つけていたから。

 

★ ずっとやりたいと思っていた曲があったわけですね?

殆どそうだよ。いくつかの曲は何年か前ならやるのが恐かったかもしれないけど、今はもうそんなことはないな。"As Time Goes By"のような曲は、とてもクラシックな作品じゃないか。その曲にどういう立派な歴史があるかってことは気にしないけど、ひとつ素晴らしい仕上がりのバージョンなんかがあるとね。例えば「カサブランカ」のために Dooley Wilsonがやったみたいなやつ。そうするとトリビュートとしてやるのがいいかなと思って、それにちょっとストリングスを加えてみたのさ。だからいくらか違った雰囲気には仕上がってるかもね。

"I'm In The Mood For Love"には、 10年前に"Bête Noire"を作った時に使ったタンゴ・プレイヤーたちが参加してる。 みんなもう大変お年なんだけど、でもそのスピリッツは衰えてないし素晴らしいんだよ。ラテン調の曲があるといいなと思ったし、今的なスタイルに脚光を当てるのもシャレてるかという気がして。それにフランス語の詩も少し添えてあるんだ。ちょっと Je t'aime.って感じのやつをね。

 

★ オリジナルの1930年代の楽器まで使ってると聞いたんですが。

うん、Ondes Martenotと呼ばれてるのがあるんだ。テレミン*訳注1と同じような音を出すもので、30年代の発明だけど、演奏出来る人は殆どいない。ぼくはクラシックの世界で有名なシンシアという女の子を幸運にも見つけることが出来てね。けっこう凄い音で、初期のSF映画なんかで使われてたんだ。ほら、UFOが飛んだり、幽霊が出てきたりする時にウ〜〜〜〜! って音があるじゃない。見栄えもなかなかで、ロールス・ロイスとかのダッシュボードみたいなんだよ。

 

★ このアルバムのプロモーションのために12月にギグを予定していますよね。あなたが最後にツアーに出てから、もう5、6年経ってませんか?

そのツアーのあと、ヨーロッパに1ヶ月くらい行ったかな。ベルギーで毎年やるロック・プロムというので、オーケストラと一緒にやったんだよ。いろんなシンガーを集めた催しで、60人のオーケストラと60人のコーラスをバックに、一晩2万人の観客の前でそれぞれのヒットを4曲くらいずつやるんだ。イギリスのプロム(舞踏会)と似たようなものだね。

 

★ 何を演ったんですか?

"Avalon"、"Slave To Love"、それに "Let's Stick Together"かな。どれも、よく知られたポビュラーな曲だよ。なかなか良かったと思うね。時にはみんなオーケストラを見に行ってみたいと思うものなんだけど、でも音楽についてハイブロウな趣味をもってる人ばかりでもないだろ。その点、ポビュラーな曲をオーケストラでやるっていうのは、面白いアイデアなんじゃないかな。

それに今年は他にも2,3やってるんだよ。Michael Kamenという映画音楽作家と一緒にポーランドでレコーディングしたり、ダイアナ妃のチャリティ・アルバムにも一曲提供したかな。シェイクスピアのソネットを音楽に仕立てたものなんだけど。もうひとつ、Jools Hollandとチャリティ・コンサートをやってるし、それに8月にはロイヤル・フェスティバル・ホールでニック・ケイヴの主催したメルトダウン・フェスティバルにも出演したよ。ぼくは最終日に出たんだけど、初期のアメリカのフォーク・ミュージックへのトリヴュートってことでね。ピート・スタンレーというバンジョー奏者と2曲ほど演奏した。フェスティバル・ホールでは、これまで演ったことはなかったんだけど、まあそんな感じで、ぼちぼち活動を始めてるような状態さ。気持ちの向くままにというか、計器に頼らないで飛行機を飛ばしてるようなもんだね。

 

★ そういうのも未知の面白みがあっていいですよね。ロキシー/フェリーという活動では、どうしても往々にして決まったセットで演奏することにならざるを得なかったわけですから。

