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Nancy Culp slips between the Bry-nylon sheets

Interview By Nancy Culp

 

Record Mirror 1987 Oct. 31

Translated by Ayako Tachibana

 

ブライアン・フェリーはひどい雨降りの街路から建物の中に入って来たが、まるでそんな天候は気に掛けてさえいないように見えた。

彼は何事も急がない人としてよく知られているし、また彼自身もそういう人なので、私はホテルで際限なく彼の到着を待つ必要があったのだ。すまなそうな様子でロビーにすいと現れたのは、誰もが期待する通りの彼だった。無造作なヘアスタイルから趣味のいいヘリンボーンのスーツ、ビスキュイ・カラーのオーバーコート、そしてその一挙手一投足までが、カメラのレンズに捉えられるために計算されつくしたかのようだ。おぼつかない足取りで彼のスイートに招かれ、入ったとたんに15年間、待ち焦がれていた言葉が聞こえてきた。「お茶を二人分頼めるかな?」、うっとりしちゃって、天にも登る気持ちだったわ!

ブライアン・フェリーのことになると、「スタイル」だの「クラス」だのという言葉を持ち出さずにはいられない。事実、スタイルの点でも音楽の点でも完璧だという以外のイメージを持つことが出来るだろうか。ロキシー・ミュージックの解散以来も、ブライアンはそのキャリアの上で、いくつかの素晴らしい作品を生み出し続けている。全く、オトナの音楽。1985年の見事な 'Boys And Girls' は作り上げるのに2年を費やした。それはそれに続くLP、'Bête Noire' でも同じことである。そこからの初めてのシングル・カットは'The Right Stuff'だが、スミス脱退後のジョニー・マーが参加しており、既にチャート入りしている。これも全く傑作だ。そろそろ40代に入るはずだが、それでも彼の後を追うように産まれてきた数々のマネっこ集団は、今もその足元にも寄れないだろう。

インタヴューでお会いするといつも楽しい方なのに、気難しくてデカダンなイメージがついて回っていますよね。

「うん、ぼくはいつでも礼儀正しくして来たからね。よく躾られて育ったし、ずっと無礼な態度はみっともないとも思ってるんだよ。」

 

70年代には、私、記憶にあるんですけど、誰もがあなたを酷評したがってましたよね。特にあなたの服装とか。

「ああ、そうだったね...」

 

ぶん殴ってやりたいと思ったことってありました?

「いや、だって面と向かっては誰も言わなかったもの。みんな調子よくインタヴューして行って、帰ったかと思ったら想像もつかないような記事を書くんだから。」

「そういうのは、いけないことなんだけどね。アメリカではそんな風じゃなく、成功には素直に拍手を送るよ。イギリスじゃ好むと好まざるに関わらず体制側ということになって敵意を持たれる。特に国際的には、イギリスのプレスはいい加減で非常識だってことで評判が悪いんだ。」

 

落ち込んでる人間がいると蹴り飛ばしたがりますからね。77年のときも...

「ああ、全くね。運が悪かったというか、英国中とケンカしてたようなもんだよ。でも、それなりに自分を守る術はあってね。これでも、繊細なアーティストだからさ!」

 

アルバムや、ジョニー・マーとのコラボレーションについて伺います。一緒に仕事をする前に、スミスは聴いたことがありましたか?

「気に止めて聴いたことはなかったけど、ラジオで耳をかすめるくらいかな。ぼくはこのアルバムを作り始める前から、幅を広げるために、これまでと違った人たちと仕事をしようという気になっていて、それを今ぼくのアメリカでのレコード会社であるワーナー・プラザ―スも知っていたんだ。ワーナーにはスミスも在籍しているから、それでそちらからぼくに何曲かカセットが送られてきて会ってみることになった。それで気が合ったというわけさ」

 

 

"The Right Stuff" は、元々スミスのB面に入っていたインストゥルメンタルで "Money Changes Everything"という曲でしたよね。

「そう。始めにぼくがもらった時にはまだデモで、そのあとB面に使われたみたいだ。ぼくはそんなに原曲を変えずに同じようなアレンジでやったんだけど、何日か手を入れてみた後でジョニーに聞かせたら気に入ってくれてね。自分がやったのより良くなってると思ったようだよ。」

「彼はとても前向きで明るくて楽しい人だったし、ぼくらは二人とも北部的なユーモアの持ち主だったようで、それでとても気が合ったんだ。もっといろいろ一緒にやれるといいんだけど。彼も新しい方向に目を向けたばかりなんだし。」

 

