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I Have Plenty Of Vices

-Bryan Ferry likes Sigue Sigue Sputnik, fancies owning a farm but isn't suer about the Wogan show, 

He's also partial to a spot of lunch with Robin Smith  -

Record Mirror 1986 May 29

Translated by Ayako Tachibana

 

ブライアン・フェリーは脳外科医や、月に最初に降り立つ人間になりたいと思ったことは全くなかった。英国北東部で育った少年の頃から、彼はアーティストに生まれついているということをよく知っていたからだ。

「両親には、脳外科医だとかそういう普通のものにはなりたくないって言ってたんだよ。」ブライアンは思い出しながら言う。「クリエイティヴな仕事がしたいってね。普通の仕事につくことなんて考えもしないものだから、両親としてはちょっと心配してたみたいだ。でも、ぼくのすることには何でも協力してくれたから、反抗的になる必要はちっともなかったな。」

「父は、ぼくの知る限り最高の人だった。前のアルバム("Boys and Girls")は、彼に献呈したものなんだ。2年くらい前に亡くなってしまったけど、今でも懐かしい。これからもずっと忘れられないと思うよ。」

「学校では作文が得意で、数学とかそういうのは大キライだった。考えたことを書き留めておくことが好きだったんだ。資質的なものから来てたと思うけど。」

 

― 学校で苛められたりしませんでしたか?

「いや、苛められた覚えはないなあ。ぼくはその頃、もう背も高かったし、年上の子たちのグループともよくつきあってたから。学校では山歩きのクラブを作ってたんだけど、近くに湖がっあったから、みんなでよくそのへんに出かけてたよ。」

「何にでも凝るタチでね。自転車の趣味に使うために、新聞配達をやっていた。見栄えをよくするのに凝って、あれこれ手間をかけたりもしてたな。そういうのに没頭するのが好きな方なんだよ。」

「今でも農園を持ちたいという野心はあるよ。牛の乳搾りをするなんて考えられないけど、まあ、うまくはやれないだろうしね。」

「父は農夫だったから、ぼくにもその血が流れているんだと思う。自由に呼吸していたいんだ。」

 

とは言え、現在のブライアンには田舎でのんぴり過ごすヒマはありそうもない。最近のシングル"Is Your Love Strong Enough?"のプロモーションで駆け回っているし、その上まもなく次のアルバムのレコーディングに入るところだ。

彼にランチをご馳走するなら、ロンドンのキングロードをちょっと入った所にある彼のお気に入りレストランにするのがいいだろうと思った。私はステーキを、ブライアンは子牛の肝臓を頼んだが、我々の会話もその料理に劣らないくらい素晴らしいものになった。

ブライアンのシングルは近々公開されるアメリカ映画「レジェンド」のサウンド・トラックとして使われている。監督はリドリー・スコットだ。ひょっとするとこの曲がキッカケで、彼は全米でブレイクすることになるかもしれない。

「アメリカじゃまだぼくは、それほど大きな成功をおさめてはいないからね。たぶんぼくが、向こうで好まれるようなグっとくるコーラスってのに興味がないからなんだろう。ぼくの音楽は、あっちの型には全くはまらないようだから。ぼくのイギリス人らしいところが気に入らないのかどうかについては、よく分からないけど。」

「ぼくよりずっと、向こうで上手くやってる人たちはいるよ。それは認めざるを得ない。この世界ではそういうのに嫉妬するってよくあることだけど、ありがたいことにぼくはそういう人間じゃないんだ。」

 

40に届く年になっても、ブライアンは彼の仕事にまだ充分、発展の余地があると考えている。

「30を過ぎれば中年だと思う人が多いようだけど、今では昔よりずっと誰もが若くて健康な精神状態にあると思うよ。60年代に我々はとにかく古い秩序から解放されているし、現在のポップ界もずっと広い地盤を持つようになっている。より広い層の人に親しまれているんだから。」