うん。まるっきり違ってて緊張感があるよ。冒険的でチャレンジの気持ちが出て来るから。ぼくはそういう曲も歌えると思ってはいたけど、実際にどんな風に聞こえるのかは分からなかったからね。

 

★ 来年の始めにリリースが予定されている新しいスタジオ・アルバムは、"As Time Goes By"と全く違ったものになるんでしょうか。

ああ、それね。それに関しては、今回のレコードのためにどのくらいツアーをやらなきゃならないかにかかってるかな。とにかく一旦ツアーに出たら、スタジオには入れないわけだから。曲は全部そこに置いてるし、完成まであと何ヶ月かはかかりそうなんだ。

 

★ そういえば、あなたが子供の頃、叔母さんがよく78回転のレコードを聞かせてくれたという話を読んだことがあるんですが。 

そうだよ。彼女はすごい Ink Spots のファンでね。彼らはエルヴィスに、歌唱スタイルの点で凄い影響を与えたんだ。ぼくもそういうレコードが好きで今でも持ってるよ。叔母がコレクションを譲ってくれたからDATに入れてあるんだ。初めて買ったレコードも78回転だったな。実際、ぼくの妹も本当にそういうのが好きでよく買ってた。ファッツ・ドミノ、リトル・リチャーズ、エルヴィス、それにジャズもね。ぼくらの持ってたのは全部78回転だったんだけど、当時は78回転と45回転、どちらでも買えるという面白い時代でね。そういうのは長続きしないだろうなと思ってたのを覚えてるよ。ハンフリー・リトルトンの"Bad Penny Blues"、Joe Meekがプロデュースしたやつだけど、あれも好きだったなあ。風変わりな音だけど、仕上がりが見事だなとよく思ったものさ。驚くほど凝縮された、素晴らしい音というかね。

 

★ そうすると、あなたはミークやフィル・スペクターのようなプロデューサーの影響を受けているということになりますか。

そうだな、"Telstar"はとても好きで、ミークの伝記を読んだこともある。興味深い人物で、ぼくはそういう変わり者が好きだから。 ぼく自身も、特に音楽業界にハマる方じゃないなあといつも思ってるけど、まあぼくの人生だしね。週に5日は仕事してるし、これでも四六時中がんばってるんだよ。それなのに例えばタクシーに乗ってさ、ドライヴァーに「今、何やってんの? 」なんて聞かれてごらん、けっこう落ち込んだ気分になるよね。

 

★「あなた、昔ブライアン・フェリーとか言ったんじゃなかったっけ?」とか?  *訳注2)

(笑) うん、そういうこともやってたかな、なんてね。

 

ロキシー以前のザ・ガスボードやバンシーズでの活動で、こういった曲をやることはあったんでしょうか。それとも全部ソウルやスタックスのカヴァーばかりだったんですか?

ぼくは当時もう、ぼくにとって最初のビリー・ホリディのアルバムを持っていたんだけど、それに、6学年の頃にはそういう曲の入ったアルバムもいろいろね。でも、その頃のバンドではカヴァーしたことはなかったよ。

 

あなたはブルースからも影響を受けてますよね。例えばレッドベリー、ブラインド・レモン、ジェファーソンといったような。 

そうだよ。それがぼくが初めてラジオで聴いた音楽だからね。BBCには音楽番組のとてもいいスペシャリストがいて、ぼくは思ったものさ。へえ! これって何なんだろう、って。スキッフル*訳注3がブルースそのものをずいぶん一般化したんじゃないかと思うよ。

 

当時のニュー・キャッスル・シーンは、盛況でしたか?