あなたは自分の居場所を確立して、何か革新的で大きな変革を齎すようなものを作るより、自分の得意なことをやり続けてゆくことになるんでしょうか。

「さあ、どうなんだろう。自分が同じようなことを続けてゆくと思うのはイヤだな。ぼくはいつでも自分のやってるのはかなり大変なことだと思ってるんだけど、でもそれは微妙で理解し難いところがあるから、殆どの人にとっては"ただのレコード"だと思われてしまうんだろうね。納得のいくものを作るのは、これでけっこう大変なことなんだけど。」

 

あなたは物凄く完全主義だと聞いたことがあるんですが。 

「"完全主義"というのは正しい表現だとは思わないけど、でも分からないな、たぶんそうなのかもしれない。納得のいくまで時間をかけたい方だからね。いつでもやり直しの連続だし、いくらやっても絶対これでいいとは言えないような感じで。」

 

70年代には、あなたは悪名高い女ったらしで鳴らしてましたよね。 

「まるできみのところの編集長みたいなことを言うんだなあ(笑)」

(編集部注 : ぼくじゃないよ、ブライアン。)

 

違いますよ。私の記憶に残ってるんです。

「いやいや。自分では全然そんなふうに思ったことなかったんだけど、言われるほどはね。」

 

でもプレスは、思い切りそういう印象を与えようとしていたでしょう?

「ああ、うん、確かに。でも、口のうまいやつには何人か会ったことはあるけど、ぼく自信は全然そうじゃなかったからね!」

 

'Kiss And Tell' という曲は、かつてあなたとちょっとつきあって、その話をプレスに売ったような、そういう女性たちに対するリアクションなのかなと私は思ったんですけど。ほら、"ブライアン・フェリーと過ごした階段の熱い一夜"とか。そういうのが記事になった時は、どんな感じがしましたか?

「もう、覚えてないよ。そういうのが最後に出てから、随分になるもの。でも曲のアイデアとしては面白いと思ってたのは覚えてる。この曲は2年くらい前に取り掛かったんだけど。毎週日曜、どこかの新聞にそういう暴露記事が載るじゃないか。それで"こういうタイトルの曲がどこかにあるはずだ"と思ってた。ところが、どこにもないんだね。それで作り始めたら、半年ほどしてアメリカから同じタイトルの曲が出て来たんだ。ぼく自身が実際にそういうことの犠牲者だったっていう事実は、より真実味を増すと思うけどね。これは次のシングルになるかもしれないけど、まだハッキリとは決まっていない。」

 

何もかもやめてしまおうと思ったことはありますか?

「それはもう、ひんぱんに !」

 

どうしてですか?

「さあ、あまりに忙しすぎて。ウンザリするのはスタジオ仕事の方じゃなくて、たまにね、プロモーションの方だとか、ビジネス・サイドで負担がかかるんだよ。そういうのに向いてないから。例えばツアーだとか、そういうののどこかの部分に興味が持てなくなってしまったり。二度とステージに上がりたくないというのじゃないんだけど。だって来年はやりたいなと思ってるくらいだからね。いつ、どこでやるかはまだ分からないけど、小さなホールで五夜連続なんていいと思うな。アリーナでやるのより、ぼくはそういう方がずっと魅力を感じるよ。」

 

それでもロキシー全盛期には、そういう大ステージでプレイなさったこともありましたよね。

「うん、あるよ。でも半分はどんなもんかなと思いながらやってみたんだ。ぼくとしては、それほど楽しかったわけでもない。ぼくは古いタイプの人間だから、オーディエンスには払ってくれたお金に見合うものを与えなきゃいけないと思ってる。最近見たそういうショーは酷いもので、巨大なアリーナに4人か5人出て来るんだけど、とんでもないなと思ったものさ。こんなの1時間半も見ていられないぞ、ってね。でもその後でプリンスを見た時は、すごいと思ったな。ロキシーのショーも、あんなふうに見えていて欲しかったものだけど。」

 

でも、ダンスの方はプリンスと比べるとちょっとね !

「あー、彼の方がぼくよりちょっとだけ、うまいかな。」

 

これまで作った中で、お気に入りのアルバムはどれですか ?

「 'For Your Pleasure' は、ずっと気に入りだね。あと 'Avalon' 、それから 'Boys and Girls'もまだ好きだよ。どれがどれよりいいというのじゃなくて、と言うのは、どれにもそれぞれ気持ちをこめているから。ぼくは感情的に同じ所をいつもぐるぐる回っているようなものだし。」

 

一番気に入らないのは ?

「2枚目のソロ・アルバムかな。 'Another Time Another Place' ね。今聴くと、ぎこちない感じがするんだ。」

 

歌うことは楽しいですか ?