「さっさと引退しようなんて計画はないね。とてもそんな余裕はないよ。」

 

― どうしてこんなに長く続けて来れたと思いますか。

「それはぼくが聴衆に押し付けがましいことをせずにきたせいじゃないかな。何か大事なことがある時はそう言うよ。でも、いつでも注意を引こうとするようなことはない。それにとにかく仕事をマジメにやってるし。神のみぞ知るなんだろうけど、すごく一生懸命働いてるんだから。スタジオにいる時は、いつでもベストを尽くしてるよ。」

「このシングルを作るのは、とても楽しかった。依頼を受けて曲を書くなんて、これが初めてだったんだ。だから、この一曲のためだけに何週間か集中して時間をさくことが出来たしね。」

「誰がぼくを使おうという気になったのかは全然知らない。たぶんリドリー・スコットの子供が、ぼくの作品を気に入ったかしてたんじゃない?」

「この曲は悪に対する善の闘争についての歌なんだよ。それは終わりのないせめぎ合いだね。」

「最近はこういうスペシャル・ソングが付いた映画が多いみたいだ。若い世代にアピールしたいんじゃないかな。確かに効を奏しているようだけど。」

 

台本を送って来られるようなことってありますか。演技の方に入ろうと思ったことは?

「うん、台本は何本も見てる。でも、演技をやろうと思ったことはないよ。楽しめるとは思えないから。ボウイのような人は楽しんでやれるから演技に向いてるんだろうけど、ぼくはそっち方面に興味はないな。 'Absolute Beginners'(*訳注1 は期待作だからアメリカでも当たるといいね。ある程度の成功をおさめようと思ったら、向こうが一番興行収入が上がるわけだし。」

「自分が管理する立場にいる方が好きなんだ。テレピ・スタジオや映画では、誰かしら他に監督する人がいるものだろ。そう言えば、Wogan ショーにちょっと出ないかって話があるんだけど、どうするかはまだ分からないな。」

「ぼくには、かなり内向的なところがあるから、いつでもそうしようと思えば無口になれるんだ。みんなには、ぼくの音楽から分かってもらえたらと思うよ。」

 

ブライアンがロキシー・ミュージックで作った曲を集めて、回顧アルバムをリリースしようという計画が進行している。'Virginia Plain'のような、忘れ得ない曲を2枚組みに仕立てることになるだろう。

「昔のことを振り返って、すごく楽しかったなってね。そのアルバムのプロモ・ヴィデオを作るんで、昔のフィルムをいろいろ見たりしてたんだけど、初期の頃に誰か芸大の学生が作ったようなのがあって、それがとても良かったんだよ。」

「でも最近のプロモ・ヴィデオの状況は、あまりいただけない。ぼくはレコードとかカセットには、作り手とリスナーとの間での約束ごとがあると思うんだ。アーティストはそれを通して表現する、彼が何を言わんとしているかはリスナーの解釈に委ねられる。ヴィデオだとあまりに明々白々と視覚的に表現されてしまうから、そういうわけにはいかないだろ。それもあって、ぼくは自分のヴィデオを出来るだけ抽象的であいまいにしておきたいのかもしれないね。」

「確かにぼくがデヴューした頃に比べて業界自体が変化したよ。機材が発達したということもあって、いろいろな点で始めるのは容易になっている。自分の家のベッドルームでちょこちょこっとやっても、それでなかなかいい出来ばえのデモになるわけだから。」

「でも今のバンドが、例えばローリング・ストーンズのように長続きするかどうかは神のみぞ知るなんじゃないか。業界の動きそのものが早くなってるからね。昔はバンドには時間的余裕があったし、それはお互いの信頼関係を結ぶためにも必要なものだろ。昨今では浮き沈みが激しくなってるし、成功も駆け足でやって来る。莫大な金額も、あっと言う間に稼げてしまう。」

「裕福になることの弊害というものもあると思うよ。あまり若くして成功しすぎると、ワムのような分裂にまっしぐらに向かってしまったりするし。ぼくには、その心配はなかったけどね。だってぼくがシングルを売り始めたのは25歳になってからだったもの。」

 

― 最近はどんなものを聴いてるんですか、ブライアン?