うん、かなりね。なかなかいいクラブがあって、ニュー・オーリンズ・ジャズ・クラブていったんだけど、ぼくは学生時代よく一人でそこに通ってたんだ。土曜の夜に猥雑な大都会に出かけて行くっていうのは、当時のぼくにとっては結構な冒険でね、って言うのは、その頃はまだ10マイルも離れた所に住んでいたから、ずいぶんな距離に思えたものなんだ。そういう所に行くには全然コドモ過ぎたんだけど、でも席に座って、カッコよく見えてるといいなとか思ったりしてさ。回りの雰囲気全体が素晴らしくて、ホンモノだなあって感じだったよ。ブルー・ノートとかそういうクラブにいるような気分だった。何回かEric Burdon やアニマルズが出演したのを見たのも覚えてる。

 

ロンドンに移ろうと思ったのは何故ですか?

誰だってロンドンに行きたがるものだよ。アメリカだと誰もがニュー・ヨークに行きたがるのと同じことさ。アーティストならやっぱりあらゆることが起こってるその中心に引きつけられるものなんじゃない? 生まれた街が好きじゃないというわけじゃなくて、外の世界に何があるのか自分の目で確かめたい、みたいな感じかな。

 

ニュー・ヨークにもよく滞在していますよね。それは特に"Boys and Girls"以来、あなたの音楽に現れているように思いますが?

あの街のパワフルなところが好きでね。活気づかせるものがあるというか、そういうのが音楽にはとてもいいんだよ。都会的で猥雑な空気がね。ぼくは運良くマーカス・ミラーのような本当にいいプレイヤーと一緒に仕事をする機会に恵まれたけど、それも一長一短な所があって、一度でもあれほどのレベルの人たちと関わると分かることなんだけど、それは彼らほどじゃないミュージシャンを使うのとはまるっきり違った経験だということなんだ。良い悪いではないんだよ、単にまるで違うということさ。

ああいう精緻な仕上がりのレコードを作った後で、ボブ・ラドウィッグがリマスターした初期の作品を聴いたりするだろ。そうするとその頃のロキシーは荒削りなんだけど、またそこが良かったりするんだね。

 

初期の作品はよく聴くんですか?

それほどでもないよ。でも最近は新盤のチェックをよくしてるから。有難いことに、細かい所はレット・ディヴィスが見てくれてるんだけど、彼は未だにいい音に聴こえるって驚いてたな。

 

初期の作品を今使えるスタジオ技術で再録してみたいという気持ちになることってありませんか? 

そうだね、ぼくは曲の出来が良ければ、いろんなやり方が可能だと思ってるし。例えば今回のアルバムにしても、収録してる曲はどれも何回もカヴァーされてるわけじゃないか。誰かがぼくの曲で様々なバージョンを作ってくれたらなあと思うけど、でもめったにぼくの曲をカヴァーしてくれる人っていないんだよね。

 

"Love Is The Drug" は何回もカヴァーされてたと思いますけど。

グレース・ジョーンズがなかなかいいのを作ってくれてたね。Alex Sadkin のラフ・ミックスを聴いたのも覚えてるけど、それも凄く良かったよ。

 

初期の頃は"2HB" とか "Re-make / Re-model"のようなロキシーの曲をご自身で再録していましたね。当時はどういう理由でそういうことをしたんでしょうか。オリジナルが気に入らなかったとか? 

いや、そうじゃない。単にソロ・シングルにB面が必要になって、「そうそう、あれをもう一回やってみようかな」みたいに思ったんだよ。ぼくのレコード・コレクションの中には、ビリー・ホリデーとかチャーリー・パーカーが一つの曲をその年ごとのバックで、いろいろに演ってるなんてのがあるしね。例え全く同じに作ろうと思って始めても、いつもどこかはいくらか違ってくるものだろ。微妙な違いが生まれるものだと思うよ。ひとつの曲をあれこれ変え続けて、どんなふうに出来上がるのか見るのは悪くないと思うし。実際、ちょっと前に"Mother Of Pearl"の別バージョンを作ったんだけど、それは映画のサントラで使われることになったね。

 

お蔵入りになっている未発表の曲とか、レアな作品というのは沢山あるんですか。それがいずれ日の目をみるというような可能性は? 