「曲によるね。キィが合ってるかどうかって点で。やってると時々、"この曲はもっとキィを高くしとけば良かった"とか、"低くしとけば良かった"ってことがあるんだ。ぼくはそういうところに注意散漫なところがあって、キィが自分に合うかどうかは運次第だったりする。」

「何でもかんでもカントリー・アンド・ウエスタン調のバリトンで歌うより、ずっといいと思うけどね。」

 

ご自分のキャリアを振り返って、学んだことは何だと思いますか ?

「あはははは」

 

それとも今でも同じ間違いをやり続けているんでしょうか ? 

「ずっとだよ! ぼくも人間だってことだ。ぼくはいつでも型にはまるんじゃなく、自分自身でいたいと思って来た。どういうことかと言うと、ぼくにとってそれは、たまにはロックンロール的なライフスタイルから一歩引いてみるってことだったんだ。ぼくはわりと夢見がちなところがあるから、時にはぼんやりしてしまうこともあるけど、同時に一般的な常識の感覚というのも持ち合わせてる。これからもずっとね。でも昨年、前のマネージャーたちと離れることになるまで、15年も特に大きな騒動もなくやってこれたことはラッキーだったと思うよ。」

 

15年もして、息子さんたちがあなちのところに来て、もしこう言ったら...

「"パパのレコードって最低 !"とか? ははは。そしたらパニクるだろうね。でも、きみの質問は違うのかな ? 」

 

違いますよ。私が聞こうとしたのは、もし息子さんたちがミュージシャンになりたいと言って来たらということで、そうしたらどう思われるのかな、と。あなたがよくご存知の世界でもあるし。

「そうだね、もしいくらかでも見るべきところがあるようなら、いいよって言うだろう。でも、そういうことがあるとは思えないな。ぼくを見て育ってるからね、全く違った方向に進むんじゃない? 」

 

ビル工事の現場で働くとか? 

「あ、それならぼくもやった。」 

 

え、まさか?!

「もちろん、ホントだよ。」

 

信じませんよ ! 聞こえませんからね !

「ぼくが大学時代、どうやって小遣稼ぎをやってたと思うの ? ハシゴに乗ってレンガつみ! ホントだってば。Mug of tea とか、Daily Mirror にもね! 勤めてたことがあるよ。(笑)」

 

新聞の売り子とか?

あはは、そういうのじゃないけど。でも、まあそんなようなもんだ。ぼくが良かったなと思うのは...、そうね、生まれが貧しいと、おのずと何でも自分でやるようになるから、経験を積めるってことかな。それと、上る以外に方向がないってところもね。(笑)

 

今でも世界で最も好ましい男性として選ばれるのは、どんな気分ですか。

「始めっから信じちゃいないよ ! トシを取るってことについて言えば、気持ち的に今でも全然気にならないけどね。大学時代とさほど変わったって感じもしないし。ただ、酒とタバコをやってて、毎日ジョギングするわけでもないってことになると...。鏡を覗き込むことも、もう昔ほどはなくなるよね。それから以前より写真を撮られるのにいくらか抵抗を感じるとかね。だからもし、きみの言うのが本当なら素晴らしいと思うよ。嬉しいな。」

 

実際、私の知る限り、あなたの名前が出ると女性はそれだけでメロメロになっちゃいますよ。

「へえ、それはワイフに言ってやらなくちゃ!」

 

スタイリッシュであることや、いつでもそういった装いに身をかためているということが、プレッシャーになることはありませんか ?

「そんなことはないよ。ぼくは着るものなんて全然持ってないもの ! だから出なきゃならないテレビのショーが迫ってくると、どうしようかと思っちゃうくらいだよ! 」

 

今でもアントニー・ブライスが衣裳デザインを手がけているのではないんですか ?

「いや、彼も忙しくなっちゃってね。最近は既製服で間に合わせてるんだ。」

 

それは結婚なさって、あなたが落ち着いたということの結果でしょうか ?

「たぶん、そうかもね。それに最近ではみんなスタイルに気を取られすぎじゃないかと思うよ。若いグループなんかは、あまりにデザインされ過ぎてて。そうなると、無頓着でいる方がカッコいいような気がする。そういうの、分かるかな ? 」

 

最後に、お聞きしたかったんですけど、あなたのビデオでは拒食症みたいに見える女性が沢山出てくるのは何故かなって。

「そうだな、前にきみが言ったようなこと、つまりみんなに気に入ってもらうためだね。太った男とスリムな若い女性を躍らせて....、誰もぼくを4分半も見ていたくないだろうとずっと思ってたから、それで "他のものもいろいろ取り入れよう、シンガーやダンサーはどうかな" ってことになったわけ。見る人に楽しんでもらえるようにだよ。(笑)」

 

translation : 2005.8.22.+9.8.+ 9.17.-9.18.

revise / edit 2007. 2.23.+3.5.

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