「Sigue Sigue Sputnikは好きだな。ぼくは彼らのシングルを気に入ってる数少ないうちの一人だと思うよ。Giorgio Moroder的なユーロビートで、そこが好きなんだ。」

― ジョルジオがプロデュースしてるんですよ。

「あれ、そうなの? なるほど、それでか。他にはプリンスやマドンナも気に入ってるよ。彼女って享楽的、ニューヨーク的で、ストリートそのものって感じだろ。あのアプローチがいいんだよ。」

「ところでオジー・オズボーンってどんな人? 話したことある? この業界には変り種の居場所はいつだってあるべきだと思う。でもぼくは他のいろんなスターと調子を合わせたりはしない。それってものすごく退屈だろうと思うしね。」

 

欠点とか、悪いクセってあります?

「山ほど。だけどそんなこと吹聴したいとは思わないよ。タバコはいい加減ヤメるべきなんだろうけど、だって一日10箱はいくもの。スタジオだとかインタヴューなんか受けてる時はそれ以上だよ。経済的な観点からスモーカーをたたきのめそうという試みは良いことだと思うよ。」

 

― ポップに政治を持ち込むということについては、どう思いますか。Red Wedge(*訳注2  に参加したことは、ありましたか。 

「音楽で政治的主張をするなんてことは、妥当だとは思えない。少なくとも、ぼく向けじゃないよ。そういう種類のことはしようと思ったこともない。布製の帽子とマフラー、それに木靴といういでたちで、赤い旗を振り回そうなんてつもりは毛頭ないしね。」

「ぼくは所謂、"恵まれた立場"にいる思うし、そういう立場にいれば負い目を感じたりするものだとも思う。でもぼくは、本当に一所懸命やって来たし、努力することで成し遂げたんだよ。」

「ぼくが同調してもいいと思うのは、反ヘロインの動きだね。ずっとヘロイン中毒の友人がいるんだけど、彼らはそういうのがカッコいいとか、冒険だとか思ってしまったみたいだ。」

「でも、ヘロインは堕落の役にしか立たないよ。問題は、ここではそれが簡単に手に入るってことだ。英国のガンのひとつだね。」

 

次のアルバムがリリースされたらツアーに出るだろうが、おそらくブライアンはその中で慈善コンサートにも加わることになるだろう。

「ここでは3,4日取って、5000〜10000人入る会場でやりたいんだ。問題は、英国内では適当な場所が限られてるということかな。ライヴ事情は昔にくらべてちょっと低迷してるようだから。」

 

ブライアンが2杯目のコーヒーに目を向けているところで私が最後に聞いたのは、ジェリー・ホールが二人のロマンスについて細かく語った本についてどう思うかということだった。

「ところどころ記憶が薄れてるところがあるようだね。時間が経つと、あやふやになるものなんだろうけど。」

「自分でも本を書こうかとは思ってるんだけど、でも今は時期がね。まだまだやらなきゃならないことが沢山あるし、毎日の生活で手一杯だよ。」

 

*訳注 1'Absolute Beginners' ...デヴッド・ボウイの主演映画

*訳注 2'Red Wedge'' ...「赤いくさび」、ポール・ウエラー、ビリー・ブラッグが中心となって設立した労働党支援の政治団体。保守党サッチャー政権に対抗していた。ちなみに英語の"red"には、「adj.) 共産主義の、極左の、n.)共産主義者」という意味がある。共産主義者を「アカ」と呼ぶのは、これにちなむ。

translation : 2005.8.20.

revise / edit 2007. 2.21.+3.5.

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