ロキシーのはないね。でもブライアン・フェリーの方では過去何年かの間に、未完成のままになっててミキシングが必要とかそういうのが沢山あるよ。だからもしぼくが明日死んだりしたら、2、3枚アルバムが出るかもしれないな。

 

セッション・ミュージシャンがあなたの曲をよくオーバーダブしてるように思うんですが...。

(笑)、ああ、いろいろやってるみたいだね。

 

ロキシーのブートレグ(海賊盤)というのは少なからず出回ってますね。スタジオから流出した作品とかも入っていたりして。

全く、どうやって手に入れるんだか、あれには驚かされるよ。ハエにでもなって壁にとまって、やり方を見てみたいもんだと思う。実際にはどれも聴いたことはないんだけど、聴いてみたいという気持ちはあるね。

 

オリジナルの"The Bride Stripped Bare" には"Broken Wings" という曲が入っていて、アートワークも違ってたんですよね。最終盤からどうしてその曲がカットされたんでしょう。アート・ワークが変わった理由は? 

あの曲はアルバム全体のコンセプトにハマらないような気がしたからだよ。それと確か何人かアートワークが良くないねって言う人たちがいて、それでそちらも変えた方がいいかなってことになったんだ。

 

ロキシー全体のあらゆる面において、あなたが全権を取り仕切っていたことはよく知られていましたが、今でもジャケットのデザインやコンセプトに携わってらっしゃるんですか? 

うん、アートワークをやるのは好きなんだ。ヘマをやったら自分の責任になるんだし、死活問題だからね。今回のアルバムはぼくの写真ばかりじゃないから良いと思うよ。ソロの場合、どうしても自分の写真を使うことになってしまうのがイヤで、前の"Mamouna"には馬の絵を持ってきたんだけど、あれはちょっとみんなを戸惑わせてしまったみたいだったな。あまりウケが良くなかったんだ。

 

今よく聴いてるようなバンドってありますか? 

細々とあれこれ聴いてるよ。ベック、Radiohead、それから The Verve。 Portishead も、なかなかいいよ。時々、バンドってものは同じことを繰り返してるなって気付くことがあって、まあそれはぼく自身にも言えることなんだけどね。でも、少なくともぼくは毎回どこか違ったものにしようと努力して来たんだ。

 

イーノも"Mamouna"に参加していたことだし、オリジナルのロキシー・ミュージックを再編してライヴをやるなんてウワサも出ているんですけどね。

ブライアン(イーノ)は、そもそも全面的にロキシーと関わってたというわけじゃないんだよ。それに残念なんだけど、彼はライヴをやりたがらなくてね。ステージでデュエットをやるのはとても面白そうだと思って一度声をかけてみたことはあるんだ。でも、ライヴには全然興味がないって感じだったな。

 

確かに彼はスタジオ・ワークの方が好きみたいですね。そうするとブライアン・フェリーのアルバムをプロデュースしてもらうというのはどうです?

ああ、それはぼく自身ずっとやってみたいと思ってることなんだ。ぼくたちはけっこううまくいってるし。ここ数か月は会ってないけど、彼、U2ランドで遊んでるんじゃない? それにロキシーの再編って話はいつでもどこかにあるね。ぼくはアンディ・マッケイと時々会うし、フィル・マンザネラと夕食を一緒にしたなんて話もあるから、それで盛り上がってる人たちもいるみたいだ。ぼくだって、いずれもう一枚グループでレコードを作りたいとは思ってるんだよ。

 

前回のツアーでずいぶん昔のロキシー作品が取り上げられていたことに驚いたんですが、ソロ作品と半々ってところでしたよね?  

どうしてもそうなるんだよ。ぼくのレパートリーの半分はロキシーで、殆どどれもぼくの曲なんだし。ライヴでは全然やったことのないロキシー作品というのもあって、中でも "Sunset"は是非やってみたいと思ってはいるんだ。スタジオで作った曲で、一度もライヴに持ち込んだことがなくてね。そういう曲をオリジナルの状態でプレイするっていうのも、バンドを再編することの理由の一つになるかな。ぼくがツアーで一緒にやってるバンドも、とても素晴らしい演奏をしてくれているけど。

 

ロキシーのトリビュート・バンドを誰かが作る前に、ぜひ再編してくださいよ!

ああ、それもなかなかいい理由になるね。

 

他に誰か一緒に仕事してみたいアーティストってありますか? デュエットしてみたい相手とか。

ミッシー・エリオットみたいな人となら、ぜひやってみたいよ。本当に素晴らしいと思うし、それに彼女のTimberlandというプロデューサーも好きなんだ。そっちの世界のことはあまりよく知らないんだけど、ガラクタも多いとはいえ、良いものもある。ぼくはどんなアイデアにもオープンでいたいしね。

 

アバのフリダに"The Way You Do" という曲を書いてましたよね? あれはどういう経緯で?

フィル・コリンズが電話で何かフリダにいいような曲はないかなって尋ねてきたんだ。ちょうど半分書きかけてた曲があったんで、それを仕上げて渡したんだよ。デッドラインがある仕事ってのは大変なんだよね。スカンジナヴィアにはかなりロキシーのファンがいるから、フリダもそうだったんじゃないかなと思ってるんだけど。

 

その曲は、自分でもレコーディングしたんですか? 

いや、してないよ。

 

アルバム一枚制作するのに数週間、という初期の頃に比べて、あなたのレコーディングに対する姿勢が変化したことについては、どう思っていますか? 

あの頃に戻れればね。ものごとにやたら時間がかかるのには、ウンザリしてるんだよ。その点では、今回のアルバムの良かった点は、スピーディに仕上がったことだろうと思う。

何年も何も出さないでいると、もう誰も興味を示さなくなってしまうんじゃないかという気がしてくるものなんだよ。だから今回のアルバムに魅力を感じてくれるオーディエンスがいてくれると嬉しいね。収録した曲をどれもぼくはとても好きだし、それぞれに敬意も持っているから。ぼくが知る限りでは、こういう曲をやってる人は他に見当たらないな。シナトラは亡くなってしまったけど、彼はこの種の曲をよく取り上げてたよ。確かトニー・ベネットは今でもやってるんじゃないかな。こんな風にそういう作品を再生して、新しいオーディエンスに聴かせてゆくことって、意義のあることだと思うしね。

 

"These Foolish Things"が、まさにそうでしたね。明らかに埋もれていた曲でしたから。

うん。あれもたまにみつかるような素晴らしい曲のうちのひとつで、ぼくに合ったものでもあったね。

 

このアルバムのプロモーションのために、テレビ出演は予定されてますか? "Later With Jools Holland" の他には? 

このアルバムを特集したような特番が出来ればいいなとは思ってる。でも今のところはまだ企画段階だよ。まあ、最近ではMTVが盛んだから、その気になればそれでコトは足りるわけで、テレビはそれほど大事というわけでもないけどね。昔は"Top Of  The Pops"が、やたら重要だったものだけど、今ではみんなテレビ出演に大して拘らなくなってもいるし。ただ、ぼくの年になるとMTVと折り合いをつけるのはなかなか難しくてね。あまりに時代を突っ走ってるって感じで、それはラジオですらそうかな。今はぼくにはRadio 2 *訳注4 あたりが丁度なんじゃないかと思うよ。

ともあれ、来年はブライアン・フェリー作品を振り返ったボックス・セットを出したいね。ROXYの "Thrill of It All"のような。

 

未発表の作品が入るかもと期待してもいいですか? 

だぶんね。

 

Gas Board 時代のライヴ曲とか?

そういうのは、ぼくの手元にはないんだよ。ぼくが脱退してからメンバーはみんな大学を中退して、その後ならレコーディングはやってたようなんだ。でも、ぼくは聴いたことがなくてね。

 

ロキシーの元々のベーシストだったグラハム・シンプソンも、ガスボードであなたと一緒にやってたんですよね。

そう。でも、ファースト・アルバムを作ったあとで完全にロキシーから離れてしまったから、それからは全く会ってさえいないんだ。すっかり姿を消してしまったし。あれは悲しい出来事で、夢のような経験でもあったけど、当時はみんなが回りで起こってる大騒ぎに巻き込まれて、何がなんだかわけがわからなくなってたんだろうね。

 

The Banshees は60年代に何枚かシングルを出してますけど、それには関係してなかったんですか?

いや。シングルがリリースされたのは、ぼくがバンドを出て1年も経ってからだったから。在籍してたのは、64年の夏休みの時だけ、ワン・シーズン限りだったんだよ。9月にはぼくは大学に通い始めたから、5月から8月までの間だけだったってことになるかな。

 

最近フィル・マンザネラがロフトを引き払った時に、あなたがロキシー以前にやっていたバンドのテープをいくつか見つけたというウワサがあるんですが。

ほんと? それはないと思うけどな。ぼくは録音した記憶なんてまるでないし。当時はみんなテープ・レコーダーなんてものは持ってなかったし、あるのはリール式のやつだけだったしね。ロキシーのテープなら、みんなに聞かせて回ってたやつを確かにぼくが持ってるんだけど。

 

★ オリジナルのデモ・テープですか?

そう。それなら持ってる。まだフィルが入る前で、ギターはロジャー・バンがやってた頃のだよ。

 

★ それをボックス・セットに入れようなんて思いません?

ああ、うん。やってもいいね。

 

★ 初期にやったピール・セッションは、どんなだったんですか?

すごく楽しかったのを覚えてるよ。録音されたのはあれが初めてだったね。1時間で4曲やったんだけど、もう夢中だったな。

 

★ この後の、ご予定は?

このレコードのプロモーションが終わったら、自分の曲を作る方に早く戻りたいね。さっさと出したいし。それに、来年の夏はロックでツアーにとても出たいんだ。フェスティバルなんかに潜り込んでさ。

 

★ ツアーは楽しいですか?

そうでもないね。でも、長いことやってないと、それはそれで淋しいものなんだよ。今年は4回ほどちょこちょこいろんなのに出たもんだから、そろそろ気合いを入れて自分の曲をやってくかなって感じかな。 これまでやってなかったような、珍しい曲もいくつか入れていきたいなと思ってるんだ。 

 


 

*訳注 1 テレミン(Theremin) ...一種の電子楽器。音の高さと音量は、奏者の両手とアンテナの作用をする2本の金属棒の感覚で調節される。ロシアの発明家、レオ・テレミンの名に由来する。

*訳注 2 "あなた、昔ブライアン・フェリーとか言ったんじゃなかったっけ? Didn't you used to be Bryan Ferry?" ... たまたま乗ったタクシーの運転手にそう聞かれたことがあるという笑い話。実話らしい。

*訳注 3skiffle(スキッフル) ... 1950年代に英国で発生した通俗音楽の一形式。米国南部や西部の民謡風の音楽やロックンロールに起源を持ち、ギター・洗濯板・陶器製水差し・洗濯だらい・カズー(kazoo)のような質の違う雑多なグループの楽器によって演奏する。また他に、1920年代に流行したジャズ形式の一種の名称でもあり、ブルース・ラグタイム・および民謡から派生し、通常のジャズ演奏に用いる標準的な楽器や即席の楽器で演奏された。

*訳注 4 Radio2  ...BBC放送のラジオチャンネルで、Radio1は主に若向けの音楽を流すが、Radio2はそれより上の年齢層向けに落ち着いた曲を主流とする。一般にロックやポップスはRadio1に集中するわけだが、かつてはそれに最も相応しいロックバンドのリーダーだったブライアンも、1999年当時で既にぐっとオトナな音楽を作っており、しかもこの年にリリースされた作品集が"As Time Goes By"のような30年代を中心とする曲のカパーだったこともあって、そろそろRadio2がぴったりなんじゃないかという発言につながったらしい。

translation : 2005.9.26.-2005.10.12.+2007.6.3.

revise / edit : 2007.6.3.+6.5.